職場の先輩がウチの飼い猫に似ている件   作:猫好きの餅

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おまたせしました。

今回迅くん以外のオリキャラが登場します。結構腹立つ言動をする人物なので、拳を鳴らしながらお読みください。


3話 吹っ切れた義妹が逞しい件

 

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

「……ん…朝か……」

 

チュンチュンと鳴く雀で目が覚めた俺は、眠気に抗いながら布団をどか………………そうとして自分の身体に巻き付く柔らかな感触に、目線を下げた。

 

「……んにゅ……じん……くん………」

「………またか」

 

布団をめくると亜麻色の固まりが俺の上に乗っかっている。俺の胸を顔を突っ込んだままもぞもぞするそれ(・・)は、布団から抜けようとするのを捕まえるかのように自分の身体を押し付けてきた。

 

「……どっこいしょっと」

「ん〜……」

 

寝転がったままだと何も出来ないので上に乗った奴ごと起き上がる。重力が掛かる方向が変わったことによってストンと胡座をかく俺の脚の上にお尻が着弾したというのに一向に起きないどころか、更に抱き着く力を増す始末。脚に感じる悩ましい触感をなるべく無視しながら、俺は飼い猫のほっぺを引っ張った。

 

「おら、起きろ」

「……い、いひゃいいひゃいっ!おきるっ、おきるからぁ…」

 

全く、髪がぼさぼさだ。軽く手ぐしで整えてやるとその奥から覗いた翡翠色の瞳が俺を映した瞬間、顔を近づけてきた。まさかこのタイミングで来るとは思わなかった俺は接近を許してしまう。

 

「…んっ」

 

起き抜けだと言うのに一切カサついて無い瑞々しい唇が俺の唇を襲った。しばし吸われて顔が離れると完全に覚醒したのか、彼女は満面の笑みを浮かべた。

 

「おはよっ!迅くんっ」

「…おはようさん、こんのモーニングテロリストがっ!」

「んにゃ!?」

 

俺は何事も無かったのように挨拶をかましてきた、俺の職場の先輩にしてうちの飼い猫の綺良々に雷付きのデコピンを食らわせた。

 

 

 

 

 

「……うぅ、まだヒリヒリするよ…」

「朝からおはちゅーしてくるからだろうが。あとなんで隣の部屋に寝てたのに朝になったら毎回こっちの布団入ってくるんだよ?」

 

味噌汁を啜りなから赤くなってる額をさすさすする綺良々に俺が突っ込んでいると、対面に座る満面の笑みのばあちゃんがしみじみ呟いた。

 

「いやぁ、サイコーだねぇ。うちの飼い猫ちゃんが人になって、一緒に食卓を囲んでるなんて、夢のようだよ」

「ばあちゃんからもなんか言ってくれよ。綺良々のやつ、人の方で暮らすようになってから節操無くて」

「そ、そんなことないよ!?人前ではしないようにしてるもん!」

「当たり前だっ!」

 

綺良々が実はうちの飼い猫だとわかってから1週間。今までの枷から解き放たれたかのように家で俺に甘えるようになった綺良々は、今まで以上にスキンシップが激しくなった。何かにつけて「だって飼い猫だから!」を言い訳にしてめちゃくちゃキスだのなんだのを惜しまずやってくる。

 

最初は俺だって「飼い猫が甘えてるだけだッ!」って言い聞かせて耐えてきたけど、気になってる子に毎朝キスされたり、風呂の時背中を流しに突入してきたり(流石に裸は恥ずかしいらしく水着だけど)、別の部屋で寝てるのに気がついたら布団に入ってきたりされているとさすがに理性も危ない。いや、なんで我慢してるんだろ……って違う違う!

