職場の先輩がウチの飼い猫に似ている件   作:猫好きの餅

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へい、おまたせしました。フォンテーヌ魔神任務を終わらせたら、知らない内に仲間にフリーナがいた作者です(三凸)





10話 蒼閃は、風を従え空を舞う

 

 

 

「うわぁ…!稲妻の千手百目神像も大きいけど、こっちの神像もでっかいなぁ…」

「背景の教会ともマッチしていてとても綺麗ですね……!」

 

少し歩いて神像がある広場に来た宵宮と綾華は神像を見上げて完成をあげた。その2人の後ろを着いてきた綺良々とエウルア、蛍とパイモンは苦笑する。

 

「ちなみに、神像の水を掬うような形の手に座れるよ」

「そうなん!?」

「そうなのですかっ?」

「んなわけあるか!」

 

ちなみに神像に登ると騎士団が飛んでくる。前に好奇心で登って怒られた事を思い出しながら言う蛍にパイモンがツっこむと、そりゃそうかと宵宮と綾華も笑った。

 

そのまま歩いて西風教会に入る。ステンドグラスから覗く光が幻想的で、またもや2人と始めて入る綺良々が綺良々を上げた。すると、入口付近にいたツインテールの少女が話しかけてくる。

 

「あ、エウルアさんに旅人にパイモン!綺良々ちゃんも!いらっしゃい……って、こちらは稲妻の人達?」

「バーバラ!そうだぞ!オイラ達の友達だ」

「観光に来てくれたのね。えっと、風神の御加護があらんことを。私は西風教会の祈祷牧師、バーバラよ。よろしくね」

 

それらしく前に手を重ねてお辞儀をするバーバラに、それぞれ自己紹介を返す。綺良々は酒場で知り合っている為、手を振っている。

 

教会の中でおしゃべりをする訳にも行かないので、少し教会内を見てから外に出る。みんなで広場のベンチに座ると、稲妻に興味があるバーバラが色々なことを聞いてきた。

 

「へぇ〜、そっか、稲妻は神様がどっしり構えてるんだもんね。神様を実際にこの目を見れるなんて、ちょっと羨ましいかも」

「ん?モンドの風神様…バルバトス様やっけ、その神様は見たことないん?」

「うん。バルバトス様は自由の神だから、大昔にモンドを創って繁栄したら姿を消したんだって。はぁ、1度でいいから会ってみたいのに」

「多分エンジェルシェア辺りにいるんじゃむぐっ」

「パイモン、しーっ」

 

口が滑りそうになったパイモンを間一髪蛍が塞ぐ。そんな2人を尻目に綾華が手を挙げた。

 

「風神様が国にいないとなると、騎士団が国の統治を?」

「ううん、確かに風紀維持やモンド城の防衛とかは西風騎士団がやってるけど、統治はそもそもされてないよ。だって自由の国だもん」

 

その言葉に稲妻勢が驚いた。綾華や宵宮にとって、雷電将軍が居ない稲妻が考えられなかったのだ。

 

そんな一行の前を1人の男が通りかかる。蛍はその男と目が合い、逸らした。

 

「おいおい、人と目を合わせておいて逸らすなんて失礼じゃないか?」

「あ、ガイア、いたんだ」

「俺でも傷付くぞ?」

 

そう悲しむ真似をしてやってきたのは西風騎士団騎兵隊長のガイアだ。エウルアも同じく面倒な奴に会った時のような顔をする。ガイアは一行を見回して、この前より増えている顔を見つけると小洒落たお辞儀をする。

 

「これはこれは、稲妻から遥々モンドへようこそ。俺は西風騎士団のガイア・アルベリヒと言う。是非ともゆっくりして行ってくれ」

「いえ、ご丁寧にありがとうございます。私は稲妻社奉行、神里綾華と申します」

「うちは宵宮、花火屋や。よろしゅうな!」

 

自己紹介を交わしたガイアは2人の名前を聞いて目を丸くした。

 

「神里…それに宵宮…、ああ、前に迅が言っていた人達か。なるほどな」

「迅と知り合いなん?」

「ああ、よく一緒に酒を呑んでてな。前にモンドに居た時なんか、酒場でよく話を聞いたよ。皆、元気にしてるかなぁ〜ってよくぼやいてたのを覚えている」

「そ、そうだったのですね…」

「あいつもうちらのこと気にかけてくれたんやなぁ…」

 

国を出てる間もしっかり自分たちの事を考えてくれていた裏情報に嬉しくなる綾華と宵宮。そこでそういえばとエウルアが口を開いた。

 

