職場の先輩がウチの飼い猫に似ている件   作:猫好きの餅

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おまたせしました。

今回もずっとリクエストなりアンケートなりで票数上位だった蛍と秘境に行くお話です。(半分くらい女子会なのは許して)




12話 風とスカートと聖遺物

 

 

 

邸宅に差し込む朝日がわたしを照らして、だんだんと意識が浮かび上がって来た。

 

「……んんぅ……」

 

蛍ちゃんちのリビングの大きめなソファで寝てたらしいわたしは、起きようとして自分に掛かるブランケットに気がついた。

 

迅くんがかけてくれたのかな。ふふっほんとに優しいなぁ。迅くんのそういうところがわたしは……迅くん…………迅くん!?

 

ここでわたし昨日のことを完全に思い出す。うわあああ!!酔っ払った勢いでわたし、なんて事を……。それに皆の様子もおかしかったように思える。まぁ、みんなちょっと迅くん欠乏症だったから、お酒が入って歯止めが効かなくなったんだろうな。

 

周りを見るとエウルアちゃんと宵宮ちゃんがそれぞれソファですやすやと寝息を立てていた。2人とも寝顔がすっごく幸せそう。昨日2人とも迅くんに耳元で囁かれたと思ったら気絶しちゃってたから、嬉しいこと言われたんだろうな……。

 

ソファから降りて、んーっと伸びをすると、綺麗に片付けられたテーブルを見つけた。

 

片付けが済んでる……蛍ちゃんも途中寝ちゃってたから、あの後ぜんぶ迅くんがやったんだ。

 

迅くんはわたしが見る限りじゃほとんどご飯も食べれてなかったし、料理の大半も作ってくれたのに片付けまでさせちゃって、とても申し訳なくなる。昨日わたし達がくっついた時も少し怒ったような顔をしていたし……、あ、謝らないと…!

 

わたしは迅くんを探して家の中を歩き回った。まだ起きてないみたいでキッチンにはいなかったし、迅くんの寝る部屋にも何故かベットに綾華ちゃんが寝ていた。いやなんで?なんで綾華ちゃんがここで寝てるの?もしかして迅くんと寝たの?羨ましすぎるでしょ!(自分も何度も寝てることなんて棚に上げてる)

 

あ、でもまだ迅くんは起きてないんだから、それならここで寝てるか…。物置には迅くんの刀もあったし、一応外にも出てみるけどやっぱりいない。

 

あと見てないのは…………蛍ちゃんの部屋。

 

「……………」

 

いやいやいや!そんな訳ないよね!だって、蛍ちゃん別に迅くんのこと友達って言ってたし!

 

わたしはそう自分に言い聞かせて蛍ちゃんの部屋の扉を開けて……

 

「……はあぁぁぁぁぁ?」

 

布団に収まってすやすや眠る迅くん。……の腕にしがみついて同じ布団で寝ている蛍ちゃんに、迅くんに対する罪悪感も忘れて声を上げるのでした。

 

 

…え?なに?どういうこと?蛍ちゃん……もしかして、敵なの密かに迅くんを狙う、泥棒猫なの?

 

蛍ちゃんは迅くんにかかってる掛布団の上に寝てるから、最初から一緒にって訳じゃないと思うけど。

 

そこまで見てから迅くんの寝顔を見ると、胸がほわってなる。そういえば昨日はちゅーしてないや。そうだ、昨日の分をしないと…って違う違う!なにちゅーが義務みたいになってるのさ!義務なんかじゃなくてわたしがしたいから……ってちがーう!

 

なんてわたしは頭の中で否定しつつも、気がついたら迅くんに覆いかぶさっていた。さすがに朝はやばいかな?起きちゃうかな?バレるのはちょっと怖いけど、でも、それを超えて迅くんにちゅーがしたい。垂れる髪を耳にかけて、顔を近づける。

 

「迅くん…」

「綺良々ちゃん?朝っぱらから迅になにしてるん?」

「み"ゃっ!?」

 

後ろからちょっと怒ったような声が聞こえて、わたしは飛び上がった。慌てて迅くんが起きてないか確認して、ほっと息を吐くと、恐る恐ると後ろを振り返った。

 

「綺良々ちゃん?」

「ヒッ」

 

そこには腕を組んで、満面の笑みの宵宮ちゃんが。もちろん目は全く笑ってなくて、ビビったわたしは口を滑らせた。

 

「よ、宵宮ちゃんもやる?」

「えぇ!?」

 

やばいっ変なこと言った!って思ったけど効果てきめんみたい。慌てた宵宮ちゃんは、迅くんを1回見てゴクリと喉を鳴らした。

 

