へい!おまたせしました。
璃月回といいつつ半分位稲妻という(すいませんでした)
1話 玉京台は璃月港の北側からしか登れない
ーー紫電。
「はっ」
「…シィッ!」
普段はしんと静まる空間に強烈な衝突音が迸った。俺は首を刈らんと迫り来る紫電の凶刃を霧切で受け止め、虚空から出現する雷の刃を首を捻って紙一重で躱す。俺はそのまま刃を合わせた霧切の峰に手を添えて薙刀ごと捻ると空いた胴体に直線軌道の後ろ回し蹴りを叩き込む。タイミングも踏み込みも会心の蹴りだと言えたが、戦っている相手ーー影さんは器用に薙刀を持った両手の間に蹴りを通すと、てこの原理で絡め取りにかかる。
このままだと脚が極められるので、俺はそれに逆らわず脚と一緒に転がり、地面に片手をついて霧切を影さんの軸足に振り、自由な方の足で顔を狙って、わざと首の動きで躱せそうな位置に蹴りを入れた。蹴りを首で避けられたら両足で挟み込んで逆に絡め倒そうとしたのだが、それを読まれて足狙いの霧切をスイッチバックで避けられ、蹴りは普通に片手でガードされたので、自由になった脚を外して後ろにバク転。着地と同時に脚に込めた雷元素を炸裂させて一気に空いた距離を詰め直す。
突進してくる俺に影さんは迎え撃たずにバックステップで距離を取りながら俺の斬撃を避ける。俺は影さんの右側に雷の楔を飛ばして回避行動を制限し、左側から斬り掛かる。それに対して、影さんは雷を纏わせた左手で飛んでくる楔をむんずと掴むと俺に投げ返した。
それを神里流流水で見極めていた俺は、帰ってきた楔を最小限の動きで躱し、踏み込んで霧切で袈裟斬り。だが、それを薙刀の柄で受けられて霧切が当たっているところを支点に影さんの全体重が掛けられ上から刃が迫ってくる。でもそれは今までの経験でそれも織り込み済み。俺は雷を纏った霧切を手放して薙刀の柄を掴んで体を寄せ、綺麗な一本背負いをかました。当然ただ投げられる訳もなく、影さんは投げられながら俺が掴んだ柄を鉄棒の要領でグルンと勢いをつけ、強烈な蹴りを叩き込んできた。背中に感じる重さがなくなった時点で察した俺は辛くも雷で強化した両腕のガードが間に合い、蹴りの衝撃を受けて後ろに後ずさる。普通の地盤より硬い一心浄土の石畳だから傷1つないが、これが普通の地面だったら俺の脚が刻んだ2本の線が残されただろう。ただ、後ろに下がったことで落とした霧切と距離が空いてしまった。
「ふふ、武器を失ってしまいましたね」
そう言い影さんはこちらに詰めてくる。だが、俺もただ無策で霧切を手放した訳では無い。
「ッ…電磁吸引」
俺は集中し、元素力を細くコントロールすると右手にぐるぐると巻くように雷元素を巻いて強く電圧を掛け、即席の強力な電磁力にした。元々同じ要領で元素を纏わせていた霧切がそれに反応して1人でに俺へ向かって一直線に飛んでくる。もちろんその軌道上には影さん。
「ほう!また新しい技を見せてくれましたね」
ちゃっかり俺から学んでいた元素視覚レーダーでそれを捉えた笑顔の影さんは後ろから飛んでくる霧切を左手でキャッチする。本当はそのまま俺のところに引きずられてくるところだが、神様フィジカルで抑え込むと自分の元素で無理やり霧切に付いた電磁力を引き剥がした。
「ふむふむ、なるほど。こういう感じです?」
「はぁ!?」
まさか今ので仕組みを解読したのか、影さんの薙刀に螺旋状の雷が巻きついた。直後、とてつもない引力を自分の右腕に感じて急いで解除するが時すでに遅く、俺は無様に影さんに向かってぶっ飛ぶ。このままいけば影さんにホームランされる未来しか見えない。
俺はもう一度深く集中すると、影さんにぶつかる寸前で雷元素を圧縮し、空中に足場を作るとそれを踏んで彼女の頭上に逆さまに跳躍した。反転する世界の中、右腕に雷を圧縮しておくのも忘れない。そして俺は驚く彼女にチャージした右手の掌底を叩き込んだ。
