職場の先輩がウチの飼い猫に似ている件   作:猫好きの餅

34 / 80




あけましておめでとうございます!今年も「職場の先輩がウチの飼い猫に似ている件」通称『しょくねこ』をよろしくお願い致します!!

新年頭から体調を崩していて、投稿が遅れました。申し訳ございません。

これからは今までと同様に基本7日〜10日の周期で投稿をさせていただきます。執筆の進捗や次話のチラ見せ、詳しいアンケートなどをXでやっておりますので、良ければフォローの方よろしくお願いします。



19話 キスマの場所には注意

 

☆☆☆☆

 

 

うーん、迅くんは出かけちゃったし、なにしてようかな?

 

迅くんの部屋を飛び出したわたしはとりあえず、街をぶらぶらする事に。最近はドタバタしてたから璃月港を色々見てみるのも悪くないかも。

 

……えへへ。

 

わたしは今はインナーで隠れているけど、さっき迅くんにつけてもらった所を撫でてニヤつく。

 

これで迅くんと仲が深まったよ!「これ」、妖狐様に教えてもらったんだけど、お互いに肌を吸って、ここを1日隠すとお互いの安全祈願になるっておまじないなんだ。最近、迅くんは危ない目に遭ったから、恥ずかしかったけど思い切ってしちゃった。

 

はぁ、わたし、ヤバいよぉ。迅くんのためならなんでも出来る気がする。昨日、感極まってちゅーしちゃってから、もうブレーキ壊れちゃった。ほんとはお風呂に突撃する気なんて無かったのに……迅くんが、わたしの前から少しでもいなくなるのがどうしても怖くて、わたしを見て欲しくてあんなことを……にゃああああああ!!

 

わたしは一応割り振られた自分の部屋のベッドにゴロゴロ転がる。今は迅くんといなくて大丈夫かって?うん、もう大丈夫!アレだけ迅くんを摂取したし、わたしが唇重ねても最初は狼狽えてたけど普通に受け入れてくれるようになったし、少しは効いてるってことだよね?

 

いやぁ、好きな人とするちゅー、ほんとハマりそう。出来ればずっとしたいんだけど、まだ迅くんと番…恋人じゃないから我慢我慢。………今のところ出来てないけど。

 

昨日迅くんにも言ったんだけど、わたしとしてはみんなで幸せになるって考えもアリかなって思う。でもそれは妖怪としてのわたしの考えで、迅くんやみんなの考えは違うもんね。最悪100年後に彼は貰いますっ。寿命は正義!

 

宿を出て、てくてく歩いていても頭の中に浮かぶのは彼の事ばかり。服屋さんに入っても「あ、これ迅くんに似合いそう…」とか「わっ!これ着て欲しい……ゴクリ」みたいな、思考回路の基準がもう迅くんになっちゃってる。これ、もしかして結構ヤバい心理?

 

そうやって歩いていると、色々な人から声を掛けられた。わたしの容姿が珍しいのと、跋掣戦で名前があがっていたからかな。街の人に色々お礼を言われた。ほんとにお礼を言われるべきなのは絶対迅くんだと思うけど、昨日かなりもみくちゃにされてたから顔には出さないで、素直に返していく。

 

男性達に多く聞かれた「蒼閃迅雷とどんな関係なのですか…?」という質問には笑いながら「今のところは、まだ、お友達ですっ」と答えるとみんな肩を落として帰ってった。間違ったこと言ってないよね……?

 

あ、「蒼閃迅雷めっ、爆発しろぉ!」とか言ってた人はしっかり睨んでおいたから。わたしの前で迅くんの悪口言うとかぶっ飛ばされたいのかな?

 

「あっ、ここにいたのね」

「刻晴さん?」

 

質問してくる男の人をばったばったと薙ぎ倒していると、刻晴さんがやってきた。どうやらわたしを探してたみたい。

 

「綺良々、今、少し暇はあるかしら?」

「ちょうど暇だけど……どうかしたの?夕方からは迅くんと約束あるんでしょ?」

「ええ、その話も関係してるのよ。昨日迅が起きたから今夜に祝勝会をやることになったの。昨日までの貴方、それどころじゃなかったでしょ?」

 

あ、そうだ。すっかり忘れてたけど、わたし達厄災に勝ったんだもんね。話を聞くと、今日迅くんと約束してるのも、迅くんを迎えに行くってことらしい。なぁんだ、そうだったんだ。

 

「それで、わたしは準備を手伝えばいいの?」

「いいえ、準備はほとんど終わっているわ。…その、私個人の悩みがあって貴方を探していたの。…もし良ければ、聞いてくれないかしら?」

「もちろんいいよっ!刻晴さんにはすっごくお世話になったし、なんでも話してっ!」

 

わたしの中の憑き物だった「刻晴さんと迅くんのデート案件」が勘違いだとわかったわたしは上機嫌にふんすと頷く。いったいどんな悩みなんだろ?刻晴さんってなんでも自分で解決しちゃいそうだけど……。どんな悩み?とわたしが優しく聞くと、ほっぺを紅くした刻晴さんがふたつに結った髪を掴みながら、遠慮がちに言った。

 

「それが、その………迅の事なのだけれど……」

「……ン?」

 

…………おっとぉ?

