今回めちゃ長いです。いつもの2倍くらい文量あります。
分けるのも考えたんですが内容的に分けられず、このまま投げます。
影さん回です。
☆☆☆☆
「にゃー、久しぶりのエウルアちゃんち…」
「来て早々何してるのよ」
あの後ギリギリでモンドに配達を終えたわたしはエウルアちゃんのお部屋に泊まりに来ていた。
いやー焦ったー!途中道をショートカットしてなかったら危なかったよ!
そうして久しぶりにエウルアちゃんのお部屋にやってきた訳だけど、エウルアちゃんのベットにダイブしたわたしは違和感に気がついた。
「ん?あれこれエウルアちゃんの匂いがあんまりしない」
「え?あ、ああ最近洗濯したばっかなのよ」
「ふーん?ベットのマットレスを?今日エウルアちゃん任務帰りでわたしと一緒に帰ってきたけど、いつ取り込んだの?昨日って言っても、一晩でも匂いは付いちゃうよ?」
「くっ!自分が嘘つく時はわかりやすいのになんでそんな推理力高いのよっ」
「だって正妻だもんねー」
それに、今日のわたしは迅くんで満ち溢れてるのっ。…えへへ……昨日は凄かったよぉ。思い出すだけで変な顔に…。
「多分迅くんが使ってたベットで寝てるんでしょ?」
「よ、よくわかったわね」
「だってわたしだったらそうするもん。…どうする?今日は洞天行くの?」
「そうね…せっかくこっちで会ったんだし今日のところはこっちにいましょ?迅は今日洞天に来ないんでしょう?」
「うん、多分今日は船の中で過ごすんじゃないかなぁ?えへへ、久しぶりに2人だね」
勘違いされがちなんだけど、わたしは迅くんと同じくらいエウルアちゃん達も大好きなのっ。わたしが抱きつくとエウルアちゃんもちょっと照れるけど嫌がらない。
「……ん?ねぇ綺良々」
「ん〜っ、なぁに?」
わたしがエウルアちゃんのおっぱいに埋めていた顔を上げると。視界に入るのはジト目のエウルアちゃん。
「なんか貴方から、凄い迅の匂いがするんだけど?」
「ん〜?」
あ、まっずい。出発ギリギリまで迅くんにくっついてたから匂いが移っちゃったかも?自分で袖の匂いを嗅いでみると自分の匂いの奥から迅くんの匂いがしてなんかちょっと変な気分に……。
って、あ。
じとーっとした視線を感じて顔を上げると腕を組んだエウルアちゃんの姿が。
「…説明してもらおうかしら?」
「…ハィ」
エウルアちゃんっ、君みたいな美人さんが目以外で笑うのめちゃくちゃ怖いんだからね!?
「ずるい」
「え、エウルアちゃん?すごい体勢になってるよ?」
一緒にお風呂とか入りながら昨日迅くんとしたことを話すと、お酒が入ったエウルアちゃん(多分ヤケ酒)がベットにゴロゴロしてる。ふ、服が捲りあがってすごいことになってるけど、そんなことは気にしてないみたい。
「綺良々ばっかりずるいわ。私だって迅と……」
「ま、まぁまぁ。時間ある時に誘ってみたらいいんじゃない?」
「う、うぅ……でも……」
うわぁあ顔真っ赤のエウルアちゃんほんとかわいい。でもやっぱり最初の1歩は勇気いるもんね。わたしの場合完全に勢いだったけど。
「こ、今回の迅はどんな感じだったのっ?」
「え、ええっ、流石にちょっと恥ずかしいよぉ」
「何よこの前は話したじゃない」
「あれはその場の勢いで…」
「じゃあ私が勢いつけてあげるからっ振り回せばいいの?」
「多分エウルアちゃん酔っ払ってるよ……」
なんかキャラ崩壊してない?
わたしは枕を抱き抱えながら昨日のことを思い出してみる。
昨日はわたし、今までで1番嫉妬したんだよね。
配達に璃月港に行って、運良く迅くんに会えて。ウキウキで話しかけようとしたら野良のメス猫を撫でてたの。
それを見た瞬間、わたしの胸がギューって締め付けられたような感じがした。迅くんは謝ってくれようとしたけどそれでも治まらなくて、宿に連れ込んで押し倒して、猫を撫でてた指をわたしが舐めて上書きした。
そこからヘンな気分になっちゃって、迅くんにもっともっと触れたいって思った。それは迅くんも同じだったみたいで、そのまま朝まで……っにゃゃあああああ!!!
