職場の先輩がウチの飼い猫に似ている件   作:猫好きの餅

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マジでおまたせしました。

なんとか2週間以内に投稿できた……。

今回は待ちに待たせた甘雨回です。この話の次で長かった出張編はラストになりそうです。




21話 言質を得たお姉ちゃんは最強

 

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

 

「甘雨さんを探して欲しい?」

「ああ。今日は休日だと言っていたから大事なことにはなっていないとは思うが、昨日夜から家に居ないのだ」

 

死兆星号の修理が終わり、稲妻に帰る日が数日後に迫ったある日。俺は朝からおね…申鶴に呼び出されていた。

 

ちなみに群玉閣での事件から数日経っている。あの時はほんとに死んだかと思ったけど、そもそも男の方の寝室で着替えていた方にも非があると俺は間一髪助かった。綺良々と刻晴は頬を染めながらも許してくれて、まだむくれていた蛍には昨日に1日中秘境巡り手伝うことでチャラにされている。

 

その影響で若干足にキているが、我慢して山脈が邪魔して顔が見えない(・・・・・・・・・・・・・)申鶴の話を聞いた。

 

「まぁそれは了解したけどさ。……申鶴さん?」

「お姉ちゃんだ」

「この体勢はなんでしょうか?」

 

……俺は視界に入る天井とそれを半ば遮っている二連装の爆弾を死んだ目で見ながら言う。

 

「無論、膝枕だが?」

「なんで?」

「この本によると、疲れた弟に膝枕をするのは挨拶と記されている。脚に疲労が溜まっていたのが一目でわかった故、こうなるのは自然であろう?」

「また甘雨さんの本かいな」

 

俺が千鳥足で甘雨さんと申鶴が住んでる家を訪ねたら、出迎えた申鶴にあれよあれよとこの体勢にされた。もちろん抵抗はしたが仙力や元素力を出す前に持ち前の怪力で抑え込まれた。

 

因みに感触は最高の一言で、程よい柔らかさの太ももが枕として最高の寝心地を提供してくる。ただ、さっきから言っているけど上が見えない。

 

「む、ただこの体勢だと迅の顔が見えないな」

「ちょっと待て申鶴そのまま前傾になんなってんもっ」

「んぅ。鍛錬の時もよく思うが、やはりこのふたつの膨らみは邪魔だな」

 

申鶴がどうにかして俺の顔を見ようと身体を動かすせいで、2発の巨大爆弾が顔面に着弾し呻き声をあげる俺。

 

俺はどうにか膝の上を転がって脱出すると癒される所か逆に疲弊した体を引き摺って椅子に座った。

 

「申鶴が甘雨さんの本を持ち歩くから、怒って出て行っちゃったんじゃないか?」

「それは無い。この前和解と同盟をしたばかりだからな」

「ちょっと待て。怖すぎる単語が聞こえたんだけど」

 

同盟!?え、てことは甘雨さんまでこんなんになんのか!?申鶴にお姉ちゃんプレイされるとめちゃくちゃムズ痒いんだよ。……マジかよ。1人でも手に余るのに……いや、甘雨さんなら申鶴みたいにはならないはず。普通の姉になると思う。うん、そうに違いない。

 

そもそも姉になるのがおかしいんだけど、この時の俺の頭も相当やられていてその事に気が付かない。

 

このまま考えても埒が明かないので、とりあえず甘雨さんを探すことに。綺良々にも協力を頼みたかったけど、生憎朝から蛍と用事があると出払っている。1人で探すしかないか。

 

申鶴に見送られて月海亭への道を歩いていると、俺の前に1人の少女が立ち塞がった。

 

「やぁ!奇遇だねぇ!ねぇねぇ迅さん今暇?あ、丁度暇なの?良かったー!じゃあちょっと私に付き合ってよ〜」

「いやなんも言ってねぇよ勝手に話進めんな」

 

絡んできたと思ったらめちゃくちゃなことを言って腕を引いてくる胡桃につっこむ。今甘雨さん探してんだって。

 

