職場の先輩がウチの飼い猫に似ている件   作:猫好きの餅

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お待たせしました。

今回、過去最多の登場キャラ数かも。


4話 宴会は人数が多い方が楽しいよね

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

「迅くんっ」

 

 綺良々達に見つかり月海亭に連行された俺は、中に入るなり飛びついてきた綺良々に瞬きをする。

 

 てっきり折檻されると思ってビクビクしてたんだけど、俺の胸に顔をぐりぐり擦り付ける綺良々に戸惑う。他の面々を見ても、怒っていると言うよりは俺に会えて安心しているような顔をしていた。

 

「……えっと、その。ごめんな…。合流するのが遅れて」

「……別に気にしなくていいわよ。迅のことだし、旅人といたのも何か理由があるんでしょ?」

「あれ、怒ってないのか?」

「あははっ、あれは影さんと歩く迅を見つけた時にみんなでやろやーって話してたんよ。…びっくりしたやろ?」

「ふふ、ごめんなさい。驚かれました?」

「寿命が縮んだよ…」

 

 まだ離れない綺良々の頭を撫でながら、安堵の息を吐く。イタズラが成功して喜んでる宵宮と綾華に苦笑していると、背中から誰かがくっついてくる。肩越しに振り返ると、水色の綺麗な髪が見えた。

 

「……で、任務って言うのは影さんの護衛だったの?護衛ってよりもデートに見えたけど?」

「……あれは八重宮司の思いつきでな……。影さんもノリノリであんな感じに……そういえば、途中影さんが変装解いちゃったけど街は大丈夫だった?」

「無事、大騒ぎだったわ。今は落ち着いてるけど、人の流れが変わって大変だったんだから」

「ごめん。助かったよ」

 

 もう、と腕を組んで言ってくる刻晴にお礼を返す。どうやら仕事を増やしてしまったようだ。

 

「………で、なんで蛍ちゃんは迅と一緒に居たんや?それも任務と関係あったん?」

「ん、私は普通に誘われただけだよ?」

『え』

「ちょっと待てっ!訳があるんだってば!」

 

 蛍の発言にまたもや空気が凍りそうになった。心無しか綺良々とエウルアの腕の力が強くなったような気がする。……今俺、2人に命握られてない?

 

 俺は、みんなに「誰にも言うなよ」と釘を刺すと、説明を始めた。

 

「今、璃月港に風神と草神も来てるんだよ」

「ええっ!ほんまなん!?」

「バルバトス様が……?」

 

 璃月七星の刻晴も知らされてなかったらしく、目をかっぴらいて驚いている。「あー、そんなこと言ってたような気が」と蛍が言っていたので、神達だけで話が組まれてたんだろ。

 

「だから、影さんも璃月港に来たんだよ。……で、草神様と話したんだけど、……蛍お前、また変な事吹き込みやがったな」

「えー、事実を言ったまでなんだけど」

「少しは包めや。神の口から『ハーレム野郎』って言葉が出てきた上、意味尋ねられた俺の身にもなれ」

 

 だから、なんかやり返す為に一旦誘ってみたんだと俺は続ける。げ、と後ずさりする蛍を他所に、周りから安堵の息を吐く音が聞こえてきた。

 

「……で、綺良々とエウルア?……そろそろ離れて欲しいんだけど」

 

 今の会話も全部前後を綺良々とエウルアにサンドされながら話しているせいでなんとも締まらない。渋々離れた2人に入れ替わるように、今度は綾華と宵宮も抱きついてくる。

 

「……みんな、迅と会えなくて寂しがってたんだから。それくらい許してあげて」

「……そっか。ごめんな」

「んーん。迅くんが謝ることじゃないよ。…でも、こうして会えて良かったっ」

 

 スペース的に空きがなくて抱きつけない刻晴の頭を撫でる。目を閉じてそれを受け入れる彼女は、そういえばと片目を開けて尋ねてきた。

 

