職場の先輩がウチの飼い猫に似ている件   作:猫好きの餅

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 まさか、この作品で1番攻めた描写を書いたキャラが蛍になるとは……


 


5話 蛍の表情がさっきと違うんだけど

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 時はすこし遡り、迅と刻晴が出かけていった後話。

 

☆☆☆☆

 

「…さぁて、蛍ちゃん?」

「な、なにかな」

 

 一旦洞天に入り、そこから出かけて行く2人を見送ったあと。にっこりとした笑顔で呟いた綺良々に、蛍の額から冷や汗が流れ落ちる。

 

 周りを見ると、綾華と宵宮、エウルアも全く同じ顔をして、じりじり近付いてきていた。

 

「なにかなって。決まっとるやろ?迅とこの前何してたんかなぁって」

「そ、そんなの別に答える必要はないでしょ!?」

「何を言っているの?私達は迅の恋人よ?彼氏と二人きりで過ごした友達に詳細を聞くのは、当然のことだと思うけど?」

「蛍さん」

「な、なに?」

 

 笑顔の面々の中でも一層、仄暗い笑顔のクオリティに定量がある綾華が蛍の両肩に手を置く。にっこーっと影さえできてなければ周りの男たちが卒倒するような笑顔を浮かべながら、核心を突いてきた。

 

「蛍さんは、兄さんに恋愛感情を抱いているのですか?」

「そ、そんなことないっ!」

「本当ですか?」

「本当かぁ〜?」

「ほんと?」

「本当に?」

 

 4方向からじーっと見詰められてたじたじする蛍。彼女の口からは「そんなことあるわけない」だの「みんながいるのにそんなこと思うわけ」だのと否定を続けている。

 

 が、それでも蛍の気持ちはもう4人には筒抜けだった。

 

 蛍も体の前で自分の腕を掴んでそっぽを向いているが、状況がきついのは彼女にもわかる。

 

 そこに、そういえば〜と綺良々が写真を1枚取り出した。

 

「この前、凝光にこんなのを貰ったのよねぇ〜」

「ッ!?ちょっ!?」

 

 ひらひらと揺らされた写真の中身が、少し見えたらしい蛍が、今まで見たことない位の慌てようで綺良々に飛びかかった。

 

 それをひらりと躱した綺良々は呆れ顔で写真をみんなの前のテーブルの中央にばんと置く。その写真には…。

 

「……よくこれで誤魔化せたよね」

 

 

 

 

 不意打ちで迅の頬にキスをする、恋する乙女な顔の蛍がありありと写っていたのだから。

 

「…わぁ」

「これって、この前の?」

「そう。凝光さん、暇な時に群玉閣から望遠鏡で璃月港を見るのが趣味なんだけど、偶然見ちゃったんだって刻晴さんからのリークだよっ」

「うぅぅぅうううぅ」

「蛍さんが……真っ赤になってソファの一部になってます…」

 

 もうこんなものを出されては言い逃れは出来ない。「凝光のばかぁ」とうなっている蛍を椅子に座らせて、再度取り囲む。その中から綺良々が真面目な顔で口を開いた。

 

「ね、蛍ちゃん」

「……綺良々」

「正直に答えて?……好きなんでしょ?迅くんのこと」

「……ぅ」

 

 数々の戦いで凛々しくあった蛍の顔が真っ赤に茹で上がり、スカートを握りしめているのを見て、少し意外に思った。

 

 蛍という少女は、顔の広さの割には中身があまり知られていないことで有名だ。現に友人としてよく絡む綺良々達でさえ、「テイワットの外から来た」「兄弟を探している」くらいしか知らない。

 

 だから余計に、迅との間柄が目立って見えた。

 

 金髪の異邦の旅人。最近で言うとスメールで功績を上げ、名前の知名度は広まることを知らない。そんな彼女が唇を尖らせて俯き、涙目で唸り声を上げている。

 

 もしかしたら、どうしても言いたくない事情があるのかもしれない。彼女を見てそう感じたエウルアは綺良々に声をかけようとするが、それを綺良々のセリフが遮った。

 

「……だって、わたし達と迅くんがくっついてる時、蛍ちゃん羨ましそうな…でもちょっと辛そうな顔で見てるんだもん。友達として放っておけないよ」

「…っ」

「別にわたし達、蛍ちゃんを責めたいわけじゃないんだ。……むしろ、蛍ちゃんも交えて、迅くんの話をしたいって思ってた」

 

