綺良々、誕生日おめでとおおおおおおおおお!!!
窓から差し込む陽の光で、わたしは目が覚めた。布団を眠気と戦いながら押し……のけ……て…………。
ていく2っ。
「………んぅ……」
陽の光が目にあたって、わたしは目を覚ました。隣をみると誰もいない。あ、そうだった。今回はエウルアちゃんの日だったね。
一気に身体を起こすとぐ〜っと身体を伸ばす。猫の時でも人の時でも、起きた時のこの動きは変わらない。あくびを我慢しながら寝床から出て、フラフラとした足取りで扉を開けて部屋を出ると。
「ん、綺良々ちゃん、おはようさん」
「おはようございます綺良々さん。朝食はもう少しで出来ますので」
「ふぁ〜っ、おはよぉ。宵宮ちゃん、綾華ちゃん」
今日の朝ごはん当番らしい2人が振り返りながら挨拶してくれたので我慢できなかったあくびをしながら返す。
「あれ、刻晴さんは?」
「刻晴さんなら自分の部屋やで?入っていく時迅のあれ持ってたから入らん方がいいと思うわ」
なるほどね。何をしてるのかは刻晴さんの名誉に関わるから言わないでおくけど、そういえば刻晴さんの部屋、迅くんの隣だもんね。色々聞こえちゃうのかな?
ちょこっと目が覚めてきたわたしは台所の2人の目を盗んで迅くんの部屋にするりと侵入した!
「……すぅ………すぅ」
「………ん……」
部屋の奥に置かれた大きめのベットには、あどけない顔で眠る迅くんと、その迅くんに腕枕されてる幸せそうな寝顔をしているエウルアちゃんがいた。今日はエウルアちゃんが添い寝をする日なんだよね。
「……さて、おじゃましまーす(小声)」
身を寄り添って眠る2人はわたしから見ても可愛い。なのでわたしはその間に身体を滑り込ませました(脈絡)。
身体の全面が迅くんと密着する。顔を彼の胸に押し付けて息を吸うと、大好きな彼の匂いがいっぱい感じられて、それだけでもう幸せな気分になる。
わたしがもっと迅くんを感じられるように腕を広げたら、左手にとてつもなく柔らかいものが着弾した。こ、この体積と感触は……エウルアちゃんのおっぱいだぁ!
「…んっ、……もう、迅…朝からなにしてんのよ」
エウルアちゃんは迅くんに触られたと思ってるみたいで、ちょっと怒りながらも満更じゃない。ちょっと腹が立ったわたしは、エウルアちゃんのブラトップの中に手を突っ込む。……おぉ〜生だ(直球)。
「……あっ、んんっ……アレだけしたのに…まだ満足してないの?」
やっぱり刻晴さんがああなった原因はこの2人だったみたいだね!
寝ぼけまなこのエウルアちゃんは胸を鷲掴みしてるわたしの手を取って、さらに触らせてきた!……おぉ、すっご。やめ時分からないけど、とりあえずすごい。
「ん……んぅ、朝か…?」
あ、迅くんが起きた。迅くんは目を開け、わたしに散々胸を触られて、ちょっと火照ってるエウルアちゃんを見て目を丸くした。
「え、エウルア?…どうしたその顔」
「どうしたって、迅が触ってきたんじゃない…」
「触った?」
「しらばっくれたって無駄よ。……もう、こっちはその気なんだから」
エウルアちゃんは手を迅くんのお腹の方に伸ばした。……んだけど、その前になんとわたしがいるんだよね。迅くんの迅くんを触ろうとしたエウルアちゃんの手はあえなくわたしのお腹に着弾する。
「……あ、れ?……迅、いつの間にお腹こんなに柔らかくなったの?」
「……多分、触ってたのコイツじゃね?」
迅くんのセリフと同時に、脇の下に手が入ってそのまま上に持ち上げられた。布団に覆われた景色から、目の前に驚いた顔のエウルアちゃんに切り替わる。
「……な、き、綺良々っ?」
「お、オハヨ?」
エウルアちゃんはようやく全部私がやってたことに気がついたみたい。顔がみるみる赤くなった。
「……迅、この猫どうしてくれようかしら」
「ひとまず、おしおきしないとな。ほら俺が抑えてるから」
「わかったわ」
「え、え?な、なにするつもり?え、えっちなことはだめだよ?」
「だ、そうだけど?」
「飼い主命令。好きにしていいよ」
「にゃ、にゃあああああああ!?」
エウルアちゃんの手は当然、わたしの胸に伸びてくるわけで。
朝ごはんが作り終わった2人が入ってくるまで、エウルアちゃんのお仕置は続いた。
「うぅ…酷い目にあった」
