デート・ア・リベリオン   副題『男なのに精霊に転生しました』   作:岸温

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感想欄にて判明したことですが、セフィロトの樹の11番目のセフィラ、ダアトの守護天使はルシフェルらしいです。

このことを知っていて混乱した方はすいませんでした。この小説の天使とダアトの霊結晶とは一切関係がありません。

ていうかWikipediaとニコニコ大百科の「セフィロト」のページと「ルシフェル」のページに載ってないのに分かるわけないだろ! マニアックすぎる!

いくら勢いで始めた小説でも、下調べくらいはちゃんとしてます。それでも漏れた情報でしたので、皆さんご容赦ください。


ついでに言っておきますが、折紙さんのメタトロンの反転した魔王名がサタン≒ルシフェルですが、別に関係はありません。

当初はルシフェルの魔王名はサタンだったけど、ネタ潰されたことは内緒です。



成立しない対話と戦闘

 予想はしていたことではある。折紙ちゃんと対峙する前に何度もシミュレートしたのだから。

 原作通りに士道くんが精霊を封印できていないから、その『証』として俺が折紙ちゃんの両親を直接殺している可能性を。

 他でもない自分のことだから、未来の自分が取るだろう行動もある程度予想できる。責任感が強い俺のことだ。もし自分のせいで原作崩壊が起きていたのなら、徹頭徹尾そのフォローをするだろう。

 

 

 ――具体的に言えば、思いつく全ての精霊を保護しようとするだろう。

 そして、大火災のあった日に遡り、折紙ちゃんが救えなかった折紙ちゃんの両親を救ってしまうだろう。

 

 

 それ程までに俺はチートな存在なのである。きょうぞうさんに【十二の弾(ユッド・ベート)】と使うよう無理矢理言い聞かせられるだろうし、<ファントム>を含む精霊全員の霊力を人間レベルに抑え、精霊を隔離し士道くんの役目を奪うことだってできるのだ。

 ――そしてそれはとりあえず(・・・・・)の幸せなんだ。そんなことをしても精霊たちが幸せになるとは到底思えないし、何より俺自身がその未来に幸せを感じない。

 だから確かめたかったんだ。未来の俺が上手くいっているのかを。その指標となる『過去』を――――

 

 

 

 

 最初は予定通りに事が運んでいた。極微弱な空間震でもASTは来てくれたし、その中に折紙ちゃんを見つけることができた。

 手始めに撃ってきた弾丸の抵抗力をゼロにする。弾丸は空気抵抗に耐えられなり、すぐに弾け飛ぶ。次にASTの<魔導師(ウィザード)>たちの魔力を減退させる。

 魔力をゼロにしたら地面に激突してしまうので、落下する勢いを殺せるよう10分の1だけ残す。予想通り<魔導師>たちは落下するも、ケガを負うことなく地面に着地していった。

 その中で折紙ちゃんだけは、俺に向かって突進して来る。「計画通り」と内心ほくそ笑んだ。別に新世界の神みたいな迫力は出していないけど。

 突進を躱し、折紙ちゃんに話しかける。

 

 

「凄まじいな、鳶一折紙。魔力を10分の1にされてそこまで動けるのか」

「ああ、ちょっとタンマ。俺はアンタらと戦いに来たわけじゃない。話があるんだ」

「教えてもらいたい。鳶一折紙、君の両親を殺した精霊はどんな姿だった?」

 

 

 この時まで俺は楽観視していた。チート能力を持っているから、未来の俺も上手くやっているんだろうと。

 しかし実際は現在の俺が失敗していた。

 折紙ちゃんの返答は――――

 

 

 

 

 

 

「お前が私のお父さんとお母さんを、殺したのかぁあああああああああああああああああああ!!!!」

 

 

 

 

 

 

 俺の首めがけて、光を帯びた長剣を振りかぶった。

 反射的に両手に持ったイスを離して上半身を後ろに下げた。長剣……いや、光剣を空振らせて折紙ちゃんに隙ができるが、スウェーしている俺の方が隙が大きい。立て直すのも折紙ちゃんの方が早く、光剣を上段から振り下ろしてくる。

 俺は地面を全力で蹴り、バック宙を繰り返して折紙ちゃんと距離を取ろうとする。しかし折紙ちゃんはスラスターを噴かせて俺に追いすがった。

 

 

 ――どこで失敗しやがった!? 未来の俺は!

