職場の先輩がウチの飼い猫に似ている件   作:猫好きの餅

42 / 50



タイトルの通り過ぎる


2話 うちの飼い猫が職場の先輩だった件

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

 

「ばぁちゃん、ご馳走様」

「にゃ〜」

「はいよ、お粗末さま」

 

俺はばあちゃんにご飯のお礼をいって台所に食器を重ねて持ってって皿を洗う。終わって帰ってくるといつもの座布団の上で伸びをしているうちの飼い猫が目に入った。

 

「……」

「にゃーっ」

 

俺が稲妻に帰ってきて1ヶ月振りの再会を果たした時も猫らしくドライな反応だった飼い猫のきららは、俺の手のひらに頭を擦り付けて来る。そのまま頭を撫でてやると、きららは満足そうに目を細め喉を鳴らした。帰ってきた時にプレゼントした黒い肉球マークが入った首輪が揺れる。

 

………うーん。

 

「にゃ?」

「ん?いや、なんでもないよ」

 

今度は顎の裏をこしょこしょしてやると堪らず上を向いて堪能してる姿勢を見せる。その満足そうな、気持ち良さそうな顔にまた、強い既視感を感じた。

 

背中を撫でていると絡みついてきたしっぽを優しく撫でる。そして、1本しかないけどこの絡みつく時の尻尾の動きもものすごい見たことがある。そして、壁に吊ってある時計は見たきららはくぁーっと欠伸をすると座布団から立ち上がって外に出て行った。

 

「…………」

 

いや、あのさ。

 

まぁ、なんで今まで気づかないねんとか、いや今かよって突っ込まれそうなことではあるんだけどさ。

 

よりによってひと月職場の先輩の姿を見まくってから気が付くのも、ホントあれなんだけども。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…うちの飼い猫綺良々じゃね?

 

 

 

 

 

 

 

違和感というか、既視感を感じたのは帰ってきてから数日。自由配達員になったとはいえ、流石に仕事しないのはアレなので狛荷屋に行って綺良々と配達をして家帰ってきらら撫でてってやっていたら、うちの飼い猫の動きというか、雰囲気というかそこら辺がものすごい綺良々と重なって見えて来るようになった。

 

というか、綺良々にしか見えなくなった。

 

そういや、今思い返すと最初は疑ってたな。だけど、いろいろ鎌をかけたり調査したりしても成果は出ずに、「ああ、やっぱ別猫か」って結論づけた思い出がある。綺良々は嘘をつくのがものすごく下手だから、それもあってそう思い込んでいたんだろう。

 

うーん、多分そうだと思うから本人に聞いてみるか……?いや、ここまで一緒にいて向こうから言ってこないってことは何か言えない事情があるのか……?

 

考えてもしょうがない。俺は新たな愛刀「霧切の凱旋」を腰に指すと、お供え物の材料を買いに街に出かけた。

 

 

 

 

 

「で、じゃから妖狐の妾に相談を、とな?こんなに供物(油揚げ)を持ってきて殊勝なことじゃ」

 

俺がやってきたのは鳴神大社。綺良々は猫又という妖怪、八重宮司なら何か知ってるんじゃないかって思ってきてみたんだけど…。

 

「相談に乗っていただけますでしょうか?」

「うーむ、妾とて暇ではないからの。この程度の油揚げではとてもとても「稲荷寿司食べますか?」それを早く言わんかっ。稲荷寿司に免じてそちの相談には乗ってやろう」

 

どうせ勿体ぶられるのはわかっていたので用意していた油揚げ寿司が入った重箱をあとから出すとわかりやすく食い付いてきた。この人と交渉する時は贈り物をふたつに分けて出すと勝率上がるよ。

 

「お主の稲荷寿司は絶品じゃからの。祭日の時だけとは言わず、いつも持ってきてくれてもいいんじゃよ?」

「こういうのは偶にだからいいんですよ。油揚げの肉詰めも食べます?」

「是非もらおう。なんじゃその心躍る単語の組み合わせは」

 

俺は更に隠していた稲荷のしたの箱から肉だねを詰めてカリカリに焼いた油揚げを取り出す。

 