「こっちのセリフよ」
「見かけないと思っとったら、そんなことしてたんか……」
「油断も隙もないです」
「そんなこと言って、2人だって同じことすると思うわよ?」
朝食後、じとーっとわたしを見てくる宵宮ちゃんと綾華ちゃんにどこかスッキリした顔の刻晴さんが言う。そこに全員分のお茶を持った迅くんが台所から戻ってきた。
「……布団潜り込み禁止にするか?」
「ええっ!それは殺生だよ迅くん!」
「そうやで!そこまでしなくてもええやろ!」
「禁止はやりすぎですっ!」
「肩組むのが早すぎるわね…」
一致団結したわたしたちを見たエウルアちゃんがこめかみを抑えてる。
そんなわたし達に迅くんが飲み物を渡してくれた。
「宵宮と綾華は稲妻茶な。んでエウルアがコーヒーに刻晴が早茶、綺良々が牛乳」
「ありがとな」
「ありがとうございます」
「ありがと。……なんでコーヒー飲みたいってわかったの?」
「私も。ちょうど早茶を飲みたいって思ってたところなのよ」
「まぁ、いつも見てるからな〜。2人とも今日は仕事だし、飲みたいだろうなって」
「わたしのは?」
「昨日買い物した時牛乳見てたろ?風呂上がりの時も飲みたそうにしてたけどみんなに合わせてお茶飲んでたから」
はい、こういうところなんだよね迅くんはほんと。みんなも頬を染めて俯いてるし。こういう気遣いがやっぱり嬉しい。
迅くんはわたしの隣の席に座り直しながら尋ねてくる。
「宵宮と綾華は午後からだっけ」
「せや、午後から綾華ちゃんと春祭りの下見をするんや」
「はい、花火の配置を変更したいとの事で」
「へぇ、まだ全然先なのに頑張るなぁ。…刻晴は海灯祭の準備?」
「ええ。今年は音楽祭をやるからね。そのステージ作りの管理を任されてるの」
「音楽祭かぁ〜、わたし歌は全然だから、歌える人は羨ましいなぁ」
「だ、そうだけど?」
「ちょ、黙ってるつもりだったのに」
エウルアちゃんに流し目を送られて、迅くんは頬をかく。えっ!迅くん歌歌えるの?
「兄さん、お歌を歌えるのですか?」
「まぁ、ちょっとな。モンドの飲み会で、試しに歌ってみたら評判だっただけだよ」
「へぇ〜、意外やなぁ。こんど聞かせて見せてや」
「やだよ、恥ずかしい」
「迅の歌……気になるわね」
わたしもすっごい気になる。迅くんが歌を歌うところはあんまり想像出来ないけど…、多分惚れ直すね絶対。
横目で見ると、綾華ちゃんが稲妻の歌唱祭を本格的に考え始めたのが見えたけどわたしはむしろ応援した。宵宮ちゃんとも目が合ってサムズアップ。親指が立てられる。
「それを言うなら、お前らも歌ったらかなり上手いんじゃないか?全員いい声してるし」
『!?』
「な、なんだよ」
あんまり声を褒められた経験がないものだから、みんなで一斉に迅くんの方を向く。そしてみんなこれみよがしに咳払いをし始めた。
「そ、そうなの?私の声……良いのかしら」
「おう……その、聞いてて気持ちがいい」
「そ、そう…」
エウルアちゃんが方にかかる髪をくるくる弄りながら聞いて、迅くんの返答に照れてる。
その横から宵宮ちゃんと刻晴さんも尋ねる。
「う、うちは?」
「私はどうなの?」
「宵宮は元気な声音だよな。でも芯は綺麗よりだから、歌ったら印象変わっていいんじゃないか?刻晴は、キリってしてて、聞くといい意味で背筋が伸びるよ」
ヤバい、迅くんが女の子赤面製造機になってる。容姿とかは結構褒められ慣れてたところがあるから、声を褒められるのは新鮮で、顔が熱くなっちゃうんだろうな。
「に、兄さん。私は……」
「綾華は最強だよ」
「さ、最強なんですか!?」
食い気味に答えた迅くん。「そ、そそそんなことは」とか赤面する綾華ちゃんに真剣な顔で言う。
「綾華の声は、マジテイワットの宝だと思う。綺麗全振りみたいな透き通る声だから、歌よりも詩とかが似合うな」
「あ、あぁありがとぅ…ござぃます」
あーあ、綾華ちゃんがふにゃふにゃになっちゃった。あれだけ褒められたら誰だってああなっちゃうよ。
あと言われてないのはわたしだけ……。ちょっと期待してもいいのかな?
「わ、わたしは?」
「綺良々は、もう、あれだ。俺が死ぬ」
「どういうこと!?」
予想外の返事にわたしは立ち上がった。え!?わたし声で迅くんのこと殺せるの!?
