職場の先輩がウチの飼い猫に似ている件   作:猫好きの餅

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今回、私が書いてる別作品「低カロリーなタフチーンの作り方を教えてください」のキャラクターがちょこっと出てきます。ご了承ください。


2話 船の中の影さん

 

 

 

☆☆☆☆

 

 

「えへへ、楽しみだなぁ〜」

「ふふ、そうですね。私璃月は初めてです」

「うちもや!花火大会も楽しみやなぁ〜」

 

 ついに海灯祭の前日がやってきた。昼頃に出発する定期船に綾華ちゃんや宵宮ちゃんと一緒に乗る。これに乗れば明日の朝に璃月港に着くんだよね。

 

 初めて乗るらしい大きな船に綾華ちゃんと宵宮ちゃんがキョロキョロしている中、綾人さんとトーマさんも談笑しながら船に乗り込んでるのが見えた。

 

「…おっ、猫又の嬢ちゃんじゃねぇか!久しぶりだなぁ!」

「ん?……あ、一斗さん!海灯祭に行くの?」

「おうよ!璃月港に行くのは初めてなんだが、なんでも向こうにゃ強え人がわんさかいるって聞いたんだ。そいつらと腕試しに行くのさ!」

 

 声をかけてきた、鬼族の荒瀧一斗さんは手に持ったカードの束を見せつける。その後ろで久岐忍さんが「いやそれ、私のデッキなんだが…」って呟いてたのは聞こえないふりをしておいた。綾華ちゃんと宵宮ちゃんも一斗さんと知り合いみたいで挨拶を交わしてる。一斗さんは周りを見回しながら声を上げた。

 

「んぁ?そういや夜叉公は来てないのか?」

「やしゃこー?…あ、迅なら来てないで?」

「マジか!?そりゃ残念だなぁ」

「はい。なんでも外せないお仕事があるらしいです」

 

 うんうん。結局雷神さま…影さんからの依頼ってことしか聞けなかったけど、今頃何してるんだろ。

 

 うう、迅くんもう会いたくなってきた。ちらっと2人の方を見ると同じことを考えてたみたい。わたし達はくすくすと笑いあった。

 

 

 

 

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

「迅さんっ、美味しそうな羊羹がありますよっ。いかがですか?」

「いえ、俺は大丈夫です。俺の分も影さんが食べていいですよ」

「本当ですかっ?ありがとうございます」

 

 璃月港行きの大きな船のVIP部屋。そこに俺と影さんは居た。璃月港で岩神、風神、草神と集まるらしい影さんの護衛依頼を受けたからそりゃ近くにいるべきなんだけど、さすがに同じ部屋ってのはアレだと思うんだけどな…。

 

「…〜っ!この羊羹、大変美味ですね。…迅さんも1切れどうぞ?」

「え、あ、はい。それじゃ1切れだけ…」

「く、口を開けてください」

「え!?いや別にそこまでしなくても」

 

 そして、何故だか知らないがなんか影さんの距離が近い。今も楊枝に刺した羊羹を食べさせようとしてきたのを楊枝ごと受け取った。

 

「何かあればなんでも言ってくださいね。神子から沢山本を借りてきましたので退屈はしません。……鍛錬が出来ない事だけは残念ですが…」

「ははっ、ここでやったら一撃で沈没しちゃいますね」

「む、迅さんの攻撃だってそのくらいの威力はありますっ。この船を撃沈できるのは私だけではありませんよ?」

「いや、さすがにこの船は無理ですよ。大きすぎます。やっぱオロバシ斬った影さんが…」

「いいえ、あなたも撃沈できるんですっ。師匠なのですから力量を見紛う訳がありません」

「……沈没だの撃沈だの、こんな所で物騒なことを言うのは辞めよ」

 

 そう呆れた声を出さながら部屋に入ってきたのは八重宮司。暇を潰しに来たのか座布団を摘み、俺を挟んで影さんの反対側にごろんと寝転ぶ。傍らに積まれてある八重堂の娯楽小説を取ると小さく欠伸をかました。