「う、うちも…」

 

よっし、上手くごまかせた!宵宮ちゃんは、恐る恐る迅くんに跨って、寝顔を覗こんだ。わたしも一緒に覗き込んで……。

 

おめめパッチリの迅くんと目が合った。

 

「……」

「「………」」

「………なにしてんの?」

「「……………っ!」」

「えっ、ちょっ、なになになになに」

 

わたしと宵宮ちゃんは一瞬の判断で、他の布団の掛け布団をドカドカ迅くんの顔に乗せて、蛍ちゃんを回収。迅速に部屋から撤退を計った。

 

 

 

 

 

「昨日は、本当にすみませんでした」

 

寝室から撤退して、みんなを叩き起し、少しの会議を経て。するりと部屋から出てきた迅くんはみんなの前で綺麗な土下座を敢行した。って、ちょっとまって!?

 

なんで迅くんが謝るの!?謝るのはわたし達の方なのに!

 

みんなの方を見てみると、わたしと同じ思いみたいで、罪悪感に押し潰されたような顔をしている。

 

「そ、そんなっ、頭を上げて!」

 

みんなで慌てて駆け寄って迅くんを起こす。迅くんは申し訳なさそうな顔で口を開いた。

 

「いや、俺が昨日やったあの介抱の仕方はダメだろ。流石に節度がなかった。本当にごめん」

 

そんな迅くんに胸が締め付けられるわたし達。いや、だってさ、君は隠してたつもりだろうけど、すっごい疲れてたじゃん!料理してた時ちょっと脚が震えてたし、多分ずっとあの飛行訓練をやってたんだろうな…。それなのに率先して買い出し行って、1番料理作って、ご飯もほとんど食べないでわたし達の面倒見て、しがみついたわたし達の介抱して、後片付けまで全部やってくれた人にそんな顔されると、わたし達いたたまれなくて死んじゃうよぉ!

 

そんな迅くんにエウルアちゃん達が寄る。

 

「迅。謝るのはわたし達の方よ。君に全部やらせてしまって…ごめんなさい」

「いや、そんなことは……」

 

なおも謝ろうとする迅くんにみんなが走りよってそれぞれ謝る。さっき話し合った時に確認したんだけど、昨日の酔っ払った後の記憶はみんなしっかり覚えていた。

 

正直、昨日のわたし達の酔った後の迅くんへの態度は男女間では完全にアウト。迅くんがわたし達の誰かに手を出してもしょうがなかった。でも起きた後も何かされた様子は皆無で。寝ている迅くんの唇の端に血の跡が少しだけ見えて、すごく頑張って耐えてくれた事を知って、胸が暖かくなる前に途方もない罪悪感を感じてしまった。それはもう、手を出してくれなかった事を残念だなって思う間もない程に。

 

だから、迅くんが来た時にまずみんなで昨日の事を謝ってから「ありがとう」って言うつもりだったんだけど、迅くんの本当に申し訳なさそうな顔と、止めるまもなく跪いた姿を見て、わたし達は胸が締め付けられた。

 

そんな様子を見て、蛍ちゃんはぽつりと言った。

 

「迅は、もうちょっと怒ってもいいんだよ?」

「……え?」

 

迅くんは俯かせていた顔を上げる。

 

「いや、でもな……。他にやり方があったのは事実だ。それなのにあんな……く、口説き落とすようなやり方はちょっとなかったよ」

「だとしても羽目を外し過ぎたのは私達。それを間違いが無いように介抱して後片付けもやってくれたんだから、ちょっとは手伝えよお前ら!くらい言ってもいいんだよ?」

「…それは…」

「……う、うちは嫌な気はしなかったで?」

「…宵宮」

「昨日迅がうちに言ったことは女として普通に言われて嬉しいことやったし。気にせんといてええよ?それに、飲酒した事があるうちは、初めて呑む2人を止める側やったのに…ほんまにごめんなさい」

「私もよ。君に言われたことは気にしてないわ。あそこまで酔った私にも落ち度はあるし……ごめんなさい」

 

そう言って宵宮ちゃんとエウルアちゃんがそれぞれ頭を下げるとわたしと綾華ちゃんも羽目を外し過ぎたと頭を下げた。それに珍しく迅くんがおろおろとしていると。蛍ちゃんはパンと手を叩いた。

 

「はい。お互い謝ったんだから、この話はおしまい!早く秘境行くよ時間が無くなっちゃう」

「…お前、それが目的じゃないよな?……まぁ、ありがとな、蛍」

「…どういたしまして」

 

