それと今日まで誤字報告の修正を一々編集画面で行っていましてですね。中々対応しきれていませんでした。あれ横のタブで一括修正できるんすね。誤字報告してくれた読者様。ありがとうございました。
ーー綺良々。
ーーひゃい!?
私をお姫様抱っこしながら、迅くんは優しく名前を呼んだ。私が素っ頓狂な返事をすると、彼は横抱きのまま私を膝に乗せ、頭をなでなでしてくる。
ーー綺良々、君が好きだ。
ーーにゃにゃにゃ!?へっ?えっ?
手を優しく握られ、迅くんが耳元で言った言葉に、私の脳は溶けていく。
へっ、へえっ!?そんなっ、私を、迅くんが!?えっえへへへへへ〜。
ーー君の陽だまりのような笑顔に、はつらつとした姿に、俺はとても救われたんだ。だから君が好きだ。…綺良々は、俺じゃ、ダメか?
ーーそんな事ないよ!私だって、ずっと前から迅くんのこと…
ーーなら、いいよな?
そう言い、迅くんは私の顎に指を添えると、ゆっくりと顔をーー
バチッ!
「早う起きんか」
「ニ"ャッ!?」
痛あああああ!?おでこに痛烈な衝撃が走り、私は布団から跳ね起きた。
くすくすと笑い声がしたのでおでこを抑えた私が涙目で振り返ると、妖狐さまが笑顔で指に雷元素を纏わせていた。どうやら雷元素付きのデコピンで起こされたらしい。
「全く、いつまで寝ておる。もう昼前じゃぞ?」
「えっ、すすすみません!」
慌てて立ち上がり、布団を片付ける。自分の格好を見てみると、髪は下ろしていたが、昨日迅くんとデートした服のままだった。あれ?私、昨日…迅くんと別れて、靴擦れしちゃってたから道端で休んで…そしたら迅くんが駆けつけてくれて、薬を塗ってくれて…最後にはお、お姫様抱っこで鳴神大社まで…えへへへへへ。
「こら。何を恍惚としておる」
バチッ
「アダッ!?」
呆れた顔の妖狐さまから再びデコピンをもらい、頭を後ろへ弾かせる。おでこをさすさすしていると、顔面に手拭いが着弾した。
「いいからさっさと風呂に入って来い。髪がボサボサじゃ」
「はっ、ハイ!」
自分の髪を触って酷いことになっているとわかるや否や、風呂場に直行するわたしを見て、妖狐さまは騒がしい猫じゃのう、とため息を漏らした。
「ふにゃぁぁぁぁ〜」
衣服を脱ぎ捨てて髪を纏め、ささっと髪と身体を洗って浴槽に入った私の口から気の抜けた声が漏れる。あ、毛が浮いちゃうから足は人間のにしてるよ。
猫の時はお風呂が好きじゃなかったんだけど、人間の時に入るお風呂は暖かくてサッパリするから好き!それに、お湯に浸かってぼ〜っとする時間ってなんか良いよね。私はお湯に浮いたまま目を閉じると、昨日のことを思い返していた。
昨日は、楽しかったなぁ…。
時間は半日もない、なんなら仕事の方が迅くんと一緒にいる時間が長いのに、その何倍も充実した時間に感じたんだ。人間のお洒落について、旅人から教わっておいてほんとに良かった。今仕事で着てる服も旅人に見繕ってもらって、髪型も色々と教えてもらった。
そういえば、迅くんってどんな女の子が好みなんだろ。
迅くんは基本的に私の目を見て話を聞いたり、喋ったりする。あ、基本はね。昨日、私の脚ちょっと見てたのわかってるんだから!そ、それに、事故とはいえ、わたしのし、下着も……にゃ〜!
