職場の先輩がウチの飼い猫に似ている件   作:猫好きの餅

29 / 80

おまたせしました。

最近綺良々回がなかったのでここでにゃんだふります。

読者の皆さんがというより、私が定期的に綺良々回を書かないと死ぬので欠乏症で(倒置法)

それと、今回から少し、大胆な原作改変があります。後のフォンテーヌ編に繋げるためのものなので、「まぁそんなこともあるよなぁ」位のテンションで読んでいただけると幸いです。

それと毎度誤字報告、ほんっとにありがとうございます!!
自分の打ち間違いが多いので、いつも迷惑をかけてしまっていて申し訳ありません。次からはもっと投稿する前に目を通すようにしますっ!

…誰かiPhoneのキーボード大きくする方法を教えて欲しい



14話 猫好きは定期的に猫を撫でないと死ぬ

 

 

 

「あの、すみませんっ!よろしければインタビューをさせていただけませんかっ?」

 

胡桃と別れて、綺良々を探しながら歩いていると、片眼鏡をかけたピンク髪の少女に呼び止められた。

 

フォンテーヌの人かな?服の雰囲気や顔立ち、腰に下げた写真機で推測する。

 

「…えっと、それを聞いてるの、俺…であってる?」

「あっ、はいっそうです!紹介が遅れました!私、フォンテーヌで記者をやっている、シャルロットと申します!」

 

他にも沢山人が歩いている中で呼び止められたので一応と自分に指をさして聞いてみると、こくこくと頷くシャルロット。

 

「私の目は誤魔化せませんよ…?その刀とその青い瞳!腰に着けた雷元素の神の目!さては貴方、そうせーーー」

「ちょーいちょいちょいっ!わかったから!インタビューなら受けるからその名前を往来で叫ぶのはやめてくれっ!その異名嫌いなんだよ!」

 

俺の痛い異名を言いそうになるシャルロットのセリフを遮るが、遅かったらしい。周りからヒソヒソ俺の噂話が聞こえてくる。やれ思ったより若いだの、璃月の英雄だの、七星のパシリだの。って、オイ、最後の言った奴出てこいや。それならまだ異名で呼ばれた方が良いわ。

 

俺はシャルロットに連れられて通りの端まで来る。

 

「にしても、フォンテーヌからわざわざ璃月港までどうして取材を?」

「もうすぐ璃月のお祭り、海灯祭がありますからね。そういうお祭り事はフォンテーヌにはなかなかないので、新聞に取り上げたら人気が出るかなと。私の知り合いのフォンテーヌ人は何人か、海灯祭に行く予定だと聞きましたね。…よぉーし!有名人の取材できるなんて!私っツイてるぅ!」

「なるほどね。…で、何が聞きたいんだよ…、俺一応人探ししてるからあんまり時間取れないぞ?」

「わわっ、そうなんですか、…えぇっと、では…貴方は魔神オセルの攻撃から璃月港を救ったと言われていますが、どうやって防いだのでしょうか?話によると、空を覆うほどの水元素攻撃だったと言われていますが」

 

「超頑張った」

 

「…………。つ、次の質問です。1年ほど前、モンド城に魔物の進行がありました。アビスの指揮で迎撃に出た騎士団を挟み撃ちにした魔物群を駆けつけた貴方1人で殲滅したと聞いてますが、どう戦ったのですか?」

 

「超超頑張って戦った」

 

「……………みなさーん!ここに璃月の英☆雄☆!蒼閃じーーー」

「ごめんごめん!!ちゃんと答えるから!」

 

全部俺の出自とか奥の手に関わる質問だったからそう答えるしか無かったんだよ!

 

「もうちょっと!もうちょい簡単というか、緩めの質問はないか?」

「……次はちゃんと答えて下さいよ……?…緩めですか……んー、あ!これならどうでしょう?」

「な、なんだ?」

 

シャルロットは少しだけ俺から視線を外して少し目を見開くと、そうだっ!と手を叩いて質問してくる。

 

「最近、2本の猫の尻尾が特徴の美少女とよく行動を共にしてますが、どういう関係なんですか?」

「いやなんでそれを知ってんの?」

 

最近も最近だわ。しかも君フォンテーヌの人だろ?どういう情報網だよ。

 

でも言ってしまった手前、答えない訳にはいかないので、俺は当たり障りのない答えを出した。

 

