職場の先輩がウチの飼い猫に似ている件   作:猫好きの餅

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尊死者を出すには(投稿)スピードが大事ってばっちゃんが言ってた。


16話 病室で目覚めたら、勝手に歩き回らないようにしましょう

 

 

 

目を覚ますと、白い天井が目に映った。あれ?流石に死んだと思ったのに、もしかして俺生きてる?

 

「………どこ?」

 

痛む身体を起こして周りを見ると、璃月港の病院の一室のようだった。部屋には俺以外誰も居なくて、身体を見ると包帯でぐるぐる巻きになっていた。かなりの大怪我だったから当然か。

 

というか、なんで俺生きてんの?確かに仙力、つまり俺の生命力がゼロになった筈。だけど今は仙力がすっかり全回復している。

 

全身の傷の状態を見てみると、普通に治せそうだったので能力を使って完治させる。包帯を取っ払い服を来て、壁に立て掛けられていた霧切を取って引き抜くと、切っ先から30cmほどが折れて無くなってしまっていた。多分タルタリヤ戦でガタが来たんだろうな。この刀が無かったら俺はもうとっくに死んでいた。少し悲しい気持ちと共に、感謝の気持ちが湧いてでる。

 

チンッと音を鳴らせて霧切を納めると、空いている病室の窓から風が吹いてきた。思わず目を瞑ると、その窓から声が響く。

 

「なんだ、起きていたのか」

「留雲借風真君…」

 

目を開けると、そこには内側が白銀に染まった長い黒髪を1つに結って赤渕のメガネを掛けた美女が立っていた。

 

「貴方が人の姿で来るとは、珍しいこともあるのですね」

「仕方がなかろう?…今の璃月は人の国なのだからな。それと、妾に何か言うことがあるのではないか?」

「お土産は今度持っていこうかと思ってましたけど」

「ふん、帰って来たのならまず師匠に挨拶位するものだろう。降魔大聖や甘雨と申鶴には挨拶しておいて、妾にだけ来ないとは、どういうつもりだ?」

「……だって、いちいち絶雲の間に行くの正直めんど…「何か言ったか?」いえなんでもないです」

 

そう言って頭にチョップを見舞ってくる俺の師匠の1人、留雲借風真君はため息を吐いて腕を組み、窓枠に寄りかかる。

 

「ひとまず報告はしておこう。あの後跋掣の撃退は成功した。こちらの被害は殆ど無いな。ただ、1人重体者が出てしまったのが悔やむところだが」

「えっ、それは本当ですかっ!?い、一体誰が……」

「お前だ馬鹿者」

「あっそうか」

 

2度目のチョップを脳天に貰ってベットに座り直す。完全に自分を省いてた。

 

「そう言えば、何故俺は生きてるんです?確かに俺はあの時仙力を使い切って死んだはず」

「ああ、バッチリ止まっておったぞお前の心臓。海に落ちるお前を甘雨がギリギリキャッチして仙力を注がんかったら助からなかった。甘雨には感謝しておけ」

 

え、マジですか。甘雨さんも仙力消費してたのに俺に分けてくれたの?マジでもう頭上がらんやん。

 

「それと、迅。自分がどれくらい寝ていたと思う?」

「え……?えっと、今丁度午前だから、一晩とか?」

「3日だ」

「みっか!?」

 

えっ、マジで!?俺そんなに寝てたの?って、事は俺、みんなに相当心配掛けたんじゃ……特に綺良々に。

 

「えっと、皆の様子とかって」

「はぁ、そんなもの自分で確認してこい。怪我は治したのだろう?」

 

俺は頷くと、いつもの着物を羽織って立ち上がった。留雲借風真君はもう帰るらしい。今度挨拶に行きますと言うと、こちらの姿では閑雲(カンウン)と呼べと言い残して窓から飛び降りて、鶴の姿で飛び去って行った。

 

病室を出て少し歩く。何人か看護師的な人とすれ違ったが、まさかこんなピンピンして歩いている人が入院患者だとは思うまい。面会希望の人かと思われてスルーされた。

 

「あれ?こんなに誰も会わないことある?」

 

既に結構1人で歩き回っているけど一向に誰にも会わない。ま、まさか俺の事、ほっとかれてる?そんなわけないと思いつつ、まだタルタリヤの件を報告してないから、もしかしてバックれ野郎として嫌われたか!?俺が最初から前線に居たらもっと簡単にいっただろうし、ほっとかれてもしょうがない……ってことか……?

