職場の先輩がウチの飼い猫に似ている件   作:猫好きの餅

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お待たせしました。長くなったので分割です。

いつも作ったプロット通りに書くと文字数圧迫すんだよなぁ。


18話 元岩神の槍はめちゃくちゃ重い

 

 

「……ん?」

「…ちゅ〜っ」

 

朝起きると、俺は綺良々に襲われていた。朝から何しとんじゃ。俺の上に跨って唇を啄む綺良々の尻尾の付け根を撫でて飛びあがらせると、なにやら期待したような視線を無視して洗面所まで歩いた。こういうのに動じない方がいいと昨日身をもって学んだからな。

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 

「迅くん迅くんっ、今日はどうするの?まだ帰りの船は修理中って聞いたけど…」

 

宿の食堂での朝食中、4人がけの席に座ったのに当たり前のように隣にいる綺良々が首を傾げて聞いてくる(かわいい)。

 

「今日は仙人達に会ってくるよ。いろいろお礼も言いたいし」

「そうなんだ。ならわたしは行かない方がいいよね。…そのあとは?」

「あー…、実は今夜、刻晴と約束があってな?」

「えっ」

「あっぶねっ!」

 

愕然とした顔になり、取り落としたミルクのカップをギリギリでキャッチする。

 

「……ふやすの?」

「ちっがうわ!モンドに行く前から約束してたんだよ」

 

つか増やすのってなんだよ!?別に増やそうとしたことなんて一度もねェわ!

 

綺良々にカップを返すと、俺をぬーんと睨みながら口をつける。やっぱこの反応になるよな。

 

「…まぁ、刻晴さんにはお世話になったし?別に?ダメとかじゃないけど?っていうか、わたしにそれを決める権利はまだ無いし?前から約束してたなら行ってきたら?」

「…本音は?」

「わたしもついていきたいけど邪魔しちゃうから苦渋を飲んで我慢する」

 

への字口でそう言った綺良々の頭をなでなでするとふにゃっと表情が崩れた。

 

「ありがとな。お礼に俺に出来ることなら何でもするよ」

「なんでも?」

「あっ、今のは言葉の綾……っておいっ」

 

綺良々は俺が言い直す前に食器を返しに逃げていった。やべ、失言したかも。

 

 

 

 

その後部屋に戻ると、ドアを後ろ手で閉めた綺良々が妖しく微笑んだ。嫌な予感がした俺は窓から逃げようとするも虚しく捕まる。

 

「ね、迅くんっ、さっき何でもするって言ったよね?」

「いや、あれは…」

「言ったよね?(満面の笑み)」

「…はい」

 

ニッコニコで寄ってくる綺良々に震えながらそう返すと、彼女は、俺の服をはだけさせた。って待って?

 

「いや何をしようとしてんの!?」

「いいからっ……ここにしようかな」

 

今俺はいつもの着物じゃなくて稲妻に帰る前に着ていた紺色の任務服姿だ。その黒Yシャツのボタンをいくつか上から外して肩を出させた綺良々は、そこに吸い付いた。

 

「……〜〜〜っ、っはっ、こ、これでよしっ」

「一体何を……?」

 

鏡を見ると、綺良々に吸われた俺の肩に赤い点が出来ていた。未知の事だったので綺良々に聞くが「外国の挨拶だよ?」と誤魔化された。

 

「ほら、わたしにもつけて?」

「つけるったって何処に…?」

 

俺につけたキスマークとやらに絆創膏を貼って見えなくした綺良々は「こ、ここだったら隠せるから…」と法被を脱いでインナー姿になると、なんと上のインナーを支えている首紐を解いた。落ちそうになった胸のカップ部分を手で抑えて、めくれた部分、つまり丘が盛り上がり始めた辺りに指を指す。

 

「こ、ここにおねがいっ」

「いや、お前そこもうほとんど胸だぞ!?」

「ここしか隠せないからっ!」

「他にもっと場所ないのかよっ?絆創膏貼ればいいだろうが!」

「ここがいいのっ!なんでもするって言ったじゃん!!」

 

それを言われると痛い。このままだと埒が明かないので、ええいままよと俺は綺良々の胸の上の辺り(断固として胸とは言わない)に口をつけた。

 

