職場の先輩がウチの飼い猫に似ている件   作:猫好きの餅

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宵宮に幼なじみになって朝起こされたい人生だった。絶対料理上手い。




9話 花火娘と縁側で

 

 

 

ゆさゆさ。

 

なにかに揺すられる感覚で、寝ていた俺の意識は浮かび上がってきた。

 

腹の上に何か乗っている重量感。重さは普通、なんなら結構軽い。

 

「ーーーぃ、はーーーきーー」

 

んんー…?んだよ朝っばらから、まだ眠ぃんだけど…。

 

「ほーーー、はよーーーや」

 

だからうるさいって、もうちょっと寝てぇよ…

 

「じーん、はよ起きぃ〜。もう朝やでぇ〜、もうっ、ほら…起きないと…」

「ぅん?」

 

俺はゆさゆさ揺さぶられたのが鬱陶しくて、何とか退けようと寝ぼけ眼で腹に乗っている物体に左手を伸ばした。

 

むに。

 

「ひゃあっ!?」

 

んぅ?なんこれ。やわこい。

 

伸ばした手が何やら柔らかいものに命中して、俺の意識はやや戻る。

 

俺の手でも少し余るくらいの体積。軽く手に力を見れてみると指が沈む感覚とともに物体が少し跳ねた。というか、今声がしたような…。

 

腹に乗る軽くて柔らかい感覚、今左手で掴んでしまっている恐ろしく柔らかい感触、聞き覚えのある声。

 

段々眠気が覚めてきた。冷や汗をかいた俺は恐る恐る目を開ける。

 

「じ、迅…?い、いつまで触ってぇ……っ」

 

すぅーッ(やらかした時の謎呼吸)

 

起きない俺を起こそうとしてくれたのだろう。宵宮が俺の腹に馬乗りになって、顔を真っ赤にして目を見開いている。それもそのはず、俺の伸ばした左手は物の見事に彼女の胸を揉みしだいていた。

 

おお、すげぇ。目で見ると尚すげぇや(やらかした時ってなんか冷静になるよね)。

 

宵宮、2年の間に随分育ったんだなぁ(冷静)。あまりの柔らかさに指が沈み込んでいる。しかも丁度着物をはたげている側のお胸を触ってしまったみたいなので素肌の感触がダイレクトに伝わってきた。

 

「じ〜ん〜?」

 

ヤバい。あまりの異常事態に、頭が着いて来れずに謎に観察してしまった。宵宮の形のいい眉がぎゅんとつり上がり、それにビビって思わず左手に力が入ってしまう。

 

むにゅ。

 

「…んっ」

 

あっ、すぅーーッ(二度目)

 

シュバッと音がしそうな勢いで手を離し、謝ろうと宵宮の方を見ると、胸元を片手で隠して立ち上がり、もう片手を振りかぶる姿が見えた。

 

……全力で食らわせて頂きます(誠意)

 

 

「迅の………あほーーーッ!!」

 

 

頬に伝わる強烈な衝撃と共に俺は縁側を抜け、綺麗に庭まで飛翔した。

 

 

 

「誠にすみませんでした」

「べ、別にもう怒っとらんよ、うちもあんな起こし方したし…」

 

頬に強烈な平手打ちを受けてきりもみ回転で庭に墜落した俺は、すぐ様起き上がると地べたに手をつけ綺麗な土下座をかました。

 

お許しの言葉を頂き顔を上げる。朝から色々刺激が強く忘れていたが、1つ疑問を思い出した俺は、まだ若干赤い顔で髪の毛をクルクル弄っている宵宮に尋ねた。

 

「それはそうと、なんで宵宮がここにいるんだ?」

「え?おばあちゃんから聞いとらんかったの?今日神里に仕事に行くって昨日聞いて、それならうちが代わりに家事やりますって話になったんよ」

「聞いてねぇ…」

「あっはははっ、まあまあ、朝ごはん出来とるさかい、食べて落ち着こうや。ほら、顔洗ってき〜」

 

宵宮に背中を押されて寝室を出て言われた通り顔を洗う。

 