 

やばい、考えれば考えるほどそう思えてきた。つか、だんだん知り合いに会うのが怖くなってきた。出会い頭になんか言われないよな…?

 

すると奥の角を見知った2人組が曲がって歩いてくる。言うまでもなく甘雨さんと刻晴だ。何やら深刻そうな顔をして、それぞれ若干下を向いて歩いている。やばいやばい、早速知り合いが登場してしまった。ど、どうするべきか…!

 

何も出来ずに固まっていると、2人は俺に気付かずに話しながら歩いてくる。近づくに連れて会話の内容が聞こえてきた。

 

「…甘雨。迅はまだ起きてなかったの?」

「はい。私が今朝にお見舞いに行った時もまだ…」

「……そう。……でも迅の命に別状は無いのよね?」

「…辛うじて、です。あの時は既に心臓が止まってましたし、仙力を注いだのがかなりギリギリでしたから、息を吹き返したとしてもいつ目を覚ますのかは……」

「…迅っ」

 

うわぁ、めちゃくちゃ心配かけてるぅ!もう合わせる顔ないんだけど!

 

2人が俺の近くまで歩いてきた。下を向いた視界に俺の脚が映ったからか、2人は顔を上げて挨拶してくる。

 

「こんにちは」

「…こんにちは」

「え、こ、こんにちは」

 

あまりに普通に挨拶されたものだから、俺も普通に返してしまう。2人はそのまま俺と目が会いながら、なんなら会釈付きですれ違った後も会話をしながら歩いていた。

 

「はぁ、今回行ったら普通に起きてて普通に歩き回っていたら良いのにね、さっきの迅みたいに……ん?」

「そうですね、案外、起きたらなんにでも無さそうな顔をしそうですね、今すれ違った迅みたいにピンピンしていたら………って、え?」

 

今の会話で何か引っかかったらしい2人は、ポカンとした顔で振り向く。

 

「「迅?」」

「…おはようございます」

「「迅ッ!」」

「うお!?」

 

俺は2人のダブル体当たりを食らって廊下を吹き飛ぶ。後頭部を打ってしばし悶絶して下を見ると、倒れた俺に2人が覆いかぶさっていた。

俺が起きたことに嬉しそうにしていた2人だが、すぐに血相を変えて離れた。

 

「あっ!ごめんなさいっ!けが人ですのにっ」

「じ、迅っ、貴方、身体は大丈夫なのっ!?」

 

2人は完治して元通りになっている俺の体を見て目を見開く。

 

「ああ。さっき仙力で治したからもう大丈夫だ。心配かけてごめんな」

 

俺が起き上がってそう言うと、甘雨さんがへなへなと腰を抜かした。

 

「甘雨さん!?」

「……ぐすっ、…よ、よかったですぅ…!」

 

慌てて駆け寄ると、甘雨さんは涙をポロポロと零していた。それにつられて刻晴の目尻にも涙が溜まっていく。彼女にでしっと軽く胸を殴られた。

 

「…全くッ……無茶するんだから…」

「ごめん」

「…って、貴方、さっき起きたのよね。綺良々に会わなかった?」

「えっ、会ってないけど」

「なら会ってあげなさい。あの子、1番心配してたんだからね?ご飯もまともに食べれないくらいだったんだから」

 

マジか、なら今すぐ無事なのを伝えないと。でも、その前に。

 

「甘雨さん」

「……ぅ、じんっ」

「助けてくれてありがとうございました。甘雨さんは俺の命の恩人ですね」

「……こちらこそ、ありがとうございましたっ……璃月港を守ってくれて…」

「俺は時間稼いだだけですよ。甘雨さんが帰終機を復活させなかったらどの道変わっていなかったです。…俺の話はまた今度に」

「…っ、はい」

 

俺は刻晴にもお礼を言うと、綺良々を探して向かって走り出した。

 

 

 

 

☆☆☆☆

 

 

 

わたしは今、迅くんが入院してる病院のバルコニーに座っている。

 

ちょっと外の空気が吸いたくて……。だって、迅くんの病室にいると、わたし、また泣いちゃいそうだから。

 

跋掣が海に逃げていった後のことは今でも鮮明に思い出せる。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 

 

「ッ!?迅くん!!!」

 