昨日言ってんだけど、今日は蛍ちゃんと聖遺物秘境に行くみたい。わたし達は綾華ちゃんと宵宮ちゃんを連れてモンドの中をゆっくり観光する予定。

 

それぞれの荷物を持って出発しようとする2人をみんなで見送ろうとすると、迅くんが振り返って言う。

 

「あ、朝ごはんはもう鍋に出来てるからそれ食べてくれ」

「えっ?もう出来てるって…」

「それじゃ行ってくるね。パイモン、みんなをよろしく」

「おう!気をつけて行ってこいよー」

 

あ、パイモンちゃんも置いて行くなんて珍しい。わたし達が返事をする前に慌ただしく2人は塵歌壺を出ていった。

 

「兄さん、朝ごはんあるって言ってましたね」

「ええ…、アイツさっきまで寝てた筈なんだけどね…」

 

みんなでキッチンに言ってコンロに置いてあった鍋の蓋を取ると、中には美味しそうな白い具だくさんのスープが入っていた。具はじゃがいもと人参にたまねぎとベーコンがそれぞれ角切りになって牛乳とコンソメで煮込まれてる。火にかけるといい匂いがしてきてお腹がくぅと鳴った。みんなの視線を集めてちょっと照れる。

 

「おいしぃ〜」

「初めての味です……!」

「具だくさんでめちゃおいしいわぁ〜!」

「美味しい…。これは、クラムチャウダーかしら…これ、かなり煮込まれてるわよ。恐らく昨日から準備してたのね…」

「迅のやつ、用意良すぎだろ……。…ん〜まぁ!」

 

エウルアちゃんによるとクラムチャウダーっていうお酒を飲んだ次の日に飲むと美味しいスープらしい。よく煮込まれていて、具材が全部舌の上でホロホロ解けた。

 

味はもちろん絶品で、スープの温かさと迅くんの気配りでわたし達の心が一気に暖まると同時に、胸が苦しくなった。周りを見るとみんな同じ顔をしてると思う。

 

だって、明日のわたし達の事を考えてスープまで作ってくれているなんて、迅くん……もう、優しすぎるよ……。なんなの?優しさの塊なの?聖人君子なの?付け合せのサラダに使う野菜まで切ってあるし、パンまで用意してあるし、こんなことされたら誰だって惚れちゃうよ!

 

ほらぁ!みんなもう顔が色々溶けてるよ!?宵宮ちゃんやエウルアちゃんの口から微かに「結婚して欲しい……」って盛れてるもん!罪作りすぎぃ!

 

迅くんに対してキュンキュンしたりムカムカしたり忙しい気持ちのままクラムチャウダーをひとくち……おいしぃ〜。

 

結構多めに作られていたクラムチャウダーは、直ぐに完飲されたのでした。

 

みんなで一息ついて、洗濯物を協力して取り込んでいたとき、パイモンちゃんがあることに気がついて、ぽつりと呟いた。

 

「た、旅人のやつ……またドロワーズ忘れてったぞ……」

 

 

✩✩✩✩✩

 

 

 

「で?最初はどこの秘境に行くんだ?」

「んー、秘境に行く前にちょっと採りたい特産品があってね。ちょっと付き合って?」

「まぁいいけど」

「じゃあ、ワープするから手出して」

「はいよ」

 

まずは稲妻のカブトムシを捕まえに行くらしい。風景が切り替わり、見慣れた稲妻の景色が目に映る。そこから蛍と並んで少し歩いたところで、遅まきながら俺はあることに気が付いた。

 

「あ」

「ん?どうしたの?」

「あっ、蛍。そこ…あ。もう遅いわ先謝っとくごめん」

「なに?そんな早口でッーー」

 

直後、蛍の会話が途切れ、彼女の姿が消えた。俺はあー、今引っかかるか〜と天を仰いだ。

 

そう。蛍が引っかかったのは、半年前に俺が蛍への仕返しのためにワープポイント周りに掘った落とし穴。偶然今まで引っかからずに生き残っていたらしい。尻もちを着いていた。前髪で表情が見えないのがとても怖い。

 

蛍はゆっくりと穴から這い上がった。

 

「ねぇ」

「ハイなんでしょう」

「私、カブトムシの他にも、晶化骨髄とウミレイシも欲しいなっ」

「謹んで承りました」

 

3つとも場所がそんなに離れてない物を選んでくれた蛍様に感謝しながら俺は稲妻を駆け巡ったのだった。

 

 

 

 

 

その後、俺たちは璃月の琥牢山に来ていた。ホント便利だなそのワープ。

 

採りたい素材は清心の花だそうだ。あれは璃月の高所に生えているのでなかなか採り辛いことで有名だ。琥牢山に転々とそびえ立つ高い石柱の上に生えてるから、ここから飛んで採りに行くらしい。