 綺良々はスカートを握りしめる蛍の手を優しく包み込む。

 

「……どうなの?」

「……………ぅ…」

 

 やさしく見守るような綺良々の眼差しに、蛍は観念したように小さく頷いた。

 

「…………す…き…」

「……やっと言ってくれた」

 

 と、言うかもう周りにはバレバレだったけどね?と綺良々は内心笑うと、手を優しく引いて蛍を椅子から立たせる。横恋慕をして申し訳なさそうな蛍が綺良々の顔を見るが、もうそんなのは今更だ。宵宮、綾華、エウルアに暖かい眼差しを向けられ、少し安心したような表情を浮かべる。

 

 それでも、蛍は軽く頭を下げた。

 

「……その、……ごめん。本当はずっと隠して置くつもりだったのに」

「そうだよっ、なんでそんなことするの?我慢するのって、すごくしんどいのに」

 

 その疑問は全員同じく感じたところだ。綺良々やエウルアは最初から一直線だったが、諦めそうになったことがある宵宮は同意するように頷く。

 

「だって、私は旅人だから…。いずれこの世界から出るのに、関係を持つなんて出来ないって思ってた。……だから、迅とは友達のままでいようって…でも、もういいや」

 

 蛍は自身の胸に手を当てる。平常時よりも少し早い鼓動が伝わり、それの発生源の男1人を想い、くすりと微笑んだ。そんな彼女の顔に全員の視線が引き込まれる。

 

「……じゃあ、蛍ちゃんもここに住んだりとか…」

「…んーん。それは遠慮させてもらおうかな。やっぱり1番はお兄ちゃんを探す事だし。でも、顔は出しに来るよ」

 

 蛍はスッキリとした顔で自分を見つめる面々の顔を見回した。全員、穏やかながらもちょっと好戦的な笑みを浮かべている。

 

「……まー?迅との関係はうちらの方がごっつ深いけどな?」

「んん?」

「蛍さんはようやくお気持ちを自覚なされた所で止まっていますが、私たちは違いますので。ね、エウルアさん」

「はぁ?」

「……ま、せいぜい頑張るといいわね。新入りさん?」

「へぇぇぇ?」

 

 へっ、と笑って肩を叩いてくる宵宮達に蛍の口角が引き攣った。心做しか生暖かい目で見てくる4人に頬をふくらませた蛍は、対抗するように胸を張る。

 

「ふ、ふんっ、後悔しないでよね。今度迅と顔合わせた時、みんなよりももっともっと進んでやるんだからっ」

「へぇ〜?」

「その顔腹立つぅ!」

 

 綺良々の余裕たっぷりの笑みに唇を噛む蛍。事実、綺良々よりも関係性を進めるには色々と大人の階段をすっ飛ばす必要があるのだが、啖呵を切ってしまった蛍はもう後戻り出来ない。

 

「綺良々、1晩だけ迅を貸して。私の気持ち、突きつけてくるから」

「うん、頑張ってっ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そうして、今に至る。

 

 刻晴は着替えの最中に洞天に顔を出し、皆と同じく蛍を了承。出店で買ったもので夕飯にしようと出かけた先で色々な人をひっかけ宴会が始まった。

 

 

 

 

 

 「───────ずっとずっと、あなたの事が好きだった」

 

 不意打ちのキスをかまして迅の手を自分の頬に当てた蛍は、経験のない感覚が身体の奥から湧き上がっていくのを感じ取った。すごく恥ずかしい、緊張する、ついに言っちゃった、迅は迷惑じゃないかな?などと不安な感情がぐるぐると蛍の胸の中を回るが、それでも蛍の前の、目を丸くして硬直してる青年に対する恋慕が蛍の身体を後押しする。

 

「…………言っちゃった」

「…お、おまっ…ま、マジなのか?」

「………うそに、見える?」

 

 蛍は自分の頬を撫でる黒い手袋に包まれた迅の手袋を外し、指を絡ませた。そのまま身を寄せて彼の胸に身体を預ける。

 

「……ずっと、前からって…?」

「君が稲妻に帰っちゃう前から。一緒に旅したの、楽しかった」

「お、俺のどこを?」

「………わかってて聞いてない?」

「いやっ、そんなことないぞ?でも、蛍は色んな国旅して色んな人と出会ってるし、その中からなんで俺を…」

 