「職場の先輩だな」

「なるほど、職場での付き合いだけで、友達では無いんですね?」

 

………。

 

「……友達です」

「ハイ友達ですねー!ダメですよ、恥ずかしいからって親密度を格下げするのは〜」

 

こいつにもデコピンしたろうか。氷の神の目が見えるから超電導して威力も出そうだ。

なんでだろう、例えば嘘でも綺良々との関係を「ただの職場の先輩」で片付けたくなかった。せっかくだし、本人もここには居ないから思ったままに答えてみようかな。

 

「なるほど、そのお友達さんって、それはもうめちゃくちゃ可愛いと璃月港で有名なんですよ。やっぱり、貴方から見てもそう思いますか?」

「んー…、まぁそうだな。元気な所とかとても可愛いと思う。それに性格も前向きでとにかくやってみるって感じだから、一緒にいて助かる時が多いかな」

「お、おお……。意外とちゃんと答えるんですね…、彼女の事をそこまでわかっていて、ここが好き!とかあるんですか?」

「そ、それ答える必要あるか?」

「あります!なぜなら、私が気になるからですっ!」

「完全に私利私欲じゃねーか」

 

まぁ、思った事は答えようって決めたし、口に出すことで綺良々に対して思っている事が改めてわかるかも。

 

「…そうだな……綺良々の好きな所……声、かな」

「ほうほう!声ですか!なかなかマニアックですね!どういう声が好きなんですかっ?」

「そもそもの声も好きなんだけど、驚いた時とか嬉しい時とかにポロッと盛れる声が良いんだよ。それと、あいつ嘘を着くのが苦手なんだけど、嘘をつく時にもうあからさまにイントネーションが変わるんだ。そういう声が好きかな」

「………」

「な、なんだよ」

 

しまった、キモかったかっ!?シャルロットが目をぱちくりしている。そして、おお…と歓声なのか引いてるのかようわからん声を出した。

 

「いえ、すごく解像度が高いなぁと思いまして!普段からよく見られているんですね!」

「そう…なのかな…?」

「そうですよ!そういう細かいところまでは、相当仲が良くならないとわからないですっ!」

 

シャルロットはなるほどなるほどと手帳の上のペンをものすごい速度で動かす。勢いで喋っちゃったけど、恥ずかしいからコレ記事にしないで欲しいんだけど…。

 

でも、なんだか悪くない気分だ。彼女の良いところや可愛いところを話すってなんだか、自分まで嬉しくなってくるな。……少しだけ自分の気持ちがわかってきたような気がする。

 

俺がひとり納得していると、砂糖を食べたような顔をしたシャルロットが、手帳を閉じる。

 

「はいっ!ありがとうございました!今日のところはこの辺までで大丈夫です!」

「今日のところは?え、またやんのこれ」

「いやぁまだまだ聞きたいことが沢山あるのですが、ちょっと急にコーヒーを飲みたくなってしまったので、また後日……あ、写真撮ってもいいですか?」

「ま、まぁいいけど……」

 

また後日かいな…、まぁこちらにも2週間滞在する予定だからいいんだけどさ。俺が承諾すると、シャルロットは腰の写真機を持った。レンズの調整をしながら、彼女の口がニヤニヤと笑っている。何笑ってんだと俺が内心首を傾げていると、シャルロットはカメラを構えながら、なんでも無い様に言った。

 

「うーむ、貴方1人だと味気ないですね……、あの、そこのさっきから見てた猫しっぽのお姉さん(・・・・・・・・・・・・・・・・・)っ、良かったら一緒にどうですか?」

「…ハイ」

 

え?

 

俺の後ろ、つまり通路側からすすっと画角に入ってきた、顔が耳まで真っ赤の綺良々が俺の隣に並ぶ。

 

「はいっ、チーズ!」

 

頭の中が真っ白になったまま写真を撮られる。え、ちょっとまって?