 

「で?俺は高度を稼ぐために蛍に電磁離斥すればいいってこと?」

「さっすが迅。話早いね」

「んなこったろうとは思ったよ。ほら、そこ立ってろ」

 

蛍が立っている場所に雷元素を飛ばして、彼女にマイナス極。地面にもマイナス極。宙に引いたレールの1番先にプラス極を置いて、撃ちだそうとすると……。

 

「っ!?じ、迅!ちょっと待ってッ!」

「え?なになに?どうしたん?」

「…………」

 

滅多に効かない蛍の大きな声にびっくりして彼女を見ると、蛍はバシッとスカートを抑えてぷるぷる震えていた。ほんとにどうした?

 

「………んで」

「え?」

「迅が飛んで」

「なぜに?」

「いいからっ」

 

別にスカートは気にしてねぇって。前にインナー履いてるから気にしなくていいって言ってきたのはそっちなのに。

 

「スカート気になるならあっち向いてるか?」

「お願いだから迅が行ってきて……ください」

「そこまでか…。別にいいけど」

 

俺は渋々風の翼を広げて自分に電磁離斥。カタパルトみたいに加速して飛び上がると滑空して清心を回収して戻ってくる。

 

「ほら、採ってきたぞ」

「ほんとにありがとう…」

 

普段ではありえないくらい感謝される。熱でもあるの?

 

どうやら清心はもういいらしい。ワープで今度はモンドまで戻ってくると風車アスターを取りに出かけた。風龍廃墟を潜ってアカツキワイナリー北東の七天神像に戻ってくると、蛍はちょっと用を足しに林に入っていった。

 

それを神像の近くで座って待っていると、一陣のちょっと強めの風が吹いた。直後、少し遠くから「あぁっ!?」という蛍の悲鳴が。何かあったのかと俺は急いで近くまで寄って、一応蛍の方を見ないようにして話しかけた。

 

「蛍っ!どうした!」

「えっ、迅!?…い、いやいや、なんでもない!」

「本当か?結構大きな声が聞こえたから心配したぞ?」

「う、うん。大丈夫……」

「それならいいんだけど…」

 

そういい蛍が薮から出てくる。顔が耳まで真っ赤だ。本当に大丈夫か?俺が心配して顔を覗き込むとわたわたと後ずさりした。

 

「大丈夫か?秘境行ける?」

「う、うん!大丈夫!行こうっ」

 

 

 

 

✩✩✩✩

 

 

 

「さて、観光に行く前に、話すことがあるんじゃないかしら?」

 

各々着替えてエウルアちゃんの部屋に戻ったわたし達は、昨日みたいにダイニングでお茶しながらのんびりしてたところに手を組んで言い放ったエウルアちゃんを見て、こくりと頷いた。

 

「そうだね……。みんな昨日迅くんに何言われたの?最初は…宵宮ちゃんからね」

「宵宮さん、兄さんに耳元で囁かれてそのまま気絶してしまってましたね…一体何を…」

「えぇ〜!まだ行かないのかぁ?オイラ退屈だぞ…」

「冷蔵庫に昨日の残りのタルトがあるわ」

「了解っ!」

 

キッチンにすっ飛んでいくパイモンちゃんを尻目に宵宮ちゃんは照れくさそうに話し出した。

 

「その……宵宮はスタイルも良くて、家庭的で面倒見も良くてめちゃくちゃ魅力的って耳元で言われたんや……そんで、うちの手を迅の胸に当てたらめちゃくちゃ鼓動が早くてな。その時にうちの事をすっごく可愛いって……えへへへ」

 

そう言って頬に手を当ててくねくねする宵宮ちゃんはすっごく嬉しそう。いいなぁ…わたしも面と向かってそうやって言われたい…。

 

次は順番的にエウルアちゃんかな。みんなでエウルアちゃんを見ると、珍しく顔を真っ赤にしていた。エウルアちゃんってここまで赤面した姿はあんまり見せないから、いったいどんなことを言われたんだろ…?

 

「…っ、みんな、ごめんなさい。わたし、知らず知らずのうちに迅にキスしてたみたい」

「「「えぇぇ!?」」」

 

き、キスですかぁ!?なんでぇ!?わたしだってまだほっぺなのにぃ!