 

 

 

 

 

 

「ハイということで、刻晴さんの悩みを聞こうの会~!司会進行はわたし、綺良々とぉ~」

「…通り掛かった旅人です。刻晴に悩みなんて珍しいね」「何に悩んでいるんだ?」

「気がついたら人が増えてるわね……」

 

刻晴さんの悩みを聞いて頭真っ白になったわたしは近くを歩いていた蛍ちゃんとパイモンちゃんを引っ掴んで手頃な喫茶店に駆け込んでいた。ごめんね刻晴さん…!迅くん関連の悩みだとわたしがブレブレになるから、中立の人を呼んだ方がいいと思って…。

 

「……まぁ、旅人になら聞かれてもいいか。その、………悩みっているのか迅の事なのよ」

「迅の事?」

 

わたし達が聞き返すと、顔を真っ赤にした刻晴さんはモジモジとしていたが、意を決して口を開いた。

 

「彼……迅に抱いている…こ、好意を諦めるにはどうしたらいいかなって……」

 

…………。

 

………えっと、どうしよ?

 

わたしはどう答えていいかわからずに蛍ちゃんの方を見るけど向こうも同じ目にしてた。パイモンちゃんも「綺良々が聞いてくれっ!オイラ達じゃ無理だぞコレっ」という目をされて、んんっと咳払いをするとまずひとつ気になったことを尋ねた。

 

「えっと、……刻晴さんはなんでその悩みをわたしに聞こうと思ったの?」

「それは、……今更こういう感情を抱いて良い相手じゃ無かったから、もういっそ迅の恋人に話してしまおうかと思ったのよ」

「ん?」

「え?」

「な、何よ」

 

迅くんのこいびと?だれが?

 

「……迅くんに恋人は居ないはずだけど……?」

「えっ?綺良々と付き合ってるんじゃなかったのっ?」

「ううん、わたしは昨日告白はしたけど、付き合ってはないよ?」

 

もしかしてわたしと迅くん付き合ってると思われてる!?と聞き返して見ると、図星だったみたいで、首を傾げられた。

 

蛍ちゃんからも確認を取った刻晴さんはパタリと机に突っ伏する。ゴチンとおデコが机にぶつかった音が響いたけど……だ、大丈夫?

 

「な、何よ……、私の一人相撲だったってこと…?」

「……だから"諦めたい"なんて言ってたんだ」

「ええ、そうよ。もう恋人がいる人をどうやって諦めればいいか聞こうと思ったのに……恥ずかしいわ……」

 

死にたい……と、突っ伏したままボヤく刻晴さんを慰めるわたしと蛍ちゃん。刻晴さんからの迅くんへの矢印は結構わかり易かったから勘づいてはいたけど、いざ言われるとびっくりした。迅くん、やっぱモテるよねぇ…わたしが認知してないところで迅くんに好意を寄せている人がまだまだ居そうだから怖い。

 

全く、罪作りすぎるよ迅くん……!

 

「ちなみに、刻晴はいつから迅のことが気になってたんだ?確かオセル戦の時に初めて会ったんだよな?」

 

パイモンちゃんが突っ伏に巻き込まれないように回収したカップをテーブルに戻しながら聞くと、刻晴さんはポツリポツリと、馴れ初めを語り始めた。

 

「オセル戦の前から名前は知っていたわ。ただ、当時私は仙人のことを全く敬っていなかったから、その弟子の迅に勝手に悪印象を抱いてた。でも迅と知り合って話していくうちに全然そんな事ないって気づいて……むしろ決めつけていた印象とは真逆……とても良い人だって気がついてから段々と目で追うようになってきて……って感じね」

『おぉ~』

 

ふたつに結った髪の片方をくるくるとしながら話した刻晴さんに3人で歓声をあげる。

 

「それで、明確に気が付いたのは4日前、迅が死にかけてた時。立場上冷静で居なきゃいけなかったから顔には出さなかったけど、心臓が止まってぐったりしてる迅を見て私も泣きそうになったわ。あの時甘雨がいなかったら私じゃ何も出来なかった……」

「そんなことないよっ…、わたしだってあの時…刻晴さんに言われなきゃ動けなかったもん!」

 

わたしは椅子から立ち上がって、刻晴さんの手を包み込む。今の顔で十分に伝わったよ。刻晴さん、本気で迅くんの事が好きだ。

 

「こ、刻晴さんは…迅くんが好きなの?」

「……ぅん」

 

ちょっと俯いてこくりの頷いた刻晴さんに、わかってはいたけど「わー、増えた〜」と内心頭を抱えるわたし。これからどんどん増えるのかなぁ~…。昨日みんなで幸せとは言ったけど、それはわたしとも仲良い子限定だし…うん、わたしが門番になれば大丈夫だよね?