 

「はいっ!今日はありがとうございました!コレ写真ですっ!一応2枚刷って置いたので、良かったらどうぞ!」

 

言われるがままに、間抜けな顔の俺と顔真っ赤の綺良々のツーショットを受け取ると、シャルロットは俺にお礼をいって人混みの中に去っていった。

 

取り残された俺と真っ赤綺良々。

 

「………」

「…………」

「………………聞いてたの?」

 

俺が現実逃避しながら聞くと、こくりと頷く綺良々。

 

「…迅くんを探してたら…君の異名を叫ぶ声が聞こえたから……」

「……そっか。……月海亭、行くか」

「ウン」

 

俺達は少々おぼつかない足取りで歩き始めた。

 

並んで歩いていると、綺良々がするりと手を握ってくる。ちらりと彼女の方を見ると、身長差の関係で俺からは髪で表情が見えないが覗く耳が朱に染まっていることから照れているのがわかった。

 

「…わたしの声、すきなの?」

「…ああ。もうその俺に尋ねる声が良いよ」

「…そ、そうなんだ……えへへ」

 

手袋越しでも、すりすりにぎにぎしてくる手がとても気持ちいい。俺達が人通りの少ない玉京台へ登る階段に入ろうとした時、綺良々が耳元にすっと寄ってきた。

 

「わたしも、迅くんの声、すきだよ?」

 

その言葉だけでも震え上がりそうだったのだが、何よりもあかんかったのが、綺良々が勢い余って耳元で止めるはずが止まらずに俺の耳に唇を当ててしまった。

 

ちゅッというリップ音が俺の右耳にダイレクトに聞こえて、昼間唇にも感じたとんでもなく柔らかい感触が耳にも感じる。

 

「わっ!ごごごめんっ!わたし、勢い余って…」

「だ、大丈夫……!!大丈夫だから…!!」

 

い、今のはヤバい。タダでさえエウルアのが忘れられないのに、綺良々にまで。難攻不落を自負していた俺の理性がエウルアのキスで瓦解したのか、自分でも驚くほどにがりがり削れた。

 

まずい、癒しがないと耐えれる気がしない……何処かにねこか綾華いないか!?猫を撫でるか綾華の妹オーラに当てられれば俺は回復する。これマジね。

 

2人してあわあわしていると、後ろから声が掛けられた。

 

「あら?迅と綺良々じゃない。モンドから戻ってきたのね」

 

振り返ると、余威戦の準備で忙しいのか、たくさんの書類を持った刻晴がいた。

 

「ああ、予定の日よりまだ少しあるけど、進捗とか当日の役割とかもう一度話した方がいいかなって」

「流石ね。丁度、この後凝光と話し合いをするつもりよ。あなた達も来る?」

「そうさせて貰うか、ちょっと宿探しは遅れるけど、綺良々はいいか?」

「うんっ、勿論だよ。そっか…厄災と戦うんだもんね…ちょっと緊張してきたよ…」

「わかるわかる。だけど俺、こういういつもと違う空気好きなんだよなぁ」

「貴方は前からそうよね…、変だわ」

「失礼な。あ、それ俺が持つよ。その積み方じゃ前見えなくて危ないだろ?」

「え、ええ。ありがとう」

 

俺は刻晴が持っていたてんこ盛りの書類や箱を受け取って階段を歩き出す。俺の身長でも足元が見えないから刻晴だと多分前が一切見えないな。ったく、七星に何運ばせてんだ。

 

 

「ああ、刻晴さん……おかえりなさいってえええ!?書類が宙に浮いています…刻晴さん、いつの間に仙力をぉ〜…」

 

月海亭に入った俺たちを見てちんぷんかんぷんな事を言う甘雨さん。よく見なくても目の下に隈が出来ている。綺良々が心配そうに近寄って話しかけているけど「だ、大丈夫ですよぉ〜」とあらぬ方向に手を振っている。これは……やってるな?

 

「刻晴」

「なに?」

「これは…4くらい?」

「5よ」

「5(徹)か……」

 

周りの人達に目を向けると、みんなに「私達も休んでくださいっ!って言ったんです!でもこの人、休むどころか布団の中でも仕事してるんです!お願いしますっ!甘雨さんを寝かしつけてください!」と懇願される。

 

「迅、戻ってきていたのね。ちょうど良かったわ」

「凝光さん、こうなる前に止められなかったんですか?」

「止めたわよ…」

 

どうやらダメだったらしい。奥の部屋から出てきた凝光さんにも聞くが、ため息と共に首を横に振られた。この人、普段はほんわかしてるのに休暇取ってくれって頼んだ時は頑固だからな…。

 

「迅、悪いんだけどちょっと自宅に搬送してくれないかしら。綺良々さんは、少し当日の話があるから残って貰える?」

「わ、わかりました。迅くんは1人で大丈夫?」

「ああ。この作業は慣れてるし、家にいる申鶴に引き渡せばいいだけだからな。すぐ戻ってくるよ」

 