 

「鳴神大社の宮司が寝っ転がって本読んでていいんすか?」

「…ここは大社じゃないからの。それに、妾は璃月港に観光に行くのじゃ。どんな体勢で何をしていようと妾の勝手だと思わんか?」

「はいはい。……そういえば、影さんも娯楽小説を読んでいるのですか?」

「はい、神子に進められたものをいくつか。……この本はすごいですね。今の若者はああいうことをしているのですね…」

「……ちなみに、どういうのです?」

 

 俺はただ宮司に変なこと吹き込まれてないかを確認する為に聞いたのだが、直後後悔することになる。

 

「まずは、これですね」

「え?」

 

 影さんは突如、俺の胸元にしなだれかかってきた。そしてそのまま優しい力で後ろに倒される。仰向けになった俺に、影さんがゆっくりと覆いかぶさった。彼女の長い三つ編みが垂れて俺の首元を擽る。

 

「ちょ!?」

「…そして、こう…です」

 

 影さんは俺の顔の横に手をついてふんすと満足気な顔をした。どうでもいいが、四つん這いになったことによって影さんの着物の胸元が危うくなって来ている。重力がかかる方向が変わったせいで手を着いたときにゆさっと揺れたのに思わず視線が持っていかれた。

 

「……影さん、これはなんですか?」

「おや、知らないのですか?この本によると家の中で会った若者どうしの挨拶…だと書いてあります」

「……影さん。あっち見てください」

 

 俺が指さした方を見た影さんの視線の先はお腹を抱えて蹲り、ぴくぴくと震える八重宮司の姿が。顔を上げた宮司の顔に「ほんとにやったよコイツ」的な事が書いてあった。影さんの顔がみるみる赤くなる。

 

「…なっ……!……み、…神子っ……!?」

「ふっ、………ぶふっ……わ、わっぱよ。…説明してやって…くれぬか…」

「…その前に、この体勢を何とかしないと」

 

 要は、俺は今影さんに床ドンをされている形になる。正直に言えば絶景に他ならないのだが、雷神に床ドンされたとか天領奉行が聞いたら本当に俺ぶっ殺されそう。

 

 俺はとりあえず腹筋を使って上の影さんごと起き上がった。しかし影さんはまだ固まったままで、俺が起き上がったもんだから身体が密着してしまった。顔の横に置いてあった彼女の手はそのまま俺の首に回される。

 

 綺良々が好みの体勢、対面座が完成してしまい俺は大いに焦った。

 

「影さんっ、すみませんっ!すぐどくので…!」

「い、いえっ、お構いなくっ」

「どういうこと!?」

 

 俺は影さんを離そうとするが、首に回った腕がそのままのせいで全く上手くいかない。そこで影さんの顔を見た俺は驚愕する。

 

「………迅さん…」

「え、影さん?」

 

 どうしたことだろうか、影さんがポーっと、俺の顔を見つめている。まるで熱に浮かされたみたいで、俺の顔だけを、朱に染まった顔でじっと見てくる。

 

 八重宮司に助けを求めようと隣を見て……っていねぇ!?ほんとに何しに来たんだあの人!?

 

「…えい」

 

 そして抵抗虚しく、俺は再度影さんに押し倒された。そこにまたもや覆いかぶさってくる。

 

「……迅さん、私のこと…綺良々さん達からお聞きしましたか?」

「…と、いいますと?」

「…ふふっ、その反応をするということは、彼女たちは気を使ってくれたのですね。この気持ちを自覚させられて初めて、こんなに密着してみて…とてもいいものだと気が付きました」

「……え、影さん?」

「…100年も、もう待てませんっ……私の気持ち、…受け取ってください」

「あっ、ちょ………んんっ!?」

 

 俺は今何をしてる??