こっちの肉詰めは初めて見たようで瞳を輝かせている宮司。

 

美味しそうにそれらを頬張る宮司は狐耳を立てながら話す。

 

「それで、あの猫又娘の事じゃったか」

「はい。その、綺良々がもしかしたら……うちの飼い猫なんじゃないかと思っているんですが…」

「ふむ、何故そう思う?」

「行動のひとつひとつや、俺に対する態度、雰囲気が綺良々に酷似しているからです。ただ、前にそれとなく彼女に聞いてみてもはぐらかされてしまってまして」

「そうか……」

 

そう宮司は考え込む。その間に稲荷寿司をひとくち食べ、肉詰めも齧る。酒で流し込んで満足そうな息を吐いた。

「……宮司?」

「ん?ああ、そうじゃな」

「今の間はなんだったんです?」

「いや寿司が美味いなと」

「お供え物間違えたか……」

 

普通に物にしとくんだった。俺は綺良々のことについて考えながらも目の前の誘惑から逃れられずにパクパク食べてる宮司を死んだ目で見る。

 

「言う気ないんなら帰りますよ」

「まぁ待て。あの猫又の事情なら、確かに知ってはおる。ただ、あやつに口止めを受けていてな。詳しくは話せないのじゃ」

「口止め……」

「お主が心配しているような拒絶の意味の口止めではない」

 

八重宮司に口止めを頼むほど、俺に知られたくないのか。と目を見開いた俺に安心させるように彼女は言う。

 

「そこまで知りたいのなら、もう一度本人に聞いてみたらどうじゃ?ひと月の間稲妻を出て関係に進展がなかった訳じゃないのじゃろう?」

「まぁ、そうですが……」

「今のあやつなら拒絶などせぬだろう。うじうじせずに聞いて来るのじゃ」

 

確かに、一度本人に聞いてみるか。そういえば1度も綺良々自身に言っていなかったと思い出す。

 

「わかりました。ちょっと明日聞いてみます」

「そうか、次に報告に来る時はきつねうどんを頼むぞ」

 

あんたをうどんにしてやろうか。

 

 

 

 

 

翌日。狛荷屋に到着すると、先に来ていたらしい綺良々がこっちを見て顔を綻ばせた。

 

「迅くーんっ!おはよっ!」

「ああ、おはよう。今日はどこに配達するんだ?」

「んーっと、今日は……」

 

そういい綺良々は今日配達する場所を見せてくれるのだけど、距離が近いを超えてもう無い。ピッタリと身体を密着させてくる。

 

ただそれにはもう慣れたもの。猫がくっついてると無理やり脳内変換して流しながら配達場所を確認した。

 

国外配達を開始したとはいえ、まだ支店を建てたばかりで依頼の受付はもう少し先。だから配達場所は稲妻国内だけだ。

 

そんなに場所も多くは無いので綺良々と一緒に配達をする。

 

お互い脚が速いので速攻で終わり、お昼時なので平原の岩の上で2人で座ってお弁当を食べることに。

 

「さっきのお客さん、個性的な人だったね」

「ああ、確か鬼族なんだったよな。なんか喧嘩売られたと思ったらめっちゃ良い奴で普通に友達になったし」

「その横の女の人は苦労してそうだったけどね…」

 

俺と鬼の血を引いてるという荒瀧一斗と話している時も横でペコペコしていた女の人のことを思い出しながら話していると、ふと気になったことがあった。

 

「そういや、配達物でカードが最近増えてきたけどなんか流行ってるのかな?」

「あれ、迅くんは七星召喚ってゲーム知らないの?」

「それがあのカードを使って遊ぶやつなのか?」

「そうそう、わたしはやってないんだけどね。最近ちょこちょこ流行ってきてるんだよ」

「へー」

 

会話をしながら綺良々の揺れる2本の尻尾を見てみる。うちの飼い猫もご機嫌な時はこうしてゆらゆらと尻尾を揺らすことが多い。

 

「…なぁ」

「ん?どしたの?」

「綺良々って猫の姿になれたりするのか?」

「へぅぇ!?なななんで急に?」

「いや、ふと気になってさ」

 

