職場の先輩がウチの飼い猫に似ている件   作:猫好きの餅

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おまたせしました!ずっと書きたかったお酒会です!

作中、綾華の迅に大しての呼び方が変わる場面と、2人きりの時の酔っ払ったエウルアがどうのって場面がありますが、その詳しい経緯は短編に書いています。


XフォローしてくれてDMくれたら先に送るよ(小声)。何故普通に出さないかと言うと、空気感がちょびっと本編と違うところがあるので、この小説のメインヒロインが揺らいじゃうからですね。それでも先に読みたい方はXでお願いします。

短編集は章の終わりに纏めて投稿したいと思います。




11話 お酒は飲んでも呑まれるな。いやまじで

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

 

「えっ、今日って綺良々の誕生日なのか!?」

「そうだったんだ…。今度プレゼント用意するね?」

「別に大丈夫だよ蛍ちゃんっ。気持ちだけで嬉しいから」

「初耳でした……エウルアさんは知っていたのですか?」

「ええ、前に聞いていたからね。プレゼントも用意してあるわ」

「まじか-。今日で綺良々ちゃんは18歳やな!お酒飲めるやん!」

 

エウルアの部屋が一気に騒がしくなったな。帰ってきた俺がシャワーを浴びて来て髪をタオルで拭きながらリビングに戻ると綺良々の誕生日が今日だと知ったらしいお客陣がわちゃわちゃしていた。

 

あの後、キャサリンに依頼を報告して報酬を貰い、懐が暖かくなった俺がエウルアの部屋に戻ると、みんなは自分の歳の話をしていた。その時に綺良々の誕生日が今日だってことに気がついたららしい。ちなみに今みんなの年齢を言うと、俺とエウルアが同じで21、宵宮が19の綾華と蛍、綺良々が18歳って感じだ。綺良々の誕生日、本当は1月下旬って聞いてたんだけど、猫又になった日を別で人の姿としての誕生日にしたらしい。猫の姿は何歳なんだろう。猫と人の歳の取り方は違うし、もしかしたら俺より年上かも。

 

俺がタオルを首に掛けて見ていると、そこに綺良々を囲んでいる女子陣をするりと抜けてきた綾華が俺の持っているタオルを取った。

 

「ふふ…兄さん、そんな拭き方では風邪を引いてしまいますよ?私が拭きますからそこに座ってくださいっ」

「お、おう」

 

ふんすとやる気満々で言われたので大人しくソファに座ると、隣に腰掛けた綾華が俺の髪を控えめの力で拭いてくれる。…って近くない?お互いの脚がほとんど密着してしまってる。綾華は髪を拭きながら不安そうに俺に尋ねて来た。

 

「あの…、兄さん」

「どうした?」

「兄さんは璃月の仙人の末裔…と言っていましたが……その、もしかしてもう稲妻には帰ってこられないのですか……?」

「へ?」

「もしそうなのだとしたら……私…」

 

粗方拭き終えた綾華はタオル置くと、自分の両手で俺の手を取って胸の前でぎゅっと握りしめた。それを見た俺は思わず包まれていない方の手で綾華の頭を撫でていた。

 

「…あっ」

「大丈夫だ。俺は絶対に帰ってくるよ。というか、稲妻に帰りたいから周りに隠してたんだ。もし璃月七星とかにバレても、気合いで帰ってくるから安心してくれ」

「…それなら、私からも迎えに行きますね」

「えっ、どうやって?」

「それはこう、海を氷元素で凍らさせて…」

「いやいやいやいや、そんなん日が暮れるって!頼むからマジでするなよ?」

「……ふふっ、兄さんとお話するのはいつでも楽しいですね」

 

綾華は撫でている手も取って、ぎゅっと胸の前で握りこんだというか、抱き込んだ。……いやあの、その握り方だとバッチリ当たってるんですが

…?