海へ潜っていく跋掣に歓声が上がる。わたし達も顔を綻ばせて空の迅くんに手を振ろうとすると、彼の体がぐらりと崩れ、海へ真っ逆さまに落ちて行くのを見てわたしは叫んでいた。

 

あの高さから海に落ちたら、ひとたまりもない!受け止めてあげたいけどわたしは水の上は走れないし、泳いでいたら間に合わない。

 

「っ、どいてください!!」

 

動けずにいるわたし達の後ろから、甘雨さんの普段からは想像出来ない荒い口調の声が響く。振り返ると、目を金色に輝かせた甘雨さんが、凄まじい程凍てついた矢を番えていた。あまりの元素量に甘雨さんの周りに霜が降りてる。

 

慌てて道を空けると、間髪入れずに矢が放たれた。氷元素を圧縮した矢は通った道を瞬く間に凍り付かせて道を作っていく。

 

「刻晴さんっ!綺良々さんっ!心肺蘇生の用意をお願いしますッ!」

 

わたし達にそう叫んだ甘雨さんは金色のオーラを纏って、作った氷の道を箱状態のわたしよりも早いスピードで駆け抜ける。海に落ちそうな迅くんをギリギリスライディングキャッチをした。そのまま同じ速度で戻ってくる。

 

そんなことよりも、今言われた事実に頭が追い付かなかった。

 

「えっ……心肺…蘇生っ………?」

 

えっ、…………それって、どういうこと…?

 

も、もしかして……迅くんの心臓が……!

 

「早くしてくださいッ!事態は一刻を争いますッ!」

「っ、う、うん!」

「綺良々っ!しっかりっ!」

 

頭が真っ白になったわたしの背中を刻晴さんが叩いてくれて我に返った。

 

甘雨さんは地面に手をかざして氷で台を作った。その上に担架を掛けて固定して、その上に迅くんを寝かせる。上着を脱がせて上裸にすると、夥しい量の切り傷が見えて息を呑んだ。

 

「心臓マッサージをしますので、…綺良々さん。人工呼吸をお願い出来ませんか?」

「人工呼吸…?」

「はい。私が迅の心臓に仙力で負荷を掛けます。その直後に彼の鼻を摘んで上を向かせ、口付けで空気を送って下さい!」

「ええっ!?く、口付け!?」

「躊躇している暇はありません!彼を死なせたいのですか?一応貴方に気を遣って聞いているのですが、やらないのでしたら私がやります」

「っ!…いや、わたしがやるよ!」

 

いつもの雰囲気とは打って変わって、冷静に淡々と述べる甘雨さんに気圧されながら、わたしが人工呼吸をすると頷く。

 

「刻晴さんの力が必要です。雷を手に集めて下さい」

「わかったわ。…こうかしら」

「はい。では、皆さん離れて下さいっ!綺良々さんはすぐに人工呼吸をお願いします。刻晴さんは、私の合図に合わせて電気を流してください!3、2、1、今ですッ!」

 

甘雨さんは両手に雷を集めた刻晴さんの手をそれぞれ迅くんの左胸の上と右胸の下に置かせると、自身の手に仙力を集めて、思い切り迅くんの胸中央に突き込んだ。

 

ズドンッ!

 

あまりの威力に迅の身体が大きく跳ねる。ちょっと心配になる様なリアクションだったので思わず言おうとしてしまうわたしと刻晴さんだったけど、甘雨さんの額に汗をかいた真剣な表情を見て口を噤んだ。

 

「綺良々さんっ!」

「うん!」

 

今助けるから、待っててね迅くん。

 

わたしは迅くんの頭を上に向けて気道を確保すると、意を決して唇を重ねた。息が漏れないように鼻を摘むと全力で息を吹き込む。

 

予想だにしなかったわたしの初めてのキスは血の味がした。だけど迅くんのって考えたら嫌な気はひとつもしなくて、わたしは何度も彼に息を吹き込んだ。

 

その間も、甘雨さんは迅くんの心臓を押しながら仙力を送っていて、刻晴さんは脈を測りながらざわめく千岩軍に指示を出している。

 

「もう一度、ショックを与えますッ!」

 

甘雨さんの声でもう一度電撃と仙力の衝撃が与えられ、迅くんの身体が跳ねる。そのまま流れるように、わたしは迅くんの口に空気を送り続ける。甘雨さんもずっと心臓を圧迫し続ける。

 

そうして何度目かの心臓マッサージ中、奇跡は起きた。

 

「っ!がはっ!」

 