 そうまくしたてた迅の身体に、蛍の腕が回された。

 

「……お兄ちゃんに似てる所も理由の一つだよ?それにいつも、私を心配してくれるし、落ち込んだ事があった時も直ぐに来てくれて慰めてくれたし。偶然な感じ出てたけど気づいてたんでしょ?………私が、お兄ちゃんと再会したこと」

「……」

 

 上目遣いでそう問われ、迅は無言の肯定を返した。

 

 あれは、璃月港の騒動が終わったあとの頃だった。モンドに帰ってきてると思った蛍が、金髪の仮面をつけた男と一緒に歩いている所を丁度任務でモンドに立ち寄っていた迅は目撃した。

 

 最初は新しい友達かなと思っていたのだが、モンド城の中だけではなく奔狼領や人がなかなか入らないモンド国領の外れまであちこち行っているのを見かけて一応気にはしていた。

 

 蛍は用心深い奴だし、いっしよにいる男も変なやつでは無いのだろうと思っていた迅。…しかし、1週間ぶりくらいに再会した蛍の様子がおかしくて、直ぐに声をかけた。

 

 その頃の蛍は何を話しかけても生返事で、覇気がない。目を離すと何かを考えているように俯いて黙りこくる。

 

 パイモンに聞いてみても「…ごめん、旅人の個人的な事情だからさ…」と断られた。

 

 一体何かなんだか分からなかったが、とりあえず気を紛らわそうと色々奔走したのを覚えている。

 

 蛍がそうなったのがただの1回だけなら、迅の記憶にもあまり残らなかっただろう。…しかし、蛍のそんな「不調」は定期的に訪れた。

 

 蛍は強い。だが、やはり女の子だ。この世界の人間ではないというある種孤独な人間。そんな彼女に知らず知らずの内に神里の頃の自分を重ねていた迅は、その度にお節介を焼いた。

 

「……何度か、寝言で言ってるのを聞いちゃったんだ。ごめん」

「あ、そうだったんだ」

「だからさ、もしかしたらその、……嫌な再会をしちゃったのかなって勝手に心配してたんだ。………その頃の俺も、同じことで悩んでたから」

「……あ」

 

 元々、璃月には夜叉としての本能で惹かれたことで稲妻を出た迅も自分の正体を知り、人ではない自分が稲妻に帰ったところで居場所はあるのかと考えてたところだったのだ。だからお節介にも拍車がかかった。

 

「……だから、蛍を気にかけてたのは裏を返せば自分のためっていうか。……だから別に「うっさいバカ」うぇ?」

 

 ちょこっと怒気が混じったセリフと同時に迅の頬が引っ張られる。顔を上げると頬を膨らませて、目を細めた蛍がじとっと睨みつけていた。

 

「綺良々達もくっついてちょっとはその自虐癖治ったと思ったけど、全然そんなことないじゃん、ばか。あんまり、私の好きな人の悪口言わないでよね」

 

 これは綺良々達に報告しなきゃとほっぺを引っ張ってくる蛍に呆然と見てると、今度はぱんっと手で挟まれた。ずいっと顔を寄せて聞いてくる。

 

「で、どうなの?私は言ったけど?」

「……う、嬉しいけど。俺にはもう…」

「だから、許可もらったってば。綺良々達のことは気にしないで、……わ、私のこと。どうなの?」

 

 そんなこと言われても。と迅は頬を挟む蛍の手を外す。自分にはもう大切な人が5人もいて、そんなに簡単に増やすのは彼女たちにも、蛍にも失礼だ。そんなことを言った彼に、蛍は続ける。

 

「増える条件なら、さっき聞いた。私は条件に当てはまってるよ?」

「…ぅ」

 

 今度は迅が、昼間の蛍のように唸った。

 

「ふふん、まだ断る?」

「………はぁ、…負けたよ。……受け入れる」

「ほんと?」

「ああ。ここまで外堀埋められて、もう無理だろ。…それに」

「それに?」

「………俺も蛍のことは……その、アレだし」

「もうっ、アレってなに?」

「わかってて聞いてるよな!?」

 