 

今の綾華はいつもの装束の胸当てを外していて、紺色のインナーが襟の着いた上着の間から覗いていて、そこに俺の両手が抱き込まれている。……これ、周りから見たら俺が綾華にセクハラしてるように見えないか?他の女子達の方を見るが、まだ綺良々のお誕生日おめでとうムードでこちらには気がついていない。だから、そっちを見てた俺は、綾華が身を乗り出して耳元に顔を寄せたことに気が付かなかった。

 

「………絶対、帰ってきて下さいね?………お兄ちゃん」

「っ!?」

 

いきなり耳元で囁かれた俺はソファの上で謎の力で端まで吹っ飛ぶ。耳を抑えて綾華を見ると、俺の様子がおかしかったのか、くすくすと笑っていた。ちゃっかり昔の呼び方しやがって……びっくりした。

 

「…その呼び方は2人の時だけじゃなかったのか?」

「ふふふっ、つい、です」

 

そう言い悪戯っぽく微笑む綾華。なんだか最近小悪魔方面に進化してきてんのよこの妹。

 

綾華は俺が神里を出る前は「お兄ちゃん」呼びだった。そっからいつの間にか「兄さん」になってて、流石にもうお兄ちゃんとは呼ばれないかと思ってたんだけど、この前雨宿りがてら蛍の洞天に泊まったとき、綾華に呼び方を戻してもいいかと頼まれた。その時は2人の時だけって話だったんだけど…。

 

「おーい、迅、綾華ー!」

 

後ろからパイモンに呼ばれたので、2人で振り返ると、綺良々のお誕生日会をしたいとのこと。俺とエウルアはもともとそのつもりだったので了承する。そこに綺良々がとててっと俺に寄ってきた。

 

「迅くん、2人で飲むのはまた今度にして、今日はみんなでお酒、飲んでもいいかな?」

「うん、いいぞ。俺とはまた今度行こうな。璃月とかにも美味しい店いっぱいあるし。今日はみんなもいるからペースも掴みやすいだろうから」

「うん!ありがと!」

 

初めてお酒を飲む事を結構楽しみにしていたらしい、綺良々がご機嫌だ(かわいい)。でも、場所はどうするか。この人数になるとこの部屋は少々手狭だ。

 

「あ、場所の事ならまた蛍ちゃんの洞天でやることになったんや。そのまま泊まって行けるし一石二鳥やろ」

「うん、ただお酒や食べ物の貯蓄はないから、1から買ってくるようだけど」

「ええ。でしたらそれぞれ手分けして買い出しをしましょう」

 

その後はみんなで協力して食材とお酒の買い出しをした。蛍にはとりあえずワイナリーに突撃してもらって蒲公英酒を、綺良々の他に綾華も初飲酒ということで俺とエウルアは初めてでも飲みやすいお酒や、それに合うおつまみの材料を話し合いながら買い物をした。「お買い物でーとはさせんっ!」って着いてきた綺良々に2人で苦笑する。

 

「今日はエウルアも飲むのか?」

「ええ、そのつもりよ。君は?」

「もしもの時介抱する人が必要だろ?パイモンだけじゃムリだろうし俺は飲まないか、飲んでも飛ばしちゃうつもり」

「ふーん…、私も介抱してもらおうかしら」

「………」

「……なに?」

 

あ、そうかコイツ覚えてないのか。

 

あれは綺良々と剣の訓練をして、吟遊詩人に絡まれた日の夜。俺が帰ってくると何故かめちゃくちゃ幸せそうな顔で寝てた綺良々を起こすのが忍びなくて、任務から帰ってきたエウルアと晩御飯を食べたんだけど、その時お酒を飲みすぎて酔っ払ったエウルアに襲われかけた。

 

ギリギリの所でエウルアが寝たから事なきを得たけど……、またあんなんされたら次はどうなるかわからない俺は、あんま飲まないで貰うかいっそ潰すかを全力で考えていると、綺良々が袖を引っ張ってひとつの袋を見せてきた。ちょっと食べたそうな顔をして、よだれが垂れそうになっている。

 

「迅くん……これ…」

「やめなさい」

 

俺は澄んだ笑顔で綺良々の手からキャットフードをひったくり、同じ顔のエウルアに羽交い締めにされている綺良々の悲痛な声を無視してコレがあった棚に向かって歩き始めた。

 

 

 

 

 

「……いや、だからな、アレは猫の食べ物で人の体にはあんまり良くないから…」

「……今度猫の姿で食べてみようかな」

「…後で感想聞かせてくれ」

「あなた達ね……」

 

買い出しからの帰り道。3人で並んで歩きながらアホな会話をする俺と綺良々に呆れるエウルア。

 

というか、綺良々ってやっぱ猫にはなれるのな。八重宮司みたいにずっと人の姿でいるのかと思ってたけど。いつか見てみたいもんだな。

 

そうこうしているうちにエウルア宅につくと、俺らが最後だったらしい。みんなも買い出しを済ませて集まっていた。時計を見ると17時前くらいで今から作って丁度いい時間になりそう。

 