「話は聞いたよ〜?生死の境を彷徨ったんだって?どうだったの?」

「さまよったって言ってもな……俺3日寝てただけだし」

「そっちじゃないよ」

「ん?」

 

胡桃に引かれてた腕の力が弱まる。見るといつも天真爛漫の彼女の顔が少し心配そうな表情を浮かべていた。

 

「その、……大怪我したって、聞いて……大丈夫だったの?」

「ああ……、それなら大丈夫だ。俺の種族は聞いたろ?もうとっくに治ってピンピンしてるよ」

 

昨日お宅の客卿と戦ったくらいだからな。俺が安心させるように胸を張ってそういうと、 まるで仮面を取っ払うように胡桃の表情が明るくなった。切り替え早すぎだろコイツ。

 

「なぁーんだ、それなら心配する必要なかったじゃーん!早く言ってよぉ、もぉー!」

「え、心配してたんだ」

「も"っ」

 

あ、固まった。胡桃も人の心配とかするのな。むしろ喜びそうなのに、商売的に。腕を離して逃げようとするのを逆に掴んで逃げれなくすると世にも珍しいしどろもどろ胡桃が降臨した。

 

「そっ、そそそそそりゃ心配くらいするじゃん?一応良くうちに顔だしてたし?鍾離さんのお得意様だし?別に特別な意味とかないからぁ!」

「うんうん」

「頭なでないでよっ」

 

目線どこいってんだ?帽子越しに頭ポンポンしてやるよさらに大人しくなる。なんか癒されるなこの状態のコイツ。

 

そのまましばらく胡桃の頭をポンポンなでなでしてると耐えきれなくなったのか、「お、覚えてろよぉー!」と叫んで走り去っていった。いやぁ面白いな胡桃いじんの。また今度往生堂に顔出そう。

 

そういえば甘雨さん探しの途中だった。月海亭に行って聞いてみると退勤した後に不卜廬に寄ると言っていたらしいのでそのまま玉京台から飛び降りて不卜廬に向かう。長い階段を登った先にある薬屋で、売ってる薬はとても苦いけど効果はてきめんだし、高価でもないので結構親しまれているお店だ。

 

「こんちはー」

「おや、珍しいお客さんですね。いらっしゃいませ」

「お久しぶりです。白朮(びゃくじゅつ)さん。甘雨さん知りませんか?」

 

俺を出迎えた不卜廬の店主さんは俺の問に顎を手に当てる。

 

「甘雨さんですか?確か昨日来られて、清心を買っていきましたね。ただ、随分と時間が経ってしまっているので力添えは出来なさそうです」

 

すみませんねと申し訳なさそうな顔をする白朮さんに気にしないでくれと言い、手を挙げて挨拶してくる七七の肩を揉んで相変わらず凄い音に苦笑すると、俺は不卜廬をでた。うーん、手がかりがここで途絶えてしまった。一応仙力で探知はできるんだけど、如何せん璃月が広すぎて無理だ。それに対象が起きてないと探知ができない。璃月港に探知を掛けても無反応で、外にいるか璃月港のどっかで寝てるかのどっちかになるけど……。とりあえず璃月港の北を空から探してみよう。

 

 

俺は宿に1度戻ると風の翼を着用。電磁離斥で天衝山に登るとそこから滑空しながら探し始めた。

 

「うーん、やっぱ時間がかなり前だから、いるわけないか……?」

 

ちなみに甘雨さんが行方不明になることはそんなに珍しいことじゃない。俺も過去に何度か経験がある。

 

甘雨さんの趣味は仕事の他に(おい)お昼寝がある。疲れたり満腹になったり、理由は色々だがそういう時になると彼女は身体を丸めて何処でも寝てしまう。前は確か、干し草の上で寝ていてそのまま荻花洲に運ばれちゃったんだっけか。今回もそのパターンだと思うんだけど……。

 

俺は滑空しながら探し回り、帰離原から荻花洲を超え、石門まで探すが居ない。そこで今度は軽策荘へ行く道を引き返して行くと、ようやく見つけた。

 

