モンスター娘のいる本屋   作:口十

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ハーメルンではお久しぶりです。のんびり亭です。
二次創作を書く余裕がなかったからこんなに更新空いてしまいましたが、これからはこの小説をメインにこっちの活動もゆったり再会していこうと思います。

まぁ、ひとまずはモン娘との生活を楽しみましょう


フェンリル娘のいる日常

「いらっしゃい」

 脊髄反射のように声が出る。十年もやっていると流石に慣れるというものだ。

 本から目線を上げると、どうやら常連客の墨須さんのようだ。

「相変わらず人いないわね」

「いいんですよ。これぐらいで」

 私は吐き捨てるように言ってからまた本へと目線を落とす。

 神室書店。店前のブラックボードにはそう書いてある。一応は本屋だ。だが客などそうそう来ない。薄茶色に覆われ、所せましと並べられた本さえあれば良いのだ。そもそも通販での販売や学校への寄贈などで生活はできている。この古本屋は言わば趣味の一環だ。

「ねぇ、神室さんってホストファミリー権、持ってたわよね」

 墨須さんから言われ、ふと思い出す。

 他種族間交流ホストファミリー権。三年前に出来た他種族との交流を図る他種族間交流法と共に出来た権利だ。文字通り他種族を迎え入れる準備が出来ているといういわば一つの指標とでも捉えておけばいいだろう。

「そういえば昔趣味で……でも一応です。今はその気はないですからね」

「知ってるわよ。でも正直ここに縋るしかないの」

 墨須さんはいつにも増して真剣な表情でこちらに頭を下げた。サングラスの後ろの目が少し不安げに映る。

「一人、雇ってくれないかしら。勿論、それなりの保証はするわ」

「何だか深刻ですね」

「ちょっと問題を起こした子で、今強制送還との瀬戸際なの。でも、せっかく来てくれたから……」

 私はしばらく考えてから、一ついい案を思いついた。

「その子がこの本屋で働いてくれるならいいですよ」

 まさか、と墨須さんが顔を上げる。縋る、とは言ったものの、イエスの返事がもらえるとは思っていなかったのだろう。

「常連さんとのコネクトは持っておいた方がいいですし。あぁでも大型の子は無理ですよ。うちそんな広くないから」

「え、えぇ。人並みだから大丈夫よ」

「ならよかったです。いつ頃こちらに来られるので?」

「可能なら明日でも……」

 未だ理解の追いついていない様子の墨須さんに、私はやれやれと苦笑した。

「私も日がな一日一人でいるのに飽いてきた頃です。丁度良かったんですよ。明日ですね。空けておきます」

「ありがとう」

 やっと合点がいったのか、墨須さんは明るい顔でお辞儀をして去っていった。せめて何か買っていけと念じてみたが無駄なようだ。そういえば墨須さんってウチで何か買い物したことあっただろうか。

 

 

 翌日。看板を休みに切り替えてリビングで本を読んでいた。自宅は祖父が戦後に建てたもので、一階の半分が本屋なのは地域に貢献がしたかったからだそうだ。ちなみにもう半分はガレージなので、居住区は当時からあった二階と父が増築した三階しかない。

 ピンポーン

 下の階からインターホンが響く。恐らくは墨須さんだろう。適当に身支度を済ませて一階に降りる。

「これはまた、随分な形相で」

 目の前には護送車らしき車が留まっていた。それこそ、受刑者に与えられるような頑丈さでそれは無音のまま鎮座している。

「本人には申し訳ないけれど、一応ね」

「そういえば問題が云々って言ってましたね。種族だけ聞いてもいいですか?」

「フェンリル族っていう種族よ。ワーウルフに近いって言えば想像しやすいかしら」

 フェンリル、神話上でしか聞いたことのない種族だ。確か天を突くほど大きく口を開くとか……流石に盛った話だろうが。

「出していいわよ」

 墨須さんの一声で護送車の後部の扉が重々しく開く。そしてそこから凶暴そうな……ものは出てこなかった。

 紺青の長い髪に洋紅色の瞳をした少女がスーツ姿の男性に首輪の先を持たれて降りてきたのだ。確かに先ほど墨須さんが言っていたように髪と同色の耳と尻尾、それから毛に覆われた手足とワーウルフに近い特徴を持っていた。