俺たちは蛍の洞天に入る。邸宅にみんなでおじゃましまーすと声を上げて入ると、俺たちが全員同じ宅に座れるようにテーブルが大きくなっていて椅子もしっかり人数分あった。お酒を飲むということで、先ず皆お風呂に入ることに。

 

お風呂上がりの格好は前と違ってちゃんと自分の服なので個性が出てやられそうになる。

 

綺良々は最近インナーの露出度についてエウルアからお小言を貰ったらしく、水色のTシャツと黒のホットパンツというラフな姿。

 

綾華は屋敷で見たことある白装束に青色の上着を羽織って髪は下ろしていて、宵宮も山吹色の小袖にいつもの花火を模した髪型ではなく普通にポニテ。結ぶ位置は同じなのに印象が変わって1番目を奪われた。

 

エウルアは白のホットパンツに黒のブラトップの上に青いカーディガン姿でぶっちゃけ目に毒。

 

蛍もいつもよりラフで黒のインナーとホットパンツ。パイモンは割愛。

 

俺も黒のYシャツの腕を捲ってエプロンつけてるが、女子会に邪魔する休日のお父さん感が否めない。どうやらみんな俺の傷跡のことは知ってるみたいだし、もう隠す必要も無いのでボタンも上からいくつか外している。

 

そんじゃ、さっさとおつまみ作っちゃいますかね。

 

昨日用意したお酒は飲むのが女子っていうものあって、蒲公英酒やカシス、カルーアミルクみたいな甘いのが多い。料理もあんま重いヤツじゃない方がいいかな。揚げ物とかはやめておこう。

 

みんなにチーズとトマトは食べれるー?って聞いて、全員食べれるみたいなんでカプレーゼとかどうだろうか。チーズとトマトスライスして並べるだけだし。材料的にピザも作れるからそっち路線で行こうかな。ちなみにエウルアはお菓子担当で、設備が揃ってる自分の部屋の方がやりやすいからって一旦部屋に戻っている。

 

「蛍、ピザって作れる?」

「あったぼーよ」

「なんなんそのキャラ」

 

なんかやけに蛍のテンションが高い。いったいなんで………ってあ。

 

「明日、秘境か……」

「ふっふっふ。たっくさん樹脂持ってきたから。君がいるといつもいいのが出るからね。楽しみ」

「……それで出なかったらどうすんだよ」

「…責任、とって?」

「理不尽」

 

昨日、蛍に秘境に誘われたの忘れてた。稲妻に帰ってきてから配達で忙しかったから全然行ってなかったんだよな。などと蛍と他愛ない会話をする俺。なんかんだ蛍と喋ってる時が1番落ち着くんだよな。この気を遣わなくていい感じ。

 

綺良々におねだりされた魚肉のカルパッチョを作っていると、料理の進捗が気になったのか、みんなキッチンに入って来た。エウルアもひと段落したようでエプロン姿で立っている。あと、それ俺のエプロンな。

 

稲妻以外の料理に興味津々の綾華と宵宮に色々説明したり、食器や道具を取ってもらったりしながら作業を進めていると。横から小皿に乗ったスープを差し出され、そちらを向くと蛍が「味見よろしく」といつもの調子で言ってくるので、手がふさがってたのもあってそのまま口をつけた。

 

『!?』

「お、美味い。…ほい、お返し」

「ん」

『!?!?』

 

俺はお礼にカルパッチョをフォークにぷすっと刺して蛍の方に持っていくとぱくっと食いつく。

 

「どう?」

「うん、おいし」

「じゃあ味付けこれくらいでよさそうだな。綺良々、そっちの皿とってくれないか?」

「ちょいまちぃ」「ちょとまって?」「待ちなさい」「兄さん?蛍さん?」

「ん?」

「みんなどうしたの?」

『いやいやいやいや』

 

ん?なんか変なことあった?揃って首を傾げる俺たち。エウルアはずいっと顔を寄せてくる。

 

「ちょっと、旅人を借りるわよ?スープはもう出来てるでしょ?」

「お、おう」

「エウルア!?…じ、じんっ、たすけ」

「はーい蛍ちゃんこっち来ようねぇ〜」

「綺良々っ?あのその、瞳孔が…」

「んん?」

「ナンデモナイデス」

 

呆然とエウルアと綺良々に引きずられて台所を出ていく蛍を見ていると、そこに宵宮と綾華がむすっとした顔で詰め寄ってくる。

 

「なぁ迅。蛍ちゃんと迅って本当に友達なん?」

「え?そうだけど…?」

「それにしてはちょっと距離が近いのではありませんかっ?」

「あれはお互い手がふさがってただけだそ?別に向こうが嫌がらないなら誰にでもやるよ」

「「…………」」

「…お前らな」

 