「神が集まるって言ってたけど、岩王帝君は居ないのよね。みんなでお墓参りとかしてるのかしら」

「…あー、それなんだけどさ」

 

 俺は蛍に視線を投げかける。蛍は目で「ま、教えてもいいんじゃない?私は責任とらないけど」と言ってきたので頷きを返す。事実、鍾離先生から刻晴には話していいと許可も貰っているし、このまま秘密にして置く方がアレか。

 

 俺は綾華と宵宮を優しく離して、刻晴に手を出す。

 

「……刻晴、ちょっと付き合ってくれないか?」

 

 

 

 

 

 

 

「ど、どうしたのよ?急に誘ってくれるなんて」

「どうせこの後着替えに行くんだろ?ちょっと話したいこともあるし、一緒に行こうかなって」

 

 俺を尾行している間に大抵店は回っちゃったらしい他の面々は一旦洞天に一休みに行った。その間、俺は刻晴の手を引いて月海亭横の浮遊石に乗る。

 

 どうやらコレも仙力で操作可能のようだ。個人的な内緒話をしたいので申し訳ないが運転手の人と代わり、俺が舵を取る。

 

 浮遊石が浮き上がったところで、刻晴が袖を引いてきた。

 

「それで、話って何?」

「ああ。流石に刻晴だけ知らないのはあれかなって。話す前に、コレも他言無用で頼むよ」

「今日は内緒話が多いわね……わかったわ。それで?」

「実は、岩王帝君…死んでないんだよね」

「…………………は?」

 

 変に溜めるのはやめてスっと言った俺の言葉に、刻晴が固まった。翻ったツインテも相まって結構面白い。

 

「………えっ?……ど、どういうことよ!?」

「まぁ、ちょっと七星としてはあれな話なんだけどさ……」

 

 俺は、あの時の岩王帝君殺害騒動の真相を掻い摘んで説明した。

 

「……まぁ、なるほどね」

「意外と納得早いな」

「もともと、仙人を敬わない思想だったからね。その存命な岩王帝君は私だから話していいって許可くれたんでしょ?」

「うん、それもあるし、俺や甘雨や仙人連中は知ってて俺の身内が知らないのも変かなって」

「……ちなみに、今岩王帝君は何をしてるの?」

「隠居生活を満喫中だよ。だから誰が、までかは流石に教えられない。ゴメン」

 

 刻晴は俺の言葉に「ま、しょうがないわね」と返すと、何やら俺の頬を突っついてきた。

 

「な、なんだよ」

「別に?……ただ、ちょっと絞れちゃったなぁって思っただけよ」

「詮索はやめてくれよ」

「ふふっ、いいわよ。私が勝手に考えてるだけだもの」

 

 そういい、刻晴は俺の背中に抱きついてきた。腹に腕が回され、背中に暖かく柔らかい感触が感じ取れる。

 

「何気、こうして貴方と海灯祭を過ごすのは始めてね。去年は何してたのよ?璃月港にはいたんでしょ?」

「ん、確か、孤雲閣で戦ってたな…あ」

 

 あ、これ内緒なんだった。今日はなんか知らんけど口がよく滑る。刻晴の腕の力が案の定強くなった。

 

「……なによそれ。私知らないんだけど」

「うーん、……詳しくは凝光さんに?」

 

 何が起こってたかと言うと、孤雲閣で魔物が大量発生したんだよ。そのまま祭りの空気に乗じて璃月港になだれ込んで来そうだった所を俺と夜蘭さんが止めに行ったんだけど、夜蘭さんがサボりやがったので一人で頑張ったって話。

 

「……まぁ、ちゃんと報酬はめちゃ貰ったから大丈夫。強制労働とかじゃなくて、ただ海灯祭を守りたかっただけだから」

「……そうだけど、また迅が割を食ってるじゃない。私、そういうの嫌いなのよ」

 

