職場の先輩がウチの飼い猫に似ている件   作:猫好きの餅

35 / 80



おまたせしました。

たまにはこういうわちゃついた回もいいよね?

あと4.4が旅人の財布を壊しに来てる。新衣装はずりぃよ………。




20話 群玉閣のカオスな朝

 

 

 

☆☆☆☆

 

 

 

んぅ………んん〜。

 

祝勝会の翌朝。群玉閣にそのまま泊まったわたしは大きなベッドの中で目を覚ました。隣を見ると、パイモンちゃんを抱き抱えた蛍ちゃんがすやすや眠っている。わたしはそんな2人を見て微笑むと、起こさないように気をつけてベッドから出た。

 

ゆっくり寝室の扉を開けて部屋から出ると、隣の部屋の前まで歩く。今わたし達が泊まらせて貰ってる部屋は群玉閣にある客室の中でも1番大きくて、広いリビングの奥に寝室が2部屋ある間取り。そう、隣にはもちろん迅くんが寝てるんだ。

 

え?なら今わたしが何をしようとしてるかって?そんなの決まってるじゃん。充電だよ?(真顔)

 

とりあえず寝てる迅くんにちゅーしよう。で、あわよくば抱き着いて一緒に2度寝しよう。うん。

 

わたしが抜き足差し足忍び足で迅くんの寝室にするりと忍び込む。

 

ふっふっふっ、やっぱりまだ寝てる。迅くんのあどけない寝顔に悶絶しそうになりながら彼が寝ている大きなベットに脚をかけて、彼に覆いかぶさろうとして…………ん?

 

夜目があるとはいえ暗い部屋の中で気づくのが遅れたけど、なーんか、やけに布団の盛り上がりが大きいような……まるで、誰かが横で寝てるみたいに。

 

…………………。

 

 

わたしは恐る恐る掛け布団をめくって………、薄紫色が見えた瞬間、布団をひっぺがした。

 

迅くんを起こさないため、ここからは小声でお送りしますっ。

 

「こらあああああああ!」(小声)

 

なんと、わたしの愛しの迅くんの横で寝ていたのは昨日わたしに宣戦布告してきた刻晴さんだった。彼女は、迅くんの腕にしがみつくようにして眠っている。ししししかも格好がかなりやばい!

 

寝てる刻晴さんの格好を説明すると、普段来てる衣装の上着を脱いだ姿(肩丸出し、薄着)でタイツも脱いだ生足で迅くんの手を挟み込んでる。シーツの上に下ろした若紫色の長い髪がベッドに広がってて女のわたしから見てもなんかえっちだ……ってちがーう!とりあえず起こす!!

 

「んん……何よ……うるさいわね…」

「なぁぁにしてんの!?」

 

布団が剥がされたことによって目を覚ました刻晴さんは目を擦りながら起き上がり、目を吊り上げているわたしを見てあら、と口を開いた。

 

「おはよう綺良々。早いのね」

「なに普通に挨拶して流そうとしてるの!?ななななんで刻晴さんがこの部屋にっ?別の部屋でしょぉ!?」

「緊急時の合鍵を使ったわ」

「わたしにとっては今が緊急事態だよっ!」

 

ちなみに迅くんは昨日かなり飲まされたみたいで自分にかかる布団が半分くらい剥がされたのに、まだすやすや眠ってる。2人で起こさないようにぎゃいぎゃいやりながら寝顔を見て、お互いにきゅんとする。

 

「言ったでしょ?私が迅にアタックできるのは彼が帰るまでよ。それを過ぎたら配達でしか会えなくなるじゃない」

「だからっていくらなんでも夜這いはいきなり過ぎるよ!」

「お風呂に突撃した綺良々だけには言われたくないわ!」

「ウグッ」

 

痛い所を突かれて呻くわたし。も、もっかい迅くんを寝顔を見て落ち着こう。

 

………あぁ、寝顔可愛いなぁ……。ほんと肌綺麗だよね。身体は傷跡多いのに。ち、ちょっとほっぺだけでもいいから1回だけ………「って何してんのよ!」

 

あ、気付かないうちに覆いかぶさってたー(棒)。後ろから羽交い締めにされてて止められる。

 