 

 海灯祭の前日に、璃月港行きの船の中で。

 

 

 影さんに押し倒されてキスされてる。

 

 

 想定外とかを超えて夢かと疑うが、俺の視界には目を閉じた影さんの綺麗な顔が映っているし、くちびるに感じる感触は極上だ。

 

 少しして、唇が離れた。俺は口を手で押えて目を見開くことしか出来ない。

 

「な、っなな、な何を…!?」

「ふふ、やはり何も聞かされていなかったのですね。……前にあなたの洞天に訪問させて頂いた際、貴方の恋人全員から……迅さんとの仲に加わることの許可を頂いていたのです」

「………っと、待ってください。……え、…ってことは…?」

 

 き、綺良々達が許可を出したって、そりゃまるで、影さんが俺の事を…。

 

「その考えの通りです。……私は貴方に恋慕をしています。一国の神に求愛されるなんて、いくらあなたでも初めての経験でしょう?」

「そ、そりゃそうですけど……えぇ?……い、いつから…?」

「明確にはわかりませんが、最初はーーー

 

 影さんは俺の馴れ初めから気になっていたことを話してくれた。鍛錬を続ける度に成長していく俺に好意が募っていき、霧切を直しに来た時に「また来る」と言った俺に落とされたらしい。………ってそんなんで納得できるかぁ!?

 

 え!?妖怪や騎士、璃月七星に飽き足らず、神様にまで告られたんだけど!?それに綺良々達がもうゴーサイン出してるって……。前に「影さんならいいよ?」って言われたの冗談じゃなかったのかよ!?

 

 というか、まだ影さんに押し倒された体勢のままなんだけど。影さん、覆いかぶさるんじゃなくてもう俺のに身体を預けちゃってるんだけど。こんなに穏やかに笑う影さん見たことないんですけど。

 

「……といっても、雷神の眷属になる以上どうやっても深い関係になるしかありませんし、返事などは特にしなくても大丈夫です。私も言えてスッキリしましたし」

「そ、そうですか…」

「ですが、その……貴方は私のことをどう、思っているのですか?」

 

 返事いらないって言ったやんけ。じっとこっちを見て聞いてくる影さんに突っ込むに突っ込めず。俺は正直に告白した。

 

「最初は怖かったですけど、接しているうちに可愛いなぁと思うことが多くなりました。めちゃくちゃ魅力的だとおもいます」

「…っ、そ、そうですか…」

「…ですが、俺は既に5人も恋人がいます。そんな甲斐性なしがいいんですか?」

「関係ありません。私は貴方が好きなんです」

「……そうですか…」

 

 あー、俺はまた、なんてことを。思わず顔を両手でおおう。

 

「本当は、まだ心の中に秘めておこうと思っていたのです。……ですが、貴方の顔を見たら、そんなこと…どうでも良くなってしまいました。…ふふ、ままなりませんね」

「その、本当に俺で…?」

 

 俺がポロリとそう零すと、むっと影さんは頬を膨らませた。

 

「わからないのでしたら何度でも言いますよ。それにもうすぐ貴方は私の眷属になります。そうしたら何時でも一緒です」

「…わ、わかりました。わかりましたから…!」

 

 だから、ちょっと体勢をそろそろ戻したいんですけどねぇ…!いくら綺良々立ちから許可が降りたとしていても、安易に増やす訳にはいかないんだ。

 

 ……もう、外堀埋まりきって、逃げ道ないけど……。

 

「ふふ、この気持ち…永遠には無いものですね。……いえ、むしろ誰しもが持てる、永遠の心なのではないでしょうか。……迅さん…」

「恋心が、永遠…ですか?」

「はい。中にはむしろ変わりゆくものと言う人もいるでしょうが、私にとってはもう不変の感情です」

「……っ、そうですか」

「ふふっ、顔が赤いですよ?」

 

 胸に両手を当てて、まるで宝物を手に入れた子供のような笑みを浮かべる影さんにしばし見とれてしまった。

 

