職場の先輩がウチの飼い猫に似ている件   作:猫好きの餅

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幕間 小話集

 

 

 

・迅くんの変なところ

 

 

「綺良々…踏んでくれ」

「へ?」

 

 配達を終わらせて、洞天に帰ってきてお茶を飲んでいたわたしの前に突然寝転がった迅くんが変なことを言い出した。危ない、お茶おっことすところだったよ?

 

「…え、えと、もう一度聞いてもいい?」

「おう。踏んでくれ」

「聞き間違いじゃなかった!?」

 

 わたしの頭の中は「?」でいっぱい。常識人の鑑だった迅くんが、一体なんでこんなことに?

 

「……あの、そういうことはよそでやってもらえないかしら?」

 

 何がおかしいって、普通に刻晴さんが横にいるってところ。刻晴が迅くんを見る目が彼氏に向けるものじゃなくなってる。

 

 でも、迅くんの目は真剣そのものだった。

 

「いや、いっぺん綺良々の猫脚を顔面で味わって見たくてさ。…どう?」

「「いやどう?じゃないけど」」

 

 あと床に寝っ転がらないで?ホコリ着くよ?

 

 困ったわたしは刻晴さんに助けを求めるような目を向ける。わたしの視線に気がついた刻晴さんは「あー、そろそろ月海亭に戻らなきゃー」

とか言いながら立ち上がった。逃がすかっ!

 

「ちょっと!?迅がこんなになったのは綺良々の脚のせいでしょ!責任取って元に戻しなさいっ」

「わたしも知らないよぉ!なんか迅くんの顔がめっちゃ凛々しいし、助けてぇ!せめて申鶴さん呼んできて!」

「随分な物言いだなお前ら」

 

 むくりと身体を起こした迅くんが残念そうに言う。「踏むのはダメか…」とかぶつぶつ言いながら立ち上がると、今度は仁王立ちを決め込み始める。

 

「じゃあ、蹴るならいいか?」

「…」

「…綺良々のしっぽの毛が逆だってるわね…」

 

 やばい、やばいよ。遂に迅くんがおかしくなっちゃた。

 

「お、女の子に蹴って貰いたいの…?」

「いや違う。綺良々の脚を味わいたいんだ!」

「余計酷いよっ!」

「こ、刻晴さん、助け……っていないし!」

 

 この洞天にはもうわたしと迅くんしかいない。刻晴さんは居なくなっちゃったし、そして目の前には両手を広げて何かを待っている迅くん。

 

 

 や、やるしかないのかな?

 

「…迅くん。……行くよ!」

「よっしゃ来い」

 

 わたしは迅くんの後ろにある玄関を開け放った。そして元の位置に戻ってくると、屈伸をして関節を伸ばす。位置関係はわたし、迅くん、玄関の順番だから、ぶっ飛ばしても家には傷つかないよね?

 

「…ん?なんで玄関あけたんだ?…それに、別に準備運動する必要は…ただ猫足を当てるだけでいいんだけど」

「んーん、せっかくだしサービスするよ?」

 

わたしはさらにその場から数歩下がると、体に妖力を纏わせた。更に草元素も脚に込めてと。

 

「……よしっ、いくよ?」

「あ、あれ?…もしかして綺良々、怒ってる?」

「全然?」

 

言葉とは裏腹にわたしはスタートを切った。助走をつけて、妖力を両脚に集中。お望み通り迅くんの顔面にドロップキックを叩き込んだ!!