「あ、つい」

「嘘付きなさい絶対わざとでしょ!」

「だって迅くんの寝顔可愛いんだもん!それ目の前にして我慢なんてできないよっ!」

「それは…わかるけど……」

 

最早言い争ってるのか共感してるのかわからなくなったわたし達。ここでまたもや落ち着こうと2人で迅くん寝顔をもう一度見ようとして……。

 

さすがに起きちゃったのか、目が開いた迅くんとバッチリ目が合った。

 

「………」

「「………………おはよう」」

「…お、おはよ」

 

とりあえず挨拶するわたし達に頭上に「?」を浮かべながら返す迅くん。寝起きで整理できてないみたいで目をくしくし擦ってる。そして、今の状況がおかしいことに気が付いた。

 

「えっと、なんで君らここに居るの?綺良々は100歩譲ってわかるけど……刻晴は?」

 

髪を下ろした刻晴さんを初めて見たみたいで、迅くんの目がちょっと開く。そんな彼に刻晴さんはもじもじしながら答えた。

 

「わ、悪い?私が貴方と寝たかったからだけど…?」

「へ?」

 

素っ頓狂な声をあげる迅くんに構わず刻晴さんは口を開こうとして、照れて閉じる。「ど、どういうことだ?」と迅くんに聞かれてもごもごしてたけど、決意が決まったのか迅くんをしっかり見据えた。

 

「ああもうっ!やっぱり私のやり方で行くわ。……迅、貴方が好きよ」

「っ!?」

 

流石の迅くんでも刻晴さんから告白されると思ってなかったみたいで、すごくびっくりしてる。でもすぐに飲み込んで迅くんもしっかりと刻晴さんの目を見た。

 

「ど、どうして俺なんかを?てっきり仙人の弟子だからあんまりいい印象抱かれてないのかとーーー「「俺なんかって言わないで」」あ、はい」

 

もう、自己評価低すぎだよ。思わずわたしも声出ちゃった。刻晴さんは迅くんの手をぎゅっと包み込む。

 

「お、驚くのも無理は無いわ。最近自覚したし……でも、仙人とかそういうのは関係ないの。私は、貴方の信念や優しい所に惹かれたのよ」

「……刻晴」

 

ううう、わたしの空気感ヤバいよぉ。でもここで狼狽えちゃダメっ!だって迅くんはわたしに嫉妬してくれたし?綺良々がいいんだって言ってくれたし?ここでどっしり構えなくちゃこの先やってけないもんね!

 

迅くんは自分を見つめる刻晴さんを見詰め返し、口を開こうとして……刻晴の手に塞がれた。

 

「むぐ?」

「ちょっと待って、応えは要らないわ。だって、まだ私の想いを伝えきってない。だからまだ君を好きでいさせて?」

 

そう言い手を離す。迅くんは「またそのパターンか…」と遠い目をしてる。あーあ、また増えちゃったね?まぁ女の子みんなに優しくしてて紳士的でカッコイイ迅くんが悪いんだからっ。

 

迅くんは後頭部をかくと(ちなみに照れてる時の癖)刻晴さんに背筋を伸ばして向き直った。

 

「……わかったよ、そういうことなら何も言わないでおく。その、気持ちはすごく嬉しいよ、ありがとな」

「いいのよ。私が勝手に好きになったんだから。………だから今度こそ、前の約束通りにデートしましょう?」

「なぁ!?」

 

2人の世界に入りそうだったのでわたしが2人の間に入り込む。何よ邪魔しないでくれると言いたげな目で見られたけど夜這いの話はまだ終わってないからね!不法侵入だよ不法侵入っ!

 

迅くんを挟んでまたぎゃいぎゃいやってると彼の「そろそろ起きるか?」と言われて一時休戦。ベッドから降りて明かりをつけた所で、わたしはとんでもない事に気が付いた。

 

「じ、迅くんっ!」

「ん?どうした?」

「迅くんの右側……」

「えっ?」

「んぅ……なんだ。もう朝か?」

 

わたしが指を指した瞬間、刻晴さん側から見て反対側の布団が盛り上がってひとりの人がむくりと起き上がった。

 

「し、申鶴ゥ!?」

「申鶴さん!?」

 

こ、刻晴さんに気を取られて全然気が付かなかった……。なんとずっと迅くんのむこう側で寝てたららしい申鶴さんが目を擦ってる。格好があられもなかったらどうしようと思ったけど、いつもの格好で良かった……ってそもそもの服がすごいんじゃん!!

