星を創る者【FGO × モンスターハンター】 作:FGOネタ出し
──赤い。
──燃えている。
──世界が燃えている。
「え、は……?」
ちょうど地上に出てきていたタイミングだった。1年ほどぶりに日本という現代において一番気に入っている国に戻ってきた矢先の出来事だ。
「えあ……ボレアスくん起きたの?」
思わず見覚えのある光景にそうこぼしてしまうが、すぐにその気配が無いことに気づく。そもそも自分の知る彼が動いたのであれば、地上は文字通り灰燼と帰していて文明の残滓なんて残らない。
というか、つい今牛丼を腹いっぱい食べて店から出てきたばっかりなのだ。真横で世界が焼かれていれば流石に気づく。それが無かったということは、一瞬のうちにして火が回ったということ。
まるで、『世界という概念そのもの』に火がついたかのような。
「……どーなってんのこれ」
驚きを抑えるときの癖で、思わず手が頭の後ろに回る。世界が滅んだ、のだろうか。そんな想像が頭の中を駆け巡る。そうであるならば、またやり直しの準備をしなければ、と飛んだ思考が順序を外してすべきことを提案してくる。
そんな思考に一旦蓋を閉じて、脳内をリセットする。思考速度についていけずに混乱を起こしていた人の体がクールダウンされ、燃え盛る街の中に静かに立つ。
「よし。状況確認。視界内全ての建築物、自然が燃えている。大気の組成に大きな変化はなし。二酸化炭素が通常より少し多い程度。燃えているものは瓦礫など消滅することなく燃え続けている。ボレアスくんの可能性は無し。ついでに魔力の大きな変動も無し。そんで上空には──」
下に眼を取られて見ていなかった空へと視線を向けると、空を覆うように巨大な光の円環がこちらに向かってその穴を見せている。
「巨大な円環……あれ魔力、か? 生命エネルギーではない何かしらの膨大なエネルギーと推定」
本気の出せる状態になっていないこともあって判然としないが、おおよそ感じ取れるものから推測していく。
「人類の滅亡、未確定、要確認。テクスチャは物理法則のまま。アイツラの目覚めは現在のテクスチャに深刻なダメージをもたらす可能性大、今はナシ」
皮膚を舐める炎は確かに熱量を感じさせるものの、自分が燃えることはない。人の身に窶している今ならあるいは表皮、そして内側まで焼けてもおかしくはないのだが。
「物理的な炎ではない可能性あり。あるいは炎の形をした概念、焼却、昇華、浄化、融合、活性化……」
考えられる可能性をひとまず口に出して整理した後、まずは自分の感知できる外、世界がどうなっているかを確認しようとして、大きな問題に気づいて途方に暮れる。
「困った。移動手段が無い」
本来の姿となれば、あるいはその力の一端でも使うことができれば単体で地球を巡ることなど容易い。だが現代の人の時代、物理法則のテクスチャの上でそれをすることはすなわち現在のテクスチャの崩壊を意味する。
「……魔術回路を、作るか」
幸い、人を観察する中で現代利用されている魔術というものの知識もそれなりに得ている。これまでは強靭な生命力と時間は文字通り腐るほどあったので必要としていなかったが、今は人の身での移動手段が必要だろう。
そのためにはまず移動に使う魔術の選定、の前に魔術を使う基礎となる魔術回路の創造。人の体に本来存在するものであれば本来の龍としての力を使う必要がない。
まずはそこから始めよう、と、とりあえず火にまかれていなそうな場所を探すべく歩き出した。
******
魔術回路自体の創造はすぐに出来た。なぜだか知らないが俺が人外ということは特定の層の人間にはバレていたようで、それなりの頻度で魔術師や魔術使いを名乗る者たちや、教会、おそらくはキリスト教の戦闘員のようなものから襲われているために、その課程で魔術自体には触れたことがあったのだ。正直どれがどんなことをしていたかは覚えていないが。
その魔術回路を利用して、以前見た覚えのある飛行するための術式を構築する。この現代の人間の一部が使っている魔術は、かつて見た魔法であったり、そのまた前に見た神々の権能のように思ったままに使えるものではなく、効果を発揮させるためには特定の術式が必要となる。幸いいくつかの魔術を目撃することが出来ていたので、当面をそれを使うつもりだ。
「おお、浮いたな」
物体を浮かすための魔術を使用すると、魔術回路を動かして作っている魔力が減っていく感覚がある。魔力の消費よりは生産の方が早いので魔力切れになることは無さそうだ。俺に攻撃をしておいて魔力切れを起こしたやつは情けなかったのでそうはなりたくないものである。
「よし、行くか」
そのまま地面を離れ、勢いよく空へと向かって飛び立つ。羽ばたいて飛ぶわけでも飛行機に乗るわけでもないが、これはこれでなかなか良い。