「え、えっとね、最初はわたしが優勢だったんだけど、途中からどんどん迅くんに逆転されて……それに抵抗しようとしたけど、全然ダメで……結局動けなくなるまで……」
「う、動けなくなるまで……」
ちょ、直接的な事はさすがに恥ずかしいから言えなかったけど、わたしの話を聞いたエウルアちゃんがにゴクリと喉を鳴らした。
「その、迅って夜の方はやっぱり攻める方なの?」
「う、うん。夜叉だから体力もものすごいし、最近デレてくれるようになったけどわたし達って迅くんが甘えてくることに弱いじゃん?そういうのもあってめちゃくちゃ凄いの」
わたしも迅くんに前から好き好き言ってたから人のこと言えないんだけどねっ!でもヤバイのあの迅くん!
「と、特にアレなんかされたら…エウルアちゃん死んじゃうかも」
「あ、ああアレってなによ!?」
「あ、アレっていうのは……うぅ、やっぱりダメ!言えない!」
「何よそれ凄い気になるんだけど!」
ダメなものはダメなの!昨日だってされたけどダメだった。あ、あんなの反則だよ!
「と、とにかく!迅くんと一線超えたいなら素直に誘ってみたらどう?断らないと思うよ?」
「で、でも洞天はみんないるじゃない?誰かが来たらって思うと…」
「そんなこと言ってると刻晴さんに先越されるよ?」
「なっ!?」
最近刻晴さん、よく迅くんとお風呂入ってるんだよね。2人の後にわたしが入るとお湯に入浴剤いれてないもん。まだそこまでは行ってないと思うけど多分そういうことの一つや二つはしちゃってると正妻の勘がそう言ってくる。
「洞天がダメならこの部屋に引きずり込んでみたら?ここなら邪魔も入らないでしょ」
「そ、そうね……」
あーもう、わたしまで顔真っ赤だよっ。手で熱くなった顔をパタパタやって仰いでいると、ちょっと落ち着きを取り戻したエウルアちゃんが口を開いた。
「そういえば、もうすぐ璃月で海灯祭が始まるわね。一応その日は予定空けといたわよ」
「ほんとっ?綾華ちゃんや宵宮ちゃんも来るっていうからみんなで集まれるね!」
「いつも洞天で会ってるじゃない」
「そうだけどっ、みんなで璃月港を歩くのが楽しみなのっ」
迅くんと一緒にみんなで街を歩いて…みんなで花火見て……えへへっ、すっごく楽しそう!
「そうね。私も璃月港は久々だから楽しみだわ。……それに、こういうお祭りにと、……友達と参加するのは初めてだからちょっと緊張もしているけれど」
「うんっ、楽しもうね!」
ここの胸に手を当てて微笑むエウルアちゃんの写真を撮ろうとして2人で色々もみ合ったりすったもんだしながら、モンドの夜は更けて行くのでしたっ。
翌日。
エウルアちゃんのおっぱいに包まれて窒息しそうになりながら起き上がったわたしは2人で洞天を訪れていた。最近は迅くんが自由に入れるように許可出しっぱなしにしてるからすんなり入れる。
中に入ると迅くん以外の彼女ーずは全員居るみたいでそれぞれ挨拶を交わす。
「こんにちは。おふたりともご一緒だったのですか?」
「ええ。昨日綺良々が配達でモンドに来たのよ」
わたしとエウルアちゃんはソファに座って綾華ちゃんが入れてくれた稲妻のお茶を啜る。あぁ〜、外国回って色々なお茶飲んだけど、やっぱり稲妻のお茶が1番だにゃー。あぢっ。
横のエウルアちゃんも1口お茶を飲んでほっと息をついていると、わたしはさっきから視界の端に移る頭から湯気を出している若紫色と金色のに顔を向けた。
「えっと、2人とも大丈夫?」
「んぇ?あ、ああ〜…大丈夫やでぇ?」
「心配無用よ。ちょっと仕事が忙しいだけだから……」
大丈夫じゃなさそう。だって2人が話してる方向全然違うし。
「お2人とも近々行われる海灯祭の準備に追われているみたいなんです。宵宮さんも海灯祭用の花火玉を作るのに忙しいようですね」
「まぁ、毎年この時期は忙しいんやけど今年は特になぁ、最近働きっぱなしやぁ〜……昨日やっと一段落ついて洞天に来れたんよ」
「私も会場の設営とか露店の場所の下見とか忙しくて…まぁ甘雨よりはマシなんだけど」
「2人ともほんとにお疲れ様〜」