「ッセァァッ!!」
「ーーはい、そこまで」
そういい一応俺の渾身の一撃を左手で俺の手首を掴んでバシッと受け止めた影さん。軽いなぁおい。だが掌底の威力は本物なので、受け止めた影さんを中心に硬い石畳が大きく陥没した。
影さんは俺の手を話す放すとそのまま何事も無かったように陥没した穴から歩いて出る。
俺は着地して霧切を拾い上げると疲れを飛ばすために深呼吸をした。そんな俺に影さんは薙刀をしまうと少し拗ねた顔をする。
「なんですか、まだそんな技を隠していたなんて…ずるいですよっ」
「その今まで隠してた技を初見で真似した影さんにだけは言われたくないです」
俺はため息を吐く。くっそ、今日こそはと思って多分テイワットで俺くらいしか考えないだろう小技のオンパレードだったのだが、小細工は小細工。神様には通用しませんでした。そんな俺に影さんは興奮して詰め寄ってくる。
「迅さん、今の技は元素で電磁力を作り出し、引力と斥力を付与する…ということであっていますか?」
「正解です。まさか一発で真似されるとは…」
「私も似たような技を使いますからね。ただこちらの方が引力は強い様ですね。……ふふふっ、貴方とこうして鍛錬を始めてから発見が多くて楽しいですよ。そして先程、雷元素で足場を作りましたね。人間があの技を使っているのを初めて見ました。空気中にあの量の元素を圧縮するのは大変でしょう?」
「はい。正直1回が限界ですね。自分の身体ならまだしも、外に出して踏める程圧縮するには元素量がとてもじゃないけど足らないです」
前に影さんが雷元素で足場を作って宙を歩いていたのを見て再現したのだが、あんなの神様にしかできないわ。
専門的な話になるけど、元素の圧縮って言う技術は本来は風と岩元素のもの。風を圧縮すると吸引効果を付与でき、岩を圧縮すると重さが増して威力も上がる。ちなみに他の元素でこれをやると炎は即爆発、水と草はそもそも圧縮が不可能で氷も即破裂する。そして雷は実体が無い元素ながら、極限にまで圧縮すれば実体を得ることが出来る。夢想の一太刀とかが正にそれだな。ちなみに元素で物を形成するのは割と誰でも出来る技術で、俺が飛ばしていた楔とか、タルタリヤの双剣とかが該当する。その中でもタルタルは水に鋭さを付与したまま、あの時間維持できる時点で流石執行官って感じだ。
「…ふぅ、この時間が至福です…」
「影さん、ほんとに団子牛乳好きですね」
「ええ、旅人さんが作ってくれる他の国の甘味もいいですが、やはりこれが一番です」
鍛錬というか模擬戦が終わり休憩もした後。
俺と影さんは稲妻城の外れの人気のないベンチでいつものように雑談をしていた。
もう影さんと会ってから3ヶ月。週にいっぺんやるこの鍛錬のせいで、稲妻に帰ってきた時より明らかに実力が上がってしまった。配達員なのに。なんだかなぁ、とため息をついていると、影さんに外国に行くことを伝えてないことを思い出す。
「あ、影さん。すみません、伝え忘れてた事がありまして…」
「はい?なんでしょうか」
そういい団子牛乳を飲みながら首をこてんと傾げる影さん。多分それを稲妻の行事とかでやったら民衆沸くんじゃないかと思うくらい可愛い。
「俺、今週から仕事でひと月ほど国を出ることになりまして…、なのでここに来るのは今日が最後になります」
「えっ」
「…っぶねぇ!」
影さんが愕然とした顔になり団子牛乳の瓶を取り落としたところを間一髪スライディングキャッチする。
「そ、…そうですか…。仕事ならば仕方がありませんね」
「すみません…伝えるのが遅れて…」
頭を下げた俺を止めた影さんは「別にひと月くらいなんてことはありません」と座り直したが、心無しかしゅんとしている。