何気に宵宮を家に上げるのは初めてだな。彼女とは俺が神里に居たときからの付き合いで、おつかいで城下町に来ている時に出会った。その時から自分の屋敷での仕事が休みの時は偶に花火店に顔を出して一緒に遊んだりしていた。基本向こうであっていたので紺田村の自宅に上がる機会がなかったというわけ。

 

歯磨きもして居間に戻ると、既に食卓に宵宮お手製の朝ご飯が並んでいた。

 

「へぇ、宵宮ん所は玄米なんだ」

「せやで。ちょっと白米より硬いけど、栄養はたっぷりなんや」

 

メニューは玄米と漬物、魚の塩焼きに味噌汁。いただきますと声を上げて口にしてみると、うちのばあちゃんとは味付けが違うが、めちゃ美味かった。

 

「わ、美味い。宵宮いつの間に料理こんな上手くなったんだ?」

「お、ありがとうな。そりゃ毎日家のご飯作ってたら美味しくもなるで」

 

宵宮は自分の家で食べてきたらしく、対面に座ると笑顔で机に肘を立て手のひらに顎を乗せて俺を見ていた。

 

そうして朝ご飯を楽しんでいると。

 

「んにゃぁー」

 

ようやくきららが起きたらしい。つか、よく寝床であんな騒ぎがあったのに起きなかったよね。

 

きららはトコトコと歩いて寝室を出て、俺と、対面に座る宵宮を見て固まった。頭上に「!?」の吹き出しが見えそう。

 

「おっ、猫ちゃんも久しぶりやな〜!相変わらずかわいいわぁ」

 

そんなことは露知らず、宵宮はまだ固まっているきららを抱き上げて胸に抱える。

 

最初は硬直していたきららだが、撫でられている内に元に戻り、今ではねこまんまにがっついている。宵宮が作ったもので、こちらも味付けが違うが気に入ったようだ。食べる速度が普段より速い。

 

俺は食べ終わるとご馳走様。と一言いい、皿を洗う。宵宮が「うちも手伝うでー」と言ってきたが、流石に朝ご飯を作ってもらった上に起き抜けにあの無礼だ。これくらいはやらせてくれと断った。

 

食後は家の主な家事を宵宮と分担して行った。といっても何時ものことであまりやることが無く、すぐに暇になってしまう。現在、縁側で2人と1匹で茶を飲んでぬぼーっとしている。

 

「…いい天気やなぁ〜」

「ほんとそれ」

 

2人で並んで座り、目を細めてお茶を啜る。こうして暇な休日は珍しいな。だいたい綺良々かトーマに用事を頼まれるか、影さんから呼び出し食らうかだったから。こうしてぼけーっとしているのが久しく感じる。

 

「……」

「ん?どうした?」

 

宵宮が茶をひとくち飲んでほっと息を吐き、膝のきららを撫でている俺をじっと見つめてくる。

 

「いやぁ、迅、変わったなぁって思て」

「確かに前から付き合いがあった人によく言われたけど、そんなにか?」

「だって前は、兎にも角にも鍛錬だ!みたいな感じだったやん。平気でご飯も抜いてたし」

 

そうかな?あんまり自覚ないのよね。でも、確かに昔、なかなか上達しない剣の腕に焦りを感じていたことはあったな。一緒に修行していた時に痛感したが、神里の2人がそれはもうすんごかった。

 

綾人兄さんは所謂超感覚派。教えられたことを1度でマスターし、次の日にはその応用を普通に使ってくる。一方で、綾華は努力の天才。素振りをした分だけ、組手をした分だけコンスタントに上達していく。

 

それに比べて凡人の俺。一応今では元素の扱いだったら神様以外には負けん自信はあるのだが、その頃は神の目持ってなかったし、2人とどんどん引き離される実力にとても焦り散らかしていた。

 