俺が唐突に聞いてみるとびくんっと綺良々が座ったまま跳び上がった。

俺がじっと見つめていると、尻尾を縦に揺らした綺良々が目を逸らして答える。

 

「じ、実はぁ、猫又になってからは、もうこっち?がほんとの姿になっちゃったというか?も、もう猫の姿になれないんだよねぇ〜!」

「そうなのか……残念だな」

「な、なんで?」

 

インドネーションがガバガバのまま答える綺良々に更に追い討ちをかける俺。俺は本気で残念そうな表情を作ると、肩を落とす真似をする。

 

「猫の状態の綺良々……撫でてみたかったなって思って………はぁ」

「ふんぐっ」

 

すっげぇ声出てるぞ綺良々。

 

「い、今の姿じゃ、だめなの?」

「今のもいいんだけど、やっぱ人と猫じゃ質が違うんだよ。………もし猫になれるんだったら撫でてみたかったのになぁ」

「……ぅぅ」

 

お、効いてる効いてる。項垂れながらチラリと綺良々の方を伺ってみると、しまった!とぐぬぬ…と嬉しい…!が混ざった珍妙な表情をしていた。尻尾に至っては見たことない形状になっている。

 

ここで、切り札をひとつ。

 

「そういやさ、うちの飼い猫って綺良々会ったことあるか?」

「ぅえっ?か、飼い猫っ?」

「そう、めっちゃかわいいんだ」

 

心からそう言うと綺良々の顔にボッと火がついたように赤くなる。

 

「か、かわいいの?」

「そう。世界一かわいい。撫でてる時の表情とか写真に撮って飾りたいくらい」

「そ、そうなんだ……こんど会ってみたいな……ねぇ、迅くん」

「ん?」

 

呼ばれて綺良々の方を見ると、彼女は座った脚の上で合わせた手の指をもにょもにょさせながら、どこか期待したように聞いてくる。

 

「も、もし……もしその飼い猫ちゃんも人の姿になれて、人として会えたら……実は女の子で君のことを好きだったら………どうする?」

「それはまたぶっ飛んだもしもだなぁ」

「た、例えばの話ねっ!……で、迅くんはどう思うの?」

「そうだな……」

 

俺は、綺良々の翡翠色の瞳をじっと見詰めると。

 

 

 

 

 

「……多分、すっげぇ嬉しいと思う」

「…ぁぅ」

 

ひとつ確信したことがある。……やっぱりきららは綺良々だ。

 

 

 

 

 

☆☆☆☆

 

 

 

『もし、飼い猫ちゃんが、実は女の子になれて君のことを好きだったら……どう思う?』

『そうだな……多分、すっげぇ嬉しいと思う』

 

「……えへへへ」

 

配達を終えた帰り道。私は緩んで落っこちそうな口元を手で抑えながら、荒ぶる尻尾も頑張って抑えながら帰路についていた。

 

ああもう、ニヤニヤが止まらないよっ!へへへっ言質とれちゃったもんね……!

 

今日の配達のお昼休憩中に彼から聞かれた事に、わたしは最初跳び上がった。だって、今になって猫になれるか聞いてくるなんて……!

 

わたしはその質問に最初はなれると、実は貴方の飼い猫なんだよって告白しようとした。ずっとずっと話したかったし。仲も十分に良くなったし、わたしのこと女の子として見てくれてるのは十分に伝わってたから。

 

でもいざ言おうとして、何故が急にすっごく恥ずかしくなってきたの。

 

だって、半年も黙っていたし最近に至ってはもうくっつくのも手を握るのも我慢しなくなって、毎日「すき」って伝えて来るのが実は飼い猫って……ずっと近くにいて、迅くんの家でのわたしの話とか全部聞いてたのがバレるなんて……なんか恥ずかしいよ!!

 

それで結局言わずじまいで話は終わっちゃったけど、ひとつわたしを自信付けることがあった。

 

迅くんは……!飼い猫が女の子になって、好きだって言ってきてくれたら凄く嬉しいって!!にゃあああああああ!!!(喜びの咆哮)

 

よし!よっし!!つまりこれって、結婚ってこと……?(錯乱中)

 

あ、違う、両思いだ。そう両思いだぁ!!やったぁあああああ!!!