食べたいなら最初からそういえばいいのに。それぞれおたまとフライ返しを両手でしっかり握りしめて「今両手塞がってますよ」アピールをする2人に思わず笑ってしまう。持ってるのがそれなのもちょっと可愛いのが厄介だ。

 

「ほら、口開けろ」

「あー……んっ…」

「…ぁ…んっ」

 

2人の口にカルパッチョを放り込んでやると、2人してほっぺを抑えて声にならない声をあげた。

 

「めっちゃ美味しいわぁ」

「こういう味付けは初めてですが、とても美味しいですねっ」

 

2人は「みんなには内緒にしてや!(下さいっ)」とウインクをキメると嬉しそうにキッチンから出て行った。2人とも可愛いけど、とりあえずおたまとフライ返し置いてけって。

 

 

 

その後は戻ってきたエウルアと綺良々にもあーんをして貰うことで勝手に手打ちにしたらしい蛍に今度たらふく白米狩り(パイモン命名の甘辛鳥肉漬け焼き)を食わせて体重をあげることを心に誓いつつ、2人にもカルパッチョを食べさせてげた。よう耐えた、俺。

 

そんなこんなで料理も作り終え、テーブルに配膳する。作ったのはコーンスープにシーザーサラダ、カプレーゼにキノコピザと俺特製チーズ増し増しピザ。カルパッチョにエウルア特製のスイーツまである。

 

俺は初飲酒勢に飲みやすいように蒲公英酒のミントソーダ割りを作って置いてあげる。宵宮もお酒はそんなに飲まないらしく、どれがいいか悩んで「迅と同じのがいい!」って言ってたのがちょっと可愛かった。ダメだ、アイツらからの好意を自覚した途端、俺側の耐性もザルになってきた。宵宮がめちゃくちゃ可愛く見える。

 

宵宮は……甘いの好きだし、カクテルでもいいけど……あ、これならいいかも。俺も好きだし。

 

俺はその酒を氷が入ったグラスに注ぐと宵宮の前に置く。それを見た彼女は目をぱちくりさせた。

 

「迅、これはなんのお酒や?」

「これは梅酒っていう、稲妻の酒だな。焼酎とかに氷砂糖と梅を漬けてできるお酒。甘くて飲みやすいと思う」

 

梅酒の匂いをくんくんと嗅いでいい匂いや…と呟く宵宮を羨ましそうに見ている綾華と綺良々。君らはひとまずそれ飲みおわってからな。

 

視線で私も飲みたいと言っているエウルアにも梅酒のロックを置くと自分の分を用意して席に座る。

 

「それじゃ乾杯の音頭は綺良々にお願いしようかな」

「う、うんっ」

 

初めて音頭とるらしい綺良々が緊張した面持ちでグラスを持って立ち上がる。

 

「…えっと、今日はわたしの為にこんな凄い誕生日会を開いてくれて、ありがとう!これからもずっとずっと仲良くしてくれると嬉しいですっ!かんぱーい!」

『乾杯!』

 

綺良々の声に合わせて俺たちも盃を合わせた。

 

そっからはもうどんちゃん騒ぎだ。お酒初めての綺良々と綾華に飲み方を教えたり、梅酒にハマったらしい宵宮が色々飲んでみたいとせがんできたり。料理の方はピザが好評で、チーズしか乗ってないピザに俺が蜂蜜を垂らし始めた時の女性陣の嬉しさと絶望の悲鳴はちょっと面白かった。いや君ら、この後エウルアのスイーツめちゃ食いますやん。

 

料理は余っても最強の掃除役(パイモン)がいるので安心。梅酒を飲んでみた綺良々と綾華も梅酒にハマったようで、料理をつまみながら結構お酒が進んでる。

 

エウルアと蛍は蒲公英酒のカクテルを飲みながらどんちゃん騒ぎを外から眺めている。2人とも顔が赤く、ちょっとは回ってきたみたい。

 

俺は使い終わった食器やグラスを片付けたり、料理取り分けたり。別に酒飲む気は無かったのだが今ん所あんま食べれてない。まぁ別にみんなが楽しんでくれればそれでいいんだけど。

 

とか思ってたらそれがバレて全員から料理を食べさせられました。しかも君ら、そのフォークやら箸やら、自分が使ってたやつですよね。あ、今気がついたみたい。宵宮と綾華が顔真っ赤になってる。エウルアは「今更でしょ?」の顔で蛍も特に気にしてない。綺良々は…なんか俺の顔めっちゃ見てない?どうしたんだろ。