 

 

 予定外の折紙ちゃんの行動に、頭が上手く働いてくれない。目の前の攻撃を躱すことに思考を削がれていた。

 

 

 ――つーか折紙ちゃん強すぎだよ! 確実に人間が躱しにくい方向に剣振ってきやがる! ていうかこれでもまだ随意領域(テリトリー)10分の1っておかしいだろ!! ふっざけんな公式チート!!

 

 

 もっとも、苦戦しているのは俺の精霊としての身体スペックが弱いせいでもある。

 そもそも俺は武器を持っていない。主な攻撃手段は殴る蹴るしかないのだ。

 この時点で兵装を持っている折紙ちゃんに劣っていると思うだろうが、随意領域(テリトリー)を普段のように展開できない今の状態ではむしろ折紙ちゃんの方が不利だ。

 俺の身体スペックは他の精霊と比べたことはないから予想でしかないが、少なくとも十香ちゃんや八舞姉妹(脳筋ども)より下回っていると思う。回復力、というか耐久力はある方だと思うのだが、筋力や霊力なんかはそこまで高くないだろう。

 何より10分の1折紙ちゃんに苦戦している時点で、純粋な戦闘能力が高くないんだろう。俺は。

 ――まあ、殲滅(・・)能力に関して言えば美九ちゃんに匹敵するだろうけど。その代わり身体スペックが低いところを含めて、美九ちゃんと同じだな。

 

 

 ――大分落ち着いてきたかな。

 ――よくよく考えてみれば、さっきの言い方だと仇の精霊だと思われてもおかしくなかったよ。

 ――自分の両親が精霊に殺されたことを知ってる精霊って、どう考えてみても両親の死に際に立ち会ったと思うよなあ。

 

 

 今の自分の不手際に気づき、未来の自分が失敗していない可能性が出てきたことに安心する。

 落ち着いて見てみれば、折紙ちゃんは大分息が上がっていた。……それでも顔が少し笑っているのは、仇の精霊が目の前にいるからなんだろう。アドレナリンのせいだと思いたい。

 左肩からの袈裟斬りを右手で受け止める。折紙ちゃんの腕ごと運動エネルギーを停止し、身動きを取れないようにした。

 

 

「!? 離せ……!」

「はいストップー。さっきも言ったと思うけど、俺は話をしに来たんだ。アンタらと喧嘩しに来たわけじゃない」

「黙れ……! 私の両親を殺しておいて、よくもそんなことを……!」

「それも含めて話をしようって言ってんだ。いいから落ち着け」

 

 

 しかし俺の言葉は当然のように無視され、俺の顔に向けて折紙ちゃんの蹴りが放たれる。まあ両腕が動けない状態の蹴りなので、簡単に避けれたが。

 次の蹴りが放たれる前に、今度こそ折紙ちゃんの魔力をゼロにする。随意領域(テリトリー)が解除され、CR―ユニットの重さがずしりと折紙ちゃんの体を襲う。そしてようやく折紙ちゃんは動きを止めた。

 

 

「くっ……!」

「ようやく話ができる状態になったかな? 精霊を憎く思うのはいいんだけど、こっちの話を全部無視されるといい加減キレたくなってくる」

「ふざけないで。あなたが私の両親の仇ではないの……!」

 

 

 ――その言葉で俺の第一の(・・・)目的が完了したようなものだけど。

 まあ誤解されたままなのは面倒臭いので、ちゃんと誤解は解いておこう。

 俺は光剣ごと、折紙ちゃんの体を引く。相手の瞳に自分の顔が映るほどお互いの顔を近づけ、言ってやった。

 

 

「本当にお前は、この顔を見たのか?」

「………………」

「やっぱり見てないってことだな。なら俺はお前の両親を殺していないよ」

「どうして、そう言い切れる」

「俺は物理攻撃しかできないからさ。人間を殺そうにも、近づかなければ人間を殺すことができないんだ」

 

 

 正確には――『物理攻撃と範囲攻撃』しかできないだけど。

 つまりはまあ、嘘である。別に遠くにいる人間も殺せる。…………既に殺している。あの『ヴァイスホルン大空災』で。

 だが範囲攻撃なんてした日には――そもそも大火災さえ起きなくなる(・・・・・・・・・・・)。いや、俺の能力の効果範囲ってせいぜい100メートルくらいだから、火が消えないところも出てくるか。

