「……………」
やばい。これはやばい。
右を向くと俺の肩に顔を埋めて腕に割とあるお胸を押し当てて寝ている綺良々。格好は旅館の時の目に毒なキャストオフ版で、インナーがまくり上がってとんでもない事になっている。
左を向くと、同じく俺の腕を抱き込み、豊満なお胸で当てる所か挟み込んですやすや寝ているエウルア。ブラトップとか言った半分下着と美脚を惜しまんばかりに出した白いホットパンツ姿で、肩紐がずり落ちて色々零れそうになっていた。
何がいちばん恐ろしいって昨日の記憶があんまりないこと。自分が前まで使ってた部屋に何故かエウルアが住んでいて、妥協して中に入ったことまでは覚えているが、それからの記憶が曖昧だ。チラリと下を見ると寝る前と変わっていない俺の服装。
多分俺は酒が回って眠くなって、そのまま寝たんだろう。個人的に酒には強い方で、仙力で自力で酔いも飛ばすことは出来るのだが、久しぶりの飲酒で、昨日はかなり飲まされたのでさすがにダウンしたらしい。
ただ、何故こいつらが同じベットで寝てるのかだけが分からないが。隣にベット丸々1つ空いてんじゃん。
ひとまずこの天ご……魔境から脱出しないとな。昨日も危なかったが今朝のこれはホントにまずい。一応俺にも普通に欲はあるのだ。このままだと俺の理性が元素爆発しかねん。
起きるためにはまず腕を外さないと。2人を叩き起すのが手っ取り早いが、時刻はまだ早朝。この寝付きだと寝たのは夜遅そうだ。綺良々は慣れない旅の疲れもあるだろうし、まだ寝かせてやりたい。
俺は2人が起きない程度に腕を抜こうと試行錯誤してみる。
むにむに、もにゅもにゅ
「…んぅっ」
「…あっ…」
やばいやばいやばいやばい!!
色々動かしてたら2人からヤバめの声が聞こえて、俺は色々固まった。即座に無駄に仙力を使ってまで気を沈める。
せめて片腕が使えればいいのだが、今は両腕が
……しょうがない、エウルアの方を起こすか。俺はエウルアの耳を口を寄せて、綺良々が起きないように囁く。
「……エウルア。エウルア、起きてくれ」
「…んぁっ…んんっ」
だから何故喘ぐッッッ!?
もうコレでまだ引き下がったら一生起きれなそうなので、構わず囁き続ける。
「エウルアっ頼むマジで起きてくれ……!」
「……んん……じんがキスしてくれたら起きる…」
「お前もう起きてるだろ」
「あら、バレちゃったわ」
ぱちりと目を開いたエウルアは、顔を染めて言う。
「あのね、安易に女の子の耳元で囁くのはやめなさい。飛び上がりそうになったわ」
「それはごめんって。その、起きたいから離して欲しいんだけど」
「いやよ」
「なんで?」(食い気味)
「貴方には数え切れないほどの恨みがあるわ。少しは精算に付き合いなさい」
そう言ったエウルアは俺の上に乗るとそのまま抱きついてきた。いや待て待て待てぇ!以前のエウルアなら考えられなかった行動に俺の頭も真っ白になる。え?こいつこんなことする奴だったっけ。俺の胸に顔を埋めたエウルアは少しだけ震えた声で言った。
「その、ずっと貴方に言いたかった。…あの時、私の為に皆に頼み込んでくれてありがとう。私の為に割に合わない依頼を沢山こなして、いっぱい怪我をして、それを何も知らない私に小言を言われても何も言わないでくれてありがとうっ。私にっ、モンドを守りたいって思わせてくれて…ほんとうにありがとうねっ、……お礼を言うのにこんなに遅れて、ごめんなさい」
震えた声で言ってくるエウルアに俺は微笑むと、右手で彼女の頭を撫でた。
「言ったろ。恩返しだって。俺はあの時お前に煙緋を紹介してくれなかったら、仙人と修行なんて、夢のまた夢だった。俺が過去に犯した罪からも目を逸らしたままだった。そうさせてくれたのは、『罪人の末裔』の身分を背負って生きても弱音を吐かなかったエウルアのおかげだよ。ただ、俺は救われたのに、エウルアはそのままとかバランス悪いだろ?だからそうしただけ」