当時、1人だけ血が繋がっていない俺は奉行の中では肩身が狭く、武力でその居場所を確保するしかなかった。その名残りがあったんだろうな、色々と蔑ろにして鍛錬に明け暮れていたのを覚えているけど、ぶっちゃけ稲妻を出た後も似たようなもんだった。あの黒歴史の後もだし、特に仙人との修行中。唯一の休息が仙人達の好物を作って食べさせている時のみ。それ以外はアホみたいな修行の連続で何度死にかけた事か。まぁ、そのお陰で今の強さまで鍛えられたから感謝しかないが。璃月行った時にお供え作って行こ。

 

「ま、今は結構心に余裕があるっていうか、気が楽なんだよな」

「ふーん。だからちょっと驚いたで。迅があの時間まで寝てるなんて前までなら考えられへんかったから。修行は今はしてないん?」

「いや2日に1回くらいのペースでしてるよ。あんまり追い込んでも今の仕事があるし」

 

それに毎週末に影さんとのデート(戦闘)があるし。そっちがすごく修行になるから現実の鍛錬は体の維持くらいしかしてないのが現状だ。

 

「…」

「あんま見るなて。そんなに変わった?」

「ぁ、いやその、前より大人っぽくなったて言うか、ちゃんと脳みそ使うようになったんやなぁって」

「どういう意味だこら」

 

まじまじと俺の顔を見てくる宵宮につっこむ。そこで、俺は前に宵宮にやられた事を思い出した。よし、ここでやり返したるか。

 

「宵宮は、今と昔、どっちが好き?」

「へぇっ!?」

 

宵宮の方を向いて自分の顔に指をさして悪戯気味に尋ねると、素っ頓狂な声を出して胡座をかいたまま飛び上がる。

 

「い、いきなり何を聞いてくるんや!」

「や、気になんじゃん。ほら、どっちだよ」

「……ぇぅ……」

 

顔を赤く染めた宵宮が俺と手に持つ湯呑みで視線を行き来させる。1度落ち着こうと茶を飲もうとしたが中身は空だった。おかわりをつごうとする前に急須を俺が捕まえ見せびらかしながら俺は答えを待った。

 

「…」

「…あー、悪い。答えにくかったか。変な事聞いてすまん」

 

沈黙が続き、気まずくなった俺は急須のお湯を継ぎ足そうときららをどかして座布団を立つ。そそくさと台所に行こうとする俺の着物の裾を宵宮が摘んだ。振り向くと、宵宮も立ち上がり顔が真っ赤だが、俺としっかり目を合わせて捲し立てた。

 

「い、今」

「へ?」

「今の方が好きや。その、前よりも落ち着いてて、大人っぽくて、でもちゃんと笑ってくれて、凄く強くて。雰囲気が冷たくなったかなって思いきや、気遣いや笑顔は変わってなくて」

「宵宮…」

 

宵宮の、裾を摘んでいた指が俺の手に移動して控えめに握ってくる。えっちょっと待って?俺の雰囲気とかがどっちがいいか聞いただけなんだけど?

 

「その、2年前も良かったけど、今の方が、かっこいいんよ?」

 

そう言い手を握りながら目を見てにっこりと笑ってくる宵宮。いやわかったから。あかん、聞いてるこっちが恥ずかしくなってきた。

 

「そういう迅の方こそ、どうなん?」

「どうって?」

「うちもこの2年で色々変わったんやで?前と今、どっちが好きや?」

 

こ、コイツ…仕返ししてきやがった!

 

流石にここで答えないのはフェアじゃないので不躾じゃない程度に宵宮を眺める。

 

まじまじと見るとわかるけど、ほんと美人だなコイツ。肩にかかるくらいの綺麗なクリーム色の髪を後ろで結っていて、同色のつり目のぱっちりとした瞳。可愛い寄りの笑顔が似合い過ぎる整った顔立ち。この2年でスタイルも良くなったことは先程身をもって味わっている(語彙力変態)。

 

「俺も、今の方が好きだな」

「む。なんでそんなに平気で言えるん?随分女の子に慣れとるんやね?」

「ソンナコトネェゾ」

「ふーん?昔の迅だったら間違いなく狼狽えてるとこやのに」

「うっさいわ」

 