 

「せ、接吻ですか!?な、なぜそんな」

「昨日迅に言われたの。前、夜2人になったことがあって……その時に酔っ払って、飛び付いてキスしちゃったみたい」

「そ、それで迅はなんて言ったんや!?」

「その…俺だって我慢出来るわけないだろって。こんどたっぷり恨みは返すって…!」

「そ、それって…」

 

真っ赤にしたエウルアちゃんがこくりと頷いてわたし達は叫びながら椅子から立ち上がる。

 

えっ、キスで我慢できなくなったって、恨みはたっぷり返すって……つまり迅くんがオオカミさん(綺良々的表現)になっちゃうってことぉ!?

 

う、羨ましい……!わたしだって何度そんな妄想をしたことか……。それをやるって言われたのぉ!?

 

「わ、私…もし彼が迫ってきたら…」

「…前に押し倒されたら巴投げするって言ってたし、当然そうするんだよね?」

「えっ」

 

わたしが半目でそういうと、しまった!という顔で固まるエウルアちゃん。

 

「それなら安心ですね。仮に兄さんが迫ってもエウルアさんが巴投げして不成立…と」

「流石にエウルアさんが嫌がったら迅だって手出しは出来んやろ」

「あ、あなた達ねぇ……」

 

うんうんと頷き会うわたし達にげんなりしたように言うエウルアちゃん。

 

エウルアちゃん、ごめんね……!でもわたし達、無理にでもこうしてないと色々壊れちゃいそうで!エウルアちゃんに先を越されそうで冷静じゃいられないというか!別に抜け駆け禁止とかは立ててないから何してもいいんだけどね。

 

「確か…その次は綺良々さんでしたよね。…そ、その、腰を撫でられているように見えたのですが……」

「ええっ、それはほんまかいな!?」

「う、うん。わたしは今度、なでなで6時間コースだって言われた…。わたしが何をしても何を言っても、泣いても喚いても絶対辞めないからって」

「な、なでなでですか?……兄さんに撫でて頂けるのでしたら、それはそれでよろしいのでは…」

「迅くんのなでなではヤバいんだよ…ね、エウルアちゃん」

 

共になでなでの餌食になっているエウルアちゃんも神妙な顔で頷く。

 

「迅のなでなでは、最早愛撫よ」

「「愛撫っ!?」」

「ええ。頭だけで腰が抜けそうになるんだもの。それを全身場所問わず…それを6時間だなんて……綺良々、その頃には昇天してるんじゃないの?」

「正直ホントにそうなると思う。で、猫って基本的に自分じゃ毛繕いできない場所が敏感になりがちなんだよね。私で言うと顎の裏とか、頭とかなんだけど、特に腰……尻尾の付け根が本当に敏感なんだ」

「えっと、ここでしょうか…」

 

綾華ちゃんはスルッとわたしの後ろに回り込むとさわっとわたしの腰を触った。

 

「うにャあんっ!?」

 

思わず凄い声が出てしまって、慌てて口を抑える。脚がピーンと伸びて、テーブルに突っ伏するみたいにおしりを突き出しちゃう。

 

「ほ、本当に弱点なんやな……」

「だ、だから言ったのにぃ……いきなりはだめぇ」

「ご、ごめんなさい綺良々さん……」

 

ぴくぴくしているわたしにエウルアちゃんがこっちに来ると、腕をバンザイさせて、いきなり胸を揉んできた。

 

「にゃぁぁ!?」

「エウルアさん!?な、何を」

「やっぱり前から思ってたけど、綺良々ってものすごく敏感よね。……ひとりで何かやってるの?」

「エウルアさんも思ってたんや。うちもなんか綺良々ちゃんて感覚鋭いなぁって思ってたんよ。ちょいと触るでー?」

「ちょっ、まっ、あんっ…ゃ、にゃぁっ……」

 

多分敏感なのは猫の時とかにめちゃくちゃ迅くんに触られてるからだと思いますぅ!前は猫吸いもあったし……。エウルアちゃんと宵宮ちゃんの手が体をまさぐる度に変な声が出て頭が真っ白になっちゃう。

 

「あやかちゃ、んッ……た、たすけ…ふぁっ」

「………綺良々さんってスタイルいいですよね……」

「ちょっとぉ!?」

「分かるわ。おっぱいとか、下手したらうちと同じくらいあるんとちゃうん?めっちゃ柔らかくて張りもあるし…これでいくら食べてもスタイル変わらんとか…ズルいわぁ」

「まじめに評価しないで!?…んぁっ…やぁっ」

「それに腰周りとかズルいわよこれ。お尻も意外と大きいし…こんなの迅でも絆されるのも時間の問題ね」

「んぅッ…おしり揉まないでぇっ」

 

みんなにめちゃくちゃにされてだんだん余裕が無くなってきた。他の人に触られるってこんなに気持ちいいの!?みんなでこれなら、迅くんなら…ってちがうちがう!まずはこの状況をどうにかしないと!