 

「え、ちょっ」

「迅くんの

 

 

 

 

 

 

 

バカぁ!!!!」

 

 

 

 迅くんの顔に肉球の痕が着いて数日取れなくなりました。

 

 

 

 

 

 

 

・その2

 

「……え、なにしとるん?」

 

 洞天の中に、いつも元気な姿の宵宮から珍しい、本気の困惑の声が響いた。

 

「………」

「…スー…ハー…」

 

 彼女の目に飛び込んできた、仰向けに寝っ転がって顔の上に猫の腹を載せた迅に、思わず口角が引き攣る。

 

「…ん、あ、おかえり……どした?」

「ツッコミ待ちなん?……ええと、綺良々ちゃんを顔に乗せて何やってるん?」

「ああこれ?猫吸いデラックス」

「……ああ、なるほど」

 

 まさかのツッコミを放棄した。普段の様子がなりを潜めた宵宮に、迅は頭に乗っけた綺良々を指さす。

 

「…宵宮もやるか?飛ぶぞ」

「…ちょっと興味あるけど、遠慮しとくわ」

 

 この迅という人物は猫が絡むと昔から変な人になるのだ。割とそういう彼に慣れている方の宵宮はなるべくスルーの方向で会話を進める。

 

「…これ、綺良々ちゃんは寝てるん?やけにぐったりしてるなぁ」

「多分疲れて寝てるんじゃないか?結構これやってたし」

「…ちなみに、いつからやってたん?」

「んー、あんまりやってないぞ?3時間くらい?」

「…お疲れ様やなぁ」

 

 テイワットに無いもので例えてしまうが、綺良々からしたら腹に弱めの掃除機が3時間当たってるようなものである。そりゃこうもなる。

 

「…お、お腹の毛が全部抜けるかとおもったよ……」

「起きたか。ありがとうな。最高だった」

「…くぅ、怒りたいけど迅くんの笑顔のせいで怒るに怒れない…」

 

「今度わたしも吸うからね」と聞く人によっては耳を疑うセリフとともに人状態になった綺良々はソファに倒れ込んだ。

 

 

 

 

 

 

・かまちょの蛍

 

 

「…はぁ、…はぁ、……ったく、いつまで追って来るんだよ…」

「………はぁ、………はぁ……だ、だって、逃げるから…」

「お前は熊か」

 

 国外配達で璃月港に来ていた俺は、なんと街の中でモンスターと鉢合わせになった。いやさ、そりゃ街中で怪物が、しかも声を上げながらこっち走ってきたら逃げるじゃん?

 

 俺は迫ってくるソイツ(金髪)が見えたと同時に反転し、雷元素を纏って全力で逃げた。仙人として適応してしまった身体に、神経の伝達速度を引き上げる雷元素を付与した俺の速さはそこらの人じゃまるで追いつけないくらいにはなってるのだけど、数歩走ったところでガシィと腕が掴まれ、振り払って風の翼で飛んで逃げたんだけどなんとアイツも同じ事して飛んできた。

 

 そうしてそのまま追いかけっこは続き、璃月港からモンドの端の望風海角まで来てしまった。

 

 俺は膝に手を当てて蹲り、息を整えながら横で同じく虫の息の蛍にジト目を向ける。

 

「…お前、……で、なんの用なんだよ」

「……え、いや……挨拶しようとしただけで」

「はぁ!?…挨拶すんのにお前、何km追いかけて来てんだよ…?…なんか電磁離斥っぽいことしてたし…」

「…初めてやったけどめちゃくちゃ怖かった」

 

 初めてやった割には俺に追いついて来るあたりこいつも天才なのか。アレで飛ぶのかなり難しいし、ミスったら地面に赤いシミができる。それを今になって思い出してカタカタ震えてる蛍にため息を吐いた俺は、とりあえず洞天の壺を取り出す。

 

「そういやパイモンは?」

「……あ、忘れてた」

「お前な…」

 

 俺の洞天の通行証を持っているのも蛍の方だし多分めちゃくちゃ心配かけてるだろうな。やっぱ連れて帰るか。

 

「…蛍、ここから璃月港まで飛べるか?」

「…あ、そうだワープで帰ればいいんじゃん」

「お前なんで俺が絡むとそんなにIQ下がるの?」

 

 秘境に脳みそ忘れたんか。

 

 

 

 

 

「…あっ!やっと帰ってきたぞ!どこまで行ってたんだよ!?」

「ごめん、ちょっとモンドまで」

「行きすぎだろ!…っていうか、オイラ旅人が飛んだの初めて見たぞっ?いつから出来るようになったんだ?」

「土壇場の馬鹿力だとさ。…なんで俺に発揮するかね」

「だって逃げるんだもん」

「だからって地の果てまで追いかけてくるな」

 

 パイモンと合流した後、ぷんすこ怒っているマスコットに謝りながら蛍が何か言いたげな目で見てくる。いや、俺は悪くないぞ?

