最近別の方ばっか更新してすまねぇっす。
本編はまだ進みませんが、ちょっと迅くん周りのお話を書いたのでどうぞ。
・そういや肩車したことなかったね
「ただいま」
「おかえり」「おかえりなさいー」
洞天で夕飯の準備をしていたら刻晴が帰ってきたので出迎える。
「お疲れ様。ご飯はまだだから、先に風呂入るか?」
「…ええ、そうするわ。夕飯ありがとうね」
「いやいや、これくらい当然だって」「そうそう」
海灯祭の準備も大詰めらしく、最近来る頻度が減ってたしこれくらいの労いはさせてくれって。
そう伝えると、微笑んだ刻晴は自分の部屋に荷物を置きに行こうとして。
「じゃあ、先にお風呂貰うわね。…………で?」
「ん?」「なに?」
「そろそろ突っ込んでいいかしら?」
刻晴は口元をヒクつかせながら、俺……と、俺に肩車されている綺良々にビシッと指を指した。
「え、えっと……何してるの?」
「なにって、肩車だけど?」
「いや、なんでそんな「それが何か?」みたいな顔できるのよ!……って言うか、なんで肩車?」
「それは、なぁ?」「…だって、ねぇ?」
こめかみを抑えてそう聞いてくる刻晴に、俺達はなんでもない顔で返す。
「「そういえば肩車やってなかったなって」」
「どういうこと!?」
どういうことかと言われても、そういうことだよ?
「だってさ?わたし達っていろんなことしてきたじゃん?抱きついたりちゅーしたり。でもまだ肩車してないやって今朝気がついたんだよね」
「…そ、それで肩車してるってわけ?…いつからやってるのよ」
「んー、お昼くらいから?」
「結構やってるのね…」
だから最初はちょっとぐらついたけど、少し慣れてきたんだよね。
「…まぁいいわ。お風呂入ってくるわね」
「おう。俺はご飯作っちゃうよ」
「って、ちょっと!扉なんか通ったら綺良々がぶつかるわよ!?」
俺は台所の扉を通ろうとすると、焦った様子の刻晴が止めて来る。…が、それも俺たちにとっては慣れたこと。
「ふっ!」
「うそぉ!?」
上の綺良々が身体を倒し、俺の背中に逆さになって壁を躱した。そしてそのままえいやっと身体を起こして元のポジションに戻る。
「…あ、あの体勢から身体起こすなんて…妖怪にしか出来ないわね」
呆れたようなため息を吐いて温泉に向かう刻晴を尻目に上を見ると、綺良々と目が合って笑いあった。
「あ、綺良々鍋取ってくれるか?」
「はーい。…あ」
「あ、りょーかい」
「ありがとっ」
上の棚にある鍋を取ろうとした綺良々の位置が近すぎて開けにくそうだったので1歩下がると、お礼を言いながら鍋を取る。
「なんか思いつきで始めたけど結構上手くなったな」
「そうだね。最初はバランス取るのも大変だったけど……はっくしゅっ!」
「あ、胡椒そっちいった?」
鍋に塩と胡椒振ってたら匂いがそっちいったみたいだ。
料理が完成するとリビングに戻る。扉を通る時にまた逆さになって躱した綺良々を肩車したままソファに座る。
俺の視界に綺良々の猫足が入ったので手に乗せてみた。ぷにぷにとした感触の肉球を手のひらで撫でる。
「…んっ、くすぐったいよ」
「俺肩車の最大の利点見つけた気がする」
あー、癒されるわ〜。この手のひらサイズの猫の足がたまらん。
「迅くん、ほんとにわたしの足好きだよね。この前踏んでくれとか言われてびっくりしたんだよ?」
「いやぁ、1回綺良々の猫足を顔面で受け止めてみたくて。あの時はご馳走様でした」
「お粗末さまでしたっ…もぅ」
腹いせのつもりか、俺の髪の毛を引っ張ってくるのを受け入れる。お返しに肉球をつんつんすると綺良々は脚を閉じて俺の首を挟み込んできてって締まる締まるっ!?
「ちょっ、綺良々ギブ…!」
「ふんっ、………あ、わたし肩車の欠点みつけたよ?」
「ん?まぁどっちかというと欠点のが多いと思うけど」
猫足から手を離して締まる太ももを抑えていると、綺良々が身体を前に倒してきた。長い亜麻色の髪が暖簾みたいに垂れ下がり、視界の上に逆さになった綺良々の顔が映る。
「……ぅー、ちゅーできない」
「さすがにこの体勢だと届かないだろ」
「猫のときなら届くのに…!」
言わば自分の股に顔を近づけようとしてる訳で、人間の可動域ではさすがに無理だ。って、おい!?