それに、自分の出生を知る事も、俺に眠っていた力に気付く事も、使いこなせるようになる事も無かったしな。俺がそう言うと、エウルアは顔を上げる。その顔に浮かんでいたのは憑き物が晴れたような、屈託のない笑顔だった。俺たちはそのまま見つめあっていると……。
「あの、そろそろいいですか?」
横から呆れたような、怒っているような声が響く。揃って右を向くと、俺たちの会話で起きたらしい綺良々が、横向きで寝っ転がったまま頬杖を着いて半目でこちらを見ていた。2本の尻尾が感情を表すようにベットをバシバシ叩いている。エウルアは俺から離れると思いきや手を握って起こしてくる。まだ上に乗ったままなので、座ったまま向かい合う形。
「…だめよ。もうちょっと寝てなさい」
「はぁ〜?」
そんなエウルアに噛み付く綺良々。なんか昨日よりも凄い仲良くなってない?昨日はギスギスしてたのが、今日はじゃれ合いみたいになってる。
俺は上のエウルアをどかすとベットから降りた。んんーっと伸びをする。
「ひとまずシャワー浴びてもいいか?昨日浴びずに寝ちゃったから」
「「!!」」
「えっなになに怖い」
シャワー浴びる宣言をした途端に顔を強張らせて立ち上がった2人にビビる俺。
「い、いやぁ?なんでもないよっ?ほら、行ってきて!ね、エウルアちゃんっ」
「え、ええ。棚のカゴに洗濯物は入れて頂戴」
「お、おう」
首を傾げて俺が風呂場に行こうとすると、なんか2人でコソコソやってる。…怪しい。
俺は風呂場に入ると、シャワーのノズルを全開にする。
それからしばらくすると、脱衣所の扉にそろりと隠された足音が響く。その後扉が音もなく開き、綺良々とエウルアが顔を出して。
ーーーシャワーの音だけ出して服も脱がずに腕を組んで仁王立ちしていた俺と、バッチリ目が合った。
「………」
「「……………」」
俺に睨まれた2人は顔を見合わせ、んんっと咳払いする。
「ちょっと、シャワー出しっぱなしにしないでくれる?もったいないわ」
「そうだよ?お水は大切にしなきゃ」
「おいコラ待てや」
何食わぬ顔で出て行こうとするエウルアの腕と綺良々の首根っこを掴む。
「人の風呂覗こうとしてそれはちょっとないんじゃない?つーかなんで?」
「な、何を勘違いしているの?洗濯物を回収しに来ただけよ」
「別に俺が出た後でも良いだろうが」
「い、いやぁ、洗濯物は、はや↑く洗わない⤵といけないじゃん?だからわたし達がしょ〜がなく…」
「綺良々はもうしゃべらないでっ。嘘がバレるでしょ」
「もう嘘って言ってるやん」
綺良々の変なイントネーションとエウルアの反応でウソとわかった俺が更に詰めていくと(ちゃんとシャワーは止めた)、開き直ったエウルアが腕を組んで胸を張った。漫画だったらバーンと集中線が出る勢いだ。
「別にやましいことはないわ。貴方の身体が見たいだけよ!」
「お前は何を言っているんだ」
男の身体見て何が楽しいんだコイツら。俺が1歩後ずさると綺良々もこくこく頷く。
「ほ、ほら、迅くんの身体って修行の傷跡が残ってるって前聞いたから、ちょっと見てみたくて……」
「えぇー……、あんまり見て気持ちいいものじゃないぞ?」
「良いから見せなさい」
「ちょっ、おい脱がしてくんな!」
朝っぱらから女2人と脱衣所でもみ合う俺ら。なにやってんのマジで。
「はぁ…、わかったよ…」
断り続けても中々脱衣所から出て行ってくれなかったので根負けして仕方なく見せることに。だって断ったら風呂に突撃してきそうだったし。俺、最近根負けしてばっかじゃね?