「あー、わかりました。報告が遅れたお詫びに帰ってきたら蛍も連れてスイーツ食べ放題やりますよ」
「ほう!それは楽しみですね!」
一瞬で元気を取り戻し、引き続き団子牛乳を飲み出す影さん。そんな彼女に練乳と珈琲の瓶を見せると笑顔で手にした瓶を差し出す。
「ふう、ひと月とはいえ、この珈琲入りの団子牛乳が飲めなくなるとは…」
「自分で作ってみてはいかがですか?豆は譲りますし、練乳も簡単に作れますよって影さん?」
「い、いやぁ〜…」
ん?なんか影さんの目がめちゃくちゃ泳ぎ出した。
「……メなんです…」
「え?」
「わ、私…料理だけはどうしても…ダメなんです」
神様としては恥ずかしいのか瓶を膝の上で握り締め、頬を染めて俯き、モジモジしながらか細い声を出す。ほんと一々かわいいなこの人。
「珈琲を淹れるのはお茶と同じ要領で出来たのですが…前に一度練乳を作ろうとしてみた事があるんです…。ですが何度やっても焦がしてしまって…、最終的には神子に止められてしまいました。練乳でなくとも砂糖を使えば甘さは出ますが、私にはあの、練乳の甘さでなければダメなんですっ」
「そ、それなら仕方がないですね、後で練乳と珈琲豆を配達しておきますよ」
「ありがとうございますっ」
そう言って満面の笑顔を見せる影さん。普段から綺良々の(理性)デストロイスマイルに慣れていてよかった。じゃなかったら思わず求婚して斬られてたまである。猫神様に感謝だ。
そんな事があった週の末。
狛荷屋の国際配達の契約を結びに璃月とモンドにいく日の当日を迎えた俺と綺良々は、荷物を持って離島の港に来ていた。ちなみに蛍もそろそろ次の国へ旅立つと言うので、ワープで先に璃月に向かった。俺たちが船で行くのは今後人員を稲妻と外国でやり取りする事に対する試験的なもので海域を調べる依頼も受けたと、目の前で腕を組む女船長から後に聞いた。
「よぉ!久しいな、迅」
「半年ぶりでござるな」
「北斗さんも万葉も、久しぶりだな。今日はよろしく頼むよ」
今回俺らの送り迎えを申し出てくれた南十字船隊の頭領、北斗とその弟分楓原万葉に片手を上げて挨拶する。北斗と握手すると、彼女はニヤリと笑った。
「アンタ、また腕を上げたな?配達員になったってのに、殊勝なことだ」
「半ば不本意だけどな」
「ふふ、そなたは会う度に逞しくなっていっているでござるな。この航海で良い詩が書けそうでござる」
「程々にしてくれよ。あ、こっちは俺と同行する…、いや、俺が同行するのか。猫又の綺良々だ」
「はじめましてっ!今回はよろしくお願いします!」
そう言い綺麗な最敬礼をかます綺良々。2人は快く迎えてくれて早速船に乗り込もうとする。
「迅!」
名前を呼ばれて振り返ると、狛荷屋の社長に宵宮と神里兄妹にトーマ、それにばあちゃんも見送りに来てくれていた。社長から今回の旅費と契約書などの必要な物を受け取って、見送りにみんなと話す。
「見送りに来てくれたのか、ありがとな」
「ひと月とはいえ、会えなくなるのですから当然ですよ。気をつけて」
「迅、気をつけて行っといで。綺良々ちゃんも」
「うん!ありがとうおばあちゃん」
「ああ、ありがとう。兄さん。綾華も宵宮も、向こうに着いたら手紙を寄越すよ」
「はい。お待ちしております」
「お土産楽しみにしてるで!」
「火薬でよかったっけ?」
「だからなんでや!」
そんなやり取りに周りが笑う。
笑っていたトーマに綾人が話しかけた。
「トーマ。本当について行かなくてもいいのですか?故郷に戻るチャンスなのですよ?」
「俺のことは気にしなくてもいいんですよ若。故郷が恋しくないと言えば嘘になるけど、俺の帰る場所は神里だけなんですから」