わたしが唇を重ねて空気を送っていると、突如迅くんが咳き込んだ。直後、嬉しそうな刻晴さんの声が島に響く。

 

「…っ!迅の脈が回復したわっ!」

『うおおおおおおおお!!』

 

響いた声に、固唾を飲んで見守っていた帰終機隊の千岩軍達が歓声を上げた。わたしも唇を離して、へなへなと座り込む。

 

「……よ、よかったよぉ…」

「…はぁ……、なんとか間に合いました……ぎりぎりでしたね…」

 

その隣で同じく座り込んでいる甘雨さんと目が合う。2人して笑いあっていると、そこに刻晴さんが飛んできた。

 

「2人ともっ!よくやってくれたわねっ!ありがとぉ…!」

「あははっ、刻晴さん、最後までもってないよ?」

「こちらこそ、強引な物言いになってしまって、すみませんでした」

 

わたし達を纏めて抱きしめて涙を流す刻晴ちゃんを見て、わたし達も釣られて涙が零れた。本当によかったよぉ…。

 

「皆っ!大丈夫だった!?」

 

そこに浮遊石に乗った凝光さんが、群玉閣から降りてきた。辺りを見回すと、担架に寝かされて酸素マスクを付けられた迅くんを見るや否や、状況を察して、衛生兵と一緒に迅くんを乗せて病院に運ぼうとする。

 

わたしも付いて行こうとしたけど、凝光さんに「彼は大丈夫だから、少し休んでいなさい」と優しく言われた。

 

璃月港に運ばれていく迅くんをずっと見ていると、本格的に跋掣の撃退が完了したみたい。海に出来ていた渦から蛍ちゃんとパイモンちゃん、申鶴さんが戻ってきた。3人とも迅くんを探していたからここで起きたことを伝えると酷く動揺していた。

 

 

 

 

 

少しして璃月港に戻ったわたしは報告そっちのけで迅くんの病室に向かった。迅くんの事だし、もしかしたらもう起きてるかもしれない。そんな期待に胸を驚かせながら。

 

でも、わたしに告げられたのは厳しい現実だった。

 

「素早い適切な心肺蘇生によって一命は取り留めたけど、いつ意識が戻るかはわからない」

 

その言葉を聞いて、わたしは立てなくなりそうだった。

 

でも次来た時には意識が戻るはず、それでも明日には、普通に起きてるよね?その次の日には、流石に起きてるでしょ。

 

そんなわたしの心を守る期待は全て打ち砕かれた。

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 

今日で彼が意識を失ってから3日目。わたしはもう不安で押しつぶされそうになっていた。今日はまだ病室に行ってない。まだ起きていなかったら、今度はもう、耐えれる気がしなかった。ご飯もろくに喉が通らないし、殆ど寝れてない。時折甘雨さんや刻晴さん、蛍ちゃんが心配して声をかけてくれるけど、下手な愛想笑いとともに「大丈夫」と言うことしか出来なかった。

 

わたしは、心の中で迅くんは死ぬことは無いって言う謎の自信があった。まったく勝手だよね。でも迅くんはすっごく強い。体も、心も。だから迅くんがこんな姿になるなんて想像もしなかった。わたしの前からいなくなっちゃうことなんて、思いもしなかった。だから、今、ものすごく不安なんだ。

 

迅くんが居ない世界なんて、想像もしたくない。だって、狛荷屋に行っても、お家に帰っても、彼が居ないなんて、もう二度と撫でて貰えないなんて、そんなの……。

 

無意識のうちに、目尻から零れた涙が、地面に落ちようとしてーーー。

 

「おっと」

 

落ちそうになったわたしの涙を誰かが掬う。横を向くと、すっかり元通りの大切な人がいた。……はは。遂に幻覚も見えるようになっちゃったみたい。わたし、末期だなぁ。

 

「なんで、泣いてるんだ?」

 

隣に座った迅くんがわたしの頭を撫でながらそう言う。

 

「だってね、わたし、迅くんが居なくなるなんて想像もしてなかった。迅くんはさ、すっごく強くて、すっごく優しくて。何からも救ってくれて、だから迅くんは当たり前みたいにずっとわたしと一緒にいるんだとおもってたんだ」

「…うん」

「でもね、全部わたしの思い違いだった。生き物は、わたしも含めて死ぬ時は死んじゃうもんね。今まで楽観的だったよ。そんなことを今になって気が付くなんて。ほんと、酷い猫又だよね」

「…あほ」

「いてっ」

「…あのな。綺良々は良い子すぎだよ。別にいいじゃんそんな事思ったって。今回はただ、俺が無茶しすぎただけだ。綺良々が思い悩むことなんて全然ないんだよ。このあほ猫」

「あほって言った!いったい誰の心配したと思ってるのっ!」

「だから心配しすぎだっつの。俺は約束は守るタイプだぞ?」

 

そう言われてほっぺを引っ張られる。いひゃいいひゃい!幻覚の癖にわたしに直接攻撃とか、生……意…気…………。……え?