 

ばぁちゃんがいるのに家でそんなこともできる訳もなく、気苦労を溜めている日々なのでした。

 

ばぁちゃんは、暖かいお茶を飲んでほっと息を吐くと。

 

「早く曾孫の顔がみたいもんだねぇ」

「!!」

「わかったばぁちゃんちょっと黙っててくれ!!」

 

そう、ばぁちゃんはなんと綺良々の味方だ。なんなら俺らを2人きりにするために1週間神里の屋敷に泊り込もうとしたくらいで俺が何度も懇願してそれだけは辞めさせた。

 

隣で肉食獣が獲物を見付けた様な顔をしている綺良々は撫でることで鎮めていると、トントンと戸が叩かれた。

 

ん、誰だろうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………トーマが熱出した?」

「うん、そこで迅様に従者の代わりを頼みたい。とお嬢様が言っていた。」

 

お茶をちゃぶ台に乗せながら俺が聞き返すと座布団にちょこんと座った、たぬきの耳が着いたフードを被った小柄な少女は眠そうな目を擦りながらそう言った。

 

彼女は早柚(さゆ)と言う。稲妻社奉行管轄の組織「終末番」に所属する忍で、見た目は幼女だけど歳は今年で15歳になる。本人のコンプレックスなので年齢の話は彼女には禁句だ。

 

早柚は湯呑みを傾け茶を啜るとほぁっと息を吐いて瞼がとろんとしてきた。

 

「って寝るな寝るな。綾華の頼みなら断れないな。俺は神里屋敷に行けばいいのか?」

「んゅ……そう。お嬢様が、待ってるって」

 

とりあえず了解した。着物を羽織って霧切を持つ俺にばぁちゃんが頷く。俺にわざわざ頼みに来るってことは今日は結構忙しいんだろう。頷きを返していると、綺良々が口を開いた。

 

「んーっと、おじゃまになっちゃうからわたしは行かない方が良さそうだね。こっちには気にしないで行ってきて?わたしは宵宮ちゃんの所に遊びに行ってるから」

「ああ、わかった。ありがとな」

 

直ぐに準備を終えて、早柚と一緒にばぁちゃんと綺良々に見送られて外に出る。俺は早柚に向き直った。

 

「早柚。全力で飛ばすけど、ついてくるか?それとも乗るか?」

「ん、早そうだし乗ってく」

「はいよ」

 

早柚を背負うと、俺は脚に雷を纏った。

 

「それじゃ、ちょっと行ってくるよ」

「はいよ。行ってらっしゃい」

「行ってらっしゃーい!」

 

手を振ってくれるばぁちゃんと綺良々に頷きを返すと早速寝ようとしてる早柚に声をかけた。

 

「早柚、しっかり掴まってろよ?」

「心配は無用。気にしないで走ってもいい」

「了解。……じゃ、行くぞっ!」

 

久しぶりに全開で走るか。背中のには言質を取っておいたのでどんだけ速く走っても俺は悪くない。脚に込めた元素と電磁離斥を使って地面に配慮した踏切で俺は神里屋敷目指して走り始めた。

 

「…えっ、ちょっ、速……っ!?」

 

言質取ったから。俺は悪くないぞ(大事な事なので二回目)。

 

 

 

 

 

結果、3分で着いた。

 

いやー、やっぱ明らかにタイム縮んだな。死にかけた事の肉体強化はやっぱデカいか。

 

俺は背中で伸びてる早柚に声を掛ける。

 

「早柚、大丈夫か?」

「し…死ぬかと思った…」

 

さすがに早すぎたか。「まぁ、いい目覚ましになったろ?」と言って背中から降ろすと、逆に永遠に寝そうになったとポカポカ叩かれた。

 

えっと、それで綾華は………。

 

屋敷の入口から中をキョロキョロ覗いていると、門の近くにいる侍に話しかけられた。

 

「おっ、迅か。来てくれたみたいだな」

「宏達さん。ご無沙汰してます」

 

俺を呼び止めたのは社奉行代行の宏達さん。昔から神里家に使えている侍で、小さい頃は彼に剣を教えて貰っていた。当時の俺を差別しなかった数少ない恩人の1人。

 

「そんな畏まらなくてもいい。それに今は俺の方が敬わなくてはいけない方だからな。蒼夜叉殿?」

「ちょ、やめてくださいって」

 

いやぁ、まさかお前が仙人の末裔だとはなぁ!と背中を宏達さんにバシバシ叩かれていると、屋敷の中から急ぎ脚で綾華が出てきた。俺を見つけるなら顔を綻ばせる。

 