「……ぁあ、これは凄いです。貴方の顔を見るだけで…こんなに…」

「…影さん」

 

 影さんの手が伸びて、俺の胸板を触る。熱に浮かされた様な影さんは、もう一度顔を寄せて…。

 

「………」

 

 さっきから気配がしていた方に、俺と同時に顔を向けた。視線の先にはメモ片手に鼻息を荒くしている八重宮司が。

 

「………んんっ、つ…続けても良いぞ?」

「……影さん、どうしてくれますかこの狐」

「ひとまず、折檻しましょうか」

「ひぇっ!?ま、待て!どちらかと言うと妾がいるのに乳繰り始めたのはそっちじゃろうが!それを創作に転用して何が悪い!?」

 

 ばたばたと後ずさりする八重宮司を影さんが取り押さえた。彼女の手から落ちたメモ帳に挟んであった羽付きのペンを取り出す。

 

「……このペン、おもしろいものがついてるじゃありませんか」

「や、やめんかっ……妾は鳴神大社の宮司じゃぞっ、妾に何かしたら天罰がっ」

「そういえば、宮司、前にも綺良々にいろいろと悪知恵を吹き込んだとか。そのお礼もしたかったんですよね。それに、ここには貴方の同僚になる男と上司しかいませんよ?」

「迅さん、やりなさい」

「御意」

「ひ、ひぃぃ」

 

 元素で静電気をつけた羽で宮司を擽るのはなかなかに楽しかった。とだけは言っておこう。

 

 

 

 

 

☆☆☆☆

 

 

 

「ここが璃月港かぁ〜、モンドとはまた違うなぁ」

「建物の造形が素敵ですね…」

「そうですね。人々も活気があって良い雰囲気です」

「ここが世界最大の貿易都市か…」

 

 初璃月港の宵宮ちゃんと神里兄妹、トーマさんがそれぞれ声をあげる。

 

 わかるわかる。わたしも最初は大きな建物にびっくりしたもん。船を降りて港から坂をおりると璃月港の南側のチ虎岩が見えてきた。通りのあちこちに海灯祭の飾りがあって前見た時と印象が違う。

 

 物珍しそうに周りを見回す稲妻の人達を連れて歩いていると、見覚えがあるピンクの髪が見えた。

 

「あれ、あそこにいるのって妖狐さま?」

「おや、本当ですね。宮司様も海灯祭に来られたのでしょうか」

 

 見ると妖狐様は露店で売ってる本当に興味津々みたいだった。わたしは挨拶をしようと話しかけてみる。

 

「妖狐さま。こんにちはっ」

「っ!?」

「うにゃっ?」

 

 ふつーに声をかけたつもりだったんだけど、妖狐さまの肩が跳ねてこっちもびっくりする。どうしたんだろ。

 

「…と、誰かと思えば綺良々では無いか。お主も海灯祭に来たのか?」

「はいっ。綾華ちゃんや宵宮ちゃんと一緒に来ました。…神子さまはおひとりで来られたのですか?」

「……連れがいないこともなかったのじゃが、さっき別れてしまったのじゃ」

 

 別れたって、誰と来たんだろ?わたしが首をかしげていると後ろから来た綾人さん達も神子様にあいさつをする。

 

「宮司様、ご無沙汰しております」

「おお、神里の。社奉行総出で観光か?」

「はい。それに璃月七星と西風騎士団と色々とありますので」

「ああ…童を橋渡しにするというアレか。ご苦労じゃの」

「んん?迅くんを橋渡し?」

 

 初耳の情報。綾華ちゃんと宵宮ちゃんの方を見ても2人とも知らないみたい。そんな私たちに神子さまはクスリと笑った。

 

「なんじゃ、奴から聞いておらんかったのか。なんでも雷神の眷属に新しくなるらしいぞ?」

「ええ!?」

 

 そんなことになってたの!?