「……すぅ……すぅ……」

 

甘雨さんは予想通り、干し草の荷車の上で体を丸めてすやすやと眠っていた。荷車が目的地に到着して切り離し、そのままにしていたためこんな時間まで起きずにいたのだろう。荷車を引いていた人もまさか荷台に人がいるなんで思わないからな。

 

「…甘雨さん。起きて下さい」

「………んぅ………」

 

呼びかけても無反応なので甘雨さんの肩を揺するが全然起きない。

 

ここで色々やってても仕方がないので俺は甘雨さんを横抱きにする。これをしたことがある綺良々や宵宮よりも軽い身体にちょっと驚いた。こんな体で3000年も璃月を守ってたのか……。

 

とりあえず安否は確認したからもうちょっと寝かせよう。寝かせたままここから璃月港に帰るのも距離的に無理があるし。

 

俺は甘雨さんを抱き上げたまま軽策荘の丘に登る。段々畑が見下ろせるところで甘雨さんを寝かせて、枕がないのもあれなので頭の下に俺の太ももを差し込んだ。

 

「あ〜…ぽかぽか」

 

軽策荘を照らす日光と緩やかに吹く風がとても気持ちいい。跋掣戦からこうしてのんびりすることもあまりなかったし、俺も寝てしまいそうだ。

 

「っと、危ね」

 

綺良々を膝枕してる時の癖で甘雨さんの頭を撫でそうになった。そんなこと間違ってもできない人なのに。

 

俺、結構周りから何で甘雨の事をそんなに畏まって接するのかを聞かれるんだけど、俺からしたら大恩人なんだよなこの人。それに歳的にもめっちゃ上だし敬語外すなんて到底無理だ。でもこうして見る寝顔はあどけなくて、歳も言われないとわからないくらい。

 

俺は遊び半分で途中摘んできた清心の花を甘雨さんの口元に持っていくと、ひとりでにぱくりと加えてもそもそ食べ始めた。羊に餌あげるみたいでなんか楽しい。一応この花薬草の1種で激烈に苦いんだけど、昔から好きみたいなんだよな。申鶴は食べれないことはないけど、昔は食べるものが無いから食べてただけで修行時代に俺が作った料理を食べてからは無理になったそう。

 

「ほい」

「…あむ」

「ほい」

「…あむっ」

 

なにこれ楽しい。

 

端っこを咥えたと思ったらそのままもぐもぐしながら口の中に入っていく花びらに笑いそうになる。え、これ寝てるんだよな?綺麗に残った茎部分をまじまじと見てしまう。

 

そのまま何本か食べさせていると満足したのか甘雨さんは仰向けから横向きに寝返りを打って………んぐぅ!?

 

甘雨さんが横向きになった直後に太ももあたりに走った激痛に俺は叫びそうになった。間一髪で口を抑えることに成功する。

 

甘雨さんッ………つ、角が……俺の脚に突き刺さってますッ……!?

 

甘雨さんの角は上から沿うように下に生えて、外側に少し曲がってるのでその曲がった先っちょが見事に俺の太ももにぶっ刺さってる。

 

例えるなら足つぼの棒が太ももに体重かかって当たってる感じ。つまりめちゃくちゃ痛いです。

 

俺は歯を食いしばって痛みに耐えながら甘雨さんの頭の向きを変えようとするが、横向きが寝やすいみたいですぐに再度ぶっ刺してくる。

 

いででででで!!

 

さっきと角度が微妙に違ってなんか痛いところにはいってるからぁ!

 

さすがに耐えられないので甘雨さんの頭を両手に乗せて持ち上げる。その時、指が角に触れてしまった。やっべ、角って感覚鋭いんだっけか?