 

意外だったのが、変な酔い方する人はいなかったこと。みんな厄介な感じにはならないっぽいな、良かった。

 

 

 

 

 

 

とか安心してた1時間前の俺を殴りたい。

 

「……お兄ちゃんっ、私っお兄ちゃんといっしょにねたいです…」

「じん〜、うちって魅力ないんかなぁ〜……これでもスタイルには結構自信あるんよ?」

「じんくんっ頭なでて?」

「………迅、こっちに来なさい。さみしいわ」

「zzZ」

「zzZ」

 

カオス。

 

今の状況を説明すると、飲み会が一段落したところで食べ終わった食器とか、使い終わった直後に洗えない系の調理器具とかを洗って、意気揚々と台所から戻ってきた瞬間、女の子の弾幕が俺を襲った。

 

俺の正面に引っ付いてるのはまさかの綾華。すっかり出来上がってて完全に昔の口調に戻ってる。俺の首に腕を回して顔を埋め、すりすりと頬擦りしてくるものだから絹のような肌触りの髪とつるもちほっぺが擦れて気持ちが良すぎる。

 

そして右手にはエウルアとスタイル勝負をして惨敗したらしい宵宮が縋り付いている。別に宵宮はスタイル良くないどころか、かなりいい部類に入ると思うんだけど。相手が悪すぎたな。だから、自分の胸を持ち上げてこっち来ないでください切実に。持ち上げたことによって襟元が緩んで奥から白い下着が見えてしまってる。いつもはサラシなのに普通のもつけんだなぁって割と冷静に頭が働いてるあたり俺も末期だわ。

 

綺良々は俺の左手を占拠して一生なでなでを要求してるって言うか左手に巻きついてる。

 

エウルアに至っては背中からぎゅーっと抱きついてきていて、ピッタリ密着しているから感触がかなりやばい。それと俺の前側に回された腕の動きがさわさわしてこそばゆいし、その手が綾華の身体にも当たってるから、綾華の正直エロい声が耳元で響いて湧き上がってくる欲望を仙力で無理やり鎮める。なんの拷問ですかねぇ。

 

前後左右を美少女に挟まれた俺が蛍とパイモンに助けを求めるが、2人ともとうに夢の中だ。つまり、絶対絶命ってこと。

 

とりあえずこいつらを何とかして剥がさないと。俺はまず首に回された綾華の腕を優しく外し、次に後ろのエウルアを剥が……そうとしたらまた綾華が抱きついてきて、エウルアを剥がし終えて、綺良々が巻きついた腕を引き抜こうとしたらまたエウルアが背中にくっついてくる。綺良々を離して今度は腰に手を回す綾華を外したらまた綺良々が……って埒があかんわァ!!

 

しかもなんかこいつらみんな俺の匂い嗅いでないか!?あちこちから鼻を鳴らす音が聞こえてきて、彼女たちが吐いた息が首筋に当たり背筋がピンとなる。

 

この状況で手を出さない俺を誰か褒めて欲しい。一応俺にだって欲はあるんだ。さっきから全身が柔らかい感触といい匂いに包まれていて、何度仙力を使って精神を戻したかわからない。

 

その後も何度か剥がしてみようと試行錯誤するが、遂に宵宮も「みんなぁズルいでぇ!」と左腕に抱きついてきていよいよ動けなくなる。

 

なんかもう我慢しなくていいんじゃないかなぁ。って俺の頭の中から悪魔が囁いている。この中でエウルアが記憶の残らないタイプなのはこの前実証済みで、何しても大丈夫。つか、この子達俺のこと好きだし、多少なら大丈夫だろ?

 

とか囁いてくる悪魔に脳内で蒼雷一閃を放って消し飛ばす。そんなことしたらいよいよクズ野郎の仲間入り。それだけは絶対に御免だ。

 

俺は唇を噛みちぎり、痛みで誘惑から抜け出す。口の中が鉄の味でいっぱいになるが、ここでクズになるよりは遥かにマシだ。

 

落ち着いた俺は、ひとまず両腕を外そうと試みるが、外した傍からまとわりついて来て、動きにくいことこの上ない。

 

つか、なんかだんだんイライラしてきた。こちとら身も心も削って誘惑に耐えてるっていうのに、お前ら自分がどんだけ可愛いとか気がついてないのか?こっちの気も知らんで……。飲みすぎるなよって、少しでもフラついて来たら飲むのはやめとけってあれほど言ったのに。