 とはいえ俺が嘘を言っていようが本当のことを言っていようが、目の前の折紙ちゃんに信じてもらわないと意味がないのである。

 

 

「その言葉が本当である確証はない」

「信じて欲しいんだけどなあ。俺、お前らを傷つけようとしたことなかったろ?」

「なら、『ヴァイスホルン大空災』のことはどう説明する」

「あれは事故なんだ。標高5000メートル級の山でいきなり随意領域(テリトリー)を解除したから、寒さに耐えきれず凍死したってだけなんだ」

「そう…………。――どうして、私の両親が精霊に殺されたことを知っていたの?」

「それはまあ……、俺も大火災には因縁があるからさ。でも今回の質問と因縁に関係はないよ」

「――――あなたは私の仇の精霊を知っているの?」

「…………いいや、少ししか知らない」

「知っていることだけでも教えて」

「その代わり俺の質問にも答えろ」

「――――――――」

「……………………」

 

 

 なんでしょうかこのプレッシャー。尋問か何かですか? そりゃあ誤魔化してるのはバレバレだろうけどさ。

 お互いに睨み合っていると、折紙ちゃんの後ろから<魔導師>が走ってきた。

 

 

「と、鳶一三曹が精霊に襲われている! NTR! 至急動画をさつえ……応援を!」

 

 

 …………………………………………。

 無言で折紙ちゃんから体を離し、固定していた光剣と腕と魔力の減退を解除した。

 

 

「……おい、あれ」

「後で処理しておく」

「よろしく」

 

 

 クール系の女は、同じ女にモテて辛い。くしくも同じ悩みを共有していたのだった。(俺もアメリカで経験済み)

 人も来たことだし、折紙ちゃんとの対話はこの辺りが限界か。では第一の目的と第二の目的を完了させてしまおう。

 

 

「なあ。お前の仇の精霊…………、何色だった?」

「――――――――恐らく、白」

()じゃないか。まあ、いいか」

 

 

 

 

 今回の折紙ちゃんとの邂逅で、俺の目的は三つあった。

 一つは、折紙ちゃんの過去を確かめること。

 もう一つは――――俺が時崎狂三(黒い精霊)を狙っていると思わせること。

 

 

 

 

「じゃあ今回はこの辺で。これからお互い仲良くできたらいいな」

「仇の精霊の情報は?」

「分かってるよ……。――――仇の精霊の方もお前を狙ってるよ。そのうち会えると思う」

 

 

 自分ですからねー。ああ……ネタバレした時、折紙ちゃん世界ではなく俺を恨みそうだなあ。

 その時には他の精霊は大体封印されてるだろうし、反転してようが精霊相手に負ける気しないし、別にいいけど。

 本当かと俺を一睨みした後、俺の言を信じた折紙ちゃんはこぶしを握り締める。ようやく俺へのヘイトが消えたようだ。

 トラブルは多々あったけど、目的は達成できてよかった。

 

 

「ああ。あと最後にお願いがあるんだ」

「……何?」

「俺の識別名だけどさ、――――<リベリオン>にして欲しいんだ」

「………………精霊の要望が通るとは思えない。それに、『反逆者』なら【traitor】が正しい」

「それ言うなよ……」

 

 

 自分でも厨二臭いとは思ってるんだからさ……。引用元はもちろん叛逆の物語からです。

 まあ意味は通じてるし、『裏切り者の精霊』って認識してくれるなら問題はない。

 これが、今回の俺の最後の目的だ。――くだらないって言うなよ!! 名前から敵ではないと認識してくれるだけでどれほど対応が違ってくると思ってるんだ!!