 

考えてる口にどんどん口角が上がってくる。ダメだ。わたし今人には見せられない顔してるよぉ。

 

も、もしわたしがちゃんと飼い猫だって知ってもらえて、お家の中でも人の姿で居れるようになったら……!

 

ほわほわほわ〜…

 

 

『迅くん…朝だよっ…起きて〜』

『……んぅ……』

『もうっ、起きないと…イタズラしちゃうよ?』

『……んん……』

『えへへっ、良いんだ…。……ちゅーしちゃうよ?……んーっ』

 

 

『ただいま』

『おかえり〜!夕ご飯できてるよ〜』

『おっ、マジか。んー、でも今日ちょっと汚れちゃったからなぁ』

『お風呂も沸いてるよ?……それとも』

『それとも?』

『ぇっあっ!なんでもないよ!!さ、先にお風呂だよね!ご、ごゆっくり…じ、迅くん?』

『なぁ綺良々。それ、ふたつ選べないのか?』

『ふ、ふたつ?え、選べなくはないけど、流石にお風呂でご飯は『違う違う』えっ?』

『……風呂とそれともを、な?』

『…はぃ』

 

 

……うにぁあああああああああああ!!!

 

やばい!無限に妄想できる………!

 

熱暴走したわたしはもう止められない。

 

周りの人から変な視線を受けながら、頭ピンクのわたしはお家に向かって歩いていった。

 

 

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

うーむ、どうしたもんか。

 

うちの飼い猫が綺良々だと確信は得たけど、本人が話したがらない以上俺はどうするべきなのか。そもそも何故綺良々は正体を俺には言わないのだろうか。つか、綺良々の正体って八重宮司以外に知ってる人っているのかな。

 

ちょうど花見坂を歩いていたので通りにある長野原花火屋に足を運ぶ。縁側の方に顔を出すと、丁度宵宮が花火玉に火薬を橋で詰めていた。

 

「ん?あっ、迅っ!どうしたんや?」

「よ。ちょっと聞きたいことがあってさ」

 

足音で顔を上げた宵宮は俺を見つけると花火のような笑顔を向けてきた。

 

やりかけの花火玉を隣に置くと、縁側からパッと立ち上がってこっちに近づいてくる。ってこいつも距離の詰め方どうなってんだ。彼女はそのまま俺の腕を取る。

 

その時彼女からふわっと香ったいい匂いに俺は気が付く。

 

「ん、ハンドクリーム使ってくれてるのか?」

「お、ようわかったな。いい香りやし、めっちゃ使っとるで!」

「気に入ってくれて良かったよ」

「迅にしては中々センスいいお土産やったなぁ〜。綺良々ちゃんと選んだん?」

「いや1人で選んだぞ?前にお前手の肌荒れ気になるって言ってたろ?璃月は香料の名産地だし喜ぶかなって」

「そ、そうか……」

 

そう言うと宵宮は頬を染めてたじろぐと、「ま、まぁお茶でも飲んでき!」と俺を居間に引っ張りこんだ。

 

「……そんで、聞きたいことってなんなん?」

 

2人で暖かいお茶を啜っていると、そういえばと宵宮が切り出す。ハンドクリームの話で忘れてたわ。

 

「その、綺良々の事なんだけどさ」

「…綺良々ちゃんのこと?迅の方があの子のことは詳しいとちゃうん?」

 

訝しげに首を傾げる宵宮。

 

「いやさ、宵宮って綺良々の正体って知ってたりするのか?」

「……その様子だと、迅も気が付いたんやな。うちは知ってるで」

 

確信を持っているのでそう彼女に聞くと、答え合わせのような答えが帰ってきた。やっぱりか。

 

「因みに他に知ってる人はいるのか?」

「……えっと、うちにおばあちゃんに綾華ちゃん。蛍ちゃんとパイモンちゃんにエウルアちゃんも知ってるで?」

「マジかよ全員じゃねぇか」

 

俺以外の身内全員知ってるの?うっそだろ俺洞天にいる時とかに綺良々の前で飼い猫の話まぁまぁしたぞ!?あの時の生暖かい視線に疑問は感じてたけど、そういうことかよ……。