 

「ど、どうして申鶴がここで寝てんだ?」

「何、姉弟が一緒に寝るのは自然な事だろう?丁度床も広かったので邪魔をした」

「姉設定復活してる……」

 

小首を傾げて言う申鶴さんに頭を抱えた迅くん。そこに「ああ姉ってどういうことよ!」と刻晴さんが噛み付いたけど、前出会った時と同じ説明を受けて同じくこめかみを抑えた。

 

「うむ、迅は一人っ子と聞く。ならば我がお姉ちゃんになっても良いだろう?」

「ちょっと何言ってるかわかんない……で、なんで姉設定がもどったんだよ?」

「ああ、コレだ」

「ん?また本か?」

 

申鶴さんが胸元から取り出した(いやホント何処にいれてんの?ソコから出てきたんならもう挟む(・・)しかないじゃん!)本をみんなで覗いて見る。内容は…親族が全員亡くなって1人になった主人公が養子に入った家のお姉ちゃんにひたすら甘やかされてる話で、最初は嫌がってた主人公も終盤には陥落してる。

 

「それで?この本を何処で見つけて来たのよ?」

「無論、甘雨の姉君の部屋だが?」

「お前また怒られるぞ?」

 

申鶴さんは甘雨さんの部屋の本棚の奥にあった仙術まで使って封じられてた箱の中から偶然発見したらしい。……偶然ってなんだっけ?絶対前のに味占めて探し回ってたでしょ。刻晴さんは甘雨さんがそういう本を持っているのが初耳だったらしく遠い目をしてる。

 

「この書物によると、疲れた人を癒すにはその人のお姉ちゃんになるといいらしい」

「…それで、また復活したのか……」

「そういうことだ。だから迅、膝枕からどうだ?」

「いや、今から起きるところだから。申鶴、とりあえずその本は甘雨さんに返してやってくれよ?」

「……」

「……申鶴?」

「……」

「……申鶴さん?」

「………」

「…お姉ちゃん?」

「なんだっ?お姉ちゃんだぞ?」

「…綺良々…どうしようこれ……」

「ちょっとこっち見ないで」

「綺良々!?」

 

もーこうなったら話聞かないでしょこの人。だってすごく乗り気だもん。迅くんのお姉ちゃん呼びにときめいちゃってるもん。わたしには手に負えませんっ。

 

刻晴さんにも助けを求めたけどまるっと無視され涙目の迅くん共々寝室から出る。時刻はまだ早朝と言って差し支えない時間で、申鶴さんも交えて仙人の修行方法とかで話していると部屋の扉がノックされた。

 

「おはようございます、甘雨です。起きていますか?」

「あ、はー「我が出よう。お姉ちゃんだからな」ってちょっと待て!?」

 

ちょっとぉ!?ここ迅くんとわたしと蛍ちゃんの部屋なんだからそれ以外の人が出ちゃダメでしょ!わたし達が制止する間もなく申鶴さんによって扉が開けられた。てっきり迅くんが出てくると思ってた甘雨さんの目が目一杯開く。

 

「なっななな!?なんで申鶴がここに!?」

「迅のお姉ちゃんだからだ(天下無双)」

「あっあなたまだそんな事をっ!…も、もしかしてこの部屋で一晩過ごしたのですか!?……さ、流石に綺良々さん達と一緒の部屋ですよね……?」

 

顔を真っ赤にしてプンスコ怒る甘雨さん。冷や汗を垂らしながら申鶴さんに聞いたけど、彼女はこてんと首を傾げた。

 

「無論、迅の隣だが?」

「な、なにをしてるんですかああああ!!だだだ男女で同じ寝床なんて、は、ハレンチですぅ!…迅っ!どういうことです…か……って、……え?刻晴さん?」

「人違いよ?」

 

あ、ついに見つかっちゃった。ずっと迅くんの影に隠れてたんだけど、愕然とした表情の甘雨さんに見つめられてバツが悪そうに返す刻晴さん。

 