「兄さん、安心してくれ。この強情なヤツ、今度引きずってでも配達に連れていくから」
「ハハハッ、勘弁してくれ」
話もそこそこに、そろそろ出発するかとなった時、宵宮が船の上から顔を出す綺良々に声を掛けた。
「綺良々ちゃーん、あの事、蛍ちゃんに言っといてやー!」
「うーん!りょうかーい!」
ん?何の話だろ。ま、この前のお泊まり会でなんか約束でもしたのかな。
「よし!それじゃあ、璃月に向けて、出航だぁ!!」
北斗の掛け声で大きな船「死兆星号」の側面に装備されているオールが勢いよく動き出す。
俺たちは港のみんなに大きく手を振った。
「それじゃ、ちょっと行ってくるー!」
「いってきまーす!」
「綺良々ちゃん!色々と!頼んだでー!!」
「全ては綺良々さんにかかっていますっ!よろしくお願いしますねー!」
「ヒィッ」
笑顔の宵宮と綾華に見送られた綺良々は小さく悲鳴を上げた。今怖がるとこあったかな?
「ついたー!!わぁ…!ここが璃月かぁ…」
「まぁ、半年じゃ変わりないか」
稲妻を出た死兆星号は1日の航海を得て璃月港に到着した。俺達は乗組員達に手を振りながら船を降りる。
船に乗っている間、綺良々のテンションの高さは凄かった(かわいい)。生まれて初めて国を出るので気持ちはわかるが、いろいろな発見がある度に自室の俺のとこまで来て瞳キラッキラで「あのねあのね!」って袖引っ張ってくるの心臓に悪いのでやめて頂きたい。
それに綺良々の南十字船隊の野郎共の人気も凄かった。団結力が強い船隊らしく食事はみんなで摂るのだが、猫又という珍しさとあの容姿のせいで色んな人から質問攻めにされ、逃げだした彼女は俺の背中の裏に隠れていた。
んな事もあって野郎共の殆どは俺ではなく綺良々に手を振っている。俺が綺良々の前に割り込んで手を振ってやると揃ってそっぽを向きやがったので雷元素のミニ楔で奴らのおデコをスナイプしてやると揃ってひっくり返った。
「それじゃあ、一月後また来るからな」
「ああ。ありがとうな」
「綺良々殿も、また会おうでござる」
「うん!またねー!乗せてくれてありがとう!」
俺と綺良々は南十字達と港で別れ、階段を登る。登りきったところで1人の女性が俺達を待っていた。綺麗な青色の長い髪に、羊の様な双角。月海亭の秘書、甘雨さんだ。
「お待ちしておりました。稲妻配達会社、狛荷屋の方々ですか?私は璃月七星の秘書の者です」
「わ、すっごくキレイなひと…」
ぽそりと呟いた綺良々の言葉が耳に入ったのか、キリッとしていた顔が紅く染まる。
「き、綺麗だなんて…あ、ありがとうございます…。それと、お久しぶりですね。迅」
「エッ」
「はい、お久しぶりですね。甘雨さん」
「もうっ、敬語は要りませんと言ったではありませんか」
「いえいえ、長年璃月を守ってきた人を呼び捨てなんて出来ませんよ」
「むむむ……、はぁ、まあいいですけど…。コホンっ、お話が脱線しましたね。凝光様がお待ちですので、ご案内します」
そういって歩きだした甘雨さんの後に付こうと思ったのだが、綺良々に着物の裾を引っ張られて振り返る。
「ん?どうした?」
「迅くん。今の人とはどういう関係?」
「えっ」
綺良々はジト目でぐいっと顔を近づける。顔に早速知り合いの女来たけどどういうこと?と書いてあった。
「えっと…、甘雨さんは俺が七星専属の冒険者やってた時にちょっと話すようになっただけです」
「……ふーん。ならいいけど」
さすがに本人に許可も取ってないのに種族をばらすのはアレなので伏せて答える。本当は仙人に弟子入りしていた時に知り合った。あの見た目で相当長生きなので間違ってもタメで話せないし、歳とかそこら辺の事を口にすると多分凍らされる。
綺良々を見ると、メモ帳を取り出してなんかメモってる。何してるんだろ?