 

「若、そうだったのか?」

「ええ。特に稲妻と璃月は貿易面で結束を強めておかないと行けませんからね。既に将軍様から許可は出ているんだよ」

「にしても雷神の眷属て……びっくりやわ」

 

 もしかしたら迅くんが言ってた依頼ってその事に関係するのかも。綾華ちゃん達も同じことを思ったみたいで表情が明るくなった。もしかしたら、迅くんも璃月港に来てるってこと?

 

 ここ最近、みんな迅くん中毒が悪化したように感じるよ。最後に話してから一日半しか経ってないけどもう寂しいもん。綾華ちゃんなんて暇な時に磐岩結緑をずっとなでなでしてたし。

 

 甘雨さんと用事があるらしい妖狐さまと、そのまま凝光さんに挨拶に行くらしい綾人さんとトーマさんと別れて、3人で璃月港の北側「緋雲の丘」に続く橋を渡っていたら、橋の向こう側から声が聞こえた。

 

「綺良々ーっ」

「待ってたわよ」

「刻晴さんっ、エウルアちゃん!」

 

 わたしはだっと走り出し、手を振ってくれてたエウルアちゃんに飛びついた。宵宮ちゃんも続いて刻晴さんに抱きついてる。

 

「わっ、…もう、どうしたのよ」

「えへへ、こっちで会うのは久しぶりだったから」

「いつも洞天であってるじゃない」

「宵宮…ちょっと暑苦しいわよ…」

「こっちで会うのは初めてやなっ」

 

 遂にちゃんと5人が揃って一気に騒がしくなった。2人に迅くんが雷神の眷属になるってことを伝えたんだけど、刻晴さんは七星だからやっぱり知ってたみたい。

 

「海灯祭、初めて来たけど前日なのにすごい賑わってるね」

「ですね。色々な国の方が沢山居ます…!」

 

 周りを見るとモンドだけじゃなくてスメールやフォンテーヌの人も結構いる。……って、あれ。あの人…?

 

「ん、どうしたんや綺良々ちゃん?あの子が気になるん?」

「見たところスメールの方ですけど、お知り合いですか?」

「うん、前に配達で行った時に知り合いになったんだ!スメールですっごい有名な踊り子さんなんだよ」

 

 わたしはキョロキョロと周りを見回してるその人に声をかけた。

 

「…ニィロウさん?」

「……ん?……あっ、配達員さん?どうしてここにいるの?」

「海灯祭を楽しみに来たんだ〜……ニィロウさんは一人で来たの?」

 

 振り返った赤茶のロングヘアに水色の瞳のめちゃくちゃ可愛い女の子、ニィロウさんはわたしを見ると目を見開いた。

 

「ううん、クー…幼なじみと来たんだけど…はぐれちゃったみたいで」

「…道に迷ったの?なにかお困りかしら」

 

 たははと後頭部をかきながら言うニィロウさんに刻晴さんが話しかけた。

 

「…連れとはぐれたなら、この橋を渡って南下したところにある広場に目印がある場所があるの。この時期は外から来た人達で迷いやすいから、至る所にはぐれたらそこに行くように案内板が出ているはずよ」

「…あ、本当ですか?ありがとうございます!」

「ね、エウルアちゃん」

「…そうね。…ねぇ、良かったら私たちもそこまで一緒に行くわ」

「えっ、そんな、悪いですよ!元来た道を引き返すみたいになっちゃうんじゃ…」

 

 エウルアちゃんの提案に首を横に振るニィロウさんに、宵宮ちゃんと綾華ちゃんも微笑みかける。

 

「ええてええて!うちらも観光できてるさかい、色々見て回りたいんよ」

「はい。このでお会いしたのもなにかの縁。ご一緒しますよ」

 

 綾華ちゃんと宵宮ちゃんも頷いたところで、ニィロウさんは深く頭を下げた。

 

「ありがとうございますっ!」

 

 

 

 