わたしはぱっとソファから立ち上がって宵宮ちゃんの肩を揉む。やっぱり結構凝ってるなぁ、花火玉を作るところは私も見た事あるけど火薬を規則正しく箸で詰めていくのは凄く大変そうだった。だからなのかわからないけど宵宮ちゃんって箸の使い方がわたし達の中で1番上手なんだよね。刻晴さんの方を見ると綾華ちゃんが肩を揉んであげてた。気持ち良さそう。
「あぁ〜、気持ちええわ〜…綺良々ちゃん肩もみ上手やなぁ」
「えへへ、おばあちゃんによくやってるからね。……ん?でもこれただの仕事疲れの凝り方じゃないような……まさかッ」
「へ?き、綺良々ちゃん?…ってひゃああ!?」
やっぱりコレのせいかぁ!わたしは宵宮ちゃんの肩こりの原因を脇から手を回して後ろから持ち上げる。
「んぅっ、き、綺良々ちゃんいきなりなにするんっ!?」
「さ、サラシ巻いてこの感触とか……」
「ひゃぁ…っ、ぁ、あかんっ……こ、刻晴さんっ助けてぇっ」
「私!?……って綾華?なんだか貴方も顔が怖いのだけどっ?」
「刻晴さんも、かなりスタイルがよろしいですよね……失礼しますッ」
「ちょっと!?……んぅ!?…え、エウルアッ、見てないで助けなさいっ」
「あー、私は暇だからお菓子でも作ってこようかしら」
「「ちょっとぉ!?」」
ちなみにエウルアちゃんもさっきわたしに揉み倒されてるからね。そそくさと台所に消えるエウルアちゃんを尻目に、わたしは手の中にある…いや手からもはみ出る肩こりの原因に張り切って揉みにかかった!
「ふぃ〜、満足まんぞ…間違えた。これで肩こりはバッチリ治ったね!」
「き、綺良々…後で覚えてなさいよ……!」
「……ぁぅ、……〜っ、……」
「よ、宵宮さんがすごい顔になってます……」
あれから15分ほど揉み倒した。途中でわたしが体感した彼氏君の動きを再現してみたんだけど、なんか宵宮ちゃんがすごいことになった。真似しただけでこれなんだからやっぱり迅くんってケダモノの素質あるよね?
「ちなみに今のは迅くんの動きを再現しました」
「!?」
「つ、つまりうちは迅に揉まれたっちゅうことか……」
「……もう綺良々がなんで再現できるかとかは突っ込まないのね……」
「ま、まぁこの前そのお話をお聞きしましたし……」
震えた体のまま起き上がって乱れたサラシを巻き直す宵宮ちゃんをまじまじと見てたらチョップを食らった。何故なのか。
「そういえば迅くんは?昨日は来なかったの?」
「……ふふっ」
「ひぃ!?ど、どしたの綾華ちゃん!?」
ふと思ったことを口に出しただけなんだけど、纏う空気が一変した綾華ちゃんにこっちがビビる。な、なにがあったの?
「お兄ちゃんは昨日来られましたよ?……ふふっ」
「ほんとに何があったのよ…昨日は私いなかったし、宵宮は何か知ってるの?」
「そ、それがな、昨日お茶しとった綾華ちゃんがいきなり立ち上がって『今、妹が増えたような気がしました』って言ったんよ!」
「何それ怖い!」
「何も驚かれるようなことではございませんよ?唯の妹センサーです」
「「妹センサー」」
綾華ちゃんの口から出た謎ワードに思わず聞き返すわたしと刻晴さん。
「昨日の綾華ちゃんほんまに怖かったで……ニコニコしながら座ってるのに身体から冷気が出とったし…」
「帰って来られたお兄ちゃんにしっかりとお話を聞いたところ、昨日は蛍さんと一緒に居たそうですよ?」
「「なんですって!?」」
「ど、どういうことなの!?」
あ、台所のエウルアちゃんも顔を出した。
綾華ちゃんが話すには、昨日稲妻行きの船を乗り過ごしちゃった迅くんがたまたま居合わせた蛍ちゃんと遊んだんだって。
ぬ、抜けがけとはやるじゃん蛍ちゃん……!とりあえず横で「私の所に来てくれても良かったじゃない……」ってツインテールをいじってる刻晴さんが可愛い。
「やっぱりダークホース決定だね」
よし、まだ璃月港にいるならパイモンちゃんを買収して聞き出せそう…なんてことを考えていたら、洞天に誰か来たみたい。
「ん?誰だろ。甘雨さんかな」
「甘雨なら数日前に来たばかりよ?…まぁ出迎えてみましょ」
そういい刻晴さんが玄関の扉を開け……固まった。
ど、どうしたの?一体誰が……?