 

………ふぅ。

 

っし、そっちがそうなら、お望み通りやってやろうじゃねぇか。

 

「………」

「…お兄ちゃん?」

「じんくん?」

 

一切抵抗どころか身動きも取らなくなった俺に、綾華と綺良々が異変に気がついて俺の顔を見て、固まる。その2人の様子が気になったエウルアと宵宮も俺の顔を見て同じく固まった。

 

「お……に、兄さん?」

「じ、迅?」

「…迅くん?」

「なんだ?どうしたみんな?」

 

俺の顔というか(金色)を見てちょっと酔いが覚めたらしい。ちょっと冷や汗をたらしたみんなは、俺から離れようとして……俺にガシッと掴まれる。え、と再度固まる面々に俺は精一杯の笑顔でにこやかに言った。

 

「なんだよ、お前ら自分で言ってたじゃん。それを叶えてやろうかなってさ。……宵宮」

「ひゃいっ!?」

 

俺は宵宮の腕を掴んでこっちに引っ張って抱き寄せると、耳元に口を寄せて、宵宮がどれだけスタイルが良いか囁いてやる。

 

「宵宮は自分のことを悪く言ってたけど、俺はそんなこと全然思ってないぞ?容姿はもちろんだけど、明るくて面倒見がいい所とか、料理が上手いところとか、めちゃくちゃ魅力で、毎日ドキドキしっぱなしだ。今でもドキドキしてる。ほら」

「……ぁ、っぅ、じ、ん……あっ…みみ……あかんっ」

 

俺は優しく宵宮の手を包み込むと、違う意味(変質者扱いされないか)でドキドキ鼓動が暴れてる心臓の上に宵宮の手を置いた。

 

「…め、めっちゃドキドキしとる……これって……」

「そういうこと。だから自信持ってくれ。……宵宮はすっごく可愛いから」

「………きゅう」

 

よし、まずは1人目。俺は顔真っ赤のぐるぐるおめめで撃沈した宵宮を優しくソファに寝かせると、固まって頬を染め、震えていた3人の元に振り返る。

 

今度の標的はエウルア。頬を染めどこか期待した顔で迎えたエウルアを宵宮と違って力一杯抱き締める。同じく耳元で囁いた。

 

「お前、この前ビーフシチュー振舞った時あったろ?あの後記憶ないみたいだけど、エウルア、俺の事押し倒したんだからな?」

「ひゃぅ…み、耳は……ってえぇっ!?」

「しかもキスまでしやがって(嘘)。そこまでされて、俺だって我慢出来る訳ないだろ?…この恨みは後でたっぷり返してやるから、覚悟しとけよ」

「……きゅう」

 

っし、2人目。エウルアはどうせ記憶が残らないから多少捏造しても大丈夫だ。次は綺良々だな。俺は更に顔を赤くしてぷるぷるしてる綺良々を抱き寄せてじっと至近距離で見つめる。

 

「じ、迅くん……顔ちかいよぉ」

「お前はいつもこれくらいだぞ?綺良々は自分がどれだけ可愛いか自覚した方がいい。確か、お望みはなでなでだったな?後でたっぷり撫でてやるよ。泣いても喚いても絶対辞めないからな?」

「ひぅっ、ち、ちなみにどのくらいでしょうか……?」

「そうだな、まずは手慣らしに6時間コースからだな。綺良々が何を言おうと何をしようとぜッたい辞めないから」

「ふにゃあっ」

 

そう言って猫の弱点、腰の後ろの尻尾の付け根あたりを撫でてやると簡単に綺良々の腰が抜けた。後は1人。俺はラストに残った綾華に向かってゆっくり歩き始める。

 

「に、兄さん……先程は私…あのそのっ」

「なんだ今2人きりなのに、お兄ちゃん呼びしてくれないのか?あれ結構好きなのに」

「い、いえそういう訳には……きゃっ」

 

俺は綾華の背中と膝の裏に腕を回して持ち上げる。所謂お姫様抱っこに綾華の顔は真っ赤だ。

 

「なっなな、何をっ!?」

「え?何って一緒に寝たいんだろ?」

 

そういい、何食わぬ顔で自分の寝室に歩き出す。自体を察した綾華は慌てつつも本当の要望だったみたいで何処か期待した目を向けてくる。

 

「に、兄さん……」

「2人きりの時は?」

「…お、お兄ちゃん…」

「よくできました」

「い、今のお兄ちゃんはなんか変です…!」

 