 

わたしは変な感覚に耐えながら、機会を見計らって……。

 

「…っ、えいっ!」

「ひゃぁ!?」

 

繰り出したわたしの右手は宵宮ちゃんのおっぱいに命中っ!ここから復讐開始だぁ!

 

「ゆ、指が沈む……。宵宮ちゃんのスゴすぎでしょ……これを迅くんはぁッゆ、ゆるせん」

「き、綺良々ちゃん!?色々触ったのはうちが悪かったから、ちょっと手を…っひゃぁぁ!?」

「た、確かに…サラシを巻いているとは思えないですね…」

「お尻も半端ないわね。というか普段片袖脱いでるのでしょう?…軽く露出魔よ?」

「んっ、じ、迅の前以外じゃちゃんと着とるわっ!……っ、綾華ちゃんこそ、着痩せするタイプなのはお風呂の時で知っとるでぇ!」

「えっ、きゃあああ!?」

 

こんな感じでノリに乗ったわたし達は代わる代わるみんなの体を堪能する。温泉で見たことはあっても触るのは初めてで、人それぞれ違う感触にびっくり。

 

今はみんなで綾華ちゃんを攻めてる。普段は鎧着ててそれほどに見えるけど、よく見ると綾華ちゃんもちゃんとある。肌もすべすべで柔らかくていつまでも触れる感じ。

 

そして残るはエウルアちゃんっ!逃げようとするエウルアちゃんの腰に宵宮ちゃんとしがみついて床に引き倒すとみんなで襲いかかった。

 

「あっ、ちょ、ちょっとどこ触ってるの!?」

「おおおお」

「わかるっ、わたしもそういうリアクションになった!」

「で、でっか(素)綾華ちゃんも触ってみぃ!」

「えっと、それでは失礼します……こ、これは……」

「…んっ……あ、綾華っそうやってさわさわ触るのやめっ」

「なるほど。エウルアちゃんはフェザータッチがお好みと」

「こらっ、何をメモってるのよ!?」

 

どうでもいいけど、エウルアちゃんのソックスのベルトって何に使うんだろう。よく見るとこの騎士服えっちじゃない?というか、エウルアちゃんて迅くんがいる時の部屋着といい、結構えっちなやつ多いよね…。だいたいスケスケのやつ着てるし……そりゃ迅くんも我慢できなくなるよ。

 

「ふぅ~エウルア、タルトご馳走様だぞっ!って、お前ら、何してるんだ…?」

 

飛んできたパイモンちゃんがくんずほぐれつしてるわたし達を見てドン引きしてたけど、この争いが終わるまで後10数分かかりました。

 

その後もお姫様抱っこされてベットまで連行された綾華ちゃんの話をきいて素直にいいなぁ〜ってなったり、パイモンちゃんの先導でモンド城で色々な人とあつまったりするんだけど、それはまたの機会にっ!

 

 

 

 

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

 

宝盗団が繰り出した氷の瓶を、消えようとしたデットエージェントに蹴り返す。別の角度から飛んできたこれまた別の氷瓶をそこら辺に飛んでた雷蛍を掴んで投げ、迎撃する。そのうちに1人目の宝盗団に急接近して首を跳ね飛ばし、元素視覚で来るのがわかってきたデットエージェントの奇襲に蹴りを合わせて衝突エネルギーで首を明後日の方向に向けさせた。

 

いやぁ、いつも思うが秘境の敵は英霊で生きてるわけじゃないから好き放題やれて楽だわ。ただ亡骸が消えてしまうから後に盾とか有効活用できないのがあれだけど。宝盗団の氷薬剤師と戦いながらファデュイ雷蛍術士と戦ってる蛍を見るけど、やはり動きに違和感があった。

 

なんだかスカートをめちゃくちゃ気にしている様子で、戦いによってスカートが少しでも捲れ上がる度にバシィと裾を抑えている。それにチラチラとこちらを見てきて何度か目が合った。

 

そこまでされれば流石にちょっと見当が付く。

 

もしかしたらアイツ、今スカートの下普通に下着なんじゃね?と。

 

だとしたら気がついたタイミングは清心行く時。捲れそうになったのがきっかけだろう。最近忙しかったから洗濯する暇もなかったのかな。

 

「蛍!横から援護するぞ!」

「っ!」

 

俺は雷を纏うと雷蛍術士に突進した。あんちくしょうは雷耐性高くて俺の苦手な相手だが、今の蛍の元素は草。スメールの入口にいって共鳴してきたらしく、群玉閣が再建したらそのままスメールに旅立つそう。

 