 まぁ過ぎたことだし、と言っても刻晴は抱きつく力をさらに強めた。

 

「ねぇ、私達に話してない悩み、まだまだあるでしょ?」

「……ないよ?」

「…あんまり私たちを舐めないでよね。それくらいわかるわ」

 

 正直、図星だ。悩みというか、俺の奥底にこびり付いた泥みたいな、人に見せたくないモノがまだ残っている。というか、見せる必要が無いものだって考えてるから、無理にさらけ出す事でもないんだよ。

 

 ある意味、今の俺を形成してる土台のようなものだし、悩みが晴れたところで今が変わる訳でもない。……それでも彼女たちに感づかれるくらい出ちゃってるってことは、……なんなんだろうな。

 

「………ああ。後でその時がきたら話すよ」

 

 俺は彼女に、滅多に吐かない嘘を着いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 群玉閣に着くと、刻晴は着替えてくるわねと建物の中に入っていった。

 

 その後ろ姿を見送ると、入れ替わりに来た凝光さんに手招きされる。

 

 嫌な予感がして顔を顰めるが、本当にお願いする時の顔をされたので渋々中に入った。

 

「なんすか」

「ちょっと、貴方に頼みがあってね。海灯音楽祭の後夜祭が行われるのは知っているでしょう?」

「ああ、音楽祭のステージを使って劇だかやるっていうあれですか?」

「そう。……それでなんだけど、貴方って蒼夜叉じゃない?」

「勝手にそうなってましたけど、前のよりはマシだと思ってます」

「そうそう。蒼夜叉…夜叉。つまり、璃月の守り神ってことじゃない?」

「何がつまりなのかさっぱりわからないんですが!?」

 

 蒼夜叉はただあんたらが付けた異名ですけど!?

 

「ま、話を聞きなさい。つまりね…」

 

 凝光さんの話によると、雷神の眷属ともなる俺を民の前で戦わせて璃月の仙人の強さをアピールしたいそうな。

 

「……つまり、見世物になれと?」

「濁さずに言うと、そういう事ね」

「「…………」」

「お断りしま「待ちなさい」

 

 いや、恥ずいわ。と踵を返した俺の裾を凝光さんが掴む。

 

「なんすか。普通に交渉決裂でしょう。つか、なんで直前に言うの?」

「それはさっき決まったことだからよ。……まぁ、このまま断るのも構わないわ。……ただ、ちょっと私と取引しない?」

「……貴方が取引持ちかけてくる時点で、……多分俺詰んでますよね?」

 

 凝光さんが煙菅をクルクル回しながら1枚の写真を見せてくる。それには、いつぞやの連れ込み宿に入っていく俺と綺良々の姿が。

 

「……っ!?」

「あなたね、昼間からこういうところに行くならもうちょっと周りに気を配りなさい。いくら蒼夜叉が璃月港の英雄でも全員が全員いい感情を持ってる訳じゃないんだから。……あー、口止めするのに苦労したのよね〜」

「………………受けます」

 

 勝ち誇った笑みを浮かべる凝光さんに、そういやこの人商才1本で天権になった人だと思い出しガックリと項垂れた。

 

 

 

 

 凝光さんとの取引が終わった俺は、群玉閣から璃月港をぬぼーっと眺める。ちなみに戦闘のデモンストレーションは明日の夜行われ、敵役はお楽しみだそうだ。これで変装した魈様とか出てきたら俺逃げるかんな?