「そちらの方も狛荷屋の配達員の方ですか?失礼ですが、その尻尾と足はもしかして妖怪の方でしょうか?」
「は、はい!狛荷屋配達員、猫又の綺良々と申します。貴方が甘雨さんでしたか。鳴神大社宮司、八重神子様からお話は伺ってます」
「神子からですか…!」
へぇ〜、甘雨さんと八重宮司って知り合いなのか。2人は八重宮司の事を仲良く話し始める。誰とでも一瞬で仲良くなる綺良々のコミュ力やば。
そんな彼女達を尻目に璃月港の南側の商店街を歩く。璃月港の南側『チ虎岩』と言われる区画は大衆向けの店や住居が多く、いつも賑わっている場所ではあるのだが、それにしても人通りが多い。色んな荷物を持った人が璃月港西側の出口の橋を渡っているのを見て、ふと思った事を甘雨さんに質問した。
「なんか前より街が賑やかですけど、なにか催しでもあるんですか?」
「えぇ、今群玉閣を再建中なんです。本体はほとんど完成していて、あとは浮石を取り付ければ建設完了となります。旅人さんも協力してくれているんですよ」
そう言い、甘雨さんが南西の方角を指さした方を見てみると遠くに大きな建築中の建物があった。あの大きさだと俺が帰ってから少しして作り始めたらしい。
綺良々は初めての外国で物珍しいのか、キラキラした目で周りをキョロキョロと見回している。
「凝光様は月海亭でお待ちです。少し遠回りになりますがご了承くださいね」
「全然大丈夫ですっ!わたし、璃月港をもっと見て回りたいので」
「ふふっ、それならよかったです」
俺達はチ虎岩から橋を渡って璃月港の北側へ行き、階段を登って玉京台に行く。月海亭の秘書ということで有名人の甘雨、めちゃかわの綺良々に数ヶ月とはいえ璃月七星専属の冒険者やってた俺も少し名が通っているので周りの人達の視線を一心に集めた。特にみんな綺良々の揺れる2つの尻尾に興味深々で、恥ずかしくなった綺良々はぽんっと尻尾を消した(消せるんかい)ただ尻尾がないとちょっとバランス感覚が変わる様で、一度俺にもたれかかって来た。本人は「ごごごめん!!」と赤くなり、俺は癒され、周りの殺気は倍増した。
玉京台は璃月の上流階級が住むところで天衝山側の大きな建物が璃月七星が議論の場に使う月海亭だ。
甘雨に促され中に入ると、白髪を蝶々状にまとめた長髪に赤眼の美女が俺たちを出迎えた。
「さて、璃月港にようこそ。私は璃月七星『天権』凝光よ。初めまして……じゃない人も来ているようね?」
「はじめましてお初にお目にかかります狛荷屋の篠田と言います今回は初めての外国で緊張しており(早口)」
「初対面の振りしたって無駄よ。私の部下君?」
「元をつけるのを忘れてますよ凝光さん」
ちっ、バレたか(無駄な抵抗)呆れた目をして俺を見た凝光さんは続いて綺良々に挨拶をした。その後狛荷屋の社長から預かっている契約書を渡し、支店の場所や、求人票の欄内を話し合う。
一段落したところで、普段七星が座るという円卓に恐れ多くも座った俺は、甘雨さんが出したお茶を1口飲んだ凝光さんにそういえばと質問をした。
「契約が終わった手前今更ですけど、なんで俺を呼んだんですか?綺良々はまだしも、まだ俺入社して半年ですよ?」
「ええ、今からそのことについて話そうと思っていたところよ。……来たようね」