「そ、そんなにわたしの声、だめなの?」
「いや違う!逆逆!そんくらい好きだってことだよ!」
「ふにゃっ!?」
そういえば前にも好きって言ってくれてた!一気に顔が熱くなって扇いでるわたしにみんなが羨ましそうな目線を向けてくる。ふふーんっ、やっぱ正妻パワーだよね!
迅くんはうんうんと頷きながら続ける。
「綺良々はこう、ちょこちょこ漏れる声が良いんだよ。もちろん普段の声も良いんだけど」
「う、…なんかちょっと恥ずかしいよ…」
そんなふうに思われてたの!?ちょっとこれから恥ずかしいかも…。へ、変な声出てないよね?
「うう、みんなもそう思うの?」
「まぁ、同感ね」
「ちょこちょこ猫語が出るのはかわええなぁって思っとるで?」
「恥ずかしい……」
顔が熱いよ!みんなにもそう思われてたなんて。これから普段の声に気をつけなきゃ……。
なんだか最近、みんなにも頭を撫でられることが増えた。もちろん気持ちいいんだけど、なんかわたしを見る目がどんどん猫に寄って行ってるような気がするよ…?
「迅く〜ん♪」
「わっ、どうした?」
「えへへ…甘えたいだけ〜」
みんなが出かけて迅くんと2人きりになったわたしは、ソファに座る彼の後ろから背もたれを超えて抱きついた。首筋に頬擦りしながら彼の匂いを堪能する。
「久しぶりに2人きりだね」
「ああ。最近みんなドタバタしてたからな。綺良々と一緒に配達することもなくなっちゃったし」
「ね。だから、充電させて?」
わたしはこれ以上ないってくらい迅くんの身体に自分の身体をくっつける。体勢も後ろからじゃなくて、正面から抱き合おうとして回り込んだんだけど。
迅くんの足の間に座らさたれたわたしはぱちくりと瞬きをした。
「迅くん?どうしたの?」
「いやさ。こうしていつも抱きつかれることが多いから、俺からもやろうかなって」
そう言った迅くんは、わたしのお腹に手を回して優しく抱きしめて来た。身長差のせいで迅くんの体の中にすっぽりとわたしの身体が収まる。
「な、いいだろこれ」
「う、うんっ、……あったかいぃ〜」
ああ、幸せだなぁ。迅くんもリラックスしてるみたいで、わたしの肩に顔を置いて、しっかりと回した腕に力を込めてくる。
わたしが迅くんの手を取ると、自然に指が絡んだ。
それを上機嫌で眺めていると、この体勢……何度か経験あるかもって思えてくる。
「ね、そういえば……この体勢、初めてじゃないよ?」
「ん、あれそうだっけ?いつしたっけ……?」
「えっと、………その、……おしおきの時…」
「あっ…………そ、そういえばそうだな」
おしおき。わたしがイタズラして、それの仕返しをされるのがわたしは好きなんだ。
……正直、ちょっとうずうずしてきたけど、まだお昼だもん。まだ早いよ。
わたしはなんとか我慢して、服の中に導こうとしてた手を元の位置に戻した。
「……迅くん」
「……なんだ?」
「好きだよ」
「……ああ。俺も大好きだ」
迅くんが頭を優しく撫でてくれる。わたしもそれが嬉しくて堪らなくて、迅くんの手に頬擦りをした。
どれくらいそうしてただろ。でも、本当に永遠にできる。なでなでをされながら、わたしは朝のことを思い出した。……わたしの声、そんなに好きなんだ……。
わたしは振り返りながら迅くんの耳元に口を寄せる。
「……すきっ」
「っ!?」
わぁ、効果てきめん。迅くんの身体がビクッと跳ねた。
「えへへっ、わたしの声が好きって言うの、本当だったんだ」
「あ、当たり前だろ。好きな人の声だぞ」
「……わたしも迅くんの声、だいすきだよ?」
そう言ったわたしにちょっとイタズラっぽい顔になった迅くん(何その顔好き)は今度はわたしの耳に口を寄せた。
「……ありがとな」
「ひゃぅぅ」
やっぱり好き。体に電流が走ったみたいになったわたしの我慢が勢いよく外れる音がした。
もっと声を聞いて聞かせるために、迅くんの膝の上で反転する。この、向かい合って抱き合う体勢すごく好き。身長差が埋まって、目の前に迅くんの顔が来るのも好き。
「迅くん…」
「お、おい。まだ昼間だぞ?」
「……ん、だってチャンスは今しかないもん」
わたしは肩に置かれた迅くんの手を取ってちゅーする。
「夜になったらみんな帰ってきちゃう。………ね」
「な、なんだ?」
「久しぶりに、一緒にお風呂はいろ?」
「わ、わかった。わかったからちょっ!服を脱がすなァ!」
もうダメ。わたしは止まらないから。後でたっぷり…おしおきしてね?
迅くんの露になった胸板を撫でながら、わたしは微笑んだ。