 もう一度チ虎岩に戻る道のりの間に、わたし達とニィロウさんは速攻で仲良くなった。

 

「スメールで踊り子をやっているの?ステージで踊るんでしょ?すごいわね」

「そんなことないですよ。応援してくれる人もいるので、踊るのが楽しいんです。エウルアさんも踊りをやってるんですか?」

「ええ。家がそういう稼業でね」

「私も、稲妻式になりますが少しは」

「わぁ…!」

 

 踊りができるエウルアちゃんと綾華ちゃんへの食い付きがすごい。わたし達は踊れないからなぁ…前にちょろっと教えてもらったことはあったけど、なんでかふたりみたいに綺麗に踊れないんだよね。

 

「は、花火持って回ったらそれっぽくなるかもしれへん」

「そりゃ目線が花火の方に行っちゃうからね……私は、剣があったら一応踊れるわよ?」

「それ剣術じゃ…?」

 

 そんな話をしながら歩いていたら広場に着いた。その中を覗いたニィロウさんの表情に火が灯る。

 

「…あっ、クーファっ!」

「…ニィロウ!」

 

 向こうから青い髪の日焼けした男の子が走ってきた。その子を見たニィロウさんも花が咲いたように笑う。周りに向けるものとは種類が違う笑みに「おっ」となるわたし達を尻目に、ニィロウさんは彼に駆け寄った。

 

「ごめんな。はぐれちゃって」

「ううん、大丈夫だよ?…親切な人達がここまで案内してくれたの」

「そうだったのか…。すみません、ありがとうございました」

 

 こっちに頭を下げる男の子に「気にしないで」首を横に振るわたし達。改めてお礼を言ってくれたニィロウさんに他を振ると、お辞儀をしてくれた2人は、身を寄せ合いながら人混みの中に消えていった。

 

 

 

「ねぇ、あの2人…」

「間違いなく付き合ってるわね…」

「…たしか、幼なじみとか言っとったなぁ………」

「……ええ。…微笑ましいですね」

 

 ……あ、ああぁ〜…。

 

 ニィロウさんたちを眺めていたら、猛烈に迅くんに甘えたくなってきた。みんなで集まれて間違いなく楽しいんだけど、迅くんがここにいたらもっともっと楽しくなったと思う。

 

 多分、今みんなおんなじ事を考えてると思う。

 

「…会いたいなぁ」

「…そうね」

 

 なんか、急に寂しさに襲われてちょっと涙が出そうになったわたしの背中を刻晴さんが摩ってくれた。

 

「多分、迅は璃月港のどこかにいると思うわ。絶対会えるわよ」

「…うん、ありがとう」

 

 みんなを見るとやっぱり同じこと考えてた。そうだよね。会いたくなっちゃうよね。

 

「刻晴さんは、凝光さんとかから迅くんのこと聞いてない?」

「いいえ全くよ。多分、凝光も知らないんだと思うわ」

「…うーん、やっぱり洞天で待つしかないのかなぁ」

「でも今日、洞天に来るとも限らんで?」

「…うぅ…そうだよねぇ…」

 

 璃月港の街並みも綺麗だけど、わたし達の迅くん不足が深刻になってきた。……歩きながらみんなでそれとなく探してみるけど全然いな……お?

 

 

 

 

 

 

「……ねぇ、綺良々」

「うん」

「兄さんは、将軍様からの大切な依頼に務めているんでしたよね?」

「そうみたいだね」

「……へぇ、アレがその、大切な依頼ってことかしら?」

「ちょっち、あれは……後で話聞かなあかんな」

 

 

 それぞれ表情を消したわたし達の、目線の先。

 

 

 

 

 めちゃ綺麗な、璃月の服を着たお姉さんと腕を組んで歩いている迅くんに、わたしは思わず口角がつり上がった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ねぇ迅くんっ?……ホントにその雌、誰なのかな??




 



次回、迅くん、死す。
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