 

「そういえば、迅は配達で璃月港に来たのか?」

「ああ。終わって帰るところにコレにエンカウントしたんだよ」 

「コレって言わないで……あ、仕事が終わって帰るってことはこれからヒマってこと?それなら秘境に…」

「…ん、良いぞ。行くか」

「……え?」

「……なんだよ」

 

 まぁ最近行けてなかったしと頷いたら、蛍鳩が豆鉄砲食らったような顔をした。

 

「え、…いいの?」

「…まぁ、最近断ってばっかしだったしさ、たまにはいいだろ」

「…ほ、ほんとに…?」

「…さすがに断り過ぎたか?」

 

 ぽかんとした蛍の顔に「体調悪いの?」みたいな色が混ざり始めたのが誠に遺憾だ。

 

「いいの?秘境だよ?……テイワット秘境巡り樹脂3000溶かすまで終わりませんだよ?」

「どんだけ回るんだよ……はぁ、付き合うよ」

「…やっっっ……たァっ!」 

「いや喜び過ぎ」

 

 その場に飛び上がって満面の笑みで喜ぶ蛍に戸惑っていると、手を握られた。

 

「…えへへっ、…やっぱ…迅は最高だねっ」

「…そう?…どうせ俺だけ良い奴出るんだし、それみて絶望してる蛍の顔見たかっただけなんだけど」

 

 

 空気が止まった。

 

 

「………」

「やっぱ俺は最高か。ありがと」

 

 

 

 

 

 

「……このっ、ハーレム野郎がぁ!!」

「ちょっ!声デケェ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・すりすりエウルア

 

 

 

 

「……あの、エウルアさんや」

「……なに?」

 

 すりすり。肩に触れるさらりとした感触に鼻腔をくすぐる爽やかないい香り。

 

 火にかけた鍋に蓋をした俺は、手が空いた途端にくっついてくるエウルアに苦笑を浮かべた。

 

 今日のご飯当番はエウルアなんだけど、こうして俺がこっそりと手伝ってるって感じだ。理由は、……その、最近遠征任務で洞天に来てなかったからだ。エウルアもそれがあるせいか、いつもより積極的。

 

 俺は肩に寄りかかってきたエウルアの肩を優しく抱いた。すりすりと俺の頬にサラサラの水色の髪の毛を擦り付けたエウルアは上目遣いの目線で「もっと」と言ってくる。

 

 そんな彼女が可愛くて仕方ない俺は、肩とは言わず、背中に腕を回して優しく抱きしめた。エウルアの方も俺の首に腕を回してぎゅっと抱きついてくる。

 

「迅くーん……あれ、お部屋に居ない…」

 

 しばらく抱き合ったままお互いの髪を撫でたり頬擦りしたりしていると、部屋の外から綺良々の声が聞こえてきた。部屋に居ない俺を探しているのだろう。

 

 俺は返事をしようと扉の方を向いたのだが、頬がエウルアの手に包まれて彼女の方を向かせられる。俺の視界にはどアップのちょっとむくれたエウルアの顔。

 

「……今は、私とでしょ?」

「…ああ。そうだったな」

 

 俺はエウルアを抱えたまま何歩か後ろに下がり、台所用の椅子に腰かけた。当然抱き合ってるエウルアも俺の脚を跨ぐように座り込む。

 

 グツグツと煮込まれる鍋の音と、俺たちの息遣いの音だけが台所に響く。

 

