今回は、宇宙世紀について独自の歴史考察が入ります。
一度は失われたあずきバー。
時を経て復活したあずきバーはどうなるのか?
宇宙世紀0079
地球から最も遠いサイド3がジオン公国と名乗り、地球連邦に独立戦争を挑んだ。
国力で圧倒的に勝る地球連邦の前にジオン公国の勝ち目はないと思われていた。
しかし、ミノフスキー粒子により有視界戦闘を余儀なくされた戦場でジオンが開発した人型機動兵器モビルスーツが猛威を振るい、連邦は苦戦を強いられる。
しかし、連邦もやられっぱなしでいた訳ではなかった。
V作戦を発令し、連邦製のモビルスーツ『ガンダム』の開発に成功。
戦争に巻き込まれたニュータイプの少年『アムロ・レイ』をパイロットとして各地で奮戦、戦果を上げていった。
時は流れ、ジオンのエースパイロット、赤い彗星の異名を持つ『シャア・アズナブル』がアムロと剣を交えようとしていた。
乗機であるジオングは既にガンダムによって撃破されている。
どうやらガンダムも限界に来ていたようでアムロも機体から降りている。
互いにサーベルを持ち生身で相対しているのだ。
「ニュータイプ能力が高かろうと直接身体を使った戦闘では意味はないはずだ!」
アムロ・レイは、もうガンダムに乗ったばかりの頃の素人ではない。
多くの戦場を生き抜いた事で戦闘技術、ニュータイプ能力共に磨き抜かれ、連邦の白い悪魔と呼ばれる程に成長していた。
そんなアムロとガンダムの組み合わせは、正に鬼に金棒。
戦場で手が付けられない脅威となっていた。
故にシャアは、この戦いを好機だと思った。
今のアムロは、シャアですら手を焼くような実力者だが、それはあくまでモビルスーツ戦での話。
モビルスーツ戦では、持って生まれたセンスでどうにか出来ても、生身での戦闘では軍人として訓練を受けてきた自分には勝てまい。
そんな思惑からアムロに肉弾戦を挑んだが、ニュータイプ能力は肉弾戦でも通用したようだ。
まるで未来が見えているかのように的確にサーベルの切先を突き立て、致命傷を与えようとしてくる。
元民間人で軍人としての教育を受けていないはずなのに命を奪うことに躊躇いがなさすぎる。
モビルスーツ越しに相手を撃墜するのとは訳が違う。
目の前に居て、相手が人間である事を否応なく認識しているはずなのにだ。
シャアは内心、サイコパスなんじゃないかと戦慄していた。
戦争と言う過酷な環境は、普通の少年をここまで変えてしまうのか。
そして、ついにアムロが放ったサーベルの切先がシャアの胸へと突き立てられた。
ニュータイプの直感が眉間を狙っても仕留められないと察知したのか。
ヘルメットが有ろうが無かろうが関係ないと言わんばかりに急所である心臓を一突きだった。
しかし、シャアの悪運は尽きていなかった。
アムロは、勝ちを確信してサーベルを突き出したが返ってきた感触は肉を突き破るようなものではなかった。
とてつもなく硬いもので止められ、弾かれた感触。
シャアは、ノーマルスーツの下に装甲板を仕込んでいたのだろうか?
いや、そんな事をすれば重さで動きが阻害されていたはずだ。
シャアの動きからそんな様子は感じられなかった。
困惑するアムロを前にシャアは不敵に笑って、懐から何かを取り出す。
「危なかった、あずきバーがなければ即死だった」
シャアが取り出した物は思ったより小さなアイスだった。
アムロは、シャアの言葉に激しく反応していた。
「なっ、あずきバーだって?!
本当に実在したのか!」
「ほう、知っていたかアムロ。
博識だな」
シャアもアムロがあずきバーを知っていた事に感心していた。
あずきバーの製法は既に失われ、宇宙世紀が始まった頃にはロストテクノロジーになっていたのだから。
今では昔の文献の中にある記述でしかその存在を確認できない。
知識人達の間では、あずきバーを実際には存在しない想像上の物であると認識されていた。
それも仕方がない事だろう。
文献にあるあずきバーの硬さに関する記述は、常識的に考えてあり得ないものばかりだったからだ。
中には宝石よりも硬いなどと言う記述まであった。
そんな硬いアイスが存在する訳がない。
あずきバーは、宇宙世紀においてオリハルコンやアダマンタイト等と同列に語られる存在だった。
では何故、失われたはずのあずきバーをシャアが持っていたのか?
それを知るためには宇宙世紀の歴史を語らねばならない。
かつて、人類は増えすぎた人口を宇宙へ移民させる事で問題を解決した。
当然、多くの困難があった。
当時は、技術も未熟でノウハウも存在しなかったのだから。
地球連邦政府がスペースノイドを支配し、搾取する現状を考えれば、その実態が棄民政策だったのは明らかだ。
そんな過酷な環境への移民を誰にさせたのか?