脱線したけど俺の雷と蛍の草は相性が良くて、彼女は雷が着いた蛍術士に草元素を纏わせた剣をつぎ込んでトドメを指した。

 

歩いて地脈の木の前まで行って、木に手を当てると光とともに手の中に聖遺物が現れた。ここの秘境は「翠緑の影」と「愛される少女」の聖遺物が授かることが出来る。俺には無用の長物だから知り合いの風元素使いにあげようかな。一応握りこんで性能を見る。

 

「……お。いい感じの時計だ」

「………んっ!これっいいのだぁ!」

 

どうやらお気に召したのが出たらしい。すぐさまほかの聖遺物と合成して聖遺物の性能を引き出していく。……あ。

 

多分ゴミになったな。蛍は膝から崩れ落ちると床をバンバン叩く。その拍子でスカートが揺れ、太ももが割と見えてしまった。

 

というか、普段ならドロワーズが見える位置まで捲れたのにそれが見えないってことはやっぱりドロワーズ忘れたんか。見なかったことにしておいて、蛍の頭側に渡りこんだ俺は未だ四つん這いの蛍に言う。

 

「どうする?結構な回数やってるし、そろそろ違うとこいくか?」

「……ぐすっ、そうする」

 

え、泣いてたの?そんなに?俺も今しがた出た聖遺物を性能を引き出してみると…こんなもんじゃないの?

 

「……迅はどうだったの?」

「まぁ、収穫は今出たこれくらいかな?」

「…………は?攻撃時計36.4元チャ5.8?……ゆるさない」

「なんかごめん」

 

でも俺、雷元素使いだからッ…!

 

その後も絶縁(蛍が草とはいえクソ大変だった)火魔女(火渡りと見分けつかん)、雷怒秘境(雷討ちは〇ね)、新しく開拓したらしい草金メッキ秘境を回ってだいぶクタクタだ。時間も夕方で今は焚き火をしながら戦利品の整理をしているところ。

 

「〜♬ ♬」

「…ご機嫌だな」

「やっぱり君と来るといいのが出る。周回も楽だし、また頼むねっ」

 

そう言って腰の聖遺物ポーチに今しがた出た「深林の記憶」の聖遺物をつけてニヤニヤする蛍。俺はその中のひとつに目が止まった。

 

「お、まだ羽は楽団なんだ。俺がやったやつまだ付けてんだな」

「…当然でしょ?」

 

驚く俺に、蛍はさも当然のように言った。

 

「迅がくれたものだもん。ずっとつけるって決めたんだよ?」

「…別に外してもいんだぞ?」

「イヤ。せっかく迅がくれたものだし、強いし。外すことはないと思うよ」

「…そうか」

 

あげたのが大切にされてるってのは普通に嬉しいな。しれっと持ってきたクラムチャウダーをあっためて蛍に飲ませてると、そういえばと彼女は口を開いた。

 

「迅、昨日はホントにやばかったね」

「オマエやっぱ起きてたな」

「まぁね。……で、どうだったの?」

「…正直過去一やばかったよ。仙力がなかったら多分誰かに手を出してた。そんくらい誘惑が激しくて、途中我慢してる自分がバカらしくなっちゃってさ。即座に口噛んでそんな考え消し飛ばしたけど」

「ほんと鋼だね。…でも、なんでそんなに我慢してるの?」

「え?」

 

顔を上げると蛍と正面から目が合う。ほんと綺麗な顔してんなお前。

 

「別に迅も普通に好きな子が居たら告白してその子と付き合えばいいじゃん。迅ならそうそう断られないと思うけど」

「それは、そうなんだけどな…」

 

俺はマグカップを握った指を擦り合わせて焚き火を見つめる。

 

「あー、ほんとこんな聞き方、アレなのかもしれないけどさ……多分あの4人は俺に、特別な感情を向けてくれてると思うんだ」

「……うん」

「それで、4人とも本当に魅力的な子達でさ。想いも本気なんだってすげぇ伝わってくる。だから、そんな4人に対して、俺が『みんな俺の事好きなわけだし…じゃあ…〇〇を選ぶわ!』なんて出来ねぇよ。ちゃんと向き合って、俺が心から一緒にいたい人を選びたい」

「ふーん。…でも一見誠実に見えて、それってさ」

「ああ、残酷だし、男として最低なのもわかってるさ。相手の気持ちを知らん振りして、俺の優柔不断なところを誠実っぽく言い訳して逃げてるだけだってことは。だからこそ真剣なんだ」

「ふふっ、ほんと、君らしいね。…ちなみに、今は誰が優勢なのか教えてくれない?」

 

俺はしばらく考えると、蛍の耳に顔を寄せて。1人の名前を言う。

 

「……」

「……ほんとに君らしいね」

 

そう言って彼女は笑った。

 

 

 

 

 

「よし、そろそろ戻るか、日が落ちそうだ」

「うん。迅、今日はありがとね」

「こちらこそ。相談に乗ってくれてありがとうな。ちょっとスッキリした」

「どういたしまして」

 

そう歩きだそうとしたところで、少し強めの風が吹いた。俺の前を歩いていた蛍のスカートが、本人も油断してたのか、盛大に捲れ返った。

 

 

…………え?