 ニヤニヤと頬を突いて来る蛍に、迅は照れながらそっぽを向く。そんな彼にさっき綺良々から借りた話を1つ、持ちかけた。

 

「ね、迅」

「んだよ」

「今夜一晩、迅を綺良々から借りたから」

「はい?」

 

 料理を再開しようとした迅は、素っ頓狂な声を上げながらそっぽ向いてた顔を戻した。そんな彼を見上げる蛍の視線の熱を読み取り、いやいやと首を振る。

 

「一晩って、まぁ普通に寝るくらいだろ?そんな、いくら受けいれるったって初日でそんな」

「わ、わかってるからっ!何想像してるのえっち!」

「いや、添い寝の話じゃないの?」

「え?……そ、そうだけど?」

「おいこらむっつり旅人が。段階かっとびすぎだろ」

 

 迅としては抱き枕の種類が増えるのは喜ばしいことではあるけど、初日からハードル上げてない?と心配して返したのだが、もっと進んだことを考えてたらしい旅人サマがボッと音が出そうな勢いで顔を赤くした。

 

「う、うるさい。ばかっ、ハーレム男っ!」

「そこに入ろうとしたお前に言われたくないけどな?………はぁ、バカなこと言ってないで料理の続きを「キスして?」………なんて?」

 

 蛍は袖掴み+上目遣いという美少女2大コンボで料理に入ろうとした迅をセーブした。

 

 嫌な予感を感じた迅が視線を向けるが、蛍の口は止まらない。彼女はこの迅とのやり取りで羞恥心やら恋愛心やらが色々オーバーフローを起こしていた。

 

「私にも、綺良々と同じことしてよ」

「っ、流石にそれはダメだ。別にそんなに焦ることじゃないって」

「……そう言われると思った」

 

 迅も流石にそれはちょっとと難色を示したのだが、蛍が懐から取りだした紙を見て、動きが止まる。蛍は行ける!と得意げな顔で手にした紙を迅に突きつける。

 

「お前っ、これ依頼書じゃねぇか!」

「依頼達成率100%の冒険者でしょ?正式な依頼なら断らないよね」

 

 蛍が手にしたクエスト依頼書には「内容:旅人 蛍への恋人的身体接触」「報酬:わたし」などとふざけたことが書いてある。何が終わってるって冒険者協会の依頼認定印が普通に押されてる所だ。こんな依頼が公式に処理された事実に迅は頭を抱えた。

 

「……ね。これならいいでしょ?」

「……お前はもう……。………………はぁ」

 

 迅はがりがりと後頭部をかくと、大きなため息をついた。そしてそのまま沈黙する。俯いて動かなくなった迅に、ちょっと不安になった蛍は黙り込んだ迅に声をかける。

 

「……じ、迅?…だ、大丈夫?……さ、流石にこれは冗談だよ?キャサリンと話してた時にイタズラ用にって作った奴だし、ほらっ、よく見るとハンコもちょっと違うでしょ?ねっ?」

「………」

 

 なおも黙り続ける迅に、やりすぎたと冷や汗を流した蛍は依頼書を仕舞おうとして。

 

 

 

 ガシッと、その腕を迅に掴まれた。

 

「……じ、じん?」

「……それは、俺指名の依頼か?」

「……ぇ、そ、そうだけ…ど?」

「そっか。承った」

「え」

 

 迅の言葉に戸惑っているうちに、依頼書を取られてしまう。狼狽してる蛍は迅の顔を見上げて……彼の(金色)に硬直した。

 

「悪い悪い。ちょっと時間かかったわ………理性外すの」

「えっ、迅っ……ひゃっ」

 

 彼の言葉を理解し、顔が熱を持つと同時に蛍の身体が力強い腕に抱き寄せられた。さっき自分でくっついたというのに彼の意思で抱き寄せられると、全然威力が違う。迅が、蛍の耳元に口をよせ、そっと囁く。

 

「蛍の洞天、行くか」

 

 蛍は期待と戸惑いに包まれたまま、こくりと頷いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

 

 

 理性外れた時って、意外と冷静になるよね。

 

 蛍の告白とキスを貰い、なんやかんやあった結果。……蛍からなんかとんでもない冒険者依頼が飛んできた。……つかなんだよ蛍との恋人的身体接触って。んで報酬「わたし」って。

 