ツインテールを逆立てながら停止した刻晴さんを不思議にも思いながらわたし達も扉を開けて………まさかの人物に頭の中が真っ白になった。
「…ここが迅さんのお家ですか?」
「「「将軍さまぁ!?!?」」」
か、神様が洞天に来ちゃいました。
「おっ、おおおっ、お茶です…」
「ありがとうございます。そんなに怖がらなくても良いですよ?」
カタカタ震えながらお茶を出したわたしに将軍さまは微笑んでくる。
いっ、いやそんなこと言われましてもぉ!
突如洞天にやってきた雷神さまはお茶を一口飲むと、未だテーブルの周りに立っているわたし達に声をかけた。
「今の私のことは敬わなくても結構ですよ?稲妻の神としてではなく迅さんの友人としてお邪魔しているのですから、貴方達も座ってください。口調も砕いて貰っても構いませんよ」
「わ、わかりましたっ」
いそいそとみんな椅子に座って自分のお茶を組むと、わたしはみんなと目配せをする。とりあえず稲妻で有名人の綾華ちゃんがゆっくりと話しかけた。
「将軍様、お会いできて光栄です。本日はどのようなご要件でいらっしゃれたのでしょうか」
「特に要件はないですよ?前に迅さんからここの通行証を貰ってからまだ顔を出していなかったので遊びに来てみたんです。本人が不在なのは残念ですが……、貴方達とも1度話をしてみたかったのです」
「うち……わ、私達にですか?」
「ふふ、長野原の店主さん、いつもの口調で構いませんよ。現に他の方が変な顔をしてますので」
「ちょっ!綺良々ちゃん達なんやその顔っ!」
い、いやぁ〜普通の話し方の宵宮ちゃんが見慣れなさすぎて、ちょっと身体痒くなっちゃった。すると将軍様がじっとわたしを見てくる。ひぃっ。
「確か、貴方は狛荷屋の配達の猫又さんでしたね。神子からよく話を聞きました。そちらの2人は外国の方ですか?」
「はい。私は璃月の七星、玉衛の刻晴と言います。俗世の七執政の一柱にお会いできるとは、光栄です」
「モンドの西風騎士団、遊撃隊長のエウルア・ローレンスです」
「ありがとうございます。私の方こそ、改めて自己紹介が必要ですね」
将軍様は椅子から立ち上がると優しげな眼差しでわたし達を見た。
「私の名前は影と言います。迅さんの友人でよく一緒に鍛錬を行っています。特に稲妻の3人から見れば『目狩り令』なんてものを執り行ったので信用に値しないかもしれませんが、どうかよろしくお願いします」
「い、いえ、そんなことなど…」
「せ、せや。うちらもその事はもう気にしてないですっ」
わたしは目狩り令の時は猫になってやり過ごしてたから平気だったけどやっぱり色々大変だったんだろうな。
自己紹介が終わったところで、ずっとずっと気になってた事を聞くためにわたしは手を挙げた。
「あの、将軍さま」
「影、で構いませんよ。なんですか?」
「その、影さんはわたし達と迅くんの関係を知っているんですか?」
その言葉を聞いたみんなから一気に緊張が走る。ちなみに稲妻は一夫一妻制で、わたし的にはそれに口を出されることが1番怖い。
「ええ、前に旅人さんから聞いて知っていましたよ」
し、知ってたぁ〜!と、どうしようどうしよう!
冷や汗をダラダラ流すわたし達を見て、影さんはくすりと笑った。え、怒らないの?
「まさか、わたしがあなた達の関係に口を出すとでも?そんなことしませんよ」
「え、えっ、よろしいのでしょうか?」
「稲妻のアレは人に向けての法ですからね。迅さんは適用外でしょう。それに夜叉の血は貴重なものですから血を絶やさないという点では理にかなってますし、彼の寿命も長いです。生涯の伴侶が1人だけというのは可哀想でしょう」
「よ、よかった寛容で…」
「それに、それだと私が少し、面白くないので」
……んん?
今なんと?
思わず真顔で横を見ると、全員同じ顔してた。冷や汗を垂らしたエウルアちゃんが、恐る恐る聞く。
「えっと、影さんは……唯の迅の鍛錬相手なのよね?」
「ただの……」
だからなんでちょっと不満げ!?