「んんぅっ」

 

こ、これくらいか?しばしの間吸って口を離すとそこに赤い斑点が出来ていた。俺がささっと離れると、綺良々は嬉しそうにその斑点を撫でる。

 

「えへへ…これでわたしも…」

「なぁ、これほんとにどういう意味なんだ?」

「…ひみつっ!」

 

インナーの首紐を結んだ綺良々は笑顔で立ち上がると、妖力まで使った素晴らしい速度の踏み込みでちゅっとキスをしてくると、服の上からその位置を抑えてスキップして部屋を出ていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

…職場の先輩が最近えっちな件に題名変えたろうかな。

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 

なんか嫌な予感がしたのでキスマークを仙力で消して、俺は匣中龍吟を腰に差して街中に繰り出した。

 

途中で会った蛍にそれとなく意味を聞いてみたら「所有物」という意味らしい。頬を引き攣らせた俺に肩を抱きながら「え、誰かにするの?変態」と罵られたので「うるせぇノーパン」と返すと取っ組み合いの喧嘩になった。あんなに顔真っ赤にして怒ってるの久々に見たな。

 

刻晴の約束の時間まで暇があるので、俺は璃月港を出ると絶雲の間に行く。まずは奥蔵山に登ると、偶然にも絶雲の間の仙人達が集まっていた。削月築陽真君に理水畳山真君、人の姿の留雲…閑雲さんに鍾離先生の姿も見える。

 

「む、迅か。久方ぶりだな」

「お久しぶりです。鍾離先生。師匠達も、ご無沙汰ですね」

「ふん、それを半月前に言いに来るのだったな」

「だって削月築陽真君、呼んでも出てこないじゃないですか」

「貴様なら話は別だ。なぁ理水?」

「そうだぞ。弟子が呼んでるのに出てこない師匠などおらぬからな。…ほう、しばらく見ないうちに背が伸びたか?」

「それ、会う度に言ってきますよね」

 

俺の姿を見て近寄ってきた茶色い鹿のような姿の削月築陽真君と、黒い鶴のような姿の理水畳山真君に角と翼でべしべしどつかれながら話す。それを見て留…閑雲さんが腕を組んでため息を吐いた。

 

「全く、久しぶりに会った親戚の子供じゃあるまいに。あの人間嫌いは一体どこに行ったのだ?」

「ははは、いい事じゃないか」

「魈様は居ないんですか?」

「ああ、さっきまでいたのだが、望舒旅館に戻って行ったぞ。旅人と会う用事があるらしい」

 

魈様、割と蛍の事気に入ってるからなぁ。ま、望舒旅館に行けば会えるか。鍾離先生は俺をじっと見ると「ほう」と目を見開いた。

 

「迅、前に見た時よりも随分強くなっているな?……稲妻でも鍛錬をしていたのか?」

「ああ、それが……、ひょんなことから雷電将軍と知り合いまして…いろいろあって気に入られて、度々戦ってるんです」

「バアルゼブルと…!?」

 

俺の言葉に仙人達までも驚く。ま、そうよね。

 

「……バアルゼブルは、手加減を知らないからな…。痛め付けられていないか?」

「あ、ちゃんと手加減はしてくれるのですが……、戦いがノってくるととてもいい笑顔でとんでもない攻撃を」

「……やはりか」

 

こめかみを抑える鍾離先生に同情して頬をかいていると、閑雲さんが近寄ってきて、心臓に手を当てる。

 

「それにしても、仙力の量が跳ね上がっているな。やはりこれも夜叉の体質か?」

「そうだと思います。この前死にかけたのでそれの影響かなと」

 

仙獣の中でも夜叉は戦いに秀でた種族だ。その証拠に、自分が窮地に陥るとパワーアップする、というものがある。この前の跋掣戦で文字通り死にかけたので、それで修行しようが何しようがずっと変わらずだった仙力の量が、今の俺の器と等しい分。詳しく言うと元の3倍程に急増していた。

 

仙力が3倍になったということは、神の目のバックアップとして貯蔵できる元素の量も3倍になったということ。これできること結構増えるんじゃないか?