 

わたしは立ち上がると引っ張られて痛む頬を抑える。

 

「あ…れ…?幻覚じゃ、ない?」

「いや人を勝手に幻覚にすんなよ」

 

そう言って呆れた顔をする。迅くん。……えっ?じゃあ……目の前の迅くんは……ほん…もの……!?

 

「……じんくん」

「…おう」

「じんくんじんくんじんくんじんくん!!」

「えっなになになに」

「っ!!」

「うおぁ!?」

 

わたしは堪らず彼に飛び付いた。力いっぱい抱き締めて感じる体温と、彼の暖かい香りに実感が湧いてきて、同時に止めどなく涙が流れてきた。

 

「うえぇぇぇぇぇぇん!!じんぐんっ、よがったぁ……!」

「………心配かけてごめんな。綺良々」

 

迅くんの胸に顔を埋めてわんわん泣くわたしを優しく撫でてくれて、更に涙が流れ落ちる。

 

「わっ、わだし、じんくんが起きないってきかされてぇ、ほんとふあんでっ…不安でぇっ…よかっだよぉぉぉ!」

 

もう絶対離したくない。離すもんかと全力で迅くんに張り付く。その間も迅くんはずっと頭をなでなでしてくれた。たった3日ぶりなのに、ずっとされてなかったような感覚が沁みるようにわたしを染めていって、一気に満たされたような感じがした。

 

しばらくしてわたしが泣き止むと、ずっと頭を撫でてくれた迅くんにずっとずっと言いたかったことを言った。

 

「ねぇ、迅くん」

「ん?」

「あの時、跋掣からわたしを守ってくれて、ありがとっ」

「ああ、ほんとよかったよ無事で。あの時ほんとに肝が冷えたんだからな?」

「……わたしは君が息を吹き返すまでにずっーと肝が冷えっぱなしだったんだからねっ?」

「なんか、すんません」

「やだ。許さない」

 

わたしはぎゅーっと迅くんに抱き着く。わたしが飛び付いた時のままの姿勢だから尻もちを着いた迅くんにわたしがまたがってるような形。身体の全面が彼と密着していて1番好きかも。

 

「ど、どうしたら許してくれるんでしょうか」

「ふふっ、じゃあ、目を瞑って?」

「お、おう。なんかめちゃ怖いんだけど」

 

ビビりつつも素直に目を瞑る彼。わたしはその両頬を手で包み込む。

 

「…迅くん」

「な、なんでしょう」

 

「……んっ」

「っ!?」

 

わたしは彼の顔に自分の顔を近づけて。深く唇を重ねた。

 

「んっ……ぅんっ……んん………んちゅ…」

「!?!?!?」

 

わたしは唇を重ねたまま、本能に従って舌で彼の口をこじ開けた。彼の舌を見つけるとそこに自分の舌を絡ませる。

 

「……んむっ……れろっ…んちゅっ……んっ……」

 

そこからわたしは夢中で彼の唇を貪った。初めてこんなことをしたけど、腰が抜けるくらい気持ちいい。彼の体温が舌で感じられて、変な気分になってくる。

 

病院のバルコニーにくちゅくちゅと舌同士が絡む音が、響く。ふふ、エウルアちゃんとは言えど、ここまではしなかったでしょ。わたしの勝ち!

 

どれくらいちゅーしてたかはわからないけど、少し呼吸が苦しくなって唇を離すと、彼とわたしの唇の間に銀色の橋が掛かった。

 

「おっ、おまっ………お前っ!?」

 

わたしも今真っ赤だろうけど、迅くんの顔も凄く赤い。こんな彼は初めて見る。

 

わたしは慌てふためく彼に顔を寄せると、目をじっと見つめて、心から、言い放った。

 

 

 

 

 

 

 

 

「………大好きっ」

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