 

「ふひゃあっ!?」

「うぉあ!?」

 

目を覚まして声を上げる甘雨さんに驚く俺。状況が飲み込めてないのか俺の手に頭を乗せたままぱちくりと目を瞬かせる。

 

「……あれ?……私、一体…?」

「おはようございます甘雨さん」

「迅?……どうして迅が……………ッ!?」

 

直後、顔を真っ赤にして飛び起きた。わたわたと俺の顔を見て、周りの景色を見てもう一度俺を見る甘雨さん。口をパクパクさせて「なん……ここ……ひざ…………」と謎言語を発している。

 

「申鶴に頼まれて昨日から戻らない甘雨さんを探しに来たんですよ。仙力が探知出来ないから寝てるとは思いましたけど、まさか軽策荘に運ばれてるとは」

「…そ、そうだったのですか……うぅ、私ったらまた……」

「全く、気を付けてくださいよ?甘雨さん、寝たら近くでヒルチャールが騒いでも起きないんですから。見つけたのが俺だから良かったものの、宝盗団みたいなならず者ならほんとに危なかったんですからね?」

「は、はい…ごめんなさい……」

 

俺に叱られしおしおと俯く甘雨さん。これでこの人璃月で指折りの強者だぞ?普段は仕事仕事仕事の人だけど、どの武器使っても達人クラスだし。

 

「その、心配を掛けてごめんなさい。不卜廬で買った清心を食べたら、お腹いっぱいで眠くなってしまって……」

「そうだったんですか。そういやさっき摘んできたのがありますけど、食べます?」

「いえ、これ以上はちょっと……。自分の体型を維持できるギリギリまで食べたので、あと一本でも食べてしまったら危な………え?」

「へ?……あっ」

 

そこで俺の後ろに置いてある花びらが無くなった清心が目に入り、甘雨さんが固まった。それを察した俺は透かさず跪く。

 

「…じ、迅?もしかしてあの清心って……」

「大変申し訳ありませんでした俺が寝てる甘雨さんに食べさせてました」

「…………ァ」

「……えっ、か甘雨さん!?」

 

絞められた鳥みたいな声が頭上から響いたので恐る恐る視線をあげるとわ数日前の群玉閣の時のようにお腹を抑えへたり込んで、白くなってる甘雨さんに慌てて駆け寄る。

 

「……わ、私これ以上太ったら、お嫁に行けません……」

 

あ、行く気ではあったんですね(超失礼)……じゃなかった、そんなすぐ太るんすか?

 

「そそそんなことないですよ!甘雨さんはすごい細いんですし、そんなちょっと食べ過ぎたくらいで……」

「いえその、私、太りやすくて………普段から食べ過ぎにはとても気を使ってたんです……。あ、そんな迅が謝ることではないですよ。顔を上げてください」

「本当にすみませんでした」

 

再度頭を下げる俺にいいんですと肩を支えて起こしてくれる甘雨さん。

 

「……ちなみにどうやって食べさせていたのですか?」

「食べさせてたというか、食いついたというか……。口に近付けるだけで勝手に食べてたのが少し面白くて…」

「そ、そうだったんですか……わ、私、寝てる時にまでそんな食い意地を……」

 

またもやしおしおと萎れていく甘雨さんを宥めながら、もう少しここで一休みすることにした。せっかくの休暇なんだし、存分に休んで欲しいです。いやマジで。

 

「……そういえば月海亭って有給あるんですか?」

「私が使ってないだけで、有りますよ?貯めるだけ貯められて無くなりもしないです」

「……ちなみに甘雨さんは後何日貯まってるんですか?」

「……えっと、3万と……」

「あっ分かりましたもう大丈夫です」

 

日数の単位じゃねえ。こうして話してみるとほんとに3000年も生きているんだなって実感する。「今日はチートデイです」と美味しそうに清心を摘む姿からは想像もつかないけど。

 

今の時刻は太陽の位置からして昼を過ぎたくらい。俺たちはぽかぽかの軽策荘の陽気に当たりながら丘の上に座り込んで、茶を飲みながら色々な話をした。

 

俺が産まれたときは大騒ぎだったとか、仙人に弟子入りしたのを見てとても驚いたとか、全く私にくらい伝えてくれてもいいじゃないですかとか。だいたい話の終わりに俺が種族を隠してたことのお小言を頂く。

 