「兄さんっ。来て下さったのですねっ!」

「おう。俺に早柚を寄越すってことは結構予定が詰まってるんだろ?むしろ頼ってくれて嬉しいよ」

「はい…ありがとうございます…」

「そういえはトーマは大丈夫か?」

 

俺に腰を折ってお辞儀をしてくる綾華の頭を上げさせながら訪ねると、綾華は頷いた。

 

「はい。今は部屋で眠っています。さっきまで大変でした。トーマにいくら休んでくださいと言っても聞かなくて…兄さんが代わりに来ると聞いて、ようやく先程…」

「はは、あいつも責任感強いからなぁ」

 

トーマのやつ、あいつまじで熱出してても絶対に体温を測らないからな。逆に、それほどまでに今日は忙しいみたいだ。

 

「よし、じゃあ今日は俺が綾華にお供するよ。今日の予定はなんだ?」

「まずは、今年行われる祭り会場の下見です。その後は鳴神大社で八重宮司と会議をします」

「了解。それじゃーー「おや、久しい顔ですねぇ」…貴方は」

 

俺と綾華が頷き合って出発しようとしたその時。横から悪い意味で聞き覚えのある声が響いた。綾華の体が強ばるのがわかる。俺がその方を見ると、屋敷の入口から長身の男が入ってきた。歳は50後半と言った見た目とは裏腹に腰に刀を下げていて、その横に家臣と思われる侍も着いてくる。俺は「げっ」と顔を顰めそうになるのを我慢して、その男に向き直ると丁寧なお辞儀をした。

 

「お久しぶりです。智久さん」

「ふん、相変わらず礼儀だけは正しいですねぇ、妖の子」

 

この、声を掛けておいて俺が挨拶をすると嫌な顔をした男は智久(ともひさ)という。昔神里家の従者長をしていた人物で、まぁ、簡潔に言うと家内で俺に嫌がらせをしてきた張本人だ。今は歳のせいで隠居しているのだが、たまにこうして顔を出すところに運悪く出会ってしまったらしい。

 

綾華は俺のことを「妖の子」と呼ぶ智久を咎めるように口を開く。

 

「智久。彼は妖魔ではなく高貴なる仙人の末裔です。口を慎みなさい」

「ふふっ、蒼夜叉、でしたっけ?昔のあんな姿を見てきた身からすると、にわかには信じられませんがね……。たかが1時間の私との組手でああなるような者に」

「…ッ!」

「綾華」

 

智久に噛み付こうとする綾華を腕で制す。

 

中々酷い言われようだけど正直もう慣れてるんだよなこの人の言い回し。

 

ちなみにこの人は従者長の座に着くだけあって当時の綾人兄さんや綾華よりも剣が強かった。んで、そこで目をつけられてた俺がボコボコにされたってわけ。

 

「智久さんはなんの御用でこちらに?」

「それより綾華様。今日は私の甥を連れてまいりました。今年で18になりますが、私以上の剣の天才です」

 

うぇい、無視〜。

 

俺のセリフを遮るように喋り出すが、この人綾華の額に刻まれた青筋に気が付かないのだろうか。というか綾華のこんな顔初めて見たんだけど。

 

「…そうですか。申し訳ございません、この後お仕事がありますのでまたの機会に…」

「…む?お待ちください。まさかそやつを連れて行くのですか?」

「…それが何か?」

「そんな軟弱な者より私の甥の方が綾華様のお供に相応しい。是非こちらにお取替えください」

「…」

 

やばい。綾華の方からギリッて歯ぎしりの音が聞こえた。俺は門からこちらを伺っている宏達さんにアイコンタクトをすると、綾華を抱えあげた。

 

「兄さんっ?」

「なっ!お嬢様に何をっ!」

「すみません。時間が押しているのでお先に失礼します」

 

騒ぐ智久達を無視した俺は、そのまま門を飛び越えて鎮守の森へ走った。

 

 

 

 

 

 

 

「……申し訳ありません…」

「いいよ、綾華が謝ることじゃないって。いやー、しっかしあの人も変わんねぇなあ」

 