そりゃ変なのを精一杯演じてるんだからそうだろうよ。ってダメだ冷静になるな。1回素に戻ったら、この「全員無理やり寝かすor潰す作戦」が全てパーになる。

 

「…嫌か?」

「……ぅぅぅ…その聞き方はズルいです…」

 

俺はお姫様抱っこした綾華をベットに優しく下ろすと、自分も床に入る。一緒に寝るって言ったからにはそうするしかない。俺は同じ掛け布団の中で綾華を抱き寄せ、サラサラの髪を触った。

 

「ちょっと今夜は俺の抱き枕になってくれ」

「……は、はぃ」

 

よし、このまま撫でて寝かせて俺はベットから脱出。翌日に土下座。完璧な作戦だぜ……!完璧ではないけど、あのまま俺の理性ブレイクするより何倍もマシだ。頼むぜ明日の俺……!

 

俺は綾華の頭を抱いて絹のような感触の髪を指で梳きながら頭を撫でていると、最初はおどおどしていた綾華も落ち着いてきたのか力が抜けて、少ししてすやすやと眠りに着いた。それを確認した俺はこっそりベットから抜ける。

 

そのままリビングに戻って寝かせた面々にブランケットを掛けると、残った食器やグラスなどの片付けを始めた。宴会の最中にもちょこちょこ洗っていたのでそんなに量はなく、30分ちょいくらいで全てのあと片付けが終わる。時計を見ると夜の1時ほどでだいぶ飲んでたな。

 

……っし、最後にっと。

 

俺は霧切を持って邸宅の玄関を出る。寝てるマルの横を通って草原の中央に行くと、仙力を解放して防音の結界を貼った。これでどんだけ叫んでも家には聞こえない。

 

……ふぅ。

 

ここで俺は色々と考えないようにしてたことを辞める。すると先程彼女達にしてきた「らしくない事」がどんどんフラッシュバックしてきて、俺は息を吸いこんだ。

 

「…おおおああああああああああ!!!!死ね俺ッ!死ねぇぇッ!!死んでくれっ!!!」

 

あまりの羞恥に草原をごろごろと転がる俺。更に彼女を抱き寄せて言ったセリフを思い出してしまう。

 

「なぁーにが完璧な作戦だ欠陥だらけじゃボケェェェ!!うわああああ俺なんて言った!?何がドキドキしっぱなしでめちゃくちゃ可愛いとか耳元で何囁いとんじゃうおおおおおあああ!!きっしょ!!俺きっしょォ!歯ァ浮きすぎて飛んでくわァ!!!」

 

俺も酔ってたんか?確かにこっちは手を出せんから我慢してるのにお構い無しでくっついて誘惑してきて、対処しようにも理性がゴリゴリ音を立てて削れていって、多少腹立ってたけどさ!普通に元素でも使って剥がしゃあいいやん!なんであの方向にぶっ飛んだ俺!?あああもうだめだァ………明日みんなからシカトされるんだぁ……さすがにさっきの俺はマジできもかったと思う。いくらみんなが俺に好意を寄せてくれていることがわかってたしてもアレはねぇよ……。さすがに引かれたよな…ははは……。

 

こりゃ明日は即土下座コースだな……。それで許して貰えたらいいけど……。

 

俺はその後も自分に対してを悪態を叫び、時に転がり、霧切を振り回して鬱憤を出し切ると、とぼとぼと邸宅に引き返した。

 

 

 

「あ、おかえり。なにしてたの?」

「ちょっとな。…蛍、起きてたのか?」

「うん、さっきね。…ごめん。あと片付け押し付けちゃって。ご飯もほとんど食べれてないでしょ?私が今から何か作ろうか?」

「いや、今は色々とおなかいっぱいだからさ……遠慮しとくよ」

「そっか。それならココアいれる?」

「いや、飲みきれないと思うからひとくちくれ」

 

家に入ると蛍が起きていた。パイモンを自室に寝かせてきたらしい。

 

蛍が飲んでいたココアをひとくち貰うと、じんわり温かみが広がる。

 

「美味いけど…ちょっと甘すぎないか?追加でミルクとチョコ入れたろ……深夜だぞ」

「む、人から貰っておいてケチをつけるとは……深夜がいつかは私が決める」

「かっこいいこと言って誤魔化すんじゃねぇよ。…あ、それと俺が寝る用の布団余ってたりしないか?ベットは綾華に貸しちゃって」

 

俺が蛍が飲みきったココアのマグカップを洗って棚に戻すと、彼女は目を丸くする。

 