 

わたしが正妻面をしていると、刻晴さんは包まれた手をきゅっと握りしめて言う。

 

「でも、私が彼に想いを伝えることはないと思うわ」

「えっ、どうして?」

「だって貴方にも彼にも悪いでしょ?そんな貴方達を仲を掻き乱す様なことはしたくないの」

 

変に隠したりおべっかを使うくらいならストレートに言う性格の刻晴さんらしからぬ言葉に目を瞬かせるわたし達。彼女が向けてくる表情に既視感を感じたわたしはあ、と声をあげた。

 

「刻晴さんっ、もしかして……迅くんの事が好きなのわたしだけって思ってる?」

「ち、違うのかしら?」

「…もっといっぱいいるよ?」

「なぁっ!?」

 

やっぱり知らなかったみたい。ねーっと横の2人を見ると「迅は最近モテ期だよねぇ」「同感だ〜」と頬杖を突いて遠い目をしている。くわっと目を見開いて驚いた刻晴は、あたふたと恋敵の人数を聞いてきた。

 

「な、なんにんいるのかしら……?」

「今わたしが確認してて、刻晴さんを除くと……わたし、宵宮ちゃん、綾華ちゃん、エウルアちゃんに蛍ちゃんくらいかな?」

「ちょっと待って?なんで私もはいってるの!?」

「え、違うの?」

「違うっ!!」

 

椅子から立ち上がり顔真っ赤で噛み付いてきた蛍ちゃんに半目で返すわたし。だってしれっと一緒に寝てるし、ナチュラルに距離近いし……正直怪しいと思ってるよ?

 

と蛍ちゃんに伝えるとわなわな震えたと思ったら椅子に座って萎んでいく。

 

「ち、ちがっ……あれはっ迅がお兄ちゃんに似てるから自然と距離が近くなって……」

「ほんとかなー?この前秘境巡り行ったあととか様子がおかしかったけど、何かあったの?」

「っ!?」

「……何かあったのね?旅人、私にも詳しく聞かせて貰えないかしら?」

「オイラも気になるぞ!」

 

両脇と後ろを刻晴さんとパイモンちゃんで固めていじっていると、真っ赤になった蛍ちゃんは「ちがうからあああああああ!」と走ってお店を出ていってしまった。ちゃんとお代は置いてく当たりちゃんとしてるけど、ちょっとやりすぎちゃったみたい。追いかけようとするパイモンちゃんにごめんねと伝言を頼んで、刻晴さんと2人きりになる。

 

「それで?他の子達とはどれくらい関係が進んでいるの?」

「そのうちわたしともう1人はもう思いは伝えてあるよ。迅くんの方もそれには薄々気がついていたみたいで、悩みの種になっちゃってるんだ」

「迅も律儀ね。普通に気に入った娘を選べばいいのに」

 

ため息を落とす刻晴さんにわたしはで?と聞いてみた。

 

「それで?刻晴さんは迅くんのこと諦めるの?」

「いえ、予定変更よ。アタックをかけるなら迅がグラついてる今がチャンスね。……逃がさないわ」

「うん、その意気!」

 

刻晴さんはパンと自分の頬を両手で張ると自信に溢れた顔で意気込んだ。

 

「そんな余裕そうな顔しててもいいの?私にかっ攫われても知らないわよ?」

「べっつにぃー?だってわたし、迅くんと昨日お風呂入ったし?まぁわたしが1番迅くんに近いから、実際に余裕というか?」

 

へっへーん、迅くんと大人のキスをしたのもわたしだけだし、迅くんわたしに嫉妬してくれるし、わたしが大幅リードでしょ。刻晴さんには悪いけど、さすがに追いつけないんじゃないかなぁ?

 

そう余裕をぶっこいてるわたしにあら、と刻晴さんは口を開いた。

 

「私も迅とお風呂に入ったことあるわよ?」

「は?」

 

は?

 

 

 

 

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

 

龍斗の墓参りを終えて璃月港に戻った俺は、その足で玉京台に登った。理由はまだ会えていない仙人に会うためだ。個人的にエウルアと並んで恩人で、彼女経由で山の仙人と知り合っていなかったら今の俺はなかった。

 

玉京台まで伸びる階段を登り切るとちょうど2人揃っていた。足音に気がついて振り返る彼女たちに軽く挨拶する。

 

「久しぶり、煙緋。それにご無沙汰してます。歌塵真君」

「ふんっ、ようやく私達のところにも顔を出したか」

「おやおや、久しい顔だねぇ。あと、ここではピンで頼むよ?迅」

「すみません、ピンばあや」

 

俺が昔のくせで仙名で読んでしまったことをピンばあやに謝っていると、隣の桃色の長髪の耳元から鹿角を生やした少女、煙緋(エンヒ)にジト目で睨まれた。どうした?と尋ねると頬を膨らませる。

 

「……私や甘雨先輩にくらい、自分の種族を話してくれてもいいじゃないか……むぅ」

「それはごめん」

 

それ昨日甘雨さんにも言われたわ。話を聞くと煙緋は俺の出産に立ち会ってはいなかったけど、俺が産まれた事だけはばあや経由で聞いていたらしい。むくれる煙緋に謝りつつ跋掣戦や稲妻に戻った後の事を話しながら3人で近くの椅子に座ってお茶を飲んでいると、ああそうだとピンばあやが呟いた。

 

「迅、これから仕事でこっちにも来るんだろう?夜はどうやって明かすのじゃ?」

「ん?そりゃ毎回宿に泊まれないと思うから野宿だけど」

 

俺が何でもなしに答えると、そう言うと思ったよとため息をつかれてひとつの壺を手渡された。まじまじと見ると、どこかで見たことがあるような…。同じく壺を見た煙緋も翡翠色の目を見開いた。

 

「ばあや…これもしかして」

「ああ、塵歌壺じゃ。これがあれば行く先々で野宿をする必要もなかろう?」

「えっ、いいのか?俺が貰っちゃっても」

「勿論じゃよ。旅人と並んで璃月の大英雄の1人が野宿生活なんて示しがつかないからねぇ」

 