 

 ………実際、出てきそうでほんとに怖い。

 

 ちなみに他の人には内緒だそうだ。凝光さんの「彼女達にかっこいいところ見せたいでしょ?」と囁かれ、ちょっと頷いてしまった。

 

 普段見せてるところが、どちらかと言うとアレ方面だからね。最近戦うことも減ってきたし、内心ちょっとだけ心躍るあたりやっぱり俺も夜叉か。

 

「……お待たせ」

 

 そんなことを考えながら景色を眺めていると、後ろから聞こえた刻晴の声に振り返る、

 

「……おぉ」

「……どう、かしら」

 

 風で揺れるツインテを抑えながら聞いてくる刻晴の服が大きく変わっていた。紺色を基調とした、ドレスのようなデザイン。大きく空いた背中とむき出しの肩が色気をだし、ツインテールを結んだ紺色のリボンがとても似合っている。極めつけにはツインテの根元の髪をまとめている部分の角度が少し変わっていて、尚更猫耳にしか見えなかった大好きです。

 

「……すっごい似合ってる」

「あ、ぁりがと」

 

 思わず脳から口へと言葉がそのまま発射された。刻晴は赤くなった顔をツインテールで隠す。あのね、その髪で顔を隠すその仕草の攻撃力なんぼがご存知ですか??

 

 刻晴、照れた時や緊張した時にツインテ掴む癖があるんだけど、あれ見る度に内心で悶え苦しんでるんだわ。

 

 だから、俺もそんな刻晴を見て思わず顔が熱くなった。そっぽを向いてもう一度見ようと視線を向けたところで、嬉しそうな顔の刻晴が目の前に映った。

 

「ふふっ、迅の不意打ち食らって赤くなった顔、大好きよ?」

「わ、わかったから。どういたしまして(?)」

 

 刻晴の手が、俺の手に絡みつく。

 

「……迅」

 

 手を握られたまま、刻晴の身体が余すことなく密着した。ずっと、我慢してた。囁いた彼女の嬉しそうな顔は、背景の璃月港も相まって世界一の絶景だと思える。

 

 少しずつ、近づいてくる顔に俺は……。

 

 

 

 

 

「……独り身の私の家の前で逢瀬とか、なんの嫌がらせかしら?」

 

 横から響いたどこか暗い声に俺と刻晴はバッと音が出そうな勢いで身体を離す。声がした方を向くと、凝光さんが死んだ目で俺たちを見ていた。

 

「ぎ、凝光っ!?い、いつからそこに」

「いつからも何も、ここは私の自宅よ。………そんなに乳繰り会いたいなら、今からでも璃月港の宿に連れてってあげるけど?」

「いや、いいからそんな気遣い。…ほら、刻晴も一旦洞天に……刻晴?」

 

 俺が振り向いた先の刻晴は腕時計をちらっと見て、何やら指で数を数え始めた。そして小さく「休憩なら……イケるわね」との声。

 

「………私は、………イイけど……?」

「……」

 

 俺は、無言で塵歌壺を開いた。……海灯祭の礼服を着て5分で脱ごうとすな。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……うふふふ……それでですねっ、迅さんはこう言いました。『だって、まだスイーツ持ってきてないじゃないですか。影さんが嫌じゃなければ、また鍛錬に来させて貰いますよ』って!……その言葉を聞いた途端、なんだか胸がドキドキと…!」

『おおお〜!』

「ふふ、迅もなかなかキザな事を言いますね。夢想の一太刀を受け切るとは、兄として誇らしい気持ちになります。…さっ、将軍様。もう一杯いかがですか?」

「もらいますっ。神里家の当主、遅れましたが、あなたの弟さんはこの私がもらい受けましたっ。末永くよろしくお願いしますっ」

「いえ、こちらこそ幾久しくよろしくお願い致します」

「綾人どの。今度は我の迅エピソードを聞いてほしい」

「あーっ、わたしも気になるっ!」

「うちもーっ!なんで申鶴さんは迅の姉になったん?」

「それはだな。我が赤紐の封印を──────」

 

 カオス。

 

 洞天では、なんか宴会が開かれていた。

 

 会合が終わったらしい影さんが酔っ払いながら、俺のエピソードと延々と喋り、それにつられて姉エピソードを語る申鶴の周りに綺良々と宵宮が興味津々な様子で座っている。向こうではもともと友人同士らしいエウルアと煙緋が杯を酌み交わしていて、奥では詩好き同士馬があったのか、胡桃と綾華が詩集を片手に話し込んでいる。