 

 

「ちなみに俺って他の精霊と違って現界も消失(ロスト)も空間震の規模も自由自在なのさ。だからこそ、俺は人間たちと上手く共存したいと思ってる」

「人間との共存が、あなたの目的だと言うの?」

「そうさ」

「……なら私とあなたは相容れない。私の目的は、両親を殺した精霊を含め、全ての精霊を殺すこと。――私と同じ人間を生み出さないために。たとえあなたが空間震を抑える術を持っていようと、他の精霊が人間に被害を及ぼす以上私は精霊と戦わなければならない」

「………………そうかい」

 

 

 

 

 ――やはり鳶一折紙はそうでなくては始まらない。

 どこまでも精霊を憎む折紙ちゃんの姿に、俺は安心してしまう。

 

 

 

 

「何を、笑っている……っ」

「いいや……。原作(運命)通りだなって思ってね」

「運命……? あなたは未来を知っているというの?」

「いずれまた会おうか、鳶一折紙。その時にはもっと愛想よくなりなよ」

「よけいなお世話。精霊を殺すのによけいな感情はいらない」

「さみしい人生だねえ。そんなんだから好きな人とも仲良くなれないんじゃないの?」

 

 

 最後に折紙ちゃんの琴線に触れる。最後に見た折紙ちゃんの顔は尾を踏まれた虎のように怒っていた。一方的に殺しにかかってきた腹いせだ。はっはっはー。

 結局イスは無駄になったよなー……。座り心地も割とよかったし……。

 ――さぁて気を取り直して! 今回の反省を活かしながら、次の計画を練ろうか!

 俺は鳶一折紙との対話を終え、<超克天魔《ルシフェル》>を使い消失(ロスト)した。

 

 

 

 

 

 

 『デート・ア・リベリオン』。――――――それが俺の計画の名前にして、俺の物語。

 方針は救われる精霊の順番を変えずに不遇そうな原作のキャラクターの境遇を救いながら、俺の立ち位置を安定させるというもの。具体的な計画なんてない、ただ行き当たりばったりの計画。

 それでもそんないい加減な計画に、俺は生きがいを感じている。

 自分の物語があることを、自分が物語に混じれていることに喜びを感じているからだ。

 

 

 たとえ隣界にたゆたうような命でも――

 少し前の俺とは違う、今の俺には目標がある――

 そのことが俺の心の渇きを潤わせてくれるのだ――

 

 

 ああ、次はあの子と会うのか。そして士道くんのことを教えてあげるのだ。……とっても、楽しみだ。

 来たるべき邂逅と徐々に起こる原作との乖離に、俺は薄く頬を緩ませる。

 

 

 ▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽

 

 

「…………」

 

 

 <リベリオン>と名乗っていた精霊は消失(ロスト)した。

 戦いが目的ではないと言っていた。実際に、彼女とは戦いが成立していなかった。

 初めから私たちの魔力をゼロにされていれば、空を飛んでいた私たちは地面に激突して戦闘不能になっていた。空を飛んでいなくても、物理攻撃しかできなくても、いくらでもこちらを無力化できた。

 

 

「日下部二尉」

『どうしたの鳶一三曹? 対象は消失(ロスト)した? ……まさか、今になってどこかダメージが!?』

「ダメージはない。それより、あの精霊との戦闘で分かったことがある」

『……何かしら? 言ってみなさい』

 

 

 私はあのダッフルコートの精霊について気付いたことを、言葉を選ばず報告する。

 

 

「私たちがあの精霊を倒すのは事実上不可能」

『なっ……! 何を言ってるの! ASTが精霊を倒せないなんて言えるわけないでしょう!!』

「あの精霊は現界も消失(ロスト)も空間震も自由自在と言っていた。そのことが本当なら、私たちはあの精霊を殺し切ることは…………絶対にできない」

『そういうこと。たとえあの精霊の、相手の力を減らす能力に限界があっても、逃げられるんじゃ意味がないってわけね』

「ここからは私の仮説。もしあの精霊を殺すなら――――」

 

 

 私は歯を食いしばりながら、憎々しくも仮説を言う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「精霊と<魔導師>が協力しなければあの精霊を殺す手段がない」

 

 

 

 

 




物語は長くなればなるほど、続きを書くのが難しくなります。

完結に向けて持っているネタをどれくらい出せばいいか、より取捨選択をしないといけなくなるからです。

ネタを作り続けないとそもそも書けない。しかしネタを出し過ぎれば物語のテンションが崩れる。しかしネタを渋れば話がつまらなくなる。

話を考えるのはとても難しいことです。

それでも時としていいネタが思いついた時、それを文章にできる快感は物書きにしか分からない無二のものでしょう。


本編がシリアス過ぎて書くことがなかったから、後書きもシリアスになりました。つまんなくてすいません。
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