甘雨さんはびっくりしながらも他に見落としたものが無いか部屋をぐるりと見回して、見つけてしまった。……机の上にある甘雨さん秘蔵の姉弟本を。

 

「アッ」

「甘雨?大丈夫よ?私は少ししか見てないわ?」

「そそうだよっ?わたしも弟とお姉ちゃんが一緒にお風呂入るシーンなんでぜ〜んぜん見てないから!!」

「ちょっと綺良々は黙っててっ!……迅!」

「よしきた!」

「むぐ!?」

 

わたしもフォローしようと頑張って見たけど刻晴さんの指令を受けた迅くんによって口を手で塞がれる。……あ、なんかコレいいかも…。迅くんとの距離も近いし……。

 

どうやらどうして申鶴がここにいて姉発言が復活してるのか合点が行ってしまったみたい。甘雨さんはへなへなとその場に座り込んだ。

 

「お、終わりました……私の人生」

「そんなに!?」

 

なんだか心無しか白くなってる甘雨さんをみんなで慰め(?)てると寝室のドアが空いてお眠の蛍ちゃんとパイモンちゃんが出てきた。リビングのあまりにカオスな状況に目を丸くしてる。

 

「えっと、何この状況」

「我が説明しよう。まず姉君の本が……」

「誰かッ!申鶴を止めろっ!甘雨さん死んじゃうだろ!」

 

やばい!このままだと甘雨さん山に帰っちゃうよぉ!

 

どうしようっ、止めるのが間に合わない。みんながおろおろしていると、わたしの口を塞いでる迅くんがああもうっ、と叫んだ。

 

「……お姉ちゃんっ、ストップ!!」

『!?』

「了解したっ」

 

申鶴さんは迅くんが呼ぶと同時に振り返って「なんだ?お姉ちゃんだぞ?」と心無しか嬉しそうにしてる。止めるためとはいえ、普通にお姉ちゃん呼びした迅くんを見て甘雨さんと蛍ちゃん達が頬を引き攣らせた。

 

「じ、迅…やっぱり……」

「やっぱりってなんですか!?」

「うわぁ、やっぱお姉ちゃん欲しかったんじゃん」

「…ちがうんだよぉ………」

 

今度は迅くんがへたり込んだ。…………なんか、ほんとにどんまい。

 

 

 

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

 

「……酷い目にあった」

 

俺のお姉ちゃん発言で場が騒然となったのを何とか説明して収めた後。昨日はみんなお酒を飲んでそのまま寝てしまったので順番に風呂に入ることになった俺は群玉閣にある大浴場にむかって歩いていた。ちなみに女性陣は先に済ませている。

 

まさか申鶴のお姉ちゃんが復活するとは。影響云々は置いといて甘雨さんの本が原因な気がするけど、ああいう系が趣味なのか……?まぁ人の好みだしとやかく言えないが。

 

それに色々あって忘れそうだったけど、刻晴に告白されたのもすごく驚いた。色恋に興味なさそうな印象だったから尚更。というか刻晴といい綺良々といいエウルアといい、なんで俺に答えさせてくれないんですかね……。また強制キープになっちゃって俺がスケコマシみたいじゃねぇか(何も間違ってない)。

 

つか空飛んでる家って冷静に考えるとすげぇな。大浴場の入口にかかっている札を<入浴中 男性>に返すと中に入る。中は6畳くらいの脱衣場があって、奥に広めの浴場という造りで、凝光さんのこだわりが感じられた。

 

服を脱いで掛け湯をして、ちゃちゃっと頭と身体を洗うと泳げそうなくらい広い浴槽に身を沈めた。

 

「……ぁあ"〜……」

 

俺好みの少し熱めの温度。一気に首まで浸かると無意識の内に声が漏れた。あぁ…染みるー。前に風呂入った時は思わぬ襲撃者がいて落ち着かなかったから余計に染みる。せっかくだしゆっくり浸かっていこう。

 

そのまましばらくお湯に浸かったまま全身を伸ばして堪能していると。

 

「……さすがの蒼閃迅雷さんもこういう時は緩んだ顔をするのね」

「いやなんで?」

 