俺と綺良々が首を傾げていると、月海亭の扉が開き、コツコツと音を立てて1人の女性が入ってきた。紫色の髪を変わった結い方のツインテールにまとめて、いかにも仕事が出来るキャリアウーマンといった様相のその女性は俺の顔を見るなり顔を綻ばせる。
「迅!もう来てたのね!」
「久しぶり、刻晴」
軽く手を上げて挨拶すると、刻晴は足を止めずにこちらにやって来る。
「久しぶりねっ!今日到着するのと聞いていたけど、思ったより来るのが早かったわね」
「ああ、死兆星号の奴らが張り切っちゃってな。紹介するよ。こちらが俺の先輩、綺良々だ」
「はじめまして!」
「刻晴よ。よろしくね」
刻晴と綺良々は握手をしていると、凝光さんが「じゃあ、本題に入るわね」と行ったので頷いた刻晴は俺の隣に座った。ん?あなた七星なんだから凝光さんの隣なんじゃないの?と気にする間もなく向かいの凝光さんが真剣な顔で口を開く。
「それで迅、貴方を呼んだのは、再びこの璃月港に厄災が訪れることがわかったからなの」
「えぇっ!厄災っ?」
「……」
厄災。というと、また魔神関連だろう。オセルは禁忌滅却の札を使わない限りは出てこないし、それが出来るファデュイも復活させるメリットが特にない。…いや、魔神はまだいたな。確か…。
「もしかして、『余威』ですか?」
「さすがね。その通りよ。だから厄災が訪れると言うよりは、お招きするという言い方の方が正しいかしら?」
「あの、その余威というのは?」
手を上げて質問した綺良々に刻晴が答える。
「渦の余威 跋掣。前に璃月港を渦の魔神オセルが襲った事は知っているでしょう?跋掣はオセルの追従者よ。夫を封印した群玉閣に恨みを持っている」
「そして、群玉閣再建に余威の問題は避けて通れないわ。迅、北斗に海域の調査を頼んでいたはずだけれど、彼女は何か言っていたかしら?」
「はい。海が何時もより明らかに静かだ。魚どころか生物が一切居ない。まるでなにかに恐れて逃げ出したかのようだ。と」
「やはりね……」
予想していたらしく、こめかみに手を当ててため息を吐いた凝光さんは俺たちに向き直る。
「群玉閣が再建完了すれば、跋掣は必ず現れる。そして、こちらに恨みを持っている分、オセルよりも厳しい戦いになりそうだわ。……それに「仙人たちの力を借りる訳には行かない」…っ」
前回のオセル戦は岩王帝君の死亡という騒ぎの中起こった魔神戦。というのもあって仙人と協力して戦うことが出来た。しかし、今の璃月は人間が統括する国だ。仙人たちに神がいなくとも厄災を跳ね除けるところを見せなければならない。
「だから、この場で貴方たちに2つ依頼したいことがあるわ。1つ目はこの事を仙人達に知らせ無いこと。恐らく感づかれてはいるでしょうが、ここで明確に仙人に声を掛けることは言外に協力を求めていると解釈されかねないわ。そして、2つ目。どうか、余威と一緒に戦ってくれないかしら?」
「私からもお願いするわ。迅がいれば千岩軍達の士気も上がるし、多大な戦力になるの」
「私からもお願い致します。一緒に戦っては頂けませんか…?」
そう言った3人はなんと、頭を下げた。
「「ちょっ!?」」
「い、いきなり心臓に悪いことするなって!璃月の頂点がそんな簡単に頭下げんな」
俺達は慌てて駆け寄ると頭を上げさせる。
「わ、わかりました。俺もこの街にはお世話になったんで、できる限り協力させて貰います」
「私も協力するよっ!」
俺がそう言うと、隣の綺良々もふんすとやる気になっている。綺良々は草元素のシールドを貼れるので、兵士たちには重宝されそうだ。凝光さんは俺たちに微笑んだ。