今来てる上はインナーだけなので、ぐいっと脱ぐといつも隠してるせいで男にしては白めの肌が現わになった。幼い頃から身体を鍛え続けてないと仙力に耐えられなかったし、仙人との修行もあって肉体はかなり引き締まって見えると思う。
改めて見ると傷跡の数すごいな俺。胴体には火傷の後が多いんだけど、特に腕が切り傷にまみれている。いっぱい捌く練習したからなぁ。顔に傷跡が残ってないのが奇跡だわ。
そういえばさっきから静かだ。俺は目線を自分の体から前に移す。
「………」
「…………」
「なんか言えよ」
2人は俺の身体を穴が開きそうな程見詰めてみた。2人とも顔が真っ赤だ。俺が半目で突っ込むと、わたわたと我に帰り慌て出す。
「……ち、ちゃんと鍛えてるのね」
「そりゃな。………綺良々?」
「………………ゴクリ」
「おい」
「に"ゃっ!?」
いつまでどこ見とんねん。
人の身体を見て喉鳴らしおった猫又に雷付きデコピンを打ち込むと、バチコンッと痛そうな音と共にようやく我に戻る綺良々。そのまま俺にお辞儀をする。
「え、ええと、ご馳走様でした…」
「料理以外でそれを聞くとは思わなかった。…ほら2人とも一旦出てけって。シャワー浴びるから」
「いやよ」
「なんで?」(食い気味)
「まだ洗濯物を回収出来てないわ。だからここで脱いで頂戴」
「舐めんな」
お前再会してから変わりすぎだろ。何があったんだよマジで。
☆☆☆☆
「ちょっとちょっと!なに言ってるの!?」
「き、綺良々…どうしたらいいのかしら…迅の前に出ると変な事ばかり喋ってしまうわ…」
「あはは、気持ちはわかるよ。わたしも再会したときはそんな感じだったし」
「ううう……変な女って思われたかしら…喋ろうとすると本心が先に口から出ちゃうわ」
「本心がアレなんだね…」
お風呂で迅くんのすんばらしい肉体を拝んだ私たちは迅くんに脱衣所から追い出され、寝室に戻って寝転がっていた。迅くんの身体、綺麗だったなぁ(唾を飲み込む音)見たのは2度目なんだけど、なんか均整とれてて無駄な筋肉がついてない感じがなんか……えっちです。
エウルアちゃんは、戻ってくるなりベットに飛び込んで枕に顔を埋めた。どうやらまだ迅くんとの距離感を測りかねてるみたい。今朝のこともあったしね!あと、ちゃっかり迅くんの匂い堪能してるのバレてるからね!
今朝の迅くんとエウルアちゃんの会話寝たフリしてこっそり聞いてたんだ。元々迅くんもエウルアちゃんに恩を感じてたって言ってたけど、今の迅くんの元を作ったのはエウルアちゃんだったんだね。そのことに感謝すると同時にいいなぁと思ってしまう。
昨日は『好きだから好き』なんて言ったけど、実際のところ、わたしは迅くんのどこが好きなんだろ。1つ1つ考えてみる。
まずは……顔?迅くんのお顔は、多分誰に見せても整ってると思う。髪の色は黒に近い青色。紺色…というよりは闇色の方が合う。前髪は目にかからないくらいでその奥からキリッとした眉毛と綺麗な空色の瞳をした目が覗く感じ。黙ってるとクールっぽい顔立ちで冷ためな印象なんだけど笑うと可愛いのがわたし達を殺しにかかってくる。あれは反則っ!好き。
あとは……身体?……いやちょっと流石に変態かな?でもあの引き締まった体を嫌いな女の子は居ないと思う。細マッチョ最高!好き。
見た目で言うと服も好きなんだよね。帰ってきた時は外国の服を着ていてあれはあれで好きだったんだけど、城下町で買った着物が似合いすぎてる。柄がいくつか種類が合って、1つがわたしとお揃い(自意識過剰)の空色と白の配色のやつと、今来てる紺色と金色の刺繍柄入ったやつ。ただの着物と違って動きやすいように改造してあって、個人的に袖からチラ見えする黒い手袋が好き。腰に指した刀とも凄く似合う。好き。着物抜いた姿のインナーも好き。体のラインが出ててなんかえっち。好き。
やっぱ、性格も外せないよね!まず1番に、迅くんは優しいんだよ!優しいって聞くと男性の評価としてはよく聞く項目だけど、迅くんの優しさはなんか、心に染みる感じなんだよね。だって、本人はそのことを全く意識しないで自然にやっちゃうんだよ。
人の姿でお家に来た時は猫舌のわたしが飲みやすいように熱くないお茶や料理を振舞ってくれるし、配達の時だって妖怪だからわたし、人より力あるのに重い荷物持ってくれるし、なんでもない話の内容とか覚えててくれてるし、昨日だって酒場の椅子を引いてくれたり、お酒の飲み方を教えてくれたり、モンドの人を紹介してくれたり。そんな気遣いや思いやりを当たり前みたいにやっちゃう。エウルアちゃんへの恩返しの為にあんなことまでするなんて、本当に優しい。好きっ。
あとねあとねっ!戦ってる時の迅くんがめっちゃ好き!雷を纏ってる時の迅くん、髪ちょっと逆立って雰囲気が変わるんだ。ちょっと鋭くなった目元とか、なんか見ててドキドキする。
戦いの事はわたし自身妖怪のパワーでどーん!みたいな感じだし、草元素もシールドを張ること位にしか使ってないからよくわからないんだけど、迅くんがものすごく強いって事はわかるんだ。モンドに来る途中、ヒルチャールに襲われたんだけど、横でドンッて音がしたと思ったら、ヒルチャール達の1番後ろの高台にいた弓矢使いの真後ろに居るんだもん。最近はやっと慣れてきたけど、やっぱあの速さは反則だよねぇ。
それに……ちょっと前に綾華ちゃんとお手合わせしてた時の迅くんの目がその、ちょっといいなって思っちゃって……。綾華ちゃんも同じこと思ってたようで、お泊まり会はその話で盛り上がったっけ。迅くん、戦ってる途中で綾華ちゃんを「敵」として見たらしいんだけど、その時の目がなんか、わたし達に向けないような冷たさとか鋭さとかがあってちょっとドキドキした!べ、別に迅くんに蔑んだ目で見られたいとかそんなんじゃないからね!そんな目で見られたらショックで泣いちゃうよ!