 

そういや起きてから綺良々の攻撃を耐えるために仙力を使っていたけど、あの回数使っても特に疲れたりしなかったな。体の傷を直した時も別になんもなかったし。

 

削月築陽真君と理水畳山真君も俺の仙力を感じ取り、驚きの声をあげた。

 

「それに肉体も頑丈になっている。お前、これもう人間とは名乗れんぞ?」

「え、まじですか?」

 

閑雲さんに頬をつつかれて、仙人達の方を見ると、全員ちょっと同情した目で見てきた。いや、まだそうと決まった訳じゃないし!

 

鍾離先生はおもむろに、大きな岩を作り出すと地面に置く。

 

「迅、これを仙力で殴ってみろ。前までのお前だったらヒビを入れるので精一杯の硬さだ」

「わ…わかりました」

 

俺は岩の前に立つと半身になって拳を構える。魈様に習った体術で、普通とは逆に、利き手を前に持ってくる構え方だ。

 

俺は、仙力を拳に込めて地を蹴り右手の縦拳で岩を打った。拳が到達すると同時に踏み込む脚を地面につけて、インパクトの瞬間に仙力を前に絞りながら放つイメージ。

 

衝撃。

 

「……え?」

 

「「「おぉ………」」」

「ふむ、だから言っただろう?」

 

俺の拳は全長2m以上ある大岩を粉々にしていた。踏み込みの力も強すぎたようで、雷で踏み込んだみたいに地面が放射状に割れている。え?今元素使ってないぞ?

 

鍾離先生が満足そうに頷くのを尻目に、閑雲さんがポンと俺の肩に手を置いた。

 

 

 

 

「迅、人間卒業……おめでとう」

 

「おっ、俺はッ………ただの配達員なのにィ………!」

 

俺は膝から崩れ落ちた。いやこれ以上強くなってどうすんだよ!別に強くなる分には良いけどっ!もうこれ周りに引かれるレベルだぞっ!

 

俺が地面をバシバシやっていると、鍾離先生がこちらに歩いてきた。

 

「まぁともかく、自分の力が上がったのなら、それに慣れなければな。迅、せっかくだし、手合わせしてみないか?」

「てあわせしてみないか?」

 

え?「手合わせして行かないか」ではなく?それだとまるで…。

 

「えっと、誰とですか?」

「無論俺とだが?」

「ええぇ!?」

「帝君がかっ?」

「驚いたな…」

 

何くわぬ顔で自分を指さす鍾離先生に驚く一同。え、マジで?

 

「し、鍾離先生も自分から戦ったりするんですね…。てっきり璃月の窮地じゃないと戦わないのかと思ってました」

「なに、偶にはこういう運動もいいだろう?」

 

鍾離先生は虚空から金色に輝く大槍「破天の槍」を取り出すと石突を下にして槍を立てた。すると槍の重さに地盤が負けて放射状にヒビが入る。

 

破天の槍、斬山の刃、無工の剣の三本は帝君が創り出した武器だと言われている。どれも物凄く重く、元素シールドを身に纏うと、その元素を武器自体が吸収して、持ち手の感じる重さを軽減させるという効果だ。

 

「さて、どこからでもいいぞ?好きに打ち込んで来い」

 

そう言いながら笑う鍾離先生がいっちゃん怖いです。

 

ただ、あの元岩神がどれほど強いのか、少しばかり興味がある。仙人達が周りに危害が及ばないように結界も張ってくれたので、俺も匣中龍吟を抜刀すると、霞に構えた。

 

「……行きます」

「…ああ」

 

鍾離先生が返事を返した瞬間、俺は雷を纏い、自分でも驚くスピードで鍾離先生に迫った。繰り出すのは雷速の5連突き。鍾離先生の正中を狙って、あまりの速さにほぼ同時に打ち込んだ様に見える紫電の突きが彼に迫る。

 

「ほう?中々の速さだな」

 

は?