 

「い、いつから…」

「迅たちが璃月行くちょっと前やな。他のみんなは洞天で一緒になった時やと思う」

「結構前から知ってたのか……。それに気が付かない俺って……」

「ま、まあまあ!綺良々ちゃんも徹底的に隠してるって言っとったし」

「て、徹底的……?宵宮。その、俺に隠してる理由とかって聞いてないか?」

「それは本人に聞きっ!」

 

俺は顎に手を当てて考え込む。俺にだけ隠してた理由って一体……「迅」

ん?

 

思考をやめて横を見ると対面に座っていたはずの宵宮が頬を膨らませて隣にワープしていた。そのまま鼻を摘まれる。

 

「このあほ」

「むぇっ…な、なんだよ」

「ふーんっ。女の子の家で別の女の子の話をする唐変木を成敗しとるだけや」

「と、唐変木て」

「……ほんと、罪作りなんやから」

「って、宵宮っ!?」

 

俺の鼻から手を話した彼女は、そのまま俺の膝の上に乗っかってきた。対面するような形で俺の身体と宵宮が余すことなく密着する。そしてそのまま抱き着いてきた。俺の肩口に顔を埋める宵宮が耳元で囁く。

 

「そんな驚いたような真似して、白々しいなぁ。うちの気持ち、知っとった癖に」

「……宵宮」

「それなのによう妬かせてくれるわ。……なぁ」

 

宵宮は顔を離すと俺の目を真っ直ぐ見てらリンゴみたいな真っ赤な顔で口を動かした。

 

「…迅が好きや。この先、どんな男で出会ってもこの気持ちだけは絶対に変わらへん」

「……っ!」

「…ほんとはこの気持ちをずっとしまっとくつもりやった。だって、帰ってきたあんたと綺良々ちゃん見て、敵わないって思っちゃったんやもん」

「………それは」

「でも、やっぱ我慢やめた!そんなんうちらしく無いもん。自分の気持ちに正直に生きよう思うわ」

 

そう言う宵宮は花火よりも遥かに綺麗で。ここ最近で気持ちが固まりかけていた俺は決意を込めて口を開こうとした。

 

「宵宮、俺は……ってストォップ!!なんしようとしてんの!?」

 

俺はセリフを口ごと塞ごうとしてきた宵宮の顔をギリギリ顔を引かせて避ける。

 

「……ちぃ、断られそうだったらキスすればいいって綺良々ちゃんから教わっとったのに。乙女の渾身のキスを避けるんやないでっ!」

「おいなんつー情報交換してんだ。って今俺が真面目に答えようと……」

「いやや。知っとるで?あんた口ではあれこれ言うとるけど、実際は綺良々ちゃんのことが気になってるんやろ?今回の飼い猫疑惑に確信持って、ちょっと気にし始めてるんやろ?」

 

こ、コイツ…!俺の内心をボコボコ掘り返しやがって!図星だよ!!

 

うちの飼い猫=綺良々って式が完成してから、今まで猫として見てた綺良々の行動がバーって全部繋がって!猫の時の行動も全部変換されて!猫としてのかわいいが女の子としてのかわいいにどんどん変わってって…!

 

「だからいやや。だってどうせ断られるもん。諦めたくないんよ」

「往生際悪すぎない?」

「あ、ちなみに迅と綺良々ちゃんがくっついてもうちら諦めんから。綾華ちゃんと徹底抗戦するって綺良々ちゃんに宣戦布告して受理されたで?保証人はトーマや」

「裏でほんとに何してんの!?」

 

なんかすごい勢いで外堀埋められてるどころか梯子掛けられてるッ!