「ありがとう。助かるわ」
「気にしないでください。それで、余威戦はいつ頃になりそうですか?」
「群玉閣の建設が完了し、昇空儀式の時に現れると思われるわ。今からだと15日ってところかしら」
「なら、それまでにモンドに行って契約を結んできた方が良さそうですね。それ以外になにか手伝うことは?」
「今のところはないわ。そこら辺の事は私よりも刻晴の方が詳しいから、彼女に聞いてちょうだい」
横にいる刻晴にも聞いてみるが後は帰終機の準備位で今やる事は特にないらしい。建設の方も蛍が関わっているとの事なので、俺達はモンドに行ってしまった方が良さそうだ。
凝光さんはパンっと手を叩いて場を締めた。
「話は決まりね。15日後、迅は群玉閣に、綺良々さんはここ、月海亭に来てちょうだい」
「「わかりました」」
「よろしくお願いするわ」
「では、私たちはここで。まだ後でお会いしましょう」
そう言い、甘雨を連れ凝光さんは月海亭を出て行った。時間を見ると昼を過ぎたところ。璃月港で昼ごはんを食べてから出発して、望舒旅館に着く頃にはいい時間になりそうだ。
その事を伝えると、綺良々はごはん!りょかん!と目を輝かせ、わあああと外に出て言った。さっきまで真面目な話をしてた分元気のなり方が凄い。俺は苦笑して、綺良々を追おうと1歩歩いたところで。
「じ、迅」
「ん?刻晴?」
振り向くと刻晴が頬を染めて俺の裾を摘んでいた。刻晴はあの、その…と普段堂々としている彼女が珍しくもごついている。
「ひ、久しぶりに会えたんだし、余威戦が終わったらでいいの。一緒にご飯でも食べに行かないかしら…?」
「それくらいなら全然いいぞ。つか、前はもっと普通に誘ってきただろ」
「う、うるさいわね!久しぶりでちょっと緊張したのよ…」
「相変わらず仕事相手以外にはコミュ障なのか…」
俺が苦笑して言うと、バツが悪そうに目を逸らす刻晴。
刻晴と絡むようになったのは、オセル戦のあとくらい。七星専属の依頼を受けるようになった俺に玉衝として依頼してきた。その後は同じ雷元素の片手剣使いともあって意気投合し、色々技を教えあったことがある。ちなみに雷元素の楔は刻晴から教えて貰い、刻晴のワープじみた高速移動は俺が教えた電磁吸引を使っている。
刻晴と約束を取り付けた俺は彼女と別れ、月海亭を出ると外で綺良々が待っていた。目が合った後、また刻晴との関係を詳しく聞かれ、約束以外のことを大人しく喋るとまたメモしている。マジでそれなんのメモなん。
「とりあえずご飯食べるか。何がいい?」
「迅くんのおすすめ!」
「はいよ」
ひとまずご飯を食べたらモンドを目指そう。俺は腹ごしらえする為に綺良々を連れてチ虎岩に戻って行った。
ムービーで見て、跋掣の起こした津波の高さがエグ過ぎて鳥肌立った作者です。
アレ止めてなかったら群玉閣ごと璃月港終わりだったのでは………
・甘雨
言わずと知れた半仙の秘書。特技は徹夜(違う)。
迅の事は仙人にしごかれながらも成長した弟みたいな感じ。長生きすぎて恋愛感情が分からなくなってきている。
・凝光
なんでこの人星4なんランキング1位。
最初の頃はアタッカーとしてとてもお世話になりました。
・刻晴
個人的すり抜けたらガッツポーズするキャラ。
迅とは仲が良く、前まではよく一緒に食事とか言っていた。根っこはコミュ障。