ちなみにまだ手は握ったままである。ただこの程度の密着、距離感ぶっ壊れた綺良々に比べたらまだ耐えれるッ!(他の女と比べるな)

 

そんなふうにお互いの変わったところを言い合っていると、背中から何かがよじ登る感覚が。きららは俺の肩に登ると不機嫌そうな雰囲気で俺の顔を頭突きしてきた。

 

「あはは、猫ちゃんがヤキモチ焼いちゃったか。迅、そろそろいい時間やし、お昼ご飯にしよか」

 

そう言う宵宮との距離は先程よりも半歩ほど近くなっていた。

 

 

✩✩✩✩

 

 

ぐぬぬぬ。迅くんめぇ、宵宮さんにデレデレしちゃって!

 

私は心の中で地団駄を踏みながら、鼻歌を歌ってご機嫌で外の迅くんを眺める宵宮さんを死んだ目で見ていた。今、迅くんは昼ごはん用の火を起こす為に薪割りをしている。

 

昨日の晩は何故か寝付けなくて少し寝坊しちゃった。起きてお部屋を出たら仲良くご飯食べてる宵宮さんと迅くんがいて、ビックリしたどころじゃなかったよ!

 

そのまま2人並んでお茶を飲みながら仲良く会話し出すし…!せめてもの抵抗で迅くんの膝の上はキープしてたけど!

 

そしてその後の2人のやり取り!宵宮さん殆ど告白しちゃってるんですけど!?聞いてるこっちまでドキドキしちゃったよ!

 

今でも宵宮さんは外で斧を振り下ろす迅くんを熱がこもった目で見つめている。やばいよ…あれ完全に火がついちゃったやつだよ…!

 

迅くんが割った薪を1箇所にまとめようと家と切り株を行ったり来たりする度に宵宮さんの目線も彼を追いかける。私も普段やってる事を自分で見せられて、私の顔も違う意味で熱くなる。

 

あまりにもずっと見ているものだから、私は無意識の内にぽろっと聞いてしまっていた。

 

 

「ーーー宵宮さんも、迅くんの事、好きなの?」

 

 

「…えっ?」

「あっ」

 

…あれっ?もしかしてわたし、今口に出てたッ?

 

「い、今、猫ちゃんが喋らんかった?しかも、今の声…」

 

驚いた顔でこちらを振り向く宵宮さん。しかも、声でわたしってバレてるみたい。…うわぁ〜やっちゃったぁ……。

 

「……うん、わたし」

 

観念したわたしはすくっと立ち上がると妖力を解放。人の姿になる。

 

それを見た宵宮さんは、あまりの驚愕で目をこれ以上無いってくらいに見開いて、息を大きく吸いーーー

 

「えええ「わああ!ダメダメストップ!!」むぐっ」

 

外に聞こえる程の大声を出そうとした宵宮さんをわたしは慌てて口を塞いで止める。さすがに玄関も通らずに人のわたしが出現したら迅くんに怪しまれちゃう!

 

その意を汲んでくれたのか、宵宮さんは口を塞がれながらコクコクと頷いてわたしの手をタップした。手をゆっくりと離す。

 

「おっどろいたわ…。まさか猫ちゃんが綺良々ちゃんだとは…」

「隠しててごめんなさい…」

 

私が平謝りすると、宵宮さんは笑顔で「ええて」と許してくれる。

 

「なんか理由があったんやろ、ま、それもだいたいわかったけどな。…ここじゃ迅に聞こえるから、ちょっと、場所変えよか」

「うん」

 

わたし達は迅くんに見つからないように家をでて紺田村の北側、川の向こう辺りまで移動する。

 

「それでやけど、このことって他に知ってる人いるん?」

「この前おばあちゃんには話しただけで、他の人には言ってないよ。まさかこんなボロの出し方をするなんてぇ」

 

膝から崩れ落ちる私を見て、宵宮さんはくすくすと笑う。

 

「あっははっ、ドンマイやなぁ。それでや迅が好きか、やったっけ。うちが話す前に、綺良々ちゃんはどうなん?」

「大好き」

「おっ、おぉ…、結構ストレートにいうんやなぁ…。…うちも、好きや…」

 