 

内心掘り返されるわ告白受けるわ、爆弾発言を喰らいすぎて若干ショートしてる俺の事など露知らず、宵宮は「だから、今だけはくっつかせてーや」と乗っかった時に胴体に回した脚も使って全身で抱きしめてくる。

 

「ほーんと、前は手のかかる奴やなってしか思ってなかったのに……帰ってきたらうちのどタイプの男になっとるんやもん。そんなんにお姫様抱っことかされたら、うちじゃなくてもコロッといってまうで?」

「宵宮…」

「なぁ、うち、結構優良物件だと思うで?自分で稼げるし家事も得意やし、……そ、その……か、身体だって…」

「ストップ。そこまでにしとけって何故片袖を脱ぐ!?」

「へへっ、これ脱いどくと時たま迅の視線がこっちに飛んできて嬉しいんよ」

 

そういいまた抱きついてくる。宵宮は耳元で囁いた。

 

「だから、覚悟しときっ!今までは恥ずかしくて出来んかったけど、も吹っ切れたで?これから全力で振り向かせたる。幼なじみからは、逃げられないんやで?」

「……なんでみんな俺に断らせてくれないんですかね」

「そりゃ、迅のことが大好きだからや。そう簡単に諦められんよ」

「そんなこと……いや、その、ありがとうな」

「お、ネガティブ思考はやめにしたん?良いことやん」

 

宵宮はゆっくり俺の上から退いた。ずっと腿の上にあった柔らかな重量感が消え、ふぅと息を吐いて立ち上がろうとしたその瞬間。

 

「ーー隙ありっ」

 

気を抜いた一瞬の隙をついて、宵宮がまた突撃してきた。避けようと思ったが間に合わず、宵宮と一緒に後ろに倒れ込む。俺は宵宮を跳ね除けようとけど、唇に感じた綺良々とはまた違う触感に体が硬直した。

 

「んんっ」

 

柔らかいけど、覚えがある感触の中でも張りがある。そんな感触。俺を押し倒しながらキスをしてきた宵宮は、5秒ほど唇を重ねると顔を離す。

 

俺が口を抑えながら後退りして宵宮の方を見ると、顔が真っ赤っかになっていた。

 

「〜〜っ!!い、勢いでいったけど、や、やっぱ恥ずいわぁ」

「い、いきなりなんてことしやがる!」

「だ、だって!我慢できひんかったんやもん!」

「んならやっといて照れんなよ!こっちがも恥ずかしくなってくるだろっ!」

「しゃーないやろ初めてやったんだから!綺良々ちゃんに毎日ちゅっちゅされてるそっちとは熟練度が違うんよ!」

「は、はァ!?毎日やっとらんわ!」

 

お互い顔を赤くしてぎゃいぎゃい言い合う。ってなんで宵宮が綺良々との事知ってんの!?飲み会で情報流れすぎだろ!

 

「…はぁ…はぁ…。と、とりあえず、俺は帰るからな。話聞いてくれてありがとう……その、宵宮の気持ちは、嬉しかった」

「……今度は嬉しかったをうちじゃないとダメに変えるから覚悟しときぃ」

「…顔真っ赤だぞ」

「うっさいわ」

 

俺が着崩れた着物を直しながら、縁側から家を出る。するとそこに宵宮の親父さんがやってきた。しまった!宵宮とのあれこれ聞かれたか!?ばっと後ろを見ると宵宮も冷や汗を垂らしている。結構な大声でヤバいこと言い合ってたから、下手したら外まで聞こえてたかもしれない。

 

「ん?おー、迅くんやないかぁ!来とったんか」

「へっ、は、はい。こんにちは」

「おお、こんちは。いつも宵宮と仲良くしてくれてありがとなぁ」

「と、父ちゃんっ、もしかして外まで聞こえてた?」

 

いつもの調子で豪快に笑いながら話しかけてくる長野原龍之介さん。恐る恐る宵宮ご問いかけると「ん?」と首を傾げた?