っし、まずは甘雨さんを我に返さないと。俺は甘雨さんが首から下げている鐘をカンカン鳴らす。

 

「わっひぃ!?じ、迅!?何故ここに!?」

「おはようございます甘雨さん。さっきからいましたよハイほら立って!」

「ま、待ってください…!まだ寝るのはいやですっ!まだ5徹ですからっ」

「ダメです。明後日昇空儀式なんですから体調を整えてください!」

「き、聞いてください迅。昇空儀式は明後日でしょう?なら明日まで働いて、それから寝れば、キリが良くないですかっ?」

「………」

「無視ですかっ!?」

 

ちなみにこれが七星のパシリしてた頃の日常風景。いや普通に考えて甘雨さんが残業徹夜しないと仕事回らない時点でおかしいだろ。この人に至っては仕事回ってるのに「明日の分の仕事をしなくては…!」とか謎なこと言うし、いつも俺がベッドに緊急搬送していた。

 

刻晴と凝光さんの「いや、貴方は頼むからもう休みなさい」の言葉を受けて項垂れた甘雨さんを連れて、俺は外に出た。

 

「うう……、仕事…」

「いやどんだけ仕事したいんですか、5徹とか死にますよ?」

「確かに人の貴方なら厳しいかもですが、私は半仙なので、別に平気なんですよ?」

「そうかもしれませんけど、いざと言う時に体壊しますよ?…そういえば、余威戦のときは甘雨さんはどこ配置なんです?」

「私は帰終機隊のところです。役割は貴方と同じでもしもの時の保険的な立場だと思います」

「甘雨さんなら、本気出せば海ごと凍らせられるんじゃないですか?」

「不可能ではないですが、全て私がやってしまっては人の国とは言えませんよ」

 

この会話でわかる通り、甘雨さんって普段おっとりしてるから考え難いけど、めちゃくちゃ強い。つか、元素力の扱いに関しては俺も全然敵わない。

 

俺の元素爆発の元になってる元素力を仙力に溶け込ませる技だとか、元素を圧縮して貯蓄するとかは全部、甘雨さんに教わったのだ。それに、この人も神の目を持っているが、基本使わない。仙力を変換して出すだけの元素力でさえ俺は敵わないのだから相当だ。

 

だからぶっちゃけ神の目を使用して、貯蓄してある元素を解放してぶっ放したら璃月港近海を一撃で凍らせる位は出来そうなのだが、その姿を殆ど見せない為、本当の実力を知る人は少ない。

 

少し歩いて甘雨さんの自宅に着く。戸を叩くと中から申鶴が顔を出した。

 

「迅ではないか、姉君をつれて、どうしたのだ?」

「ああ、ちょっとこの人仕事で無理してな。寝かせたいんだ」

「承知した」

 

申鶴は甘雨さんを軽々と担ぐと「お、降ろしてくださいっ」と慌てるのをまるっと無視して寝室に入っていくと、少しして戻って来た。

 

「寝たか?」

「ああ。いろいろ文句を言っていたが、暖かい牛乳と清心を食べさせたら直ぐに寝た。疲れが溜まっていたのだろうな。……ぬしは、もう戻るのか?」

「そのつもりだけど…、てか、自称お姉ちゃんはやめたのな。アレ凄いビビったぞ?」

「甘雨の姉君に誤解だと何度も諭されてな。…迅が良ければ我は喜んで姉になるが」

「遠慮しとく」

「ふっ、事態が落ち着いたらまた来るといい。その時は歓迎しよう」

「うん。また来るよ」

 

申鶴に見送られて甘雨さんの家を出て、月海亭に戻ると、刻晴と凝光さん、綺良々とで本格的な作戦会議をした。

 

長くなったので要約すると、余威が出現したら、弧雲閣の帰終機隊、群玉閣の凝光さんの岩砲弾、死兆星号の帰終機の3方向から攻撃を仕掛ける。余威のヘイトが分散するようにあちらの攻撃の瞬間に撃ち込んで中断をさせ続け、撃退を目指すのが大筋だな。そこで綺良々はシールドで帰終機隊の防衛を、俺は群玉閣で全体を見渡して、ヤバそうなところに参戦する。練習した風の翼の飛行を活かして時には単独でヘイトを買って時間稼ぎって感じ。