ばあやの言葉を聞いて横の煙緋も頷く。正直めちゃくちゃありがたい。蛍の洞天をみて内心羨ましいと思ってた俺には寝耳に水だった。

 

「……ありがとうございます。大切にします」

「壺の中に小さいけど邸宅もあるから、自由に使いなさい。ほれ、これを受け取りな」

 

ばあやが懐から何枚かの束になった札を渡してくる。札には渡された塵歌塵と同じく文様が描かれている。

 

「これは?」

「洞天通行証じゃ。この札に洞天仙力を流して作れるから、本当に信用している人物に渡すんじゃよ。旅人と違ってマルはいないから自分の仙力で洞天を操作するんだ」

「なるほど、わかった。有難く頂くよ」

 

その後は時間も丁度良かったのでお昼ご飯を食べることに、ピンばあやは大丈夫だと言っていたので、未だちょっとむくれてる煙緋に彼女の好物の温かい豆腐料理をフルコースで作って振舞ってやった。

 

璃月の豆腐料理は網羅しているからと、豆腐サラダに豆腐の味噌汁、照り焼き風の豆腐ステーキに豆腐ハンバーグ、トドメに杏仁豆腐という普通の豆腐好きでも引き攣りそうなメニューを次々平らげ、無事に煙緋の機嫌が戻った。

 

「……ふぅ、満足満足。迅、ご馳走様だ。私の豆腐の境地が広がったよ」

「そらよかった」

 

ぱんぱんと衣装の関係でむき出しのお腹を叩いて満足気な息を吐く煙緋に頷く。特に豆腐ハンバーグと豆腐照り焼きステーキがお気に召したらしい、1口食べた瞬間瞬く間に完食していた。個人的に1番好きなのは冷奴なので出したかったけど煙緋が冷たい料理が好みではないので我慢した。

 

「いやぁ、まさか豆腐であそこまで食感を肉に近づけるとは、恐れ入った」

「豆腐も元は豆、要はタンパク質だからな。ぎゅって固めて焼くと肉っぽくなるんだよ。菜食主義でも食べられるから今度甘雨さんにも食べさせてみようかな」

「それはいい考えだな、これなら甘雨先輩も食べれると思う。……っあ〜、しかし美味しかった。また頼むよ」

 

ご機嫌な煙緋を見てみて、ふと気になっていたことを思い出した。確か煙緋も仙獣の血を引いてる半仙なんだよな。歳いくつなんだろ?甘雨さんみたいに帝君と璃月を守る契約を交わしてる訳では無いから何百って歳じゃないだろうけど。でも女性に歳を聞くのは失礼だとよく言うし、ストレートに聞くのはなぁ…。そんなことを思いながら頬杖を着いていた俺の顔を見て、煙緋は胸を張る。

 

「なんだ?なにか気になっている顔をしているな?…よし、この豆腐料理に免じて璃月1の法律家たるこの私が聞いてやろう!」

「え、いいのか?」

「あぁ、もちろんだ。なんでも聞いてくれ」

「じゃあ、聞くけど……あのさ」

「なんだ?」

 

「煙緋ってトシいくつ?」

 

 

 

煙緋に豆腐フルコース作るのが2回に増えた。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

「あっ、おまたせっ!待ったかしら?」

「いや、俺も今来たところ」

 

再度ぷんすこ怒り出した煙緋から女性の扱いについてのお説教を頂いた後、俺は刻晴との待ち合わせの場所に来ていた。少ししてぱたぱたと走ってきた彼女に言葉を返す。

 

寄りかかってた柱から体を離して刻晴を迎え、こちらを見上げた彼女と目が合うと、ふいっと逸らされた。え?なんで?

 

「じ、迅。今日の約束なのだけど…この前誘った食事とは違うの。ごめんなさい」

「それは別に構わないけど……それなら今日はどうするんだ?」

「今から群玉閣で祝勝会があるのよ。私は君を連れてくる役って訳」

「あ、そうだったのか」

 

てっきりそういうのはもう終わってるのかと思ってた。そう刻晴に言うと、寝込んでる功労者そっちのけでやるわけないでしょ?とジト目で言われた。そうやって話している間も、月海亭に歩いている最中も刻晴と目が合わない。いや、合わなくは無いんだけど速攻で逸らされる。

 

俺、なんかしちゃったかな?と考えるけど、心当たりと言えば俺が半々仙というのを隠していたって事かな。仙人嫌いの刻晴からすればそれを隠して接していた俺に憤りを感じて当然だ。

 

浮岩で群玉閣に向かっている最中、会話が途切れたところに俺は彼女に頭を下げた。

 

「刻晴、悪かった。種族を隠してたりなんかして」

「えっ?そんなこと気にしなくていいのに」

「え?」

 

あっけらかんと返した刻晴に目を丸くする。その事で目を合わせてくれなかったんじゃないのか?その事を刻晴に言うと彼女は顔を朱に染めた。

 

「ちっ、違うわよ!私が貴方を嫌うとかありえないからっ!」

「そ、そうなの?」

「そうよっ!」

 

心外とばかりにものすごい勢いで捲し立てられてちょっと安心する。種族がバレたことによる七星の行動も俺のただの杞憂だったし、これなら最初から隠すんじゃなかったと内心後悔した。刻晴はその後は目を合わせてくれるようになったんだけど、5秒経たずにやっぱり逸らされる。いやなんでなん?