んんっ。だからね、目を見て接してくれるのは良いどころかすっごく素敵な所なんだけど、普段からす、すこしはそういうところも見て欲しいというか…。
私は視線を自分の体にやり、胸に2つある「それ」を持ち上げてみた。
迅くんはやっぱり大きい方が……。でも私の妖力じゃ、妖狐さまみたいな爆弾には…まだ先は長いです。
私はため息を1つ落とすと、浴槽から出た。
脱衣所には予備に置いてもらっている私の服があった。偶にこうして泊まりに来るんだよね。いつも迎えてくれる妖狐様には感謝だよ。それに袖を通して髪についた水滴を拭いていると廊下から妖狐さまが顔を出す。
「もうすぐ昼餉じゃが、そちも食べるかの?」
「あっ、いただきます。…すみません色々と」
「良い。その代わり、お主の話も聞かせて貰うとするか」
お昼ご飯はうどんだった。目の前で妖狐さまが美味しそうにお揚げがてんこ盛りになったうどんを啜ってる。そうこうしているうちに食べ終わり、食後のお茶を飲んでいると、妖狐さまが口を開いた。
「それで、悩みというのはお主の意中の相手かの?」
「えっ!?なんで…」
私がお茶を吹き出しそうになっているのを見てくすくすと妖狐さまが笑う。
「さっきから、何度も放心している所を見せられれば大体察する。大方相手は篠田の所の童じゃろう」
「ええっどうしてそこまで」
「なんでって、昨日どこぞの猫又がその童に抱き抱えられて鼻提灯つくりながら運ばれて来たんじゃ。誰でもわかるじゃろ。いつから狛荷屋は人間の配達も行うようになったのじゃ?」
「うぅ…」
私は顔を真っ赤にして俯いた。昨日の帰りから記憶が曖昧だったから不思議に思ってたけどまさか寝ちゃってたなんて!恥ずかしぃ…。
「それで、さっさと悩みを言うが良い。恋愛小説も出版しておる、この八重編集長が聞いてしんぜよう。しっかりと本心を言うのじゃぞ」
「おっお願いします!」
私が頭を下げると妖狐さまは懐からメモ帳とペンを取り出した。
「それで?お主はその童のどこが好きなんじゃ?」
好きな所か、沢山あるけど、1番は…。
「1番は優しいところですね。彼は他の人のことをよく見ていて、困った時になったらすぐ助けてくれるんです。それもすっごく自然に当たり前みたいに優しくしてくれて」
「ほうほう!」
妖狐さまのペンが凄い速さでメモ帳を走っている。なんか、こういうことをハッキリ口に出すのはなんか恥ずかしいなぁ。
「それと、迅くんはすっごく努力家なんです。昔は神里流を習っていたそうなんですが、どうも上手く出来ないらしくて。その技を夜遅くまで毎日練習していたのを、猫の時に見てました。出来ないことをできるようにするまで、決して弱音を吐かずに、悲観せずに淡々と努力を重ねられる所を、とても尊敬してます」
「成程成程」
またペンが高速で動いてる。一体何をメモしてるんだろ。
「確かあの童は、猫又になる前のお主の飼い主じゃったな。どのくらい前から好意を持ち始めたんじゃ?」
「迅くんが稲妻から出た後、狛荷屋で働き始めた時です。えっと、1年くらい前からでした」
「ふむふむ。…なら、その童が他の女子と仲良くしているのを見かけたらどう思う?」
そう言われて思い出すのは昨日の旅人と迅くんの距離感。お互いにからかい合って、でも認め合ってて。私よりも心の距離が近かった。
ズキッ
そう考えていると、胸の辺りが痛くなって、なんだか焦りが込み上げてきた。
「わ、たしは、迅くんが幸せになってくれればそれでーー「こら」あたっ」
おでこをペンで小突かれ、いつの間に俯かせていた顔を上げると、妖狐さまが優しく微笑んでいた。
「妾は本心を言えと言ったはずじゃが?」
「…ぅ…、ちょっと、や、です」
迅くんの幸せを願っているのは本当だけど、その隣には自分が居たい。これが私の本心だった。絞り出した私の言葉に妖狐さまは満足そうに頷いた。
「その感情が嫉妬じゃ」
「嫉妬、ですか?」
「嫉妬の感情は人間として当然持っているものじゃ。だから、別に持ってはいけないモノでもない。お主は、その感情を持った時、どう行動する」
思い出すのは昨日、旅人と迅くんが話している時、妖狐さまの話を当てはめると、私は嫉妬をした。そんな時、私は何をしたっけ?