「ガイア、迅を見なかった?」

「ん?ああ、迅ならキャサリンの所で依頼をいくつか受けていたな。確かヒルチャール討伐と、狂風のコアと遺跡守衛の討伐の依頼だった。あいつの腕なら…今頃もう守衛を倒しに望風海角にいるんじゃないか?」

「ええっ、まだお昼前だよ?いくらなんでも早過ぎない?」

 

ガイアの立てた予想に驚くバーバラ。だが周りの面々は「まぁそうだろうな」の顔だ。

 

「ならこの後迅に会いに行く?そもそもこれから星落ちの崖に行こうと思ってたからもしかしたら途中で会えるかもだし、崖の上からなら見つかるでしょ」

『賛成!』

 

意見が一致した一行はバーバラとガイアと別れると、鹿狩で昼食をテイクアウトしてモンドの草原へ出た。

 

望風海角はモンド国領の北東。高台の上にあるので囁きの森から回るルートか、星拾いの崖から風の翼で飛ぶルートがある。

 

元々星拾いの崖に連れていくつもりだったのでそっちのルートを選んだ。風の翼を持っていない2人は誰かが抱えればいいだろうと、一行は草原に繰り出した。

 

「うわぁ〜!稲妻と違って島国じゃないから草原がずっと広がっててええなぁ〜!」

「空気が澄んでいて、暖かい風も気持ちがいいです」

「わかるっ、稲妻だと見れない景色だよね」

 

てくてくと道を歩きながらそう評す稲妻出身さん3人にエウルアは尋ねた。

 

「稲妻はどういう所なの?私、璃月位にしか行ったことがないから…」

「うーん、稲妻のいい所かぁ…、そう考えると出すのはムズいなぁ。綾華ちゃんは?」

「そうですね…。景色は、モンドとは方向性が違いますが、素晴らしいところが多いですよ。鳴神大社と神櫻がある影向山や、珊瑚宮が有名です。それに、宵宮さん達が作った花火が上がる夏祭りも醍醐味ですね」

「割とあるやん……せめて自分の話の夏祭りは出てくるべきやったわ…」

 

陽気が気持ちよくて頭が回らず、パスを回した綾華に全て答えられた宵宮は肩を落とし、それを見た蛍や綺良々がくすくすと笑う。

 

「そう。なら楽しみね。…いずれ迅の家に行くわけだし」

「……ふふっ、まずは離島で通行証を頂くべきですね。それと、その頃の兄さんは神里家に戻っていると思いますが」

「ちなみにうちは迅の家に公認で家事しに行ったことあるで、それに多分その頃には長野原にいると思うし?」

「わたしはそもそもお家でも毎日一緒だけど?迅くんの家にどうこうの前にわたしに許可申請出してもらってもいいかな?」

『……ふふふっ』

 

「たたた旅人っ!あいつらいつから雷元素を……」

「…パイモン。あっちは見ちゃダメ」

 

何が1番怖いかって、みんな満面の笑みなのだ。会話を抜くととても仲が良さげに話しているようにしか見えないが、交差した4つの視線がぶつかり合い、バチバチと雷元素が可視化している。どれだけ仲良くなっても結局、恋敵に過ぎないのだ。

 

時に仲良く、時にバチバチにしながら歩いて一行は、星拾いの崖に到着した。緩やかな坂を登ると次第に風が緩やかに吹いてきてとても気持ちいい。

 

「確かに、ここは気持ちがいいですね……!」

 

綾華がポニーテールをはためかせながら言う。するとちょっと強めの風が吹いて斜面にぶつかって上方向に変わった風が綾華のスカートを捲れ上がらせ、綾華はあわわとスカートの裾を抑えた。同じ体勢になっている蛍にパイモンが首を傾げる。

 

「あれ?旅人、今日はドロワ履いてないのか?」

「最近群玉閣の件で忙しくて…洗濯してなかった…」

 

普段から戦闘などでよく動く蛍はスカートの下に基本ドロワーズを履いているのだが、今日は偶然切らしてたらしい。これから風の翼で飛ぶのにどうするんだよ…と半目になるパイモンに、「た、高く飛べば大丈夫だからっ」返す蛍にショートパンツ勢とサラシの宵宮は笑って見ていた。

 

坂に並んで座って昼食を食べた皆は迅に会いに行こうとする。幸いこの崖はモンドの土地の中でも標高が高いので遠くまで見渡せる。

 

「さて、迅のやつ、一体どこにいるのかしら」

「うーん、確か望風海角っていってたよね?」

「方角で言うとあちらですが……」

 

皆揃って海角の方を見たその時、奥の森の中で爆炎が上がった。少し遅れて爆音も聞こえてくる。

 

「あそこだ!」

「…どうする?行くの?」

「とりあえず、向こう岸には渡った方が良さそうやな」

 