 

「なんか話しとったんか?すまんな、耳が遠くてなんも聞こえんかったわ。はっはっはっ!」

 

宵宮のお父さんが耳遠くて良かったって初めて思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ただいま」

「………にゃ」

 

俺が自宅に戻ると、いつもの座布団の上にきらら……綺良々が猫の姿で座っていた。多分向こうも緊張してるんだろう。なんか目にすごい力入ってる。

 

ちなみにばあちゃんは今日神里家のお手伝い中。元々給仕長だったばあちゃんは今も時々顔を見せに行くのだ。大抵そのまま泊まってくるので明日まで帰ってこない。

 

こうして見つめあってても仕方が無いので、俺は晩飯の準備を始めた。

 

「!?」

 

帰ってきてすぐ正体を聞かれるかと思っていたのか、普通に料理を始めた俺にびっくりする綺良々。俺は米を2人前(・・・)研ぐとさっき獲れたばかりの魚を捌いて3枚におろす。

 

身は刺身にして、残ったあらを水で洗い、水で煮て灰汁を取って臭みを抜いた後に味噌とおろし生姜ぶっ込んであらを盛り付けたらあら汁の出来上がり。

 

作り置き紺田煮も皿に盛って白米と一緒に2人分(・・・)配膳した。そこで初めて綺良々の方を見る。

 

猫の綺良々は座布団に座ったままだが目をかっぴらいて刺身とあら汁をガン見していて、口からヨダレが垂れそうだ。

 

俺はそんな彼女を見て苦笑し、座布団の前まで行く。綺良々は期待と不安が入り交じった目で俺を見ていた。

 

見つめ合いながら、俺はおもむろに口を開く。

 

 

 

 

「……綺良々も食べるか?」

「ーーーたべるっ!!」

「わっ」

 

目の前で変化するとこんな感じなのか。胸に飛びついてきた小さいな重みがみるみるうちに大きくなり、見慣れた少女の姿をかたどった。綺良々はそのまま俺の胸に抱きついてくる。

 

「……やっぱうちの飼い猫だったか」

「……うぅ、ごめんなさい。ずっと黙ってて」

「綺良々が謝ることじゃないよ。こっちこそ気づかなくてごめんな」

 

こうして本当に飼い猫が綺良々だとわかるとこれまでの思い出が色々とフラッシュバックしてきた。ずっと、彼女は俺を見ていてくれてたのだ。確信はしていたけど、ちゃんと実感が湧いてくるとやっぱり嬉しいな。

 

「えへへへっ、やっと言えた……」

「まさか、俺以外全員知ってるとか宵宮から聞いてびっくりしたんだからな?俺だけ変なやつじゃねぇか」

「んーん。迅くんに言わなかったのは、わたしをちゃんと1人の女の子として見て欲しかったからだよ?直ぐに飼い猫ですって打ち明けちゃうとわたしがどんだけ甘えても猫としてしか見てくれなくなるでしょ?」

「なるほどな…」

 

そういうことだったのか。唯一分からなかったところピースが埋まって安堵していると、胸に埋まった綺良々と目が合った。この子が俺んちの飼い猫……いつも膝乗せてなでなでして、一緒に昼寝して、猫吸いもした…

 

 

 

 

 

 

 

……猫吸いしてたァ!!!

 

 

「きっ、綺良々っ」

「迅くん、どうしたの?」

「えっと、綺良々からしたらもしかして猫吸いって……」

 

恐る恐る聞いてみると、顔を赤くした綺良々がそっぽを向いて頷いた。

 

その反応を見て、なんできららがお腹を触られると嫌がるのか、そして俺が彼女のどこに顔を突っ込んで猫吸いしていたかを思いだし、背筋に冷や汗が流れた。

 

「……ごめんッ」

「だ、だだ大丈夫っ!気にしないで!そ、その……わたしもよ、良かったし」

「…そ、そうか…」

「うん…」

 

お互いの両肩に手を起きながら俯く俺たち。静まり返った今に響く時計の針の音が際立って聞こえる。

 

「と、とりあえずっ、ご飯食べよ?冷めちゃうし」

「お、おう。そうだな」

 

気を取り直して、夕食ありつく。今夜は綺良々の好きな料理で固めたので食べていくうちにさっきの気まずい空気も無くなっていつもの綺良々になった。食後は2人で皿を洗うと縁側に2人で座って色々な話をした。

 

稲妻を出た俺に会うために、狛荷屋で配達員を始めた事。

 

国外配達が始まる前に鎖国が始まってしまったが、諦めずに配達を続けていたら俺が帰ってきたこと。

 

そしたらまさか自分の後輩になって驚いたこと。

 