顔を染めてますそっぽを向きながら吐露する宵宮さんは私から見ても凄く可愛い。私たちは2人並んで手頃な岩に腰を下ろすと、好きな人が一緒ってこともあって、仲良く話し始めた。

 

「せっかくだし、ガールズトークしよっ。宵宮さんはいつから好きなの?」

「確信したのは最近、迅が帰ってきてからやな。うち、元々周りに父ちゃんといい、破天荒な男が多くてな、多分その逆の落ち着いた雰囲気の人がタイプやったんだと思う」

 

なるほど、帰ってきてからの迅は凄く落ち着きがあって、雰囲気も大人っぽくなってて私も最初はやられてたっけ。

 

「そんで、正に帰ってきた後の迅が私のタイプやったんよ。でもうちの中では2年前の迅の印象が強くて、なんか、別人?って印象で。でも、話してみると内側は変わってなくて」

「わかるっ!」

 

私は大きく頷いた。

 

2年前の迅くんを軽く説明すると、どこか焦りみたいな感情が雰囲気から漏れてて、優しいんだけどちょっと頼りない、みたいな。私はそういうところも好きだったんだけど、今の迅くんは雰囲気に余裕があって、良く私たちを気遣ってくれて、なんかもうただのいい男ってかんじ。

 

ウンウンと頷いている私に嬉しくなったのか、宵宮さんも同調する。

 

「せやろ!そして、トドメのさっきのアレや。こっちはもう好きやってんのに、今と昔の俺、どっちが好き?とか反則すぎるやろ!…っていうか、それも綺良々ちゃんにバッチリ見られてもうたの恥ずいわぁ」

「あははは…、なんか、ごめんねぇ。あ、後、戦ってる時の迅くん、凄いカッコ良くない!?」

「わっっかるわ!!この前綾華ちゃんと戦ってる時とか、迅に夢中でほとんど話入ってこおへんかったもん!それにやでっ!うち、迅お姫様抱っこされてもうた!」

「えええ!宵宮さんもされたのぉ!?私だけかと思ってたのに!」

「はああ!?えっ、綺良々ちゃんもされたんかい!」

「えへへ〜、私、迅くんに城下町からお姫様抱っこで鳴神大社まで送って貰っちゃった!」

「ええなぁ〜!うちは綾華ちゃんが戦ってたからそこまで一緒に行くためにされただけで、ロマンチックなのもされてみたいわぁ」

 

やばい!楽しい!これがガールズトークっ!好きな人が一緒の人同士で喋るのってこんなに楽しいなんて!

 

その後もわたしは宵宮さんときゃいきゃいと迅くんについて話した。宵宮さんは私が出会う前の迅くんを、わたしは家での迅くんを、それぞれ語っては笑いあった。

 

「っと、そろそろ戻らんと怪しまれちゃうな、綺良々ちゃん、そろそろ戻ろか」

「うん!その、色々聞かせてくれてありがとうね、宵宮さん」

「うちも楽しかったで!それと、さんは付けなくてええよ。もっと砕けた呼び方してくれると、うちも嬉しいんや」

「…じゃあ、宵宮ちゃん、なんてどうかなっ?」

「おっ、ええな〜」

 

家に戻る直前で私は猫に戻り、宵宮ちゃんに抱き上げられる。

 

「お、おかえり。どこまで行ってたんだ?」

「うん、ちょっとそこの川までな。きららちゃんと仲良うなったわ」

「そりゃ良かったな。昼ごはんそろそろできるぞ」

「ありがとうな〜」

 

迅くんは宵宮ちゃんを座らせると、食卓に2枚のお皿を持ってきた。

両方のお皿には、炒められた赤いお米と、その上に卵…かな?卵焼きの楕円形バージョンみたいのがのっている。

 

「これは外国の料理なん?」

「いんや、こう見えて発祥は稲妻だぞ。オムライスって言うんだけど。あ、食べる前にちょっと待って」

 

そう言い迅くんは台所から包丁を持ってくると、ご飯の上の卵に縦に切り込みを入れた。

 

「…わぁ…!」「…にゃあ!」

 

思わず歓声を上げる宵宮ちゃんと私。切れ込みを入れられた卵はそのまま開いていき、トロトロの半熟の面がご飯を覆い隠した。す、凄く美味しそう…!