「へえ、綾華が?意外だね」

「ソウダナ」

 

まさか自分が連れ込んだなんて言えないのでそっぽを向いておく。

 

「それで布団だけど、あの子たちがソファで寝てるから幾つか私の部屋に敷いたまま余ってるよ」

「お、マジか。じゃあそれ貰って、別の部屋で寝るとするよ」

「……べつにそこで寝れば良くない?」

「いやなんでやねん」

 

蛍がぶっ放した衝撃発言に思わず宵宮の口調が移る俺。蛍はなんでもないように言う。

 

「同じ部屋で寝るとか、今更でしょ?…それとも、何か変な気になるの?」

「それもそうか」

 

俺と蛍、ついでにパイモンは昔結構な頻度で共に野宿していたことがある。だから一緒に寝るとかそこら辺はもう慣れっこなんだ。

 

それじゃもう遅いし寝るかと蛍の寝室に移動して、床に敷かれている布団のひとつに入った。ちなみにパイモンも床の布団を丸々ひとつ使って気持ちよさそうに寝ていて、それを見た俺と蛍は苦笑した。

 

俺と蛍はそれぞれ布団とベットに入ると、短い会話をして、眠りについた。多分昼間の冒険依頼で疲れが溜まってんだろうな。飛行の鍛錬とか数時間やってたし。

 

疲れから来る睡魔に身を任せ、俺の意識は闇に落ちた。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

「んぅ……といれ……」

 

皆が微睡むなか、蛍はむくりと起きて、トイレに向かう。用を足して部屋に戻るとすやすやと迅が布団に包まり寝息を立てていた。

 

そこで蛍は昼間に宵宮の言っていたことを思い出す。迅の横にしゃがみこむと、寝顔を覗き込んだ。

 

「……たしかに寝顔は可愛いかも」

 

起きている時の雰囲気はどこへやら、あどけない寝顔に、蛍はちょっとびっくりしつつも確かな見覚えを感じた。

 

(やっぱり、似てるよね。…お兄ちゃんに)

 

蛍の兄である空と迅は容姿こそ違うが、振る舞いや、雰囲気が似通っていることがあった。だから打ち解けるのも早かったのだろう。

 

蛍は最初、モンドに着く前に風魔龍に飛ばされそうになった時に助けれくれた迅との馴れ初めを思い出した。あまりに雰囲気が似ていたものだから、思わず「お兄ちゃん!」と呼んでしまって恥ずかしい思いをしたのを覚えている。聞くと迅にも妹がいるようで、そこから旅の行く先々で出会うようになった。

 

「……私も酔っ払っていたら、あの時貴方は何をしたんだろう」

 

実は蛍、ずっと起きていたのだ。だから迅の様子が急変し、綺良々達を口説き落とす所も、赤面しながら腕の隙間からバッチリ見ていた。だから少し気になってしまったのだ。

 

蛍はおもむろにに迅の隣に寝転がると、頬を突っついた。「んぅ…」などと呻きを漏らす迅に少し笑ってしまう。

 

(なんか、迅の隣にいると安心する……。お兄ちゃんに似てるからかな?)

 

迅の手を握った蛍の意識も知らずのうちに闇に落ちていた。

 

 

 





・綺良々
6時間なでなで耐久を楽しみにしている。酔っ払うとスキンシップが多くなって、なでなで欲も増す。猫と同じく尻尾の付け根が弱点。

・宵宮
迅に可愛いと面と向かって言われて有頂天。スタイルも魅力的と言われたので、誘惑のストッパーがひとつ外れた。耳が弱点。酔っ払うと絡み酒。

・エウルア
迅の恨みを晴らす時を今か今かと待ちわびている。ぶっちゃけ迅に初めてをあげる覚悟は出来ている。ヒロインズの中で1番重くてえっち。酔っ払うと寂しがり屋になって引っ付いてくる。弱点は耳。

.・綾華
迅と久しぶりに一緒に寝れて大満足。何気に初お姫様抱っこで内心大興奮していて、また今度頼もうかと思っている。次の目標は一緒にお風呂に入ること。酔っ払うと甘えん坊になる。弱点は首筋。

・蛍
迅とナチュラル距離近の旅人。自分で思っているよりも兄と迅を重ねている。酔っ払うと寝るタイプ。

・迅
理性が削られる度に仙力で無理矢理鎮めている。別ベクトルの苦労人。酔っ払うと可愛くなる。ヒロイン達には特効。今回飲まなくて良かったね
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