 

結構は明後日。明日はその準備に追われそうだ。住民の避難も明日のうちに済ませるそう。

 

話し合いを終えると、その場は解散になった。その後は刻晴に宿を紹介してもらって、滞在中はそこに泊まることに。ちなみに綺良々とは別部屋だ。「はい、綺良々はあっちの部屋ね~」と嫌がる綺良々の首根っこを掴んで引きずって行く刻晴に正直感謝した。

 

いやね、最近というか稲妻出てからの半月、なかなか部屋で1人になれなかったから、ちょっと1人で落ち着きたかったんだよな。特に今日は色々あったから。

 

…正直、まだ感触を思い出せる。キスとかそういう経験は勿論なかったから、エウルアにかまされたキスがずっと頭の中に残っていた。そして結局なぁなぁの状態になってしまったことにベットで1人頭を抱えた。

 

「やっぱり、俺から動かないとだめなのかな……」

 

仰向けになってぼーっとしてるとそう口から零れる。このままぐずぐずしていたら他の面々から同じようなことを言われ、下手したら全員エウルアと同じく強制キープ状態になってしまう。それだけは男としてダメな気がした。

 

それと、シャルロットの取材の時に綺良々のことを話していた時のあの感じ…。他の子にはあまり感じない部分の感情だった。

 

神里綾華は俺が赤ん坊の頃から世話してきたので最初は可愛い妹だったのだが、神里をでて、稲妻を出て、再会した後は綾人兄さんや俺の後を着いてくる雰囲気から一転して逞しく、美しく成長していた。その彼女が時たま見せてくる昔のような甘え方にドキリとした事は何度もある。

 

宵宮は同様、帰ってきてから魅力に気がついた。世話好きな所は変わってないが、何せ顔が良過ぎる。いつも笑顔を絶やさなくて考えに芯もある彼女がふと見せる可愛らしい乙女なところにやられそうになったことは何度もあった。

 

そんで、今日の昼間にかましてきたエウルア。いきなりキスと告白をされると思ってなかった俺は、どちらも初めての体験で強烈に記憶に刻み込まれている。前までは喋れば「恨み」話せば「精算」と素直じゃなかったのだが、再会後はほぼ別人みたいに雰囲気が柔らかくなった。しかもスキンシップが綺良々と並ぶ程にダイナミックなので、こちらの心臓と理性を同時に削ってくる。

 

最後に綺良々。この子はまず見た目が俺のどストライク。いや、女の子の顔みてストライクかなんて初めてだからほんとにそうかはわからないけど、元気いっぱい、天真爛漫、可愛い仕草、たまに見せる猫らしい部分や、昼間言ったが声なんかもとてもいい。胡桃の時の「ほえ"ぇ!?」とか正直録音したかった。それにボディタッチが面々の中で1番多いので、思いのほか良いスタイルも相まって攻撃面も完備。最強かな?

 

エウルアの部屋に滞在中の綺良々は普段仕事してる時じゃ見られない様子がたくさん見れて、しかもなでなでもあったからだ。癒されつつも日々理性との戦いだった。

 

………………。

 

しばらく考えて、改めてみんないい子だよなぁとため息を吐く。仮に今この中から1人を選ぶとしても、接戦すぎて「強いて、誰々」みたいな答えになってしまいそう。それは、どうなのかと思うと同時に、こんな事してるからいつまで経ってもうだうだしてるんだという悩みも降り掛かってくる。

 

結局、この子じゃなきゃ嫌だ。という何かを見つけない限り答えなんて出ないのかなって思うんだ。とりあえず付き合ってみて、それから選べばいいって人もいるとは思うけど、それはなんかしたくないんだよな。

 

…だから、今後はそれを見つけていこうと思う。彼女達のアクションを待つだけじゃなくて、俺からも何かしてみようかな。あれだけ色々されたんだから多少俺からやってもいいように思えるけど、やっぱりちょっぴり怖い。せいぜいなでなで位だ。…いや、女の子の頭を撫でるのもハードル高いか?嫌がってないからいいかな。つかそれ考えるのもう遅い気がするわ。

 

コンコンっ。

 

そんなことを考えていると、部屋の扉が控えめに鳴らされた。夕飯と風呂は済ませてきたし、あとは寝るだけなんだけど。

 

「はーい、…って、綺良々?」

「迅くん…こんばんは」

 

あれ、俺目ェある?水色のワンピース姿の綺良々が可愛いすぎて視界が一瞬ないなった気がした。

 

「…どうかしたか?こんな時間に」

「え、えと…、もし迅くんが迷惑じゃなかったら…なでなでして欲しいなって………だめ?」

「いいよ」

 

今悩んでる所にその上目遣いは効きますよ綺良々さんっ!