『ね、私の事、呼び捨てで呼んで?せんぱい命令っ』
あっ、そうだ。
「私は、多分、彼にもっと近付こうとします。その人よりも」
「それで良い。1番良い嫉妬の使い方じゃ」
妖狐さまは片手で器用にペン回しをしながら言う。
「しかし、中にはその嫉妬心をその意中の相手や周りの女にぶつけてしまう者もいる。無論、既に交際関係にある相手に対してはある程度なら良いのじゃが、そうでも無い相手からそんな接し方をされて、想いが伝わるどころか嫌われてしまうケースもあるのう。お主はそのままで良い」
「わかりましたっ」
私は妖狐さまに敬礼をした。あっそうだ。今の私の一番の悩みどころを話さないと。
「それでですね。今私が一番どうして行こうか悩んでいることがありまして…」
「ふむ、いつ自分の正体を明かそうか、か?」
「あ、いえ、それもあるんですが、私、人間の姿で彼と知り合ってからまだ1週間しかたっていなくてですね」
「へっ?」
妖狐さまは珍しく素っ頓狂な声を出して固まった。ペンを持つ手がピクピクしている。
「い、1週間で、城下町から此処までお姫様抱っこで連れてくるまでとは…。少し、飛ばし過ぎてはないか?」
「はぃ、実はそれで悩んでいて…。あまりにも私が詰め寄るから、彼に内心引かれていたらどうしようかなぁ…と」
そう。私が1番悩んでいたのがこれ。だって、迅くん目線からしたら、初対面で赤面狼狽えから始まって、配達で手とかが触れる度に一々反応して、終いにはデートでお姫様抱っこまで…、出会って1週間でやる事じゃないよ!とさっきお風呂入ってる時にようやく気づいたのです。
そう考え出したら不安になっちゃって…。内心引かれてないかなとか、実は私の正体がバレてて猫扱いされてるからなのかなとか、そもそも私を人間の女性として見られてないのかなとか!
そう悶々としている私を尻目に、硬直から戻った妖狐さまはお茶を汲み直す。
「そうじゃなぁ…。態々此処まで眠りこけたお主を運んで来たんじゃ、悪くは思われていないとは思うがの」
「そうだといいんですけど…。でも彼、誰にでも優しいし」
落ち込んでいる私にお茶を入れてくれる妖狐さま。あ、おいしい。
「そう悲観するものでは無い。…ひとまず、そこまで距離を詰めたのだからそこから少しずつ好意を示していくのがいいじゃろ」
「示すって具体的にどのようなことをすれば」
「そうじゃのう…」
妖狐さまは横の本棚から八重堂と書かれている本をいくつか取り出すと、いくらかページを捲る。
「さりげなく、近くに寄る」
「もうやりましたね」
「ボディタッチを多めに」
「してましたね」
「……さりげなく手を繋ぐ」
「昨日、握りました」
「…し、下着を少しだけ見せて、魅了する…」(こめかみに手を当てる)
「昨日、がっつり見られちゃいました」(両手顔覆い)
「やっぱり飛ばし過ぎじゃないかの!?」
下着!?と仰天している妖狐さまを尻目に昨日の事件を思い出す私。ちゃんとしたの穿いてたよね…?とお風呂の前に確認したのは内緒だ。
「と、とりあえず!1歩1歩確実に、ですね。塵も積もればと言いますし、私、頑張ってみます!」
と、変な方向に流れかけた話を無理やり断ち切る為に立ち上がり意気込んで見せると、妖狐さまも咳払いして立ち上がる。
「その通りじゃ。ライバル達に負けぬよう、頑張るのじゃぞ」
「えっ、あっはい!」
ライバル?旅人や宵宮さんの事かな。確かに、負けないように頑張らないと!元気が出た私は、妖狐様に向かって頭を下げた。
「泊めてくださったり、お昼ご飯と色々、ありがとうございました!」
「いや、気にする事ではない。妾も話を聞けて楽しかったぞ。また来るといい。そうじゃ、悪いがこれを神里屋敷までとどけてくれぬか?神里の妹が昨日来た時忘れていってのう」
「はい!わかりました!お邪魔しました!」
私は妖狐さまから髪飾りを受け取ると建物を出て、社にお賽銭を投げてお祈りをする。迅くんと結ばれますように!…は、ちょっと気が早すぎるから。もっと仲良くなれますように!
しっかり二礼二拍手一礼を済ました私は、神里家まで走り出した。
よーっし、ライバルに負けないように頑張…ライバル?
ふとさっきの妖狐さまの言葉が引っかかった。思わず立ち止まる。
迅くんは優しくて素敵な人。でも迅くんって2年も他の国を旅してたんだよね。で、彼は優しいじゃん。他の国でも色々な人を助けるじゃん。それを他の国の人も見る訳で…。証拠に、すっごく仲がいい旅人。
あれ、もしかして、ライバル…結構いる?
それに気づいてしまった私は肩を落とし、先程より重い足取りで神里家へ向かうのだった。
アンケート見る限り猫吸いが多いですね。
……書くかあ。
次の話は週末に投稿します。拙い文ですが、お付き合いの程、よろしくお願い致します。