 

次の瞬間、俺の突きは全て外側へと逸らされていた。だが、彼は避ける素振りどころか、その場から1歩も動いていない。ただ、俺は打ち込む間、見えなくなった(・・・・・・・)彼の右手の槍で全て弾かれたのだと理解すると、あまりの壁の高さに戦慄が走る。

 

その後も速度と重さが増した匣中龍吟の打突を叩き込むが、全て1歩も動かない鍾離先生の前で絶妙に弾かれた。攻撃する時に毎回槍を持った腕が見えなくなるので、多分全てそれで弾かれている。

 

いや、やっぱこの人が最強だろ。

 

「うむ、いい打ち込みだ。ではこちらからも行くぞ?」

 

そう言った鍾離先生は、槍で突くのでは無く、直線軌道のハイキックを繰り出した。基本的に槍使いの蹴りは虚なので1歩後ろに下がって避けると、蹴りの回転を活かして、右手と脇に構えられた槍が横薙ぎに、視認が難しいスピードで振られた。

 

「ぐっ!?」

 

後ろに下がるために重心を後ろにしていた俺に、凄まじい風圧が襲う。まるで風元素攻撃を顔面に貰ったように、たたらを踏む俺を狙って槍が突き出されていた。

 

体勢を崩していた俺はどうにか槍の側面に匣中龍吟を入れて軌道をそらそうとするが、ビクともしない。悪寒が走った俺は、当たりそうになった右肩を身体を回すことによってすり抜けさせると、そのまま匣中龍吟を振り抜いた。カウンターを警戒して低い体勢で繰り出す。

 

ガギィッ!

 

「いい読みだ。大抵の敵はこれで倒せるな」

「ッ!」

 

鍾離先生がカウンターのために出した後ろ回し蹴りを変化させて岩元素を纏った脚に匣中龍吟が防がれるのを確認するや否や、俺は鍾離先生の軸脚を狙って足払い気味の回し蹴りを叩き込む。

 

それを地面に着かせた槍に重心を移して躱した鍾離先生は、足を掛けた匣中龍吟を踏み台にして、元素を固めて空中に足場を作ると更にそれを踏んで宙返り。重力と槍の重さを活かして突き下ろして来た。

 

無論、槍の重さ的に弾くのも受けるのも到底無理なので、後ろに転がって躱す。だが、まだ鍾離先生の攻撃は終わっていなかった。

 

鍾離先生は地面に深々と刺さった槍の柄部分を蹴った。その影響で槍が回転しながら俺の方へ突き進んでくる。

 

体勢的にもう避けられない。俺は極度に集中し、匣中龍吟に雷元素を高圧縮する。パワーアップしたせいか圧縮の効率も上がっていて、割と簡単に蒼い雷に変化した元素を螺旋状に絞って迫り来る槍の穂先に突く。

 

直後、空気を切り裂くような金属音と共に匣中龍吟と槍がぶつかった。途轍もない速度で反対方向に弾かれる槍を普通にキャッチした鍾離先生が体重を乗せた腰溜めの中段突きを放つ。

 

俺はその突きを前に進みながらズレて避け、鍾離先生に肉薄した。

 

鍾離先生は俺の出した突きを槍の柄で絡め取り、そのまま穂先を降ってくるのを身を逸らしたりしゃがんだりして躱し、続いて振り抜かれた横薙ぎを身が地面に着くほどに低くしゃがんでやり過ごしながら匣中龍吟ごと地面に手を着いて反転蹴り。岩元素を纏った腕に防がれ、反撃に飛んできたローキックを身体を戻して避けて剣を打ち込むがまたもや柄で逸らされる。

 

「中々やるな。ここまで動いたのは久方ぶりだ」

「鍾離先生の方こそ守り硬すぎですよ……!」

 

さっきから攻撃が当たってないのでアレだけど、確かに身体のスペックは跳ね上がっている。最初の踏み込みと螺旋突き以外は元素を使ってないのに、雷を纏った時の様な速度とキレが出た。思ったより強化されてて内心舌を巻く。まぁ、だからといってこの人に勝てる可能性は1ミリも感じないけど。

 

俺は槍の柄に当てていた匣中龍吟を戻して大きくバックステップをすると、最後に雷元素と仙力を刀身に圧縮し始めた。それを見た鍾離先生はニヤリと笑うと、手に元素を集める。

 

「これが最後としようか。全力で来い」

 

俺は目を閉じて、自分の最高火力技のチャージを始める。圧縮して斬れ味を高めた刀身の根元に更にもう1つ、元素の爆弾を作るイメージ。

 

「っ、セァァァ!!」

 