 エウルアの今の格好はめずらしく水色のワンピースで、跨るために開いた脚の肌色が眩しい。俺の視線を察したのか、心無しかエウルアがスカートの丈を上げたような気がした。絶妙な太さの太ももが俺に見せつけられる。

 

 そんなに見せつけられたらいいってことだよな?俺は遠慮なしにエウルアのスカートに手を突っ込むと太ももを撫で始める。すべすべの手触りとむちむちの感触。くすぐったいのか俺の腰に股がったままモゾモゾ腰を動かす。

 

 顔を見ると、上気した顔がずっと近づき、俺の首筋に埋まる。そのまま俺の匂いを勝手に嗅いでいるので、お仕置でスカートの中の手をさらに進ませてお尻に指を這わせた。手を動かすと、俺の匂いを嗅ぎながらも腰をびくつかせる。

 

 本当ならこのまま押し倒したいところだけど今は昼飯の調理中。そろそろ戻らないと。

 

 俺は未だ首筋に顔を埋めているエウルアの顔を上げさせて、優しく唇を奪う。スイッチが入った顔で、下着の紐に伸びる彼女の手を慌てて抑えながら、「このあと、エウルアの部屋いくから」と囁くと、俺たちは何食わぬ顔で料理に戻った。

 

 

 

 

 

 

・【彼女ーずの最近流行りの遊び】(r-17.5)

 

 

 

 

「んーっ」

「お、どうした?」

 

洞天で昼飯を作っていたら後ろから誰かに抱き着かれた。肩越しに振り返ると綺良々が満足気な顔で腕を回してくる。かわいい。確か向こうの部屋でみんなで何がゲームをしてたと思うんだけど。何かあったのかな?

 

「んーん?なんでもないよ?」

「そう?」

 

とか言いながらすりすりと肩に頬ずりをしてきて非常に気持ちいい。

 

「迅くんっ」

「なんだ?ってうわっ」

 

綺良々は振り向いた俺の頬にちゅっとキスをしてとててっと離れていった。

 

……かわ。

 

 

 

 

 

午後。

 

「迅っ」

「なんだ宵宮?」

「え、えいっ」

 

ソファで本を読んでいたら、今度は宵宮が背もたれ越しにソファに抱き着いてきた。

 

彼女の柑橘系の爽やかないい香りが鼻を通り、なんで女の子はこんないい匂いするんだろぉなぁと考えてしまっていると、宵宮が後ろから顔を出して俺のほっぺとほっぺを擦り合わせてくる。

 

「ど、どうしたんだよ」

「どや?ドキドキしたか?」

「結構ドキドキした」

「えへへっ、嬉しいわぁ」

 

宵宮はそのまま俺の頬にちゅっとキスを落とし、俺の顔の反対側に回り込んで逆の頬にもキスをした。

 

「うちも、ドキドキしとるで?」

 

そんなセリフを囁き離れていく宵宮を尻目に、俺は顔を両手でおおって蹲った。

 

「…本読む所じゃねぇよ……」

 

何が何だかわからないけど、可愛いからなんでもいっかぁ。

 

 

 

 

 

 

「に、兄さんっ」

「な、なんだ綾華?」

 

今度は綾華ですか。後ろからではなくソファに座る俺の正面から話しかけて来た綾華に期待10割で返すと、顔を赤くてスカートの裾をニギニギした彼女は片手で俺の目を覆ってくる。

 

「…し、失礼しますっ」

「えと、何も見えないんだけんむっ…」

 

暗くなった視界の直後に唇にとてつもなく柔らかい触感。恐らく今俺は綾華にキスをされている。せっかくなので堪能していると、唇と手を離される。

 

見ると、さらに真っ赤にした顔をポニーテールでぐるりと巻いて隠した綾華がぱたぱたと逃げるように去る後ろ姿が見えた。

 

 

 

 

 

 

「…迅」

「おうどうした」

「ちょっといいかしら?」

「喜んで」

「な、なんでそんなにやる気に満ち溢れているのよ……」

 

君らのせいだろどう考えても。

 