まずいまずいまずいよ!まさかまさか、迅くん神様まで落としてるの!?嘘でしょ!?
「んんっ、そ、そうですね……ただの鍛錬相手、と言っても差し支えはないでしょう。……ただ、それなのですが、最近自分に変化があったんです。神子に聞いてもはぐらかされるばかりで……もし良ければ迅さんと特別な関係である皆さんに聞いてみたかったのですが」
もう嫌な予感しかしない。だけどここで断るのは変だし、そのまま聞くしかない。
みんなで目を見合わせると、覚悟を決めて聞く姿勢を作った。
「はい。影さん、お聞きしましょう」
「せや。うちらだからこそ聞ける話やと思いますし、なんでも聞きます」
綾華ちゃんと宵宮ちゃんが優しくそう声をかけ、わたし達が頷くと。安心した顔になった影さんが話し始めた。
迅くんとの出会いはわたし達が彼に聞いた通り。だけど迅くんの刀が新しくなったエピソードは初耳だった。
そして影さんは、わたし達に多分凄い秘密を話してくれた。雷神はかつて2人いた事、片方が大昔に亡くなっちゃって、影武者をやっていた影さんが後任に就いたこと。
『永遠の瞑想』をするために不変の人形を作り、そこに自我を持たせて「雷電将軍」にした事。
だから人形の方の雷電将軍を見たことがある綾華ちゃんと宵宮ちゃんが最初驚いてたんだ。影さんの方は将軍さまと違って威圧感とかが全く無いもん。
そして目狩り令の時に考えを改めて「永遠」とは何なのかを考えてたんだって。
「そして迅さんと出会い、初めて私と対等に鍛錬ができる存在ができて…それからの私はその鍛錬の日を楽しみにしていました。……ですが、私はまだ人形の将軍の方に彼の記憶を入れていなかったのです」
「…もしかして、その人形のほうが迅を襲ってしまった……と?」
「刻晴さん、なんか知っとるんか?」
「前に迅から聞いたのよ。刀が新しくなった時に前に渡してた剣が砕けちゃったって。理由を聞いたら夢想の一太刀と撃ち合ったって聞いて心臓止まるかと思ったわ」
「えええ!?」
む、夢想の一太刀って大昔オロバシを島ごと斬ったっていうあれ!?
その島の斬り口は今でも雷元素が残ってて危ないって言われてる。わたしだって配達の時は避けて通る道だ。
「その認識で間違いありません。…その、そうなった原因が私にあるんです」
影さんが話すには、迅くんとの鍛錬を続けてる内に毎回毎回腕を上げてくる迅くんと戦うのが楽しみでしょうがなかったんだって。
影さんが将軍の方に迅くんの記憶を加えようとしたらちょうど天守閣を訪ねてきたから将軍が出迎えて、将軍は迅くんのことを知らないもんだからそのまま戦いになっちゃったそう。
影さん自身最初は慌てて止めようとしたんだけど、迅くんが前よりも桁違いに強くなってたから将軍との戦いに魅入っちゃった。
「そ、それで気が付いたら迅さんにトドメを刺しそうな将軍が見えて慌てて止めたんです…」
そのスゴい話にわたし達は口をぽかんと開けて何も言えなかった。
とりあえずそれを刻晴さん以外に隠してた迅くんには後で猫又吸いの刑にするとして、まさか神様と対等に戦えちゃうなんて凄すぎないわたしの飼い主っ、ちょっと周りに自慢したくなってくる。
「そして、私は彼に絶交されることを覚悟しました。私のせいで命を落としかけたのですから当然です。……そう思ってたのですが」
「迅は怒らなかった」
あっ!わたしが言おうとしたのに!「私彼のことわかってる」アピールに成功したエウルアちゃんの顔にジト目を送り付ける。
「い、いえ、とても怒ってましたよ?」
「え」
「そぉーですよね流石の迅くんも怒る時は怒るもんね!!」
「ちょっ!」
「ああっ!」