 

 

 

 

 

群玉閣に着くと俺以外の跋掣戦の面子は全員揃っていた。みんなに出迎えられてあれよあれよと席につかせられる。そのまま凝光さんの音頭で乾杯し、群玉閣は喧騒に包まれた。少しお酒を嗜みながらどんちゃん騒ぎを見ていると、俺はずっと気になっていたことを聞く為に隣に座っている綺良々に話しかけた。

 

「き、綺良々?」

「な、…なにっ?」

「いや、なんでそんな遠いの?」

「ぅえ!?…そそんなことないよ?」

 

隣、という表現も怪しくなる位に明らかに椅子を離されている綺良々に聞くと赤い顔のままはぐらかされる。そして全然目が合わない。

 

「どうしたんだ?朝とは様子が違うけど」

「そっそうかな?いつも通りだよ?」

 

そう言いつつもそっぽを向き続ける綺良々に、俺が虚空を指さす。

 

「あ、すっげぇ刺し盛り。めっちゃ美味そう」

「えっ!ほんと!?どこどこっ!?」

「うそ」

「……………っ」

 

適当なことを言い、つられてそっちを見た綺良々と強制的に目が合う。普通に心配なので大丈夫か?と顔を覗き込むと、綺良々はわたわたと慌てて耳まで赤い顔を隠して「ほ、他の人に挨拶してくるぅー!」と逃げて行った。

 

マジでどうしたんだ?反応を見る限り嫌われたとかじゃないと思うけど……。

 

さっきから卓の向かいから視線を感じていたのでそちらを向くと不機嫌顔の蛍と目が合った。お前もどうしたんだよ。昼間のノーパン発言はお相子だろ。

 

じっと蛍を見つめていると、若干赤い顔でぷいっと顔を逸らされた。

 

刻晴といい綺良々といい、ほんとに何なんだ?

 

 

 

 

☆☆☆☆

 

 

 

うううう………どうしよぉ、迅くんの顔が直視出来ないよぉ~。

 

迅くんから見えないところまで避難したわたしは、ひとりでに熱くなるほっぺをぱんぱんして冷ます。

 

なんでこんなことになっているのかと言うと、刻晴さんと話した時まで時は遡る。刻晴さんと迅くんが一緒にお風呂入った発言が聞き捨てならなくて、問い詰めていくと、依頼の途中で止むを得ず天然の温泉に背中合わせで入ったとの事だった。それはそれでめちゃくちゃ羨ましいけど、わたしは昨日迅くんと洗いっこしたけどねぇ!と刻晴さんに胸を張った後から他の子と同様、迅くんとのエピソードの言い合いになった。

 

そこで口を滑らせちゃって、今朝付けてもらった「これ」のことを話してしまった。そこでわたしは遅まきながら、妖狐様に教えて貰ったキスマークというもののほんとの意味を知ったのでした。

 

うにぁああああああああ!?!?

 

まっまさか、「所有物」って意味だったなんて!「安全祈願」じゃなかったのぉ!?そ、そんなことを朝からおねだりするなんて、わたしただの変態じゃん!!(今更)

 

昨日暴走したわたしと相まって、迅くんにはかなり変な女の子に見えたよね?べ、別にわたしが迅くんのものになるのは全然良いんだけど…。タイミングが不本意だよっ!

 

そんな状態だから迅くんと目を合わせられないでいます。どうしよぉ。

 

こういう思考回路なのにわたしったら「今日も一緒に寝たいなぁ」とか「出来ればまた、お風呂一緒に入りたい…」とか思ってるあたりほんとにダメだわたし。

 

わたしがしゃがみこんで頭を抱えていると。

 

「綺良々さん?どうかしたのですか?」

「…甘雨さん」

 

話し掛けられて顔を上げるとお酒が入っているのか少し顔が赤い甘雨さんが佇んでいた。手に持った白い花を美味しそうに食べてる。

 

「…それ、なんですか?」

「これですか?これは清心の花です。この花びらがとっても美味しいんですよ?おひとついかがですか?」

 

あまりにも美味しそうにむしゃむしゃ食べてるので気になって1口食べてみると……に"っ!?

 

思わず吐き出さなかったわたしを誰か褒めて欲しい。

 

苦あああああ!?なにこれめちゃくちゃ苦い!?なんで甘雨さんこれを美味しそうに食べてるの!?