 

 見ると身内以外の人も多くいる。胡桃の横には黒髪のスメールを格好をした女の子に、護衛らしき女性…ってあれディシアじゃん。エウルアの方にニィロウとクーファもいるし、よく見たら影さんの周りにバーバラとアンバーまでいた。

 

「やぁ、お邪魔してるよ」

「あ、代理団長。久しぶり」

 

 呆然と突っ立ってる所に話しかけてきたのは俺と名前丸かぶりの西風騎士様。これはどう言う流れで?と目線で尋ねると、彼女は苦笑しながら答えた。

 

「綺良々が誘ってくれてな。友人の友人を呼んだ結果、こんなことに」

「なるほどね。まぁ、知らない人はほとんどいないし、別に大丈夫だよ。宴は人が多い方が楽しいしな」

 

 そのまま刻晴に挨拶をするジン代理団長を見送り、騒ぎの奥に行こうとしたところで、また後ろから聞き覚えのある声が。

 

「……全く、貴方の交友関係、どうなってるのよ」

「千織?来てたのか」

 

 まさかのフォンテーヌから千織も海灯祭に来ているとは。橙色の着物の裾を翻し、千織は「海灯祭はテイワット中の人が集まるからね。インスピレーションを得るにはもってこいなのよ」と答えた。何故洞天にいるのかは、綺良々に見つかって連れてこられたらしい。

 

「……それに、なかなか面白い関係性みたいね?」

「…う」

 

 千織がここにいるってことは、彼女たちの関係性もバレたみたいだ。腰に手を当て覗き込むようにして見てくる千織から視線を外す。

 

 てっきり怒られるかと思ったんだけど、でしっと胸を小突かれるだけに済んだ。

 

「ま、大切にしなさいよ」

「……ああ。言われなくても」

 

 そのまま刻晴の服に興味が出たのかそっちに歩いていく千織を見送り、とりあえず神である影さんに挨拶しようと彼女に近づく。

 

「……影さん、お疲れ様です」

「……ぅ?あっ、迅さんっ、おかえりなさいっ…どこに行ってたんですか?」

 

 1つ言いたいことがある。

 

 

 え、酔っ払った影さんクソ可愛くね??

 

 

 「用事は終わったんですか?」とか考えてた次のセリフが丸々飛んだ。

 

 同時に影さんの可愛さにやられたみたいで、周りの人達も一同に悶えている。つーか、宴会に神がいるとか普通ビックリするよね。

 

「アンバーにバーバラも。久しぶりだな」

「あはは、あたしはエウルアからめちゃくちゃ聞いてるからあんまり久しぶり感ないけどね」

「えっと、お邪魔しちゃってごめんね?綺良々ちゃんが誘ってくれて…」

「ああ、さっき君の姉から聞いたよ。俺は全然構わないから、是非楽しんでってくれ」

「ん〜、迅さん?聞いてますかぁ?」

「はいはい、聞いてますって。って誰だこんなに飲ませたの」

 

 座布団の上で正座を崩して女の子座りになりながら、俺の着物の袖を引っ張ってくるこの可愛い生き物は、どうやら稲妻の神様らしい。

 

 近くにあった水を影さんに渡していると、申鶴のところから綾人兄さんとトーマが戻ってきた。

 

「迅、お勤めご苦労だったね」

「そっちこそ。…あと、影さんに飲ませたの兄さんの仕業だろ」

「いや、若というより彼女がそもそも酔ってたんだよ。一応変装はしてたんだけど、結構目立っちゃっててね。保護したところにお嬢たちにここに誘われたんだ」

 

 なるほど、そっちで酒が進んでたのか。2人と綾華とで明日祭りを回る約束をして、俺は綾華の方に向かった。

 