鎮守の森で綾華を降ろすとすぐに謝ってきたのでそれを宥める。

 

「…はぁ、あの人が来るとわかっていたのなら兄さんを呼ばなかったのですが……どうして今日なのですか……」

「まぁまぁ、っても俺も顔合わせるの稲妻出てから初めてだし仕方ないよ」

「ですがっ!智久は兄さんに酷い事を……!」

「あんくらいじゃなんとも思わないって。むしろしおらしくなってる方がなんか気持ち悪いわ」

 

それにそういう事はもう言われ慣れてるし、と言うと綾華が悲しそうな顔をしたのではっとして口を噤む。でも、あれが俺の幼少期の日常だったのだ。

 

前にも言ったけど、俺は元々神里の従者になる予定だった。だがそれに智久を中心とした従者達の中心人物が猛反対して、それを綾人兄さんでも抑えきれずに俺はばあちゃんのところに引き取られた。

 

「……それと、智久の後ろにいた甥っ子の侍、ありゃ本物だぞ」

「そ、そうなのですか?」

「ああ、雷の神の目も持ってたし、天才ってのは嘘じゃないんだろうな。多分稲妻出る前の俺じゃ手も足も出なかったと思うよ」

 

俺がそう言うと綾華はちょっと期待したような目で見てくる。

 

「い、今の兄さんならどうなりますか?」

「多少手こずるとは思うぞ?まぁ…種族の特権(蒼ノ雷光)使ったら…ね?」

「…さ、さすがです…」

「で、どうする?多分帰ってきたらまだつっかかってくるぞアレ」

「その時は…もうやっちゃってください」

「おい今社奉行の令嬢からすごいこと聞こえたぞ?」

 

「もうやっちゃってください」と言った綾華の目のハイライトが無い。俺が止めなかったらもう斬りかかってそうだったし、いつからこんな血気盛んになってしまったのか。

 

「その方がてっとり早いかと思います。ああいう輩は正面から力の差を見せつけた方が良いですよ。…もう隠居していて神里家(うち)とは関係ありませんし…」

 

すると、綾華は俺の手を自分の両手で包み込んだ。白銀の瞳が俺を真っ直ぐに見つめてくる。

 

「いざと言う時は、私が兄さんをお守りします」

「そりゃ、頼もしいな」

 

俺は頷くと綾華と一緒に鎮守の森を歩いていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここが祭り会場か?」

「ええ。今年から春祭りが行われることになりまして、鎖国も無くなりましたので他国の方々も呼び込んで盛り上げる予定です」

 

俺たちが来たのは稲妻城下町。今は11月で春はまだ先なのだが、いつもこんな早い段階から企画してるらしい。ある程度の広さや人通りの調査を終えて、鳴神大社に向かって歩いていると街の人たちから声がかけられた。

 

「綾華様っ!下見ですか?お疲れ様です!」

「ええ、貴方もご苦労さまです」

 

「あっ!白鷺の姫君だっ!こんにちはっ!」

「きれー…」

「ふふっ、こんにちは。ありがとうございます。貴方も大きくなったらとても綺麗になりますよ?」

「わぁっ、やった〜!」

 

やっぱ綾華は人気だなぁ。

 

「白鷺の姫君」の名前で通ってる綾華は将軍を除いたら恐らく稲妻で1番有名だと思う。現に城下町の民からは親しみの視線を向けられていた。

 

少女がぽーっと綾華に見とれているとその頭を優しく撫でてあげている。

 

そんな光景を眺めながら耳をそばだてていると周りから俺の話も聞こえてきた。

 

「…あの人、確か蒼夜叉とか言われてた人じゃない?」

「そう、璃月で魔神の首をぶった斬ったっていう…」

「なんか前は違う名前だったよな。確か、蒼せーー」

 

「ぐぅ!!」

「に、兄さん?どうかしましたか?」

「い、いや、こっちの話だ」

 

やっぱり前の異名はトラウマだ。変えてくれた凝光さんに感謝せねばな。

 

すると、さっきのちびっ子達がもう一度こっちへやってきた。なんか目がキラキラしてる。綾華がしゃがんで目線を合わせ「どうかしましたか?」と尋ねると、俺に指を指した。

 