 ……というわけで、そんな依頼を持ってこられたのと、ちょっと調子乗ってる蛍の顔を見てたら……その、なんかすごくいじめてやりたくなったのです。

 

 だから、手始めに邪魔な理性を飛ばしてみた☆

 

 多分、綺良々達から許可もらったのは本当なんだろうな。これから蛍の洞天で依頼を遂行させてもらうんだけど、いきなり消えたら騒ぎになるから一言言っておこうか。

 

 抱きしめてた蛍の身体を離して「ちょっと待ってて」と言うと、ぽーっと俺を見たままの蛍が返事ん返さないので、軽く頬をぴっぱるとアワアワしてた。さっきのお返しな。

 

「綺良々ーっ」

「んー?なに?」

 

 申鶴の話が聴き終わったらしい綺良々を呼ぶとそそっとこっちに来た。

 

「蛍、綺良々が後押ししたのか?」

「うん。……えへへ、その様子だとちゃんと言われたんだ。賑やかになりそうだね?」

「ありがとうと言うべきかこいつめと言うべきか……まあ、ありがとうな」

「どういたしまして?……で、蛍ちゃんは?」

「まだ中。……その、宴中に申し訳ないんだけどちょっと蛍連れて外出してもいいかな」

「海灯祭を見るの?…うん、さっきもわたし達が茶々入れちゃったし、話は聞いてたから行ってきてもいいよ?」

「………聞こえてた?」

「わたしだけね」

 

 綺良々は正妻イヤーを舐めないでよねっとウインクすると。一応料理して完成したスープを受け取った。そのまま喧騒に戻っていくのを見送ると、奥の方にいた宵宮やエウルア、刻晴に綾華と目があった。

 

 どうやら彼女たちにも筒抜けだったらしい。小さく手を振ってくるみんなに申し訳なさ半分ありがたさ半分で頷きを返すと台所に戻る。

 

「……な、なに」

 

 心做しか期待したように見てくる蛍に、改めて理性を外した俺は。

 

「……じゃ、行こうか」

 

 逃げられないように蛍の腰を抱いた。びくっと身体を跳ねさせる彼女に囁く。

 

 

 

「蒼夜叉を指名したんだ……報酬は高くつくからな?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

☆☆☆

 

 

「お、何気久しぶりに来たか?」

 

 蛍の洞天通行証を迅は貰ってなかったし、彼女の洞天に来るのはモンドで飲み会した時以来だ。中に入ると、内装も前とそう変わりなかった。迅は隣で緊張してる様子の蛍に話しかける。

 

「あんなに自信満々に依頼書見せてきた割には大人しいんだな」

「……ぅ、冗談のつもりだったのに」

「ああ。だからタチの悪い冗談で俺をおちょくろうとしたからその仕返しをしてやろうかなって思ってさ。……で、注文は確か、恋人的身体的接触だったよな?……一応聞くけど、どこまでのことを示してる?」

「………綺良々とした所まで」

「おまっ、どこまでかわかって言ってる?」

 

 こくり。蛍は頬を染めてそっぽを向きなが頷く。どちらかと言うと悪友的なポジションだった蛍のそんな顔を見せられて、迅もちょっとだけグラッときた。迅からしたら奇行が目立つが蛍も見た目は立派な美少女なのだ。

 

 とりあえず、線引きだけはしておこうか。と迅は蛍に向き直る。

 

「今日は、流石に最後までは行かないからな」

「……なんで?」

「まだ海灯祭の最中だろ?準備頑張ったんだからまずはそれを楽しめって。明日は音楽祭もあるんだしさ、もし万一のことがあったら嫌だから」

「……うん」

 

 別にそこに関しては焦る必要はないと思う。「別に俺は逃げないし。せっかく祭りでみんな集まってるんだから、そっち優先でもいいと思うんだ」と言う迅にこくりと頷いた蛍をソファに座らせて、隣に腰を下ろす。お互い前を向いて沈黙が場を数十秒支配したところで「で」と口を開いた。

 

「どうするんだ?蛍の好きにしてもらって構わないけど」

「……するんじゃないの?」

「え?」

 

「迅をおちょくった仕返し、するんじゃないの?」

 

 隣を見ると、迅のことを伺うような、それでいて期待するような目を向けられた。

 

「……つまり、俺の好きにしていいってこと?」

「……経験豊富な迅に任せた方がいいかなって」

「言い方ヤダなそれ」

 