「うう、もう少し…!」
「ちょっ、危ねぇって!」
綺良々は身体ごと倒して何とか顔を近ずけようとするが、当然可動域が限界に達し、それでも倒そうとするものだから、肩車が解けかけている。俺は転げ落ちそうな綺良々を肩を支えると、ひょいと持ち上げて膝に下ろした。
「……あとちょっとだったのに」
「さすがに無理だって。俺ごと前に倒れそうだったしさ」
むーっと唸っていた綺良々だけど、何やら気がついたことがあったみたいで、ぽっと顔が赤くなる。なんだろうと不思議に思うと、ちらちらとこっちを見ながら綺良々は脚をモジモジさせた。
「そ、そういえば、肩車やったことあったかも…」
「え、そうだったっけ?」
「…そ、その、向きは違うけど…この前…」
「わああああ!ちょっと黙ろうか!?」
俺と綺良々のすったもんだは風呂から戻ってきた刻晴に止められるまで続いた。
・磐岩結緑と綾華
「…綾華、前から聞きたかったことがあるんだけど」
「はい、なんでしょうか」
ある日の昼下がり。配達帰りに綾華とあった俺は近くの喫茶店でお茶をして、その帰り道を歩きながら気になっていたことを質問した。
俺は今日も綾華の背中に挿してある翡翠色の直刀を指さす。
「磐岩結緑、ほんとにずっと持ってるの?」
「もちろんずっと持ち歩かせて頂いてますよ?何せ、兄さんから頂いた大切な刀ですから」
「ま、まぁ、大切にしてくれてるのはほんとありがたいんだけどさ。俺、稲妻に帰ってきてそれあげてから綾華が磐岩結緑を手放した所見たことないんだけど」
「そ、それは偶然ですっ。さすがにお風呂に入る時は外しますよ?」
「え?」
「はい?」
停止した俺をこてんっと首を傾げて見てくる綾華は大変お可愛いけども。
「…外す時、それだけ?」
「…えっと、さすがにお風呂は刀身に悪いですから…それと、お行儀が悪いので食事の時は隣に置いてますね」
「いやいやそうじゃなくてね。…え、寝る時は?」
俺の聞き返しにぱちくりと瞬きをしたと思ったら、綾華が急に慌てだしたぞ。
「そ、そうでしたね。寝る時も外しますよ?ええ。当然です」
「本当に?今なんか間がなかったか?そういえば前にトーマが刀と一緒に寝るって聞かないって」
「そ、そんなことはありませんけど!?」
お次は顔を真っ赤にして捲し立ててきた。こりゃ黒だな。
「しょ、証拠に兄さんと寝る時は持ってきてませんっ」
「そうなの?じゃあ今度から別に我慢しなくていいぞ」
「ほんとですかっ!?……あ」
「やっぱりか」
綺麗に鎌をかけられてぽかんとする綾華を見て笑う。珍しく頬を膨らませた綾華は俺の手を取って歩き出した。
「ごめんごめん、ちょっと気になってたからってからかいすぎた」
「つーん。いいですっ、私、磐岩結緑の方が兄さんよりも好きですのでっ」
自分でつーん言うとか可愛いかよ。これじゃ謝っても許してくれなさそうだし、ちょっと磐岩結緑より好き発言はいただけない。
「そういや綾華。この後の予定は?」
「……明日はおやすみですっ」
「おーけー。じゃ、ちょっと誘拐するか」
「えっ、わわっ!」
俺は綾華をひょいと横抱きにすると洞天の扉を開け、中に飛び入った。
そのまま邸宅の中を早足で抜ける。
「に、兄さん何をっ?」
「いや、ちょっと磐岩結緑の方が好きってのを撤回させてやろうかなってさ」
「あ、あれは言葉の綾で…きゃっ」
俺は綾華をベッドに放り投げるとマットレスに綾華の身体を押し付けた。前に台所でやった時と向きは違えど同じ構図だ。
ベッドの上に広がった綾華の綺麗な髪を手で梳いていると、綾華は両手で俺の胸を抑えてくる。
「い、いけませんっ、まだお外が明るいですのに…」
「大丈夫。直ぐに夜になるとは思うから」
言外の夜まで宣言に、綾華の瞳が期待に揺れる。
「ね、磐岩結緑と俺、どっちが好き?」
「…ば、磐岩結…んんっ」
蹂躙。
「…ちゅっ、ね、磐岩結緑と、俺。どっちがいい?」
「…はぁ、はぁ。…い、稲妻社奉行の令嬢としてこの程んんっ、ちゅっ」
さらに蹂躙。
「…ちゅ…、ね、どっちがいい?」
「…ぅ、……ん、っば、ばんがんんんぅ…!」
躾。
「…どっち?」
「お、おにいちゃん……」
「ほら、夜になったろ?」
終わり。
なにこれ(困惑)
あ、次回は宵宮とエウルア、刻晴の小話です。
誰の小話が良かった?
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綺良々
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綾華
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エウルア
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宵宮
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刻晴