……なんか、改めて考えてわかった気がする。今まで迅くんのどこが好きなのかで悩んでたんだけど、多分これ、全部好きなんだ。どこが好きかじゃなくて、どこも好き過ぎてどれが1番とか決めれないだけだ!
エウルアちゃんや綾華ちゃん、宵宮ちゃん達みたいな惚れた明確な経緯とかはないかもしれないけど、迅くんの好きなところなら無限に言える。想いの量は全然負けてない。頑張らなくちゃ!
わたしがふんすと気合いを入れていると、エウルアちゃんが不思議そうに見てくる。
「どうかしたの?そんなクネクネして。ちょっとキモイわよ」
「んー?いや、なんでもないよ?…そういえば、どうだった?迅くんの身体」
今わたしをきもいと申したか。カウンターで返した言葉に思い出したのか、顔を赤くするエウルアちゃん。
「わ、悪くなかったわ」
「へー、具体的にどこが?」
「えっと、わ、割れた腹筋とか?」
「わわっ、よく見てるねぇ」
「ヨダレ垂らしてた貴方にだけは言われたくないわ」
そろそろ着替えないとそれぞれ寝巻きを脱ぐわたし達は迅くんの感想を言い合う。エウルアちゃんが普通の下着に変えるためにブラトップを脱いだ所を目撃し解放された絶景を肩越しに凝視してたらチョップを貰った。
すっかりいつもの格好になったわたしとエウルアちゃんが寝室から戻ると、丁度迅くんがシャワーから出てきたところだった。気持ちよさそうな顔で髪をゴシゴシ拭いているのがちょっとかわいい。
それを眺めてるとおもむろにエウルアちゃんが迅くんのタオルを奪い取る。
「もう、そんな拭き方じゃ髪に良くないわよ。貸しなさい」
「えっ?別にそんなんいいよ」
「ダーメ。貴方髪質いいんだから大切にしなさい」
「えぇ〜、冒険者してたら野宿が基本だし、1日ケアしたところで…」
「言い訳しない」
「あい」
言い負かされて大人しくソファに座って頭を拭かれてる迅くん。普段の雰囲気からは考えられない様な様子にちょっと笑っちゃう。
髪を拭き終わったエウルアちゃんは朝ごはんを作りにキッチンに。わたしも手伝おうと思ったけどエウルアちゃん、料理が迅くんよりも美味いらしい。黒いエプロンがめっちゃ似合ってた。「どう?」と聞かれてた迅くんの顔が引き攣っていたから多分、そのエプロンも元々迅くんのなんだね……。ベットも占領されてたし、この家の私物はもう全部エウルアちゃんの手の中にありそう。
ソファに座って待っていたわたし達だけど、ちょっと迅くんの右手が虚空を彷徨いだした。あ〜、多分あれ、ねこ撫でたい時のやつだ。やっぱり
もぅ、しょうがないな迅くんは。えいっ!
「ん?綺良々?」
「えへへ〜、なんか猫を撫でたそうな顔してたから」
わたしは、迅くんの膝の上に顎を乗せる形でソファに寝転んだ。見上げてみるとかなり効いたみたいで、迅くんの右手が行ったり来たりしてる。
「ま、まぁ猫撫でたいのはホントだけど人の頭だし…」
もーっ。だからその猫がわたしなんだよ?あ、これならどうかな。えいっ。
わたしは頭の上に妖力を込めると、ぽんっと音がして猫耳が生えた。同時に尻尾を揺らしてゴロゴロとしてみる。
「あっ…ああああああ……」
うわっ効果てきめんだぁ!迅くんの手がわたしの耳に降りる。
「んっ」
「っ!わ、悪い」
「…ううん、ちょっとびっくりしただけ。もっとなでなでして?」
言われるがままにもう一度耳を撫でてくれる迅くん。普段自分じゃかけない耳の裏とか、頭の中心とか、撫でられると気持ちよくて、何より迅くんに撫で撫でされてるのが嬉しくて、ついつい頬が緩んじゃう。
………やっぱり、大好き。
このあともわたしは、ご飯を作り終わったエウルアちゃんが眉を吊り上げて怒って来るまで、この時間を堪能したのだったにゃっ。
綺良々の恋愛レベル上限70→80突破しますか?
➤はい
いいえ