 1人あたりの頻度はそれほどだが、それが5人だ。総量となるとかなり経験豊富に入る。

 

 でも、向こうがそう言うならいいだろう。というか、節操なしと思わせそうだけど蛍がすごく可愛く見えて来た。

 

 迅はおもむろに、蛍に身体を寄せる。

 

「……ん…」

「蛍」

「……な、なに?……じ、迅っんぅんっ」

 

 仕返しを始めます。

 

 まずは目には目を。歯には歯を、キスにはキスをだ。迅は隣に座る蛍の首に手を回し、こっちを向けさせるとゆっくりと唇を奪った。

 

 さっきは不意打ちで感じてる余裕がなかったが、改めて味わった蛍の唇は極上に他ならない。

 

 蛍は緊張からふるふると震えながらも拒まずに唇を押し当ててくる。そんな蛍が可愛くて唇を重ねたまま頭を撫でる。

 

 でも、これじゃ仕返しにならない。迅は唇を角度を変えると、舌を蛍の唇の中に侵入させた。

 

「んゆっ!?ちゅ、んんっ、ぁうっ…ちゅ、んむ…ぁちゅ…んちゅ」

 

 びっくりした蛍が唇を離そうとするが抱きしめて離さない。迅は蛍の舌を捉えると、舌を絡ませにかかった。蛍も最初はされるがままだったが、ちょっとずつ自分からも舌を絡め出す。

 

 

 

 ここで余談だが、迅が綺良々たちと付き合って一番成長(?)した事は彼女曰くキスの上手さらしい。

 

 元を辿れば綺良々がキス魔で日頃からキスをされていた時に反撃策として鍛えて行った物で、あんのムッツリ猫を返り討ちにした時は凄い気持ちよかった。ただ、次からはもっと激しくなるので、それを更に猛反撃して……堂々巡り。気付けば綺良々でも本気を出すと耐えられない位の舌技を身につけられた。

 

 

 つまり何が言いたいかと言うと、キスは迅の特技だということだ。そんな状態のそれを味わった蛍の脳は少しずつ、着実に溶けだしていた。

 

(な、なにこれ!?なにこれっ!?)

 

 自分が逃げられないように後頭部と腰を抑える、細くもがっちりした腕。そして唇を割って口内に侵入して、蛍の舌先を絡めとる別の生き物のような彼の舌。

 

 永く旅をしているがこんなキスをするのは初めての蛍は、想像の遥か先を行く感覚と脳に直接響くような快感に戸惑った。

 

 キスをしてと言ったのも、こんなところに連れ出してと頼んだのも、誘惑したのも自分。綺良々たちから情事の言葉を少し聞いてはいたものの、普段の蛍と迅の関係のように、兄妹のような雰囲気で甘くキスをするのだろうと勝手に思っていた蛍にとって、迅の「堕とす」キスは効果てきめんだった。

 

「ちゅっ、…んっぅ…ちゅ、れろ…んちゅぅ……」

 

 迅のしなやかな舌が蛍の口内を蹂躙する。普段感じないところまで舐められて蛍の腰が勝手に動いてしまう。その中で少し息が苦しいなと思うと同時に唇が離された。

 

「はぁ……はぁ……はぁ……ひゃ、ぁ……ん…ぅ…」

 

 荒い息を吐きながら回らない頭でぽけーっと自分を見る迅の顔に見とれていると、頭を撫でていた彼の右手が蛍の左耳をすりすりと撫で始めた。触れるか触れないかのフェザータッチに、擽ったさともどかしさを感じて蛍は身体をくねらせる。

 

 

 ────そこを逃さず、迅は再度蛍の唇を蹂躙し始めた。

 

「んちゅぅ!?……ちゅ、ちゅっん……ぁっ、…じゅる…ちゅ…」

 

 同時に耳も触られて、蛍の口から普段の彼女を知るものが聞いたら全員が目を剥くような艶やかな声が漏れる。抑えるように迅の胸板に置かれていた蛍の手は知らず知らずの内に緩んですとんと下に落ち、迅の舌を受け入れてしまっている。

 

 迅は、キスを続けながら体重をゆっくりとかけ、蛍をソファの上に押し倒す。蛍は舌を吸われて情けない声を上げながらも体勢を立て直そうとするが、容赦なく蹂躙される唇から広がる未知の感覚が下腹部に集まり、全く力が入らない。