その話を聞いて、自然と手が綺良々の頭を撫でていた。彼女も嬉しそうにそれを受け入れる。頭を撫でた時のこの落ち着く感じも、外の猫を撫でると不機嫌になったことも、キャッツテールいったらブチ切れられたことも全部繋がった。ずっと頑張ってくれてたんだな。俺はその事に胸が暖かくなると同時にブチ切れ綺良々を思い出して身震いした。

 

「ん?どうしたの?」

「いや、色々思い返してたらキャッツテール行ったのがバレた時の綺良々思い出して…震えが」

「だって、君から他の雌猫の匂いがしたんだもん」

「普段ニコニコしてる綺良々が怒った顔、めちゃくちゃ怖いんだよ。なんか声も平坦になるし。……ちなみに猫には触らないから酒飲みにだけキャッツテール行くのは……?」

「なんか言った?」

「すみませんなんでもないです」

 

綺良々のこの低いトーンの声の圧エグいんだよ。むくれた綺良々は俺の膝にダイブするとお腹に頭を擦り付けてくる。

 

「もうこれからはわたししか撫でちゃダメっ。配達先でも洞天で会えるんだから、そっちで好きなだけ撫でればいいじゃん」

「それもそうか」

「でもこの前わたしと間違えて刻晴さん撫でたのは覚えててね?」

「クッソ酔っ払ってたのに覚えてたのか……!」

 

いや、近くを猫耳が通ったから反射的に撫でたら刻晴の髪型だったんだよ。あいつのツインテを纏めてる髪が猫耳に酷似してるから俺の猫センサーが反応したみたいだ。驚いた刻晴が俺を何度かチラ見してその場に屈んだからそのまま撫でたけど!俺も酒入ってたからちょっと大目に見て欲しい。

 

「もうわたし飼い猫だから!飼い猫ならいつ撫でられても合法でしょっ?それとも………猫吸いもする?」

「頼むから人の姿でそれはやめてください」

 

膝の上で仰向けにごろんと寝返りを打って、んっと手を伸ばす綺良々が絶景すぎて思わずこめかみを抑える。飼い猫って大義名分を得たせいで判断かあやふやになってきた。このままじゃまずい。俺は綺良々を下ろして立ち上がると、風呂場に遁走を計った。

 

「と、とりあえず俺は風呂に入ってくるからなっ!」

 

ダッシュで脱衣所に走り込むと扉を閉めようとして……、ガッと妖力を纏った手に阻まれる。

 

「…迅くん。わたし相手にお風呂は逃げ場にならないよ?……また一緒に入ろ?飼い猫だからいいよね?」

「ちょっ!?入ってくんな!」

 

 

 

 

……ただ、最強の言い訳を得たこの猫又には敵いそうもないが。

 

 

 

 

つづく。





こんちわ。海灯祭やってたら閑雲が2凸してた作者っす。

いつも「職場の先輩がウチの飼い猫に似ている件」をお読み頂きありがとうございます。誤字報告を毎度行ってくださる方々も本当にありがとうございます。いつも助かってます。



はい、綺良々回と思わせての宵宮回かと思いきや、やっぱ綺良々回でした。これで作品的には一区切り着きましたね。

一応これでタイトル回収となりましたが、物語はまだまだ続きます。

ちなみにまだくっつきません。これから読者のみさなんに「もう付き合っちゃえよ!!」から「付き合うってなんだっけ?」を得て「この2人は付き合うって言うちっちゃい物差しでは測れないんだわ」って言わせながら砂糖吐くマシーンになって頂けるように頑張りますっ。

まだまだ気になるヒロインいっぱいいるしね、しょうがないね。

もう一度再開したら襲いかかってきそうなエウルア。

神里の権力を使ってあれこれしそうな綾華。

仙人達と協力して璃月に留めそうな刻晴。

無自覚だけど覚醒すれば最強の影ちゃん。……と1番厄介そうな将軍。

一癖二癖ありそうなフォンテーヌ勢。

物語はまだまだ続きますので、お楽しみにしていてください。



あ、砂糖が足りないという方は、作者ページから見れる私のもうひとつの作品が砂糖を固めて煮詰めた様な話になっているので、それを呼んで加糖を行ってください。



▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。