こちとらもう本読む所じゃなくなったわ。刻晴は俺の様子に驚きながらも、赤い顔で俺の目を綾華同様塞ごうとしてくる。

 

「そうさせるか」

「えっ、じ、迅っ?…ぁんんっ」

 

もう何してくるかわかったので今度は逆に刻晴の目を手で覆って抱き寄せ、唇を奪ってやった。

 

刻晴は驚いて抵抗するように身動ぎをしていたが、次第に俺の手を掴んでいた彼女の手が絡んで来る。

 

ちゅっと音を立てて唇を離すと、真っ赤っかになった茹で刻晴は逃げるように部屋を出ていった。

 

「…じ、迅?」

「ん、どうした?」

「ちょっと、いいかしら」

 

最後はエウルアか。

 

座る俺の脚を跨るようにエウルアは乗っかってきた。脚に柔らかな重みが感じ取れ、頬を染めた彼女と目が合う。そしてそのまま俺の両頬を手で支えると、ゆっくりと唇を重ねてきた。

 

「…んっ」

 

目を開けてみると、目の前に目を閉じたエウルアの綺麗な顔が映る。それを見ているうちに、ムクムクと反抗心が湧いてきた。多分これゲームの罰ゲームか何かだと思う。なら、俺から反撃しても別にいいよな?

 

「…んっ、…んん!?…ちゅっ、ぁっ、じ、じんんむっ……ちゅっ…んぅ…」

 

俺が突然舌を入れたものだから、エウルアが驚いている。その隙に俺はエウルアを抱きしめると、ソファに押し倒した。そのまま舌を最大限活用してエウルアを攻め立てる。

 

「……んぅ、んちゅっ…ちゅ…ちゅむっ…じゅるっ……んぁ、…んちゅっ…ぁんっ…ふぁんっちゅゅうぅぅ…」

 

激しいキスにお互いの舌がお互いの口の中を行ったり来たりする。驚いていたエウルアも途中から蕩けた顔で舌を絡めてきて、彼女の脚に至っては俺を離さないと言わんばかりに挟んでくる。

 

トドメに俺は、エウルアの両耳は塞いだ。そうすることでキスの音がエウルアの脳内に直接響いて効果が絶大になる。

 

「…んっ!?んぅぅぅ!」

 

エウルアの力が抜けたので唇を離すと、脱力してくてぇっとなっているエウルアが荒い息を吐いている。押し倒したことによって服は乱れて捲り上がり、トロトロに溶けた目の奥にハートマークが幻視できる。散々吸われた舌が口から覗くのが見えて、言いようのない感情が湧いて出て来た。

 

あーもう、そんな顔をされちゃこっちも我慢できん。俺はおもむろにエウルアの耳をすりすり触るとぴくっと身体が跳ねた。

 

俺はそのまま耳を刺激しながらも、再度キスをするためにエウルアに顔を近づけ……

 

 

「す、ストォーップ!!」

 

綺良々の慌てた声が聞こえて、我に返った俺はパッとエウルアから離れた。

 

声がした方を見ると顔を真っ赤にしたエウルア以外の面々が顔を覗かせている。

 

「わ、わたし達がからかってたのは謝るけどっ!い、いくらなんでもやりすぎだよぉ!」

「…す、すごいもんを見てもうた…」

「……あ、あわわ」

「……私も……そうしてくれたら良かったのに…」

 

話を聞くと、どうやら向こうでやっていたカードゲームの罰ゲーム的なもので俺にどれだけアプローチできるか試していたらしい。そんでエウルアの時に俺が決壊して、それを止めに来たんだそうだ。

 

「…そ、そうだったのかよ…?」

「うう、せめてあと1回耐えてくれれば2周目のわたしだったのに…!」

 

などとぐぬぬしてる綺良々にやられたのでキスでもしてやりたいが今は我慢。俺はみんなでエウルアを起こそうとする。

 

「え、エウルアごめんな……大丈夫か?」

「だ、大丈夫よ…迅が謝ることじゃないわ。……意識が飛ぶところだったけど…」

 