当初の予定通り、エウルアが綾華を、綺良々が宵宮を抱えて風の翼を広げ、望風海角まで滑空した。別に下には誰も居ないのだが、蛍はスカートを抑えて飛んでいて、横を飛んでるパイモンに笑われていた。後で覚えとけと内心思う蛍であった。

 

初めての滑空に最初は怖がっていた宵宮と綾華は、普段では見られない景色に次第に表情が明るくなり、最後の方は楽しんでいる様子が見えた。

 

程なくして望風海角に降り立つ。爆発もさっきから何度も起こっていてただ事じゃない雰囲気を醸し出していた。それぞれ顔を見合わせると武器を構えてその音の方へ向かおうとしたその時。

 

爆発と共に森の中からひとつの影が「翔び」出てくる。その人物と姿を見た綺良々達は唖然とした。

 

そう。出てきた人物……迅が、ほぼ完全に空を飛んでいたからである。

 

風の翼を広げてはいるが、彼が行っていたのは滑空ではなかった。地面スレスレを普通の滑空じゃまず出ない速度で飛び抜けて、追うように飛んできたミサイルを、一瞬雷を纏った後に何故か急上昇&加速をして振り切ろうとしたがミサイルは熱源探知のホーミングらしく、同じ軌道で迅を追ってきた。

 

それらを手にした霧切と雷元素の楔で迎撃し、爆発したミサイルの爆風までも利用して天高く舞い上がった迅は、現れたミサイルの原因、遺跡守衛に向かって急降下した。その間に発射された2セットのミサイルは右と左のバレルロールでギリギリ躱されて、彼の侵入を許してしまう。接近しきった迅はトドメを指すのかと思いきや、守衛の弱点である目のような部品を小突いて、もう一度距離を取り始めた。守衛はまたミサイルを撃ち、迅は鳥かと思うような軽やかさでそれを回避や迎撃を始めている。

 

いきなり現実離れした空中戦を見せられた綺良々達は皆口をパクパクさせている。というか、風の翼は風を受けて滑空するためのもので、ああいう風に飛行することは考えていない。

 

「……なぁ、うちら夢でも見とるんか?」

「…迅くん、いつから鳥さんになったの?」

「……だから風の翼を教わり直してたのね。あんなのアンバーに見せたら卒倒するわよ」

「……流石兄さんです!」

「全肯定綾華出てきた……っていうか何あれ。パイモンもあれできる?」

「できるかっ!」

 

その声が聞こえたらしい、空の迅がこちらを向いて目を見開いた。主に後ろにいる綾華と宵宮を見て驚いたのだろう。2人が手を振っている。

 

「ってか、迅は何してるんや?さっきから遺跡守衛に近づいて離れてを繰り返しとる」

「おそらく、風の翼の練習じゃないかしら。本来遺跡守衛が出るところからだいぶ位置がズレてるし、ここまで連れてきたようね」

「なるほど……先程見せてもらいましたが、風の翼はああいった使い方もできるのですね……」

「…そう見える?」

「……………」

 

半目でエウルアに言われ、黙り込む綾華。蛍と綺良々を見ると2人も首をブンブン横に振った。いくら好奇心旺盛の蛍と言えど、あんな飛び方は思いつかないっていうか怖い。制御失敗したらそのまま地面に叩きつけられて死が確定する。ワープのお陰で長距離移動は困ったことはないので余計にそう思った。

 

どうやら終わらせるようで、戦ってる時でもあまり見せない真剣な顔になった迅が雷を纏うと元素の足場を作って蹴り、先程とは比べ物にならないスピードで空を駆けた。加速の時に風圧が辺りを襲い、彼女達の髪の毛がはためいた。スカートも上がってきた2人はすかさずバシッと抑える。

 

その速度のままミサイルの感知速度を超えてホーミングされずに近づいた迅は螺旋状に絞った雷元素を解放し、突撃の勢いも乗せて守衛のコアを突き抜いた。大きな風穴が空いた遺跡守衛は倒れ込み、貫通した迅は脚を使って強引に着陸する。

 

彼は後ろで爆発した守衛に目もくれず、紫色のスパークを散らしながら霧切を納めると、金色の目(・・・・)でこちらを向いた。

 

先程の呆れや驚いた視線はどこへやら、急に見せられた『迅の真剣な顔』にやられたらしい、彼に好意を寄せる者たちがそろって頬を染めて目を奪われている。

 

普段の迅の表情と言えばデフォルトの優しい表情か、なでなで中の癒された表情。寝てる時のあどけない表情など、結構可愛い寄りである。それも端正な顔立ちと相まってギャップで攻撃力が高いのだが、普段そういう表情ばかりの彼が見せた凛々しい顔に、逆方向のギャップでやられたらしい。