横からするはずの無い女性の声が響いて思わずつっ込む。バッと横を見るとしっかり肩までお湯に浸かった黒髪ボブのお姉さんが微笑んでいた。

 

「いいいい夜蘭さんっ!?」

「ふふ、やっと気が付いたの?さっきからいたわよ?」

 

そう言いくすくす笑う。いや……は?一体いつからいたんだ?ってそうじゃねえだろ!夜蘭さんもお湯に浸かっているということはもちろん服は着ていない。しかも最悪なことにこの風呂のお湯は普通に透明だ。俺は迅速に身体ごと後ろを向く。

 

「すっ、すみませんッ!俺、直ぐに出るんで!」

 

いつから居たかはわからないにせよ、女性が風呂に入ってる所に突入した事には変わりない。脱衣所の籠をくまなく見たかと聞かれたら決して頷けばしないので、今しがた温まった身体が冷えていくのがわかった。

 

「慌てないで。私が入ったのは貴方の後。こうでもしないと2人で話せないでしょう?」

「え、でも気配がしなかったんすけど?」

「元来、人間が最も警戒心を無くすのがお風呂の時と言われているわ。神の目も無いしね。そんな状況で気配を察知されてるならこんな仕事やってられないわよ」

「だからって風呂に入らなくても……」

「それはダメよ。だってお風呂好きだもの」

「そうなんだ………」

 

とりあえず座りなさい?と言われ、上げていた腰を降ろす。もちろん後ろを向いてだが。

 

「そ、それで、話ってなんですか?」

「貴方が知りたいであろうファデュイの彼のその後のことよ」

「タル…公子の?」

 

夜蘭さんは一般には知られてないが、凝光さん専属の諜報員のような仕事をしている。変装や潜入のプロで俺が知る中だと水元素をもっとも使いこなしている人だ。つか裸で入浴剤入れてなくて透明の男が入ってる風呂に入ってきていいのかよとツっ込んだが、そういう任務もあるからいい鍛錬よと答えられた。なんなら見ても良いのよ?と言われたが断固としてそちらを向かない。

 

「公子はあなたに負けた後、北国銀行で療養をしてフォンテーヌの北国銀行に行ったわ」

「フォンテーヌに?」

「ええ、フォンテーヌにある歌劇場は知っているでしょう?そこで行われる審判の代理人と戦いたいそうよ」

「へぇ、よくそんな情報まで集めましたね」

「って、彼が言っていたわ」

「いや普通に聞いたんかい」

 

諜報じゃねえじゃん。そういやフォンテーヌも狛荷屋の配達する国リストに入っていたな。冒険者時代にも行ったことがないので審判とやらも少し気になる。

 

「そういえば、昨日恋愛相談も受けたわね」

「恋愛相談?誰の」

「貴方のパートナーだけど?」

「……あぁ」

 

聞くんじゃなかった。絶賛の悩みの種を掘り起こされてため息を吐く。

 

「ふふ、モテモテね」

「気持ちは嬉しいんですがね……」

「今、誰かと一緒になる気は無いの?」

「何度も考えたんですよ。普通だったら気持ちを向けてくれている女の子の中からひとり選んで終わりなんですけど……」

「…選べない、もしくは選ぶのが怖い?」

「……的確に突いてきますね。両方です」

 

情けない話だけど、みんなに向くこの気持ちが恋なのか、友達としてなのか未だわかってないんだよなぁ。その事を伝えると、夜蘭さんは「ひとつだけ、わかる方法があるわよ」と提案する。

 

「……なんですか?」

「自分の性欲が向くか向かないかよ」

「ぶっ!?…なんてことを言うんすかっ?」

「恋とは極論を言えば人の繁殖を行う上での生理現象よ?…ま、私はオススメはしないけれどね」

 

彼女たちをそういう目で見たことがないかと聞かれれば、全然ある。特に起きた時横にいた綺良々とエウルアや一昨日の風呂突撃綺良々は正にそうだった。仙力で精神状態を無理やり鎮めれるからまだギリ無事だったものの、本当に紙一重だった。それに2回ほど行った蛍の洞天のお泊まりで垣間見る宵宮や綾華無防備なところとか、酔っ払った所とか、マジで!ほんっっとうに仙力が無かっ(以下略)。