まさかのハズレで顔が引き攣るエウルアに被せるように「わかってる」アピールをする私に、同じことしようとしたほか3人が声を上げた。
って神様が喋ってる中でなにしてんのわたし達っ!背筋を凍らせながら影さんの方を振り向くと。
「ふ、ふふふふっ……仲が良いのですね」
「あ、そそのすみません」
「良いんですよ。場が和みました。ありがとうございます」
「はぅ」
さっきから感情が忙しい。こうまじまじと近くで見たの初めてだけど、ものすんごい美人だから微笑まれるだけでもなんか魅了されちゃう。
見蕩れてるわたしを尻目に綾華ちゃんが恐る恐る声を上げる。
「ええと、話を戻しますと…兄さんが怒ったのですか?あまりそのような光景は見たことがなかったので想像が出来ませんが…」
「そうね。私はあまり付き合いが長くないからわからないけど、エウルアは見たことあるんじゃない?」
「私の時は怒ってたって言うよりやさぐれてたから、ちょっと違うわね。綺良々は見たことある?」
「ううん、わたしもないかも。だけど多分めちゃくちゃ怖いと思う…優しい人が怒ったら、ってよく言うし」
「うちも無いなぁ。というか基本迅が怒るってこと早々ないやろ。うちらが酔っ払って迷惑かけた時ですら逆に謝ってきた位やで?」
「そ、そうですか……私はそんな彼を…」
「宵宮ちゃんっ、刺してる刺してる」
「あっ!す、すみません将軍さまっ!」
しおしおと小さくなる影さんに謝る宵宮ちゃんの敬語がやっぱり慣れなさすぎる。
「それで、怒った迅さんなんですが…仮面をつけてて表情はわかりませんでしたが…凄く低い『おい』という言葉に震え上がったのを覚えています」
そ、そんな言葉を迅くんが…!?
「仮面というのは、いつも兄さんが腰に下げてる物でしょうか」
「あのなんか無機質で怖そうやつやな。あれ被ってごっつ低い声出るのビビるわぁ」
「はい。ですが怒っていたのは最初だけで、事情を話したらすぐに収めてくれました。そして彼が帰る時『また来る』と、さも当然のように言ってくれたのです。その時から……いえその少し前、彼が外国に行っている時から、その、よく頭の中に彼が出てくると言いますか、瞑想をしててもふとしたら考えていることが多くなってきまして……」
自分の胸に両手を当てながらそう話す影さんに、多分わたしは白目を剥いてると思う。
だってそれ、絶対恋してるじゃん。
みんなも同じ事を思っているみたいで全員わたしの方をじっと見てくる。まるでわたしに判断を委ねるみたいに。
「この、私の彼に抱いている気持ちは……一体どういうものなのでしょうか…?」
影さんはわたしを真っ直ぐにみてそう問いかけて来た。そんな彼女を見てわたしの気持ちの方も決まった。
「あの、影さん。その気持ちは……」
「………はい」
「恐らく、『恋』だと思います」
「………ぇ」
影さんはぽかんとと口を開けるけど、もう決心か着いたわたし達は止まらない。
「影さんはもう、完全に、バッチリ迅くんのことが好きなんですっ!」
「そ、そそそそんなことは」
わぁすごい。神様が茹でたみたいに顔真っ赤にしてるの初めて見た。
しどろもどろになって否定しようとする影さんにわたしはなおも続ける。
「影さんは鍛錬が楽しみって言ってましたけど、本当にそれだけですか?迅くんが会いに来るだけで心が踊ってませんか?戦ってる最中にチラ見えする迅くんの鎖骨とか腹筋とかに目が行きませんか!?わたしは行きますってあいた!?」
「ちょっと何口走ってるのよ!」
「いや普通見ちゃうでしょ!逆に刻晴さんは見ないの?」
「いやむしろ潜り込むけど」
「斜め上の回答!?」
口走ったわたしも悪いけど刻晴さんも大概だね!?