 

つか口が勝手に即答してた。今日のことがきっかけで俺側のセキュリティもだるだるになってるらしい。

 

綺良々を部屋の中に招いてベッドに座らせると俺も隣に腰掛ける。するとすぐ様綺良々が身を寄せてきた。それを確認した俺は自分に素直になってみようと、とりあえず寄せてきた綺良々の腰に腕を回してみる。

 

「ひぅ!?…どどうしたの迅くん?」

「今日はちょっとな」

 

そう言って抱き寄せた手で彼女の頭を優しく撫でてあげると、くたりと身体の力が抜けていった。

 

「そういえば、その服どうしたんだ?」

「ふにぁ~…んと、これはね、この前宵宮ちゃんや綾華ちゃんとモンドを観光した時に買ったんだ。……どうかな?」

「ああ、すっげぇかわいい」

「ふぇっ!?……ああああありがと…」

 

いつもは心の内に留めていることを素直に口に出すと、綺良々は顔を真っ赤にして後ずさろうとするが腰に回した腕がそれを許さない。

 

「じ、迅くん……今日なんか積極的だね…」

「ちょっと自分に素直になって見ようかなって。口には出てないけど毎回思ってたぞ?」

「そっそうなの?……えへへ、嬉しいな」

 

綺良々は俺の肩に顔を寄りかからせてくる。彼女のいい香りがふわっと香ってきて、なんで女の子って、こんなにいい匂いするんだろうとしみじみ思う。

 

しばらく頭をなでなでしていると、心做しか綺良々の目がとろんとしてきた。自分のなでなでに特殊効果があるなんて知る由もない俺は眠くなってきたのかな?と構わず撫で続けているうちに、少し指が綺良々の耳に当たってしまう。

 

「ふぁ!?」

「わっ」

 

あまりにビクンっとなるものだから俺も驚いた。

 

「みっ、耳はだめ…」

 

耳も赤く染めてそっぽを向く綺良々を見ていると、なんか、もっとしてあげたい気持ちがむくむくと育ってくる。俺は、綺良々の耳元に口を寄せて囁いた。

 

「じゃあ、肉球とどっちがだめ?」

「にゃあっ!みっ、みみぃ!」

「へぇ、じゃあ肉球はいいのか」

「えっ、ぁっ、ぅ…じ、迅くんなら……いいよ?」

 

え、まじでいいの?

 

綺良々はごろんとベッドに寝転がると、ピンク色の肉球が着いた猫の脚を俺の膝の上に置いた。仰向けなので綺良々の長い髪がベットに広がってなんだが扇情的。

 

脚を持ち上げてみると、柔らかい猫の毛がもう気持ちいい。脚を上げすぎるとスカートの中身が見えてしまうので気をつけながら、俺は恐る恐る足の平の方の大きい肉球を指で押してみた。

 

「んっ」

 

おおお、すっげぇこれ。感触は猫の肉球の大きいバージョンなんだけど、この大きさの肉球を触ってるって現実になんか感動してきた。

 

「んぁっ」

 

指の方の肉球を触ると、ちゃんと猫の爪がz軸に折りたたまれて入ってる。爪は手入れがちゃんと行き届いてて、無闇にものを傷つけるような鋭さは無い。妖力を使って爪を伸ばすって言ってたから物理的な鋭さはそんなに要らないんだろうな。

 

「んにゃぁっ、じ、じんくっ…んんっ……そんなにッ、もまないでぇ」

 

いやぁしかし、この肉球は素晴らしい。いつまでも揉める。凄い勢いで癒されるわ〜。殆ど夢中で肉球をぷにっていると、何度か綺良々がビクビク動く。

 

見ると綺良々が顔を真っ赤にして、目の焦点が合ってない。やべ、やりすぎちゃったかな。ワンピースの裾が捲りあがってることにも気づいてないみたいで、俺は即座に目を逸らした。

 