 

「綺良々さん、いかがですか?美味しいですよね?」

「ヘッ…アッ…お、おいしいね!」

「そうですか!前に刻晴さんもおいしいと言ってくれたんですよ。お口にあって良かったです」

 

刻晴さん、まじ?わたしが愕然とした表情で刻晴さんの方をみると目が合った。手にした清心を見せると青い顔をしてふるふると首を横に振る。刻晴さんもわたしと同じパターンかぁ…。

 

「それで、綺良々さんはどうかしたのですか?何か思い悩んでいるような様子でしたが……」

 

手にした清心を残す訳にもいかないからやけくそでお水で流し込んでいると、首を傾げられた。甘雨さんは多分、わたしと迅くんの仲を察してる人だよね…?蘇生の時に言っていたセリフから話しても大丈夫だと判断したわたしはこそっと耳打ちをした。

 

「えっと……わたし、今朝迅くんキスマークを付けちゃったんだけど…その意味をわたしが勘違いしてて……」

「きすまーく、ですか?すみません、私そういうお話に疎くて…どういうものなのでしょう?」

「え、えっと、首筋とか背中とかに吸い付いて痕を残すってやつなんだけど……」

 

ううう…改めて自分で説明するの恥ずかしい!それを聞いた甘雨さんは顔を真っ赤にする。

 

「すっ、吸い付く、ですか……!?」

「う、うん。わたしは安全祈願って教わってたんだけど、ほんとの意味は所有物って意味らしくて…」

「しょ、しょしょしょ!?」

 

甘雨さんは口をぱくぱくしながら後ずさる。「さ、最近の若い方たちはそんなことを……」ってつぶやきながら手でぱたぱた仰いでた。あれ、甘雨さんってすごく長生きな人って迅くんから聞いてたから、初心な反応にこっちがびっくり。

 

甘雨さんはどうにか動揺を飲み込むと顎に指を当てて「迅はどういった反応だったのですか?」と聞いてくる。

 

「迅くんは気にしてないみたい。そう見えるようにしてるのか、ほんとに意味がわかってないのかはわからないけど…」

「その事だけど、迅は知ってるよ?」

 

後ろから響いた声に甘雨さんと振り返ると蛍ちゃんが腕を組んで立っていた。話を聞くと、昼間にキスマークの意味について聞かれたらしく、わたしはまた頭を抱えた。うわぁ…変な子だって思われたぁ。

 

膝から崩れ落ちたわたしを、甘雨さんと蛍ちゃんに慰められていると、コツコツと足音を響かせて大きな邸宅の中から凄く綺麗な女の人が出てきた。ぴっちりとした動きやすそうな青い服に白いモコモコした上着を羽織っている。斜めに切り揃えた黒髪の奥から覗く新緑の瞳が只者じゃない雰囲気を醸し出していて、ちょっと尻尾の毛が膨らみかけた。

 

跋掣戦の準備で色々な人と顔を合わせてきたけど、この人とは面識が無い。ここに居るってことはかなり位が高そうなんだけどなぁ。

 

「あら、こんな所で恋愛相談?」

夜蘭(イェラン)さん、ここに居たのですか?」

「ええ、凝光の厚意でここの部屋を使わせて貰っていたのよ。この宴には私は関係ないでしょう?だから今まで引きこもっていたのだけど、面白そうな話が聞こえて来たからこうして出て来たの。貴方が稲妻の猫又の綺良々さんね。私はここの総務司の役員をしている夜蘭よ。よろしくね」

「あっ、初めまして!」

 

ニコリと微笑んだお姉さん…夜蘭さんと握手を交わす。蛍ちゃんとも知り合いみたいで、話した感じ気のいいお姉さんって印象だけどなんだか底が見えない。

 

「それで、恋愛相談は外野の方が話しやすいわよ?彼とも面識があるし、私に話してご覧なさい?」

「じ、迅くんとはどんな関係なんですかっ?」

 

迅くんの周りにまだこんな美人さんが…!わたしがすかさず聞くと、抜かりないわねとくすくす笑う夜蘭さん。

 

「彼とは凝光の紹介で知り合っただけよ。本当に面識があるだけね。私から見た印象は……顔が広くて実力もある冒険者、という感じかしら」

「なるほど…」

 

うーん、これなら夜蘭さんは安全域…いや一応警戒ゾーンに置いておこう…。美人さんだし。

 

わたしは夜蘭さんに悩みを打ち明けると彼女はそうね、と顎に手を当てた。

 

「まぁ、誤解を解くのなら早い方が良いわね。でも、あなたは満更では無い…と」

「はぃ」

「綺良々…所有物になりたいっていうのは中々上級者だよ?」

「綺良々さん…見かけによらず大胆なんですね…」

 

呆れた目で見てくる蛍ちゃんと尊敬をした目で見てくる甘雨さんに小さい声で返すしかないわたし。そんな様子を尻目に夜蘭さんはわたしの首周りをちらりと見る

 

「そういえば、何処に着けて貰ったの?ここからじゃ見えないから隠せる場所ではあるのでしょうけど」

「えっと、わたしが教わった話だと心臓に近い場所につけてもらうと効果が上がるらしいから、…………ここに」

「あら」

「「ええ……?」」

 

わたしが服の家からつけて貰った場所、つまり胸の上ら辺を指さすと大胆ねと目を丸くする夜蘭さん。…うぅ、やっぱりここマズイよね!

 

「まだ一般的な場所なら誤魔化しが聞いたのだけれど……その場所はもう無理ね」

「ですよね」

 

結局誤解を正面から解く形に。うぅ、後で謝ろう……。ちらりと迅くんの方を見ると酔っ払った北斗さんに絡まれてる……って肩組まれてるぅ!?近い!顔近いよ!(棚上げ)

 

あっ、いつの間にか迅くんの横のわたしの席に申鶴さん座ってる!迅くんにお酌してる!!ずるいわたしもしたい!