「……よ。邪魔してるぞ」

「ディシア達も海灯祭に来てたのな」

「ああ。旅人に送って貰ってな。クーファ達には会ったんだろ?ニィロウがめちゃくちゃ勘違いして面白かったぜ」

「あぁ……ちょっとな」

 

 歩いてくる俺に気がついて片手を上げたディシアに同じく返す。綾華や胡桃も俺に気がついてこっちに近づいてきた。

 

「兄さん。おかえりなさいませ」

「ただいま。胡桃と知り合いだったのか?」

「いえ、先程仲良くなったんです。なんでも兄さんのお土産選びをお手伝いしてくださったとか」

「ああ。詩集選ぶの手伝ってくれたんだ」

「いやー、お礼を言われるほどじゃないよ。私も稲妻の詩に興味あったし………って思ってたら狐のお姉さんから本を貰ったんだけど……個性的なタイトルだね」

 

 コレも稲妻の文化なの?と尋ねられて答えに困っていると、外から八重宮司と甘雨が入ってきた。お疲れ様ですと会釈をしてくる甘雨に、八重宮司はこちらを見てくすりと笑う。

 

「……童よ。影とのでーとはどうじゃった?」

「……最高でしたよ」

「ふふ、なかなか色男が板に付いてきたでは無いか。世は広しと言えども神まで取っかえ引っ変えした男はお主が初めてじゃ。誇るといい」

「どっちかと言うと外堀埋められて逃げられなくなってからなんで、サンドバックになってる気分ですよ」

 

 そういえば、胡桃に後ろから抱きついている女の子は唯一初対面だ。目が合うと手を挙げて挨拶される。

 

「貴方が迅さん?ディシアから聞いてるわ。ドニアザードよ。よろしくね!」

「ああ、よろしく」

 

 話を聞くと綺良々→胡桃→ドニアザードの繋がりで宴会に参加したらしい。他国のお祭りは初めてのようで、胡桃と意気投合してた。

 

「たおちゃんは、私の初めての外国の友達なのよ!」

「ドニアザードさんっ、たおって呼ばないでってば!」

「お、やっとほかからも『たお』呼びされるようになったんだ。良かったじゃん」

「よくないっ!」

 

 恥ずかしいからっ!って唸る胡桃をいじってたら横の妹様の頬がだんだん膨らんできたので「明日、神里家のメンバーで祭りを周ろうな」って伝えたら一発で機嫌が治った。詩好きの一行に手を振って別れてから、エウルア達の方に向かう。

 

 俺に気がついたエウルアは、グラスを置いてニコリと微笑んだ。

 

「迅、おかえりなさい」

「ただいま。珍しいメンツだな?」

「ああ、邪魔しているぞ」

「お、お邪魔してます」

 

 ぺこりと頭を下げてくるニィロウとクーファに挨拶を返して、寛いでる煙緋に俺は言う。

 

「煙緋、ピンばあやに洞天本当にありがとうございましたって伝えてくれないか?」

「頼まれたが、多分今は山にいると思うぞ?」

「ああ、一応明日行こうとは思うけど、仙人同士の集まりだから邪魔しちゃアレかなって」

 

 とりあえず、本当にこの洞天にはお世話になりっぱなしなのですが一言お礼を言いたかった。いつでも入れる家ってだけで最高なのに、こうしてみんなで住むことも宴会を開く事も、壺がなければ叶わなかった。

 

「ニィロウとエウルアは踊りつながりか?」

「うんっ。貴族の踊り、すっごく綺麗だったから…」

「そ、そんなことないわよ……?」

 

 ニィロウのストレートな褒め言葉にエウルアが照れてる。個人的にも踊りが混ざった剣術とか好きだから俺もうんうん頷いた。

 

「あそこにいる金髪のツインテールの子もモンドで踊ってるぞ?話しかけて来たらどうだ?」

「え、ほんと!?……ちょっと行ってこようかな…」

 