「き、綺良々?大丈夫か?」

「うぅ〜…迅くんの意地悪……触りすぎだよぉ」

 

慌てて抱き起こすと、恨めしそうな目で睨まれて脱力する頭を俺の肩に当てる。

 

「えっと、その……ごちそうさまでした」

「お粗末さまでしたっ!もうっ!」

「わっ」

 

とりあえずお礼を言おうとして、謎の感謝が飛び出たところでぽっぽこ怒った綺良々に逆に押し倒される。俺の腹当たりに跨った彼女は、俺をくすぐろうと脇腹や脇などを触っているが。

 

「……迅くんって弱点ないの?」

「そういうのは、戦いで不利になることもあるから、頑張って消した」

「ストイックすぎるよ……」

 

げんなりする綺良々を尻目に俺は腹筋の力だけで起き上がる。上に乗った綺良々はわわっと後ろにいきそうになったが俺が背中を支えた。

 

そのまま頭を撫でながら、ちょっと気になってたことを聞いてみる。

 

「もしかして、緊張してるのか?」

「……うん、なんか、聞いてた感じだと本当に大きな相手みたいだから、わたしが役に立てるかなって」

「そんな心配しなくて良いと思うぞ?綺良々の作るシールドめちゃくちゃ硬いし。それで帰終機部隊を守ってやってくれ」

「うん。…迅くんは群玉閣にいるんだもんね。…もし、わたし達が危なくなった時は…助けてくれる?」

「おう、任せとけ。だから安心してみんなを守ってくれ」

「……えへへ、ありがと。信じてるね」

 

そのままもうしばらく撫でて、あ、そうだとシャルロットに取られた写真を綺良々に渡した。片や俺が綺良々を褒めちぎっていたのを聞いていて真っ赤の綺良々と、それを聞かれてた事に放心してる俺のなんとも間抜けなツーショットだったが、初めての写真だったようで綺良々はとても喜んでいた。後で絶対に撮り直してもらおう。

 

その後はもう遅い時間なので、そろそろ部屋に戻ったら?と提案したら案の定「や」とベットに張り付いてしまった。この前の望舒旅館やエウルアの部屋と違って、ベットは完全1人用で狭いんだけど。

 

そんな俺の説得も通じず、結局一緒に寝ることになった。この状況に慣れてきている自分が怖い。ただ、何故か綺良々と一緒にいると安心する。……やっぱ、そういうことなのかな。

 

そんなことを思いながら2人して眠りに落ちた。

 

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 

そして迎えた昇空儀式。昨日の内に璃月港の避難は終えてあり、各所に部隊も配置済み。あとは儀式を開始して跋掣をおびき出すだけ。

 

しかし、作戦に臨む面々は慌ただしかった。

 

「甘雨、迅はどこに行ったのっ?」

「わかりません!部屋にも誰もいませんでした。荷物はあったので璃月を去ったわけでは無さそうですが…」

 

そう、時間になっても群玉閣に迅がやってこなかったのだ。凝光は直ぐに確認に向かったのだが、誰も彼の姿を見たものは居ないという。

 

突如バックれた、という捉え方をされても仕方がない事態に不満を漏らす千岩軍の兵士もちらほら見かけたが、刻晴や甘雨の「彼はそういう人では無い」と言い放った声で口を噤んだ。

 

綺良々はそのことを聞いて最初は驚いたが、恐らく彼になんからの事情があるのだろうと信じていた。自分は言われた通り、帰終機隊の兵士達を守るだけだと頬を叩いて気合を入れる。

 

時間も差し迫る中、凝光は迅抜きで儀式を決行する事にした。元々居ない手だったのだ、旅人と申鶴も参戦した事で、いけると判断したのだろう。群玉閣の結束ワイヤーを切り離し、暗雲立ち込める海へと群玉閣の舵を切った。

 

その直後、海中から大きな蛇のような怪物が水柱を上げながら現れた。それを迎え撃つように、弧雲閣の離島に配置された帰終機隊に緊張が走り、群玉閣の凝光は岩元素を広げ、跋掣の脇を北斗が指揮する死兆星号が回り込んだ。

 

神と仙人の国から人の国へ成長する人々の戦いが、今始まる。

 

 

 

 

 

 

 

その様子を天衝山の頂上から見ていたファデュイの雷蛍術士はニヤリと口角を上げると、「上」に報告する為に、姿を消した。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。