「ねぇねぇ!そっちの男のひとは綾華さまの彼氏?」

「なっ!?……ど、どうでしょうね……?」

 

何故こちらを見る。そしてなぜ迷う。

 

俺もしゃがみ込むとこっちをチラチラみる綾華の頭の上に手を置いた。

 

「俺は綾華様のお兄ちゃんだ」

「えぇー!そうなのっ?」

「でも髪の色違うよー?」

「あはは、血は繋がってないけどな。でも大切な家族だよ。君は…確か木漏茶屋の近くに住んでる子だろ?確か大きな犬を飼ってた」

「うん!よく知ってるね!」

「その犬は君の何だ?」

「うーん、かぞく!…あっ、そういう事?」

「そうそう。君あったまいいなー!」

「えへへ〜」

 

俺とちびっ子のやり取りを聞いていた綾華は微笑む。

 

「ふふ、よくご存知なんですね」

「配達員だからな。この街のだいたいの人の顔と家の位置は覚えてるんだよ」

 

俺たちはちびっ子達に手を振って別れる。街をでて鎮守の森に戻る道を歩いていると、綾華がするりと手を握って来た。ちらりとそちらを見ると少し顔を赤くした綾華と目が合う。

 

「か、家族…なので…」

「…なんか懐かしいなこうやって歩くの」

「昔はよくこうして手を引いて頂いてましたね。何をするのにも兄さんと一緒で。とても懐かしいです」

 

そうはにかみながら手をにぎにぎしてくる綾華。そのまま鳴神大社へと脚を向かわせるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーーで?それが手を繋いだまま鳥居をくぐってきた言い訳かの?」

「ううぅ……」

「宮司、あんまいじめないでくださいよ。きつねうどん作りませんよ?」

「こらこら、早まるでない。もう辞めるからお揚げを抜こうとするな」

 

俺は赤くなって縮こまる綾華をいじめていた八重宮司に注意しながら箸で摘んだ油揚げをふりふりと揺らした。

 

 

 

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

「暇が出来ました」

 

本日分の書類仕事を終えた雷電将軍は机から立ち上がる。人形の身体は疲れを知らず、ずっと正座をして筆を動かしていても痛まない。見よう見まねで首をあちこちに傾けてみるが音1つならなかった。

 

大抵こういう暇な時は一心浄土で影と組手をしているのだが生憎彼女は今瞑想中だ。それでも前までは叩き起して組手に付き合わせていたのだが、今日は瞑想中のほうが都合がいい。

 

雷電将軍は薙刀を背中に背負うと外に出た。お辞儀をしてくる天領奉行を手で下がらせ、城下町に歩を進める。

 

頭に思い浮かぶのはこの前影と記憶と感情を共有した()のこと。その事を考えていると、少し顔が見たくなってきた。ただ、彼の住所など知りもしない。

 

雷電将軍は城下町の人々に「紺色の髪の黒い刀を下げた青年を見なかったか」と聞いて回った。

 

その質問に人々は白鷺の姫君と一緒に居るのを見たと言う。

 

ふむ、と雷電将軍は考えた。

 

(神里……確か社奉行を取り仕切る家だったはず。その屋敷に行けば会えるかも知れません)

 

雷電将軍は人々に感謝の言葉を返すと、少し早足でその場を去った。

 

揺れる三つ編みを呆然とした顔で見送った人々は全員口を揃えてこう言ったそうだ。

 

 

 

 

 

 

「ーー将軍様ってあんな顔するんだ」

 

 

続く。





綾華<八重神子<油揚げ


久々にあんなヘイトタンク的な悪キャラ書きました。迅くんに対してはあんなんですが、普通に優秀な人物です。ただ、妖の類が嫌いなだけで。



そういえばですが、本作のテイワット各国は四季に寄る気温の変動が少ないって設定にしてます。

だからドラスパで雪を見た時の各キャラの反応が新鮮なのかなー?とか考えてみたり。

なので春夏秋冬はあるけどそんなに変わらない寒くならないしそんなに暑くならない、みたいなテンションで受け取ってくれると幸いです。
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