 

お姉さんズに両脇を固められた迅くんはたじたじしてて、周りに視線を彷徨わせて助けを求めてる。でも刻晴さんは凝光さんと話してるし、パイモンちゃんは料理に夢中だし、残りの甘雨さんと蛍ちゃんは今わたしのところに集まってるしで助けがいない。その様子に3人で笑っていると彼と目が合った。たすけてくれ!と懇願した目で見られる。

 

そんな彼の様子を見てたらなんかキスマークの悩みとかが勢いよく吹き飛んで行った。誤解は後で解くとしてひとまず迅くんの傍に戻ろう!

 

悩みを聞いてくれた夜蘭さんと甘雨さん、蛍ちゃんにお礼を言うとわたしはその場を離れた。甘雨さんに清心を勧められた蛍ちゃんがこっちを見てるけど見なかったことにする。

 

「なぁんだよー!璃月の英雄ともあろう奴が、アタシの酒も呑めないのかい?」

「いや飲んでる!飲んでるから!後そこ首ッ、締まってる締まってる!!」

「迅、こっちの料理も中々に美味だ。食べるか?」

「申鶴、食べるからその前にこの人外してくれない?」

「む、その前に口を開けよ。冷めてしまうぞ?」

「今俺の食道が漏斗みたいになってるからちょっと無理だって!ちょ、いやマジ、ぎ、ギブ…」

「んー?どうした迅?顔が青いぞぉ?もう酔っ払ったのかぁ?」

「こらああああああ!!」

 

現場に駆けつけたわたしは北斗さんの距離感やらしれっとあーんしようとしてる申鶴さんの位置取りやら、死にそうになってる迅くんに顔色に目を吊り上げて飛びかかる。なにしてんの!!

 

まず人命最優先なので妖怪パワーで北斗さんの腕を外して、気道確保。顔色が戻るの確認したら、椅子ごと迅くんを卓から離した。

 

「はぁ…はぁ…あ、ありがとな綺良々…死ぬかと思った」

「だ、大丈夫?顔色が水スライムみたいになってたけど…」

「ギリ何とか。いくら仙力があるって言っても窒息は普通に死ぬわ」

「もぅ、ちょっとは断ったら?」

「みんな本心で祝ってくれてるから断わりにくくて。……それと、やっと目、合わせてくれたな?」

「そ、それは…」

 

迅くんがわたしの目を見て笑うと顔が熱くなってきた。「そ、そんなことないよ!?」と目を逸らしながら誤魔化すと彼はちょっと申し訳なさそうな顔をする。

 

「もしかして、俺がなにかしちゃったか?さっきから刻晴も蛍もそんな感じでさ」

「いや、そういうんじゃないよ?……えと、迅くんその、今朝はごめんね?なんでもしてくれるからってあんな頼んで…」

 

わたしが勘違いしてた経緯を説明して謝ると頬を掻きながら気にするなと笑って、頭を撫でてくれる。それだけでわたしの心の中の蟠りが無くなっていってすごく安心した。やっぱ好きだぁ。

 

 

 

その後は料理をもってやって来た申鶴さんと交互に食べさせたり、それを見て飛んできた刻晴さんとぎゃいぎゃいやって過ごしていると、わたし達の前にひとりの女性が歩いてきた。こちらも初めて見る人だ。切り揃えた長い黒髪を揺らしてやってきたその人は、迅くんの前で綺麗な一礼をした。

 

「貴方様がかの渦の余威戦で活躍された、篠田迅さんですか?お会いできて光栄です。私は和裕茶館と言う劇団で劇者をしております、雲菫(ウンキン)と申します」

 

そう名乗った雲菫さんに迅くんも立ちあがって挨拶を返す。それにしても、どうして劇団の人が群玉閣にいるんだろう?なにか劇をしてくれるのかな?わたしが期待した目で見ていると、雲菫さんと目が合って微笑まれる。

 

「これは、丁寧にどうも。活躍…なんてことはしてないですよ。璃月港の皆の力です」

「あら、お口が上手なのですね。この後にそちらのステージで2本、劇をさせていただくことになっていますので、お楽しみにしていてください」

 

雲菫さんはそう言って一礼をすると、踵を返した。どうやら私と迅くん以外の人とは知り合いみたいで、申鶴さんと談笑してる。それにしても劇かぁ……見るのは初めてだから、すっごく楽しみ!

 

 

 

少しして喧騒も落ち着いてくると、雲菫さんによる劇が始まった。璃月の外れにある村に魔物が攻め込んできて、その生贄になった女の子が仙人に拾われるっていう物語で、わたしは見入ってしまった。初めて見たっていうのもそうだけど、何より物語がすごく面白い。……でもこの女の子、どこかで見たことがあるような……。

 

物語も終盤に差し掛かり、終わった所で雲菫さんは「もう一筆、歌わせて頂きます」と本来は無いらしい物語の続きを歌い始めた。

 

仙人に育てられた少女は人々と協力して厄災を……って、あれ?これこの前の戦いじゃない?え、ってことはこの女の子って……。

 

わたしは近くに座る申鶴さんの方を見た。わたしの方からだと表情はわからないけど、口元がにっこりと笑ってる。そんな申鶴さんに迅くんが話しかけ、一言二言やり取りした後に、2人はもう一度劇に目を向けた。

 

 

1つ目の劇が終わると、みんなで拍手をする。ち、ちょっと泣きそう……申鶴さん…って言っていいのかわからないけど、その人の半生を濃密に描かれた物語がすごく没入感を高めてくる。

 

「ありがとうございました。それでは、第二作目をやらせて頂きます。次の物語は原作が何処にも出ていないオリジナルの物です。……その物語の名は……蒼夜叉(あおやしゃ)

 

蒼夜叉?………え、それってもしかして……?