どんどんと高度が上がっていくと、それに合わせて周囲の様子がより広範囲に見えてくる。
炎。
炎。
炎。
「こら駄目かもわからんね」
どうにも、見渡す限りの全てが燃えてしまっているらしい。
そのまま高高度を移動して、世界中を見て回る。日本列島から飛び出て、一度オセアニアまで飛行、そこから東南アジアづたいにユーラシア大陸へ戻って大陸をアジア中心に確認しつつ横断。そのままヨーロッパまで行って引き返し、ロシアを一通り見てから北アメリカへ。カナダの南方をざっと見た後、アメリカの主要都市部、南米の大雨林が燃えているのを確認して、最後にアフリカへ。南極と北極は人の住む環境に無いので放棄したが、例え各国の出している探索隊が少数残っていたところで、ここまで世界が燃えてしまってはどうしようもないだろう。
世界中を数週間かけて飛び回った俺は、ついに現在の世界の存続がありえないと判断した。現在のテクスチャを敷いている人類は言わずもがな、そのほかの動植物も、テクスチャの下に移り住んだその他の者たちも、もはやこの先、星を発展させることはないだろう。
数週間ぶりに地に足をつけて一息つく。ファルクのやつなら数日で終わっただろうに、俺が飛ぶのが遅いばかりにとんでもない時間がかかってしまったが、いずれにしろこれから再びこの星に命を吹き込むのだ。その始まりが少し遅れたところで誰も気にしまい。
燃え盛る世界の中、世界をもう一度やり直すために、まずは皆を起こすところから始めなければ。
地上に降り立ち眼をつぶった俺の頭部を突き破るように、巨大な角の先端が飛び出す。それが世界に出現したことで世界がきしみ始め、人としての肉体が耐えきれずにボロボロと頭部から崩れ始めるが、気にせずに俺は本来の体を出現させていく。
頭部から飛び出した巨大な角の先端は、あくまで俺の持つ角の一部に過ぎない。崩れた頭部から、無数の角が折り重なって出来た俺本来の角が現れ、その下から到底人ではない顔が現れる。
同時に四肢も崩壊を始め、腕が崩れたところからは2枚の羽と四足歩行の際の前足が。足が崩れたところからは後ろ足が。
二本足で直立していた体勢から、巨大な四肢での四足歩行へと移行する。
最後に胴体が崩れて俺本来の体全てが、地上に出現した。
テクスチャ上に存在してはいけない存在の出現に世界が軋み、音に出来ない悲鳴を上げる。
だがそれでは足りない。
世界を始めるには、一度既存の全てを崩し、掃除しなければならない。
『GUYUIYAANANNN!!』
天を向き、硬質な音の咆哮を上げると同時に、長年隠されたままだった俺の角から無秩序なエネルギーが溢れ出す。周囲で燃え盛っていた炎は、エネルギーに呑まれて消え、あるいは一層激しく燃え上がり、灼熱の空間と絶対零度の空間、風の荒れ狂う空間と凪の空間が入り交じる。壊れかけの物理法則がなんとか俺のエネルギーの適応しようとしているのだ。
『GUIYNUIYNANN!!』
それを踏み潰すように、再度エネルギーをためて、天高く咆哮を上げる。先程角から溢れ出したのとは比べ物にならないエネルギーが全身から広範囲に拡散し、一気に物理のテクスチャーとその裏側にあったテクスチャーを崩壊させていく。
だがその崩壊は副産物に過ぎない。
俺がエネルギーをあえて放出したのは、未だ眠る運命の戦争を叩き起こすためだ。
咆哮した場にそのまま座り込み崩れゆく世界を観察することしばし、俺の咆哮からわずか数分後には、それはやってきた。
俺から溢れ出すエネルギーで荒れ始め、風がうずまき雲を呼び始める中、太陽の前に俺とは原因を異にする歪みが出現する。
太陽を覆い隠すように出現した黒い歪みから、白き王、龍たちの統括者が顕現する。より一層負荷を受けて崩壊が進む世界に眼をくれることなく、座り込む俺の眼前で羽ばたくそれは語りかけてきた。
『終わったですね、この世界は』
『別に飛んだまま言わんでも良くない?』
『焼き払うのですか?』
俺の苦情に付き合うことなく、上から見下ろすようにしながらそう告げてくる。こういうところが好きになれないんだよなこいつ。
『ボレアスくん呼んでよ。またやり直しだ』
『わかりました。他の者も起こしましょう』
俺の言葉に頷いた祖なる者が天高く飛び上がっていく。後は、放っておけば他の龍達がやってくれるだろう。
ボレアスくんが星の全てを焼き払い初期化し。他の龍立ちがそこに環境と命を吹き込んでいく。
俺はまた、それを外から一人、見守るだけだ。
プロローグ書いてみたけどこの方向で行くかどうかは悩み中。具体的には
何らかの形で特異点でカルデアと接触して、その後カルデアと一緒に人理修復(つまりゲームの1章)を歩むルート
と、
このプロローグがそのまま進んで2章の異聞帯として出現するルート
の2つを考えてる。