俺は蒼い雷身に纏い、その場から消えた。直後、地面を踏み砕いた衝撃音が辺りに響き渡る。音を置き去りにする様な速度で迫る俺を見た鍾離先生は、前に手を翳して岩元素を圧縮させた。

 

「地心ッ!」

 

直後、鍾離先生の前に茶色の半透明なバリアが現れた。そこに全力で突き込む。

 

蒼雷一穿(そうらいいっせん)散華(さんか)ッ!!」

 

蒼い螺旋状の剣閃は、鍾離先生のシールドに向かって突き進み、とてつもない衝撃波と共に激突した。仙人達の結界がなかったら周りはすごいことになっていただろう。

 

匣中龍吟の切っ先はシールドと拮抗していて、鍾離先生には届いていない。その事を確認した俺は、この技の真価を発動した。匣中龍吟に込められた元素を臨界させる。

 

ズドォンッ!

 

「むっ!」

 

直後、匣中龍吟の元素が爆発を起こし、俺がアレだけ攻撃しても動かなかった鍾離先生が大きく後ろに下がった。地面に2本の線上の跡を残して、倒れていないがシールドは破壊されている。

 

「そこまで!」

 

閑雲さんの声が響くと、両者武器を納めた。アレだけ元素と仙力を使ったのに、あまり疲れていない。前なら座り込むくらいの力は使ったはずなんだけどなぁ。俺はひとまず、鍾離先生に頭を下げた。

 

「鍾離先生、ありがとうございました!」

「礼はいい。俺もなかなか有意義な時間だった。自分の力は把握出来たか?」

「はい、なんとか。正直とても強化されてて驚いてます。それにやっぱりとんでもなく強いですね鍾離先生は」

「今は隠居生活をしている身だ。そうでも無いぞ?…あの最後の技は興味深かった。お前の奥の手か?」

「その中の1つです。…また機会があれば、お願いします」

「ああ」

 

鍾離先生と話して振り向くと、仙人達にもみくちゃにされた。

 

「まさか、あの帝君の障壁を破るとはな。流石我の弟子だ」

「降魔大聖にも見せてやりたかった。…それと、"我らの弟子"だ。何を勝手に自分だけの弟子にしている。理水?」

「先程障壁を破った技の仙力の練り方を教えたのは我だ」

「その前の踏み込みを教えたのは我ぞ?」

「ん?」「あ?」

「削月と理水は何をやっているのだ…?」

「いつもの光景だ帝君。あの2人はあれほど人の弟子は取らんと反対していたというのに、いざ迅を寄越してからずっとあの感じなんだ」

 

睨み合う削月築陽真君と理水畳山真君からぬるっと抜け出した俺は興味深そうに2人を見ている鍾離先生と、ため息を付いている閑雲さんを見て乾いた笑いを発した。ちなみにさっきの仙力の練り方と踏み込みは甘雨さんと魈様に教わったんだけど、言わぬが仏かな?

 

俺はさっきから気になっていたことを尋ねた。

 

「そういえば、留雲借風真君は何故人の姿なのですか?いつも山なら仙獣姿なのに」

「ああ、近々璃月港に引っ越すことにしてな。久々にこの姿になったものだから慣れさせていたのだ。弟子たちの姿ももっと近くで見ていたいしな」

 

へぇ〜、そりゃびっくりだ。ただ、まだ目処は立っていなくて今すぐ引っ越すという訳では無いそう。

 

 

 

俺はその後も少し山で過ごすと、鍾離先生と一緒に山を降りた。だけど俺はまだ璃月港の外に用事があるので、帰離原で鍾離先生と別れるとそのまま西の明蘊町に向かう。しばらく歩くと谷の間にひっそりと作られたひとつのお墓に辿り着いた。その場所には1本の槍が刺さっている。来たのは半年ぶりだからか、少々埃で汚れていたのでそれを払い、途中で摘んできた瑠璃百合と線香を置いた。手を合わせて瞠目すると、心の中で一区切りついたような気がする。

 

 

 

 

 

 

「………龍斗、……俺、今度は守れたみたいだ………」

 

俺は、その後もしばらくの間、白く煌めく槍を見詰めていた。




次は綺良々視点になりそうです。
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