 

現時点でかわいい所を箇条書きにしていくと綺良々が1番多いんだよな。

 

でも、綺良々を見てると不意に出る(かわいいなぁ)はどっちかと言うとネコ的な方面での可愛さだし、嫉妬っぽい感情だって心配に近い。恋をするとよく言うずっとその人のことを考えてしまうだとか、その人を目で追ってしまうとかいう経験はまだないし…。でも気持ちには応えなきゃだし…。それだからこそいい加減に出来ないし…。

 

はぁ…と俺のため息が風呂場に響く。そんな俺を見た夜蘭さんは青いわねぇと笑うと浴槽から立ち上がった。

 

「君がまた専属冒険者にならなかったのは残念だけれど、こうして話せて良かったわ。ま、悩めるうちに悩んでおきなさい、先輩からの助言よ」

「…夜蘭さんもこういう経験あるんですか?」

「ふふ、その情報は高くつくわね」

 

そう言い残して彼女は浴場を出ていった。

 

 

 

 

 

 

………悩める内に……か。

 

その後も暫く湯に浸かり身体を温めた俺は群玉閣の廊下を顎に手を当てながら歩いていた。ずっと考えても結局誰とは選べなかった。そんな自分が嫌になってくる。

 

ここで俺は彼女たちと向き合う資格が無いんじゃないかとネガティブな考えが浮かんでくるけど、頭を振って振り払った。それこそ相手に失礼が過ぎる。まさかの刻晴も想ってくれていたんだし、悩めるだけ悩んで、考えるだけ考えてやろう。

 

そうこうしている内に自分達の部屋の前についた。扉を開けるとリビング部分の部屋には誰もおらず、奥の部屋から話し声が聞こえてくる。女子部屋の方にいるのかな。うっすら甘雨さんが申鶴に怒っているような声が。まぁそりゃ怒るよなぁ……。あのまま甘雨さんまでお姉ちゃん化したらどうしよう。そんなことは流石に無いだろうけど。

 

俺は風呂上がりのぽかぽかさや、悩みすぎたせいで若干頭が回ってないまま自分の方の寝室のドアを開けた。

 

ーーーここでよく考えるべきだったのだ。女子たちの話し声がリビングから聞いて「奥」から聞こえたこと。そして片方の部屋を説教に使っている事。そして、果たしてそんな部屋で他の面々がお喋りをしているか?という事を。

 

「えっ!?」

「ん?」

「あっ」

 

「……」

 

ドアの向こうは天国でした。

 

みんな普段着に着替える途中だったようで、普段は見ることが出来ない色とりどりの絶景(下着)が目に入る。こういう時に限って仙人の目が瞬間的に彼女達を見てしまった。

 

刻晴はいつものタイツを穿いてる最中だったようで屈んでこちらにお尻を向けるように立ち、真っ赤な顔で肩越しに見ている。途中まであげたタイツの黒と白い肌のコントラストが眩しく紫色の脇を紐で結ぶタイプの下着が思ったより量感のあるお尻を覆っていた。

 

綺良々はいつもの法被ではなく違う服に着替えようとしたみたいでパステルグリーンの下着姿だった。ただ、上の方の下着の背中部分が上手く留めれてなかったのか肩紐がずり落ちかけている。

 

そして蛍はいつものドロワをまだ穿いていなかったのでこの前のノーパン事件のときでは見ることの出来なかった可愛らしい白い下着が確認できた。上はまだ黒いインナーでセーフといえる(言えない)があのドレスの下そうなってたんだと嫌に冷静な頭がそう考えた。

 

 

 

あまりの事態に固まる俺と綺良々達。俺は3人とも顔をこれ以上ないくらい真っ赤に染まり上がったの見てようやく思考回路が戻ると、「ッ…ごめんッ!!」とドアが壊れそうな勢いで閉めた。

 

 

いい景色だったとか眼福とかその前にとてつもない冷や汗が背中を伝う。マジであかん。終わった。

 

 

 

 

一拍遅れて寝室から響く少女たちの悲鳴を耳にしながら、俺は土下座の準備を始めるのだった。

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。