 しかし私がそれより気がかりだったのが首と手足に施された拘束具、それから睨み付けるように、だがどこか怯えるようなその姿勢と眼付だった。

「ここまでしないと?」

「だから一応。前の世帯主に噛みついちゃったの」

 それが言っていた”起こした問題”とやらか。

 少女がこちらまで近づいてきたので軽く会釈をする。

「こんにちは。私は神室愁。しがない古本屋です」

「……フローズだ」

「フローズですね。よろしく。もう離していいですよ」

「は。ですが……」

 鎖を持っていた男性は不信な目でフローズと私を一瞥する。余程警戒しているのだろう。

「これからは私が世帯主なんでしょう? 私がいいならいいんです」

「……承知しました」

 そう言って鎖を離す。それから少々様子を見たが、逃げる様子も噛みつく様子もなかった。

「優しいじゃないですか。フローズ、家を案内するからおいで」

 心配そうな目で見つめる墨須さんと男性をよそに、フローズの怯える手を掴む。一瞬走った痛みはきっと掴みどころが悪くて爪が食い込んでしまったのだろう。改めて柔らかい肉球の部分を掴んだ。

「まず住むところを決めましょう。私の部屋はこっち」

 三階の角部屋を指した指をフローズが追っていく。

「フローズはどこがいい?」

「こっち……だな」

 そう言って指したのはその向かいの部屋だった。存外可愛い所があるではないか。しかしそこは今は殆ど使ってない。まずは掃除からしなければいけないか……

 ひとまず後回しにして二階を紹介する。とは言え二階はリビングと水周りしかない。問題は一階だ。

「フローズはここに来る前に何か聞いた?」

「あ、あぁ。本屋の手伝いだって」

「ならよかった。それがここ」

 ガレージとは違う方向の階段を下りると問題の古本屋がある。

 少しの不安を持ちながらフローズの方を見ると、目を皿のように見開いていた。とりあえず悪印象を抱いていないようだ。

 それに胸を撫で下ろしていると、フローズがはっと我に返って怪訝な目でこちらを見やる。

「アタシに番犬をやれ……ってことか?」

「まさか。こんな寂れた本屋に強盗は来ないよ。言っただろう。手伝いだって。簡単に言えば本棚の整理とかレジ打ちだね。あとは看板娘かな」

 看板娘?とフローズが小首を傾げる。

「華が欲しいんだよ。今は髪とか跳ねちゃってるけど、正せば綺麗だと思うんだ」

「綺麗……オマエ物好きだな」

「言うね。ちゃんと綺麗になるから」

 フローズは照れくさそうにそっぽを向いた。流石にぐいぐい行き過ぎてしまっただろうか。

 ひとまず説明を終えた私はフローズが住みたいと言った部屋の掃除に取り掛かった。蜘蛛が巣食うほどだったが、変えるつもりはないらしい。

 蜘蛛の巣を払って床と壁を雑巾がけして、といつもはしない肉体労働にゼェゼェ言いながらやっているとフローズも少しばかり手伝ってくれた。

 その日の夜、私がリビングで食事の準備をしていると、ちらちらとフローズがこちらとテレビと視線を行ったり来たりしていた。

「どうした?」

「あ~、いや、本当にアタシここに住むんだなって……」

「不安かい?」

「逆だよ。安心しすぎて不安なんだよ」

「そう。まぁ慣れてけばいいよ。ちなみに言い忘れてたけど本屋の定休日は水曜ね。それ以外は店頭に立つから」

「アタシ知ってるぞ。ブラック企業って言うんだろそういうの」

「この程度で言ってちゃ日本じゃやってけないよ」

 ははと笑いながら言うと、フローズもへへ、と笑い返した。少しずつだが確かに距離が縮まっているような気がする。

「手伝ってやろうか?」

「料理できるの?」

「……できない」

 じゃぁじっとしててと言うと不満そうに首輪をガジガジと噛んだ。どうやらそれが癖のようで、今日だけでも何度か見てきた。

 今日の夕食は豪勢にしよう。




 久しぶりのラノベ風の執筆、めちゃ大変でした。
 ということで数億年前に別アカウントで書いていたモン娘ことモンスター娘のいる日常の二次創作ということで熱が入ってしまい、今のところ三話分のストックがあります。

 これ読んでいる方はモン娘への理解が深いと思いますので色々説明を端折ったところは御愛嬌ってことでよろしくお願いします。

 ということで一話ではフローズちゃんが登場しましたね。ケモミミとかって結構モン娘の中ではノーマルな方なんですが、どうなんでしょう。ま、まぁ、フローズちゃんのちゃんとした姿はモン娘オンラインのwikiから見てもらうということで……


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