 俺は、すすっとバーバラの方に行ったニィロウを見送っている、日焼けした男の子を肩を叩いた。

 

「……クーファ、大丈夫か?」

「すげぇ、どこ見ても美人だ」

「それ、ニィロウに聞かれたらただじゃ済まないぞ?」

 

 初対面の美人に囲まれてちょっと居心地悪そうに見えたので、エウルア達に声をかけて、何か料理を作ることにした。クーファもプロの料理人だし、ちょっとタフチーン食べてみたい。

 

「クーファ、ちょっと何か作るから手伝ってくれないか?」

「了解っす。……助かりました」

「いいって。ニィロウについてきたクチだろ?」

「ええ。まさかこんなに人がいっぱいいるとは……なんか神様もいるし…あの方、稲妻の雷電将軍ですよね?」

「まぁ、話してみると普通の人だよ。一応」

 

 そんな感じで話しながら台所の扉を開けると。エプロン姿の蛍が居た。スープでも作っているのか、鍋をかき混ぜている。

 

「ん、おかえり。台所勝手に借りちゃったけど、大丈夫?」

「ああ。悪いな」

 

 俺もエプロンをしたところで、「あ」という声が後ろから聞こえた。見るとクーファが俺と蛍を交互に見ている。

 

「あ、俺……ちょっと用事を思い出しましたっ。……なっ、旅人っ」

「えっ、あっちょっとクーファっ?別にそんな」

 

 何故か親指を立てて出てったクーファに俺は首を傾げていると、きっと蛍に睨まれた。な、なんだよ?

 

「……どうした?」

「………なんでもないっ」

 

 蛍の方を向くとぷいっ顔を逸らされてしまった。まあいいかと倉庫から材料を取り出す俺の後ろから、質問が飛んでくる。

 

「ねぇ」

「ん?」

「参加してる人にやけに女の子多いけど、みんな手をつけてるの?」

「なにアホなこと言ってんだ。そんなことするわけないだろ?」

「でも、影が言ってたよ?『わたしっ、迅さんに想いを告げました』って。……これからも増やすの?」

「いやっ、…………影さんは例外だよ。それに、綺良々達からも後押しされたし、謎に」

「……ふーん。じゃあ、綺良々から後押しされれば、増えるんだ」

「さっきからなんなんだよ?」

 

 なんか知らないが、蛍の様子が変だ。お玉を置いたと思ったら、自分の髪を指先でいじいじしながら言ってくる。

 

「……あとは、増える条件あるの?」

「さっきからなんなのその質問?俺を最低ハーレム野郎に落とそうとしてるの?」

「……いいから答えて」

「……増やさねぇけど。……まぁ、向こうの気持ちが本物で、綺良々達と凄く仲がいいなら、まぁ増えるかもな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ね、………もらったよ?私も」

「え?」

 

 直後、着物の裾を引っ張られる感覚。………と、唇に以前も頬に感じた柔らかい感触。

 

「!?!?」

 

 そして、目の前には顔を真っ赤にして目を瞑った蛍。突然の、不意打ちでされた口付けは一瞬…と思いきや、蛍はさらに一歩踏み込んで、もう一度深く唇を押し付けてきた。

 

 俺の視界に唇を離して体勢を元に戻し、蕩けた顔の蛍が映り込む。

 

「……綺良々から、………許可………」

 

「お、おまっ…」

 

 蛍は、おもむろに俺の手を取った。蛍の細い指が絡みつき、手の甲に唇が落とされる。

 

「─ずっと、ずっとずっと、こうしたかった」

「………蛍…」

「詳しいことは、綺良々達から聞いてね…。…………とりあえず……ね、迅」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 蛍は握った俺の手を、自分の頬に当てて微笑んだ。

 

「ずっと、ずっと前から……あなたのことが好き」

 







波乱の海灯祭。

次の話は、少し時を巻き戻して綺良々達の蛍尋問から始まります。
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