エウルアはフラフラと立ち上がると「お、お風呂に入ってくるわ」と外に出ていった。

 

残された面々に、俺はジト目を向ける。

 

「えっとつまり、ちょっとずつアプローチを上げていって丁度俺が自分のところで決壊するように仕向けてたって訳か」

「あはは…そ、そういうことやなぁ」

「綾華ちゃんがいきなりキスしたのは予想外だったけど」

「あれはめっちゃ効いた。特に手で目隠ししてくるのばずるいよ」

 

そんなことを話して綾華を赤面させていると、刻晴が後ろから抱き着いてきた。

 

「わ、私もエウルアみたいにしてくれないかしら?」

「「「なぁっ!?」」」

 

最近の刻晴、アプローチがどストレートなので俺の顔も熱くなる。さっきは勢いで行ったけどさすがにこのメンツが見てる中で……と断ろうとしたその時、他の3人も対抗し始めた。

 

「そ、それならうちもっ!」

「わ、私もお願いしますっ!」

「ちょっと!迅くんの唇はわたしのだよ!」

「俺のだよ!」

 

 

 

今日も洞天は平和です。

 

 

 

 

 

 

 

 

・彼の好きなところ(エウルア視点)

 

 

「北西に巣を作っていたヒルチャール、殲滅完了したわ」

「ご苦労。……随分早いな。この件を伝えたのは今朝のはずだが…?」

「……別に、ちょうどうちの隊の手が空いてたから、ちゃっちゃとやっちゃっただけよ」

「……遊撃小隊は昨日まで遠征だったはずなのだがな…」

 

 せっかく朝イチでこなしてきたって言うのに、ジンは私を疑い深い目で見る。

 

 実際、ヒルチャール掃討は明日でも良かったのだけれど………どうしても明日は、明日だけはダメ。

 

 報告を終えて部屋を出て、騎士団本部も出る。心做しか早足で家に向かう間、街の人たちに話しかけられるけど、今は時間が惜しい。小さく挨拶するだけに留めて、家に戻るとふぅと息を吐いた。

 

 部屋に着いた私は速攻で服を脱ぎ捨てシャワーを浴びる。身体や髪をいつもより丁寧に洗うと、もう一度いつもの騎士服に着替えた。

 

 本当はもっとラフな格好でいいのだけれど、……その、…いつも、迅に会うときは綺麗な格好で居たいから。

 

 いつも格好に着替えてカチューシャも付ける。鏡の前で変なところがないが入念に見て髪も整えると、部屋の中央に洞天通行証を出した。目を閉じてそれに触れると少しの浮遊感と共に周りの空気が変わる。ゆっくり目を開けると、私は洞天の中にいた。

 

「……すーっ……ん……」

 

 洞天は、迅の仙力でできているだけあって、中の空気にうっすら彼の香りがする。男の人の香りが漂うって言うと変に思う人もいるだろうけど、迅の香りは女の私たちから見てもいい匂いがする。なにか香水を使ってる訳じゃないと思うけど……。

 

 ともかく、この香りは私にとってはご褒美でしかない。どうせこの後本人のも嗅ぐだろうけど、どうせならと深呼吸しながら邸宅まで歩いた。

 

「……た、ただいま」

 

 邸宅に入った時のこの挨拶は未だ慣れない。帰ってこない返事に、家主は奥かしらと中を進むと、暖炉の前に置いてあるソファに深く腰かけた迅を見つけ、頬に熱が入る。

 

 ───そもそも、今日なぜ私が任務を速攻で終わらせてここに来たのか。それは今日なら迅と2人きりになれるから。前々から今日の夜と明日、みんなは来れないことがわかっていた。私も遠征帰りで明日はオフ。明日まで迅を独り占めできるの。

 

 私は、彼に話かけようと視線を向け……、悶絶した。

 

 

 

 めっ、眼鏡つけてるじゃないっ……!