その時に野菜の栽培の話になった。甘雨さんは食べ過ぎ防止で野菜の栽培をしないようにしているそうだけど、そんなこと起きるの…?一応栽培をしてみたいらしい。

 

甘雨さん、種族の問題でお肉は食べないけど普通に常人の倍は食べるからな。そのことを伝えると、普通盛りと勘違いしてたらしい。万民堂の料理は盛りがいいから勘違いしがちだけど、残すのもあれだと毎回完食してたそう。ちなみにあそこの料理の量は俺と綺良々で半分こして漸く食べ切れるくらいだ。甘雨さんはまたもや膝から崩れ落ちた。

 

そんで提案したんだけど、俺の洞天で栽培したらどうかなって。すると甘雨さんがすごい乗り気で、そのまま洞天に場所を移し畑的な場所を作った。ピンばあやから貰った洞天は昨日の内にあらかた弄ってとりあえず人が住めるくらいには家具を置いた。ただ全部手作業だから綺良々に手伝って貰ったんだけど、あいつしれっと自分の部屋作ってやがったわ。まぁ部屋は多いから別にいいんだけど、住み着きそう……。

 

ちなみに洞天通行証はもぎ取られました。一応入る時は俺が許可を出さないとダメだから奇襲されることはないと信じたい。

 

 

 

「……んんーーっ、すっかり夕方になっちゃいましたね」

「そうですね。すみません、私の我儘に付き合わせてしまって……」

「良いんですよ。俺も甘雨さんに返しきれない恩がありますし、こんなの全然我儘に入りませんよ」

 

洞天でいろいろと栽培方面の準備を終えた後。璃月港への帰り道を歩きながら他愛ない話をする。いやー、随分とゆっくりできた。たまにはこういう日も悪くない。

 

甘雨さんは風になびく髪を耳にかけながら俺を見て言う。

 

「本当ですか?……それならもうひとつ我儘を言ってもいいですか?」

「はい、もちろん大丈夫です。なんですか?」

「……そろそろ、いい加減敬語を外してもいいのではないですか?」

「それだけは勘弁してください」

「何故ですかっ!?」

 

即刻腰を折り曲げて却下する俺に頬を膨らませる甘雨さん。いや、それはさすがに無理ですって。

 

「いやいや、さすがに大恩人にタメは……」

「私がいいって言うのですから良いんですっ……さっき、もちろん大丈夫と聞きましたからね?」

「うぐっ…………わかりましたよ。外しますよ……」

「まだ着いてます」

「……わかった、甘雨さん」

「さん?」

「……甘雨」

「よろしい」

 

腕を組んで詰めてくる甘雨さんは新鮮だけど圧が凄い。ちょっと仙力漏れてますけど?というか慣れねぇ〜!不敬感がすんごい。だ、大丈夫だよな……?

 

「……あなたは気がついてないかもしれませんが、迅の敬語は距離を感じるんですからね?」

「そ、そうなんで…「ん?」そうなのか……?」

「そうなんですっ」

 

例えるならマジで頭上がらん大先輩にタメ口効いてるみたいな、なんとも言えんむず痒い感じが背筋を這い回る。

 

なんか手玉に取られてるのが癪なので、1つ気になってたことを聞いてみることに。

 

「その、甘雨…はああいう小説をよく読むのか?」

「なっななななんのはなしですか!?」

 

すると効果てきめんで、顔を赤くしながら後ずさる。いや、申鶴のお姉ちゃん化の原因ですし、シンプルに気になる。

 

「いや、あのなんて言うか……ブラコン小説みたいな」

「あああれはちがうんですよ!?神子が勝手に送り付けてきて!」

「その割には大切に保管してるとか言ってたけどね申鶴は」

「そ、それは一応貰い物ですから保管に気を遣うのは当然でしょう?」

 

そういいそっぽを向く甘雨さん。ちょっとここで鎌かけて見るか。

 

「本当〜?あれとか凄かったけどな。仕事まみれの姉の面倒を見る弟の本とかありそうだけどな」

 