地球連邦の前身である国際連合には敵国条項と言う都合の良いものがあった。
簡単に言うと日本とドイツには言い掛かりを付けて殴っても良いと言うものである。
地球連邦になっても、その条項は削除される事なく存続していた。
それ故に、最初に地球から追い出された人々のほとんどはこの2カ国の国民達だったのだ。
彼らが最も過酷な宇宙開拓の黎明期を支えた。
ジオン公国の人口の大部分が日本系とドイツ系なのはこのためである。
あずきバーを製造していた井村屋の社員達も例外なく宇宙移民させられた。
当然、アイスを作っている余裕などない。
宇宙で生きるための技術やノウハウを確立し、生活が安定した頃にはあずきバーの製法は失われていた。
元社員達の家系で口伝として断片的な情報が残っているのみ。
宇宙世紀が始まる頃には、あずきバーは実在を疑われる空想上の存在になっていた。
それでも彼らは諦めなかった。
それぞれの子孫に伝えられた口伝を持ち寄り、研究を重ねていった。
必ずあずきバーを復活させると言う強い意志を持って。
そんな彼らを守り、支えたのは井村屋社長の末裔であるダイクン家であった。
だから、元社員の子孫達が復活させたあずきバーはシャアに託されていたのだ。
「ジオンは、あずきバーの製法を再発見し、復活させた。
だが遅すぎたのだ。
あずきバー(AB)装甲の実用化が間に合っていれば、この戦争はジオンの勝利で終わっていただろう」
「そんな事で戦争の結末は変わったりしない!
あずきバーは物理的には硬くても熱に弱いはずだ!」
「ビームなどのエネルギー兵器はIフィールドで防げる。そして、AB装甲の強度はガンダリウム合金をはるかに上回るのだ。
その上、仮にIフィールドを突破してAB装甲にダメージを与えても、冷却装置によって冷やされ再び固まる。
時間と共に装甲が修復されるのだ。
IフィールドとAB装甲を搭載したモビルスーツは、理論上撃墜不可能な無敵の超兵器となる。
これでも否定できるか?アムロ」
AB装甲は、宇宙世紀においてオーパーツと呼んで差し支えない性能を備えていた。
その特性は、Gジェネにおいてフェニックスガンダムなどに搭載されたナノスキン装甲に近い。
必要とされるコストも業務用冷凍庫を動かすための電力のみと、モビルスーツに搭載されている核融合炉の発電力から考えればただ同然。
確実にゲームバランスを崩壊させてしまう壊れ性能と言えた。
「うう、確かにそんなモビルスーツを造られたら連邦は負けてしまう」
アムロも、ここに来て、そんな脅威の新素材を知ることになるとは思わなかった。
この戦争に勝っても、AB装甲を持つモビルスーツを開発して復讐戦を挑まれればどうなる?
この情報を連邦に持ち帰れば、きっとあずきバーの製法を知る者達を殲滅しようと大規模な弾圧が行われるだろう。
連邦からしてみれば、あずきバーの量産だけは避けなければいけない事態なのだから。
大虐殺を引き起こすかもしれない情報を知ってしまった。
そんな苦悩するアムロの様子にシャアは苦笑して心配は要らないと伝える。
「安心しろ、アムロ。
あずきバーが軍事転用される事はない。
AB装甲の実用化はザビ派が計画していた事だ。
井村屋の末裔達は、この試作品を私に託した後、軍事転用を嫌ってあずきバーに関する資料を全て封印した。
あずきバーは夢とロマンの塊だ。
そんなあずきバーを兵器に使うなど許せないそうだ」
シャアの言葉にアムロは安堵していた。
これから来る平和を壊す脅威は存在しないのだと。
けれど、シャアはその安堵も否定する。
「だがな、アムロよ。
この戦争が終わっても争いは続くぞ。
なにせ、敵国条項なんてくだらないものすら削除できなかった奴らだぞ。
勝った連邦がスペースノイドに配慮などするものか。
きっと形を変えて戦争は続いていく」
そう言って去っていくシャアの後ろ姿を、アムロは何も言えずに見送る事しか出来なかった。
アムロとシャアの戦いは終わった。
それでも人類の戦いは続いていくと言う。
ならば、戦場で再会することもあるだろう。
その時は敵なのか、味方なのか。
それは分からない。
だがアムロのニュータイプとしての感が教えてくれる。
きっとシャアとは長い付き合いになるだろうと。
その後、シャアの予言通り連邦とジオンは形を変えて争い続けた。
あずきバーの情報などなくともスペースノイドを弾圧するティターンズが組織された。
やはり敵国条項すら削除できなかった人類に平和を築くなど不可能なのだろうか?
唯一の救いは、無敵の超兵器を生み出すあずきバーが夢とロマンを守るために歴史の裏に消えていった事。
しかし、それも長くは続かなかった。
あずきバーに匹敵するオーパーツ、サイコフレームが開発されたからだ。
フルサイコフレーム機体に対抗するため、あずきバーの封印が解かれた時、新たな戦場伝説が誕生する・・・・・かもしれない。