 

 いくら押してもビクともしない彼の体に、もう舐められてないところがないのではないかと言うくらいにぐちゃぐちゃにされた口から届く電撃のような快感に、蛍は強制的に自覚をさせられた。

 

(……あ、これだ)

 

 ずっと閉じていた目を開けると、迅の綺麗な金色の瞳を目が合った。キスを続けながら目を丸くする蛍を可愛がるように、目を細めた迅は、内股で閉じている蛍の脚の間に入ると、苦しくない程度に蛍に体重をかけた。

 

 その適度な重さと、唇に感じる蠢く舌の気持ちよさ。息を吸う度に感じる彼の匂いに、どんどん自分が深みにハマっていくのを感じた。これ以上は……。と蛍は抜け出そうとする。

 

 だか、それを止めるすべを蛍はもう持っていなかった。

 

 

 

 

 

 

「ぷはっ」

「……ぁ〜……ぁ……ん………」

 

 キスを初めてから30分ほど。対綺良々に用意したキスを一通りやってみた迅が蛍から唇を離すと、名残惜しそうに伸ばした蛍の舌先から銀色の橋が繋がる。

 

 蛍はじーっと心ここに在らずと言った様子で迅の顔をずっと見詰め、手も迅の背中に回してさすさすと撫で回している。その蕩けた…という表現すら当てはまらない程に崩れた蛍の目には、もう迅しか映っていない。

 

「……やりすぎたか?」

 

 迅も理性を飛ばしてて忘れてたが、蛍は初めてだったのだ。そんな相手に対キス魔返り討ち用のキスを食らわせたのだから、こうなるのも無理は無い。

 

 蛍はぽーっと迅を見つめながら、未知の感覚に体を震わせていた。まるで自分の中を迅が覆っていくような、モンド栄誉騎士にして璃月港の英雄、メカジキ2番隊隊長、ナヒーダの賢者。強者であるはずの蛍をただの「人間の雌」にまで堕とした迅に蛍は、どうしようもなくやられてしまっていた。

 

「……ぅー」

「だ、大丈夫か?ごめん。ちょっとやりすぎた」

「ぅ〜」

「一旦今日はここまでにしとくか。…よし、これで依頼は完了したか……蛍さん?」

 

 気付けば、蛍は迅の首に腕を回していた。身体を起こして彼の膝に乗る。言い忘れていたが、今の蛍の格好はインナーである黒の上に、前を紐で縛るタイプのホットパンツだ。迅の足にまたがって、少し下になった彼の頭を抱えて、額にキスを落とす。

 

「……もうおわりなの?」

「……一応、かなり飛ばしたと思うんだけど」

「……て」

「え?」

 

 蛍が小さく呟いたのが聞き取れずに呆然とと聞き返す迅。

 

 そんな彼に焦らされたと勘違いした蛍は、 火照った身体を思うがままに動かした。

 

 しゅる。

 

「ちょっ!?」

 

 蛍はらホットパンツのウエストを留めている紐の結び目を解いた。腰をその紐に依存しているようなデザインのため、解かれたことによって生地が広がり適正位置から10cm近く…危ういところが見えてしまう所までずり落ちる。それを呆然と眺めた迅はあることに気がついた。

 

「おま、下着は……?」

「……わたしを、変にした責任……とってよ」

 

 蛍は手を伸ばして迅の着物の前を開けた。インナーの下に手を入れて、彼の腹筋をなでさする。

 

「は、ばか。最後まではしないって……」

「わたしもそう思ってたよ?………でもあんなキスされて、お預けなんてひどい」

 

 そうこうしているうちに、蛍のホットパンツが膝まですとんと落ちてしまった。びちゃ、と音を立てて落ちたそれから邪魔くさそうに脚を抜いた蛍は再度迅の脚の上にまたがる。

 

「……ね、依頼書に書いてあったでしょ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……報酬は、…わたしだって」




  

 うーん、これくらいがr-15タグのギリセーフかな?

 ………海灯祭関係なくて草。

 


 つづき

  https://syosetu.org/novel/340831/6.html 

今回どうでした?

  • えっちでした。
  • 口の中ジャリジャリする。
  • まだだ!まだイケるぞォ!!
  • …あ、r18版お待ちしてます。
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