ってある訳ねぇかそんな本。さすがに当てはまりすぎだろ。そういい甘雨さんの方をみると、様子が激変していた。

 

「………な、なぁっ、なななんでソレの事を……」

 

うっそだろ。

 

「え?マジなの?」

「…ッ!!」

 

俺の素っ頓狂な反応に鎌をかけられたと気が付いたみたい。真っ赤になってプルプル震えた甘雨さんはぐるりと後ろを向くと逃げそうとした。それをどうにか羽交い締めして止める。

 

「も、もう山に帰りますぅぅぅ!!」

「ちょっと落ち着けって!仙力でてるぅ!」

 

甘雨さんが仙力を全開にして走り出すものだから踏ん張った俺の脚が地面を削って2本の線ができる。

 

俺は全力で甘雨さんを押さえつけるけど仙力の量と扱いは向こうの方が遥かに上なのでジリジリ負け始めた。

 

「むむむ無理ですぅ!そ、そんな本を読んでるとか、私変態じゃないですかぁ!もう顔を合わせられません私はこれから滝行をして精神統一するんです…!!」

「聞かなかったことにするんで!」

「それでもどうせ申鶴経由でバラされるんですっ!迅だって内心引いてるのでしょう!?そうに決まってます!」

「別に俺は気にしませんからぁ!」

「あっ、敬語出てますよ」

「今そこは別に良くないかなぁ!?」

 

なんなんスかその落差は。

 

神妙な顔で振り向いてズビシと突っ込んだ甘雨さんにキレ気味で返す。小説がバレた羞恥よりも敬語の方がダメってどういうこと?

 

「……と、とりあえず!俺は別に気にしませんから!どうぞご自由に読んでくださいっ!」

「……本当に気にしませんか?どう見ても今の私と迅の関係を写したような小説を読んでいても?」

「……ッ、まぁ、いいんじゃないか?人の趣味に俺がとやかく言う資格なんてないし」

「……言いましたね?」

「へ?」

 

急に声音が変わった甘雨さんに間抜けな声を漏らす。みると「言質とりました!」とでも良いだけな顔をしている。え、え?なんなん?

 

「迅、申鶴から聞いていませんか?私達『和解して同盟』を組んだと」

「あっ」

 

聞いたわ。すっかり忘れてたけど。そう考えた途端に嫌な予感が背筋に走る。

 

「迅。私から折り入って頼みがあるのですが、聞いてくれますよね?」

「……言ってみて」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………私、ずっと『弟』というものが欲しかったんで「他を当たってください!!」逃がしませんっ」

「なぁ!?」

 

甘雨さんが言い終わる前に雷強化、全力で逃げたのだが直後ガシィ!と手首を捕まえられる。ウソだろ?かなり全力で踏み込んだのに……。

 

「ふふ、まだ力の使い方が甘いです」

 

金色のオーラを纏いながら見惚れるような笑顔で言ってくる甘雨さん。

 

「迅。お腹が空いたでしょう?私を探しに来てくれたお礼もしたいですし、是非夕ご飯は私達の家で食べて行ってください」

「へ?い、いやそれはさすがに悪いと言うか、怖いというか、ととにかくまたの機会に……」

「食べて行きますよね?」

「……はい」

 

……俺は1番ヤバいひとを覚醒させてしまったのかもしれん。

 

 

 

その後、甘雨さん宅に連行された俺はノリノリの申鶴と共にお姉ちゃん尽くし甘やかしコースをしこたま食らわされた。

 

幸い呼び方は周りに人がいる時は普通に呼ぶことになったけど、家では「甘雨姉」「申鶴姉」と呼ぶことになりました。マジで恥ずい。

 

身体は元気、精神は疲労困憊の謎状態で宿に戻るとそこには何も言わずに夜まで帰らなかった事にご立腹の猫神様のお姿が。

 

無事、抱き枕になりました。

 

 

 

 

 

(迅くんの苦労も物語もまだまだ)つづく。

 







甘雨と申鶴の新衣装のおみ足が眩しすぎる。膝枕してほしい。
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