 

 

「えっ、わぁっ!?」

 

事態に気が付いた蛍も慌ててスカートを抑えたが時すでに遅し。俺はバッチリ見てしまった。

 

蛍は真っ赤だ。耳まで朱に染まっていて、こちらにゆっくり振り返る。俺もかける言葉が見つからず、痛いほどの沈黙が流れた。すこしして蛍がポツリと呟く。

 

「………殺して」

「蛍…」

「…お、お願いっ!私を殺してぇ!!」

「……その、ほんとごめん」

「頭下げないでよっ!い、言えばいいでしょっ!ひ、ひひ、秘境周回にパンツ履かないでくる変態旅人って!言えば良いじゃん!!」

「……」

「無言で本気で哀れそうな目でこっちをみないで!?ち、違うのっ!元々ドロワーズだけ忘れて来て、トイレした時に風で飛ばされたのっ!」

「うんうん。そうだよな。大変だったよな。いいんだ、俺はわかってるから」

「いやぜぇーったいわかってない!ほら!言いなよ!変態って!だって私、君と1日、ずっとノーパンで過ごしてたんだよ!?スカート捲れたら即アウトの状態で戦って、聖遺物強化して一喜一憂してるなんてもうそんなの……」

「蛍、一旦落ち着こう。ほら、帰ったら美味しいご飯作ってあげるからさ。ほら、俺ももうすぐ璃月に戻るからさ、その時にも美味い飯沢山食べさせてやるから」

「うううう………。迅の優しさが痛いよぉ」

 

しおしお〜っとへたり込んだ蛍を何とかして励まそうとする俺。蛍は滅多に泣かないのだが、今はもう凄い涙目だ。まぁ気持ちはわからんでもない。すると、俯いた蛍がポツリと呟いた。

 

「……てよ」

「へ?」

「感想、言ってよ」

「いやなんでやねん」

「いいからっ!せめて見せちゃったモノの感想を聞かないとっ!せめてそこだけでもいい感想を貰わないと私死ぬっ!迅の顔見る度に私死にたくなるからっ!お願いっ!」

 

なんだよこの地獄みたいな空気。ちなみに事件発生の時蛍は俺に背を向けていたので見えたのはお尻だ。お尻にそんな善し悪しなんてわかるわけもない俺は、とりあえず褒めようとなんとか絞り出した。

 

「………意外といいお尻でした」

「…………」

「……………」

 

えっと、とりあえず俺も死んだ方がいいか?

 

「………聞かなきゃ良かった」

 

俺も言わなきゃ良かったよ。





・蛍
まさかのノーパン秘境周回をやり遂げた(?)唯一の冒険者。最近忙しく、今日履いて行けるのがもう紐のやつしかなくて、履き直す時に風に飛ばされた。後日清水町付近を歩き回る栄誉騎士の姿が見えたとかなんとか。

・迅
鋼の理性を持ち、仙力による矯正精神統一で回復能力もある最強の理性の塊。こいつの理性がないと作品が成り立たない。可哀想だけどもうちょっとだけ苦しんでくれ(dy作者)

・エウルア
迅にキスちゃった嘘が晴れずに信じ込んでしまった。もうすぐ迅と綺良々がモンドを離れて璃月に行くので少し寂しそうにしている。何かもうひとつ迅と思い出を残したいそう。

・綾華
着痩せするタイプの清楚お嬢様。一応胸部の戦力としては4人中最弱だが、全然普通にある。かわいたスポンジの如くそっち系の話を吸い込んで覚えていて、帰ったあとの従者と兄貴の心労や如何に。

・宵宮
迅に言われた「すっごい可愛い」に自信を取り戻した。時々それを思い出してはニヤニヤしている。一連の話で1番得した人物。迅の気遣い満点の行動にもう一度撃ち抜かれて「タイプの人」から「結婚したい人」に進化(?)した。

・綺良々
敏感エロ猫又。あそこで宵宮が止めなかったら多分1人で行くところまで行っていた。キス魔へと順調に成長中。



綺良々達のモンド観光は後に短編で出そうと思いますのでお楽しみに。
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