影さんは思い当たる節があるみたいであわあわしてる。
「こ、こ、恋………そうだったのですか…。しかし神である私が恋なんて……あ、貴方達は複雑では無いのですか?自分の恋人を好いている人物なんて、不快に思うはずです」
「複雑も何も、今更よ」
「なんなら横恋慕の塊やしねうちら」
「ちょ、エウルアちゃんそれわたしのセリフ」
「私のセリフでもありますよ?」
「最後に加わった私は耳が痛いわね…」
「と、まぁこんな感じなので、今更1人2人増えてもあまり気にならないですっ」
「そ、そうなんですか…」
そうなんです。わたし達そもそも特殊なんで。なんなら覚悟してたんで。
影さんは目を閉じてじっと何かを考えている。わたし達が黙って見守っていると、考えがまとまったみたい。目を開けて口を開いた。
「わかりました。とりあえずはこの気持ちを恋として飲み込みます。そして私がこれからどうしていくか、というところですが。ひとまずはまだ迅さんの鍛錬相手で行こうと思います」
「そ、そうですか。てっきり私たちの仲にお入りになるのかと…」
「それも魅力的ですが、何より本人の意思にそぐわないでしょう。貴方達の仲の良さからみて迅さんはきちんと筋を通しているのだと思います。その仲に入ろうだなんて図々しいことは出来ません」
そのセリフを聞いて、わたしは内心安心した。多分だけど、もし増えるとなると迅くんの方からお断りすると思うしあんまり心配はしてなかったけど何せ神様だもん!美貌も権力も全く叶う気がしないよ。
「えっと影さんはそう言ってるけど、みんなは?」
「影さんが決めたことなら従うわ。まさか自分の国の神様とこうして話す機会があるなんて思わんかったし、是非遊びに来て欲しいです」
「私も、志は同じ者として影さんの考えに賛同致します」
刻晴とエウルアちゃんも頷いた所で、わたしも影さんに向き直る。
「えっと、ごめんなさい。わたし達で影さんの想いを開けたせいでこんなことに」
「いえ、構いませんよ。迅さんや皆さんご良ければここに顔を出しに来ますし。………それに、今はというお話でしたしね?」
「はぇ?」
素っ頓狂な顔をしているわたしに影さんが笑顔で話す。
「彼は長寿でしょう?なら今焦らずとも待っていれば必ず機会が訪れます。……そうですね、150年後くらいに彼を貰えれば万々歳ですね。半々仙の寿命は分かりませんが半仙の方が3000年も生きているとなると彼も1000年は生きると思いますし、雷神の眷属にでもしてしまえば直ぐに……」
わたしは空いた口が塞がらなかった。やばいっ!この人全然諦めてなかった!
助けを求めるようにみんなの方を向くけど、純人間のほか4人は知らんぷりだ。
「まぁ、うちらその頃にはとっくに死んどるからなぁ。口出し出来んわ」
「死人に口なし、っていうしね。綺良々、頑張りなさい」
え、てことはわたしと影さんの一騎打ちってこと??
ど、どうしよ。
「どうぞ」
「こっ、これはぁっ」
影さんの宣言にわたしが灰になった後。お腹も空いてきたのでみんなでエウルアちゃんの作ったケーキを食べることに。
そこで反応したのがなんと影さん。エウルアちゃんの作るスイーツはわたし達全員大好物だけど、なんと影さん甘いお菓子が大の好物らしい。
だから迅くん、鍛錬行く時の朝によく練乳作ってたんだ。話を聞くと団子牛乳を一緒に飲んでたんだって。
あれよく品薄で買えないんだけど、もしかして……?って聞いたらあわあわした影さんが、「えっ、あっ、違いますよっ?店主に話を聞いた時に売れ行きが宜しくないと言っていたので、私がそれに貢献しようと…味も好みですし、だから別に、私は食いしん坊ではないんですっ」って顔を赤くして拗ねてわたし達は全員やられた。え、何なのわたし達の国の神様ってこんなに可愛かったの?それをずっと迅くんは見せられてたの?
そして今に至るけど、エウルアちゃん印のケーキに影さんの目が釘付けになってる。
なんかもう最初に会った時からいい意味で神の威厳がふっとんでるよ。めっちゃ可愛いよこの神様。この前の祭りで売ってた雷電将軍の人形買えばよかった。
「〜っ!こ、これは美味しいですね!迅さんの言っていた通りですっ」
「それは良かったわ。って、迅が私の事を?」
「はい。エウルアさんの料理をべた褒めしてましたね。それに大恩人とも言ってました」
あ、エウルアちゃんがすごいにニヤニヤしてる。ちなみに元々感情ごとの顔の動きが少ないエウルアちゃんが上がっちゃう口角を手で隠して頬を染めてるだけでも凄いニヤついてるんだよね。
ぱくぱくとケーキを食べてる影さんを見て稲妻出身の綾華ちゃんと宵宮ちゃんも将軍様とのギャップに心奪われている。
「…ふぅ、とっても美味しかったです。この前迅さんが振舞ってくれた物とはまた違う味わいですね。生地が柔らかくて、病みつきになりそうです」
「まだあるけれど、どうかしら?」
「良いのですかっ?」
影さんとも色々話せて、みんなの口調もだいぶ砕けてきた。なんというか神様ってより親しみ易いお姉さんって感じ。
ずっと瞑想をしていたみたいでここの物にすごい興味深々。さっきも花火玉を作る工程を見てめちゃくちゃ宵宮ちゃんを褒めてて顔がデロンデロンになってた。
「刻晴さんの雷元素の操作は繊細でとても良いですね」
「そ、そうかしら?…ありがとう」
「ふふ、それでしたらこういうのはいかがですか?」
「えっ、お、おおおおおお!?」
「え、なにあれ」
なんか今外で刻晴さんが背中から雷元素の輪っかを生やして空飛んでる。
背中の輪っかにあるマークみたいなのから凄い元素の波が出てるみたいで風もないのにすごい勢いで飛んでってた。
「影さん、今度璃月港で行われる海灯祭に、稲妻の行事を……」
「ふむふむ、なるほど。興味深いですね。ここには璃月七星の方もいますし、こういう話し合いが捗りそうです」
とか思ったらなんか綾華ちゃんと話し合いしてるし!馴染みすぎじゃない?