 

だから宵宮と綾華は彼の瞳の色に気づくのが少し遅れた。

 

「じ、迅…?」

「……っえっ、兄さん、その瞳の色っ……大丈夫なのですかっ!?」

「2人とも、来てたんだ。ってかあれ、これの事、綺良々達から聞いてなかったのか?」

 

あ、色々あって言うの忘れちゃったと頭をかく綺良々。それを見た迅は苦笑して、未だ驚愕の表情を浮かべている3人とパイモンにちょっと言いにくそうにして。

 

「あー…、隠してたつもりは無いんだけどって、隠してたか。…俺、実は仙人の末裔なんだ」

「「「っええええええ!?」」」

 

そう告白すると驚きの声を上げる3人。蛍は思い当たる節があってやっぱりって顔をしているが、宵宮と綾華はさぞ驚いただろう。特に幼い頃から一緒に暮らしていた綾華は口元を手で抑えて、目を見開いている。

 

俺は綺良々達に話したことと同じことを綾華達にも話した。

 

「……そういうことやったんや」

「…あー、だから璃月の仙人達や鍾離先生と仲良かったんだね。納得いった」

「オイラも驚いたぜ……まさか稲妻に仙人の末裔がいるなんてな……って綾華っ?」

「……うぅ……ぐすっ…」

「あ、綾華ちゃん!?」

 

迅の話を聞いて、突如泣き出した綾華に視線が集まる。

 

迅と宵宮は泣いた理由がわかっているようで、「気にかけてくれてありがとう」と綾華に言った彼に「原因がわかったんなら良かったわ。迅、悩んでたもんなぁ」と肩を叩く。

 

完全に身内の話になっている3人に首を傾げる蛍とエウルア、綺良々を尻目に綾華が涙を拭く。

 

「……ぐすっ、……よかったですぅ…!」

「…その、良かったってどういうことなの?」

「ああ、それはな…」

 

質問したエウルアに綾華の代わりに迅が答える。

 

「前に、仙人に修行をつけてもらって身体の仙力をコントロール出来るようになったって言ったろ?だからそれの前……つまりまだガキの頃の俺は仙力のコントロールなんて出来ないどころか、この力が何かすらもわからなかったんだよ。それで結構神里家に迷惑かけちゃって」

「そんなっ、迷惑だなんて…私は1度たりとも思った事などありません……!」

「ありがとな、綾華。……で、当主が森の中で拾った子が時々目の色変わったり、ありえないくらいの力が出ちゃったりしたから、凄く警戒されたんだ。しかも、近くに倒れてた俺の母親がほぼ妖魔になりかけていたって事もあったから妖魔の子なんて言われたこともあったっけ」

 

当時、迅は神里内で腫れ物扱いされていた。前当主が存命だった頃はまだそれほどだったのだが当主が亡くなった後、神里兄妹とトーマ、そして後に迅を引き取る給仕長(おばあちゃん)以外からは数々の嫌がらせを受けて育ってきた。あえて神里兄妹と一緒に戦う術を教えたのも、冒険者なりなんなりになってさっさと神里を出て行って欲しかったという側面もある。別に追い出す事も出来たのだが、当主を継いだ神里綾人に知られずに追い出すのが困難だったこともあり、そういう形になったらしいと、迅は綾人から聞いていた。

 

迅は、まぁ今になって考えれば当然というから、仙力が溢れたその日に追い出されなかったことに感謝すらしている。皮肉ながら剣術の鍛錬で仙力に耐えうる身体の土台を作れたのも大きいから別にもう気にしてないよと笑って答えた。

 

ちなみに、兄さんを虐げていた者たちは冒険者として有名になった途端、手の平返しをして兄さんを褒め称えていました。…顔は覚えていますので安心してくださいと笑ってない目で言っていた綾華はとても怖かった。

 

その帰り道、迅の仙人方面の話ですっかり忘れていたが、さっき空飛んでたのはなんなのかと皆から問われ、どうやって飛んでるかを意気揚々に説明を始めた迅だが、加速と高度を稼ぐ為に必要不可欠な電磁離斥の構造を説明し始めたあたりで自分にはわからんと察して逃げ出した綺良々と宵宮、パイモンを実際に飛んだ迅が追いかけ回したり、電磁系の技を教えてと蛍にねだられたり。

 

それらを見ながら話していたエウルアと綾華が意外に仲良くなっていたり、それを見て綺良々が頬を膨らませたり。

 

平和に帰り道を過ごしていた一行だった。

 

 

 

 

 

 

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