 

 ラフな格好でソファに深く座った迅は、何やら本を読んでいるようだった。そのためが端正な顔に黒縁の眼鏡が掛けられていて、あまりの不意打ちの威力に直視ができない。

 

 は、初めて見たけど……似合うわね…。

 

 彼の澄んだ空色の瞳は私の好きなところのひとつ。それがレンズのせいで少し大きく見れて、要は私の好みだった。

 

 以前は男の好みなんて考えたこともなかったし、どうせローレンスの私が好かれるなんてことないと思っていたけど、今や好きなタイプは「迅」。これに尽きるわね。だから多分、迅が髪を伸ばそうが眼鏡を掛けようが私はずっと彼が好きなの。これだけは絶対に断言出来る。

 

 気付けば、私は迅の隣に腰掛けてじっと彼の横顔を見つめてしまっていた。

 

「……おかえり、エウルア。……どうした?」

 

 さすがにそこまで近付かれれば迅だって気づく。ちらりととこちらを見て微笑んできた威力に耐えきれず、私は目を逸らした。

 

「……べ、別になんでもないわ。…それ、掛けてるの初めて見たから」

「ん、ああこれ?……閑雲さんがくれたんだよ。なんでも目の疲れを癒してくれるらしくて」

「へぇ、でもあなた、目が悪いって訳じゃないでしょう?視力いくつなのよ」

「…うーん、一応これでも仙人だからなぁ。………素で3.0くらい?」

「……流石ね」

 

 聞いた事ない数値に私は呆れた目を向ける。…ということはずっとそんな視力で私を見てたってことかしら。……なんかちょっと恥ずかしいわね。

 

「それで、なんの本読んでたの?」

「この前八重宮司がくれたやつ。意外と面白いぞ」

 

 迅は今日はここまでにするかと栞を挟んで眼鏡を外す。ちょっと勿体なさそうに見てた私の視線に気が付いた迅は、ちょっと笑いながら、眼鏡を私に差し出して……。

 

「……エウルアも似合うよ?」

「……!」

 

 そう耳元で囁かれ、私の顔が熱くなる。掛けられた眼鏡を取られる時に耳に指が当たって、擽ったさに思わず肩が跳ねてしまった。

 

「……ばか」

 

 全く、この男といると調子が狂う。

 

 いや、むしろ…狂わさせるのが心地よいとまで感じる。

 

 私はもう、彼にそこまで堕ちているのね。と自覚すると、視線の先の迅に対する愛がひとつ…深まった気がした。

 

 

 

 

 

 

「……そういえば、みんなは今日来れないのか」

「…なによ。私とふたりっきりだと何か問題があるの?」

「いや全然。むしろ嬉しいけど……ほら」

 

 迅はいじけた私の手を取って胸板に当てた。とくとくと少し速い鼓動が、彼が緊張してるのが伝わってくる。

 

「…緊張、してるの?」

「……当たり前だろ。そろそろ自分の美人度を自覚してくれ」

 

 すぐそういうことを言う。迅といて嬉しいところは、いつもこうやって「貴方にドキドキしている」と伝えてくれる事。彼氏を前にしている女としては、それが嬉しくてたまらない。

 

 私が迅の顔を覗き込むと顔を赤くして目を逸らす。そんな彼が可愛らしくて、思わず変な顔になってしまいそう。

 

「そ、それで晩御飯はどうするのよ。今から作る?」

「あ、それならもう用意してあるぞ」

 

 ニヤリと笑った迅が冷蔵庫を開けると、その中に鍋が入っていた。それを取り出して弱火にかける。少しするとコトコトと音が鳴って、いい匂いが漂ってくる。

 

 この香りに覚えがあった私は、もしかしてと彼の方を見る。鍋の中身を温めている間にしれっと付け合せを作ってくれていた迅は、何も言わずに目配せをするので、私は鍋の蓋を開けた。

 

「………これ、ビーフシチュー?」

「そ。今日の朝から仕込んでたんだ」

 

 迅の作る料理の中