ていうかやばい、影さんわたし達の懐柔力が凄い。
神様の超美人なお姉さんから手放しに褒められるの凄い。癖になりそう。
わたし達はこのあとも、この可愛すぎるお姉さんに顔を崩され続けるのでした。
☆☆☆☆☆
え、なにこれ。
蛍と遊んだ後の次の日、またもや船に乗り過ごした俺はもう開き直って空を全力で飛び稲妻に帰ってきた。蒼ノ雷光を使って全力で飛んでみた所、多分音速超えたと思う。雷元素のバリア張って顔守ってなかったら多分窒息してた。空気抵抗エグすぎる。
で、帰ってきたその足で狛荷屋に報告。神里屋敷に寄ると綾華は宵宮とまだ洞天にいるとの事なので入ってみたわけだけど。
「や、やばい影さんの膝枕永遠に寝れる」
「き、綺良々さん?なんだか顔が怖いですよ…?」
「影さんすみません今すぐこの変態猫又を叩き起すのでッ」
「ふにゃ!?」
なんかウチの飼い猫が、何故か居る影さんの膝枕で見たことないような恍惚とした表情でいるのを刻晴に叩き起されてたり。
「影さん、このデザートはいかがかしら」
「おおっ、これはもしや伝説のプリンというものでは!いただきますっ、……〜っ、大変……美味ですっ……!」
「そ、そう。よかった」
なんかエウルアが影さんに手作りプリンを食べさせ、べた褒めされて照れてるんだけど。
「え、影さん、うちのこの喋り方、変やない?」
「いえいえ、可愛らしいと思いますよ?私は好みですっ」
「そ、そそそそうか〜?…えへへへへ」
なんか俺の幼なじみが影さんに「ニコポ」されてるんだけど。
「むむむ……影さんと稲妻の民が触れ合える行事を企画しなくては……!」
なんかうちの妹がなかなか見せないガチの真剣顔で書類を書いてるんだけど。
え、なんか俺の彼女達、影さんに絆されてない??
「ってええ!?じ、迅くん!?」
俺がそんなカオスな自分の洞天を見て呆然と突っ立っていると、ようやく気がついた綺良々が声を張り上げた。続いて影さんと目が合う。
「じ、迅さんっ。え、えと、その」
何やらあたふたしているので軽く会釈をして近づく。
「えっと、すみません出迎えが遅れて。洞天来てくれたんですね」
「は、はいっその、お邪魔してます……」
え、なぜにそんな顔を赤くして後ずさるの?
「影さん?」
もしかしたらこやつらに俺の変な知識でも埋め込まれたか?
俺が心配なって顔を覗き込む。今影さんは靴を脱いでいるので踵上げで縮んでいる身長差が開いて俺の鼻くらいに頭が来るからちょっと俺が屈む感じだ。
「〜〜〜〜〜〜っ!」
「え、大丈夫ですか?顔がめちゃくちゃ熱いですけど」
影さんと至近距離で目が合う。つっても組手してる時これくらいの距離感になるのは割とあるのでその調子で行ったんだけど。
「きょ、今日はこれくらいでお暇させていただきますっ!!」
「え、あ、そうですか?」
しおしおと小さくなった影さんはそそくさと洞天から出ていってしまった。
『…………』
「な、なんだよ」
背中に突き刺さる5つの視線に耐えかねて聞き返すと、綺良々が寄ってきて肩に手をぽんと置いた。
「迅くん、影さんならいいよ?」
「なにが!?」
まさかのヒロインズを逆に攻略する影さんっていう。
影さん好き?
-
大好き。色々街中連れ回したい。
-
好き。団子牛乳一緒に飲みたい
-
三つ編みに巻かれたい
-
2凸したい