 

雲菫さんの口から題名が出た瞬間、わたしは迅くんの方を見た。彼はこの劇をやるのを知っていたみたいで、目が合った迅くんはくすりと笑って舞台を見た。

 

劇の内容は大まかにこんな感じ。

 

璃月で生まれた夜叉の主人公は、赤ん坊の時に手違いで外国に向けた貿易船に荷物と紛れてしまって稲妻まで行ってしまう。その後彼は名家に拾われたけど発現した夜叉の能力に周りの人は恐れ、迫害を行ける日々を送りながら拾ってくれた家の人に恩返しをする日々だった。

 

数年後、大人に成長をした主人公は本能的に外国へ行きたいと願うようになった。その後、璃月に脚を運んだ主人公は山奥で仙人に出会う。そこで自分の出生を知った主人公は、蒼い雷を纏う夜叉となって璃月を守って行くのでした。

 

って、ちょっとまって?何このシナリオ。いや劇のシナリオだから別に文句とかじゃないんだけど、まるで迅くんが璃月に残って稲妻に戻らないみたいな感じになってるんですけど!?

 

迅くんの方を見てみると、話が違うぞ!の表情をしてた。わたしと2人で七星の方を睨むと揃って目を逸らされる。ぜ、絶対凝光さんと刻晴さんの仕業だ……!これ絶対璃月側の理想じゃん!あれだけ束縛しないとか言っときながらぁ……!

 

ちなみに蒼夜叉の劇自体はとっても好評みたいで、拍手喝采。向こうで引き攣った顔の迅くんを見て珍しく蛍ちゃんが爆笑してる。その横でパイモンちゃんも指さして大笑いしてて、食いしばった迅くんの口がギリっと音を鳴らした。

 

ちなみに申鶴さんや甘雨さんも個人的には劇の展開が理想に近いみたいで普通に拍手してる。申鶴さんがコソッと迅くんに耳打ちしたのを妖怪イヤーがバッチリ拾った。作中に出てきた姉代わりの仙女を指さして「姉が欲しいのか?」じゃないわ!

 

劇が終わった後に迅くんと抗議に行ったけど凝光さんに「彼を欲するのは当たり前じゃない。だって璃月に利益しかないのよ?劇で我慢したんだから文句を言わないで頂戴」と一蹴された。くぅ。

 

 

 

その後は宴も終わりに近づいて、酔い潰れた北斗さんは迎えにきた万葉さんが運んで行った。少し片付けを手伝ったわたしが戻ってくると、群玉閣の縁に座って迅くんが下に広がる璃月港を見つめていた。もうとっくに夜なので港の夜景がすごく綺麗。わたしはすっと隣に腰掛けると迅くんは頭を撫でてくれる。

 

「ね、蒼夜叉さん」

「その名で呼ばんでくれ。蒼閃迅雷よりはマシだけどちょっと痒いんだよ」

「それならこの機会に異名変えたらどうかな?蒼夜叉って名前、迅くんに合っててカッコイイと思うよ?」

「そんな異名よりも狛荷屋の配達員って呼んで欲しいよ普通に。一応今出張中だってのに」

「あ、そういえばそうだったね。色々あって忘れてた」

「それでいいのかゴールド配達員」

 

こういう他愛ない会話してる時が1番好き。尻尾を迅くんの腕に絡みつかせるとそれも優しく撫でてくれて、凄い勢いで疲れが癒されてく。

 

「…なんか、稲妻を出てまだひと月経ってないのになんだかすごく長く離れてた気がするよ」

「どの日も濃密だったからなぁ。稲妻に戻ったらそれぞれ国外配達だな」

「うん。届け先によっては2人バラバラに行くこともあるだろうから、前みたいに一緒に配達は出来なくなりそうだね」

「そうだな。こうしてゆっくりも出来なくなっちゃいそうだな」

「……わたしがいない所であんまり増やさないでよ?」

「だから増えんて。そんな人を災害みたいな…」

「ほんとかな〜。だって迅くん誰にでも優しいから、行く先々で女の子引っ掛けて来そうなんだもん……ライバルいっぱいは大変なんだからね?」

 

そんな俺に引っかかるか〜?と首を傾げてる迅くん肩をしっぽでペシペシ。だって今日ひとり増えたからね!!まだモンドと璃月、稲妻だけだから済んでるけど、スメールとかフォンテーヌいったらわからないよ?今回の出来事で迅くんがさらに有名人になっちゃったし。蛍ちゃんと同じ位ってヤバいよね。

 

でもわたしも久しぶりにおばあちゃんが作るご飯食べたいなぁ。それに、そろそろ迅くんにわたしの正体も言わなくちゃ。家でアタック出来たらわたしにとってもすごくプラスだと思うんだ。うーんと悩んでた迅くんは「ま、善処するよ」と信用度の低いセリフを言って頭を撫でてきた。ほんとに難攻不落なんだから。……そういう所も好きなんだけど。

 

わたしと迅くんはその後もずっと、並んで座りながら夜景を見詰めていた。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。