 

迅くんはそこにトマトのソースをかけて「ほい、完成。熱いから気ぃつけてな」と木でできた匙を差し出した。

 

ごくりと喉を鳴らした宵宮さんは、匙を受け取ると、いただきますとの声と共に、オムライスの端を崩してトマトソースで炒められたお米とトロトロの卵を一緒に口に入れた。うぅぅ…私も食べたいぃ!今までで、1番迅くんに人になれる事をバラしたいと思った瞬間だよ!

 

「…っぅ〜〜」

 

宵宮さんは、凄く美味しいのか、声にならない声を出して足をパタパタさせている。

 

「迅っ!これめっちゃうまいわっ!」

「そりゃよかった。朝ごはん作ってくれたお礼な。ほい、これオニオンスープ」

 

目を輝かせて絶賛する宵宮ちゃんにくすりと笑って返した迅くんは、更にみじん切りにされた玉ねぎがトロトロに溶けてるスープを出した。それを1口飲んでほっと息を吐く宵宮ちゃん。めっちゃ美味しそ〜!

 

「うわぁ美味しいわぁ…。迅、いつの間にこんな料理上手くなったん?」

「冒険者時代に依頼がなくて食いっぱぐれそうになった時に飲食店で働いてた時があったんだよ。そのスープはいつもオムライスを作る時に下地のチキンライスに使う玉ねぎが半玉余るから、セットで作ってるんだ」

 

迅くんはそう言って自分の分のオムライスを用意して1口食べ。お、美味っと呟いた。

 

そんな2人を見てる私は内心ヨダレが垂れそうになっている。猫の姿の時は基本朝晩の2食で持つから、お昼ご飯は要らないんだけど、見ててものすごく美味しそう…。今度絶対に作ってもらおう。

 

あああ、迅くん気づいてないのかなぁ!宵宮ちゃんの見る目がまたちょっと熱くなってるよ!?じっと見てる宵宮ちゃんに「ん?どした?」「ううん、なんでもないで?」じゃなーい!夫婦かっ、こらぁー!

 

「ようこんなに卵が半熟になるなぁ」

「ちょっと卵に牛乳を入れてるんだ。宵宮、確か火を通せば牛乳平気なんだったよな?」

「え?…そうやけど、うちが牛乳苦手なの知ってたん?」

「昔言ってたのを思い出しただけだよ。溶いた卵に少し牛乳を入れると焼いても固まりにくくなってふわふわに仕上がるんだ」

「お、覚えててくれてたんや…」

 

しれっと女の子の苦手な食べ物とか覚えてる辺りほんと迅くんだよね!ほら、またちょっと宵宮ちゃんときめいてるじゃん!

 

2人はその後も仲良く昼ごはんを食べて、そのまま2人でお皿を洗って。歯噛みをしながら見ているしかなかった私はとても歯がゆかった。

 

ホントにそろそろちゃんと迅くんに言おう。そう思った私だった。

 

 

その後も宵宮ちゃんが迅くんの家にお泊まりしたり(なんですと)、翌日みんなでお出かけしたりするんだけど……。

 

 

後編に続きますっ☆

 

 

 

 

 

 

 







・迅
モンドにいた頃鹿狩りで働いていた経験あり。得意料理は蛍と同じく鶏肉のスイートフラワー漬け焼き(作ってきた回数が違う)

・宵宮
ヒロインレース1歩抜きん出た元気金髪天真爛漫幼なじみ。
通常一段止めのエッヘンモーションめちゃかわいいよね。

・綺良々
ガチでもう色々バラそうかなと考え始めてる猫又。猫吸いの羞恥心?そんなん知るか私はオムライスが食べたいっ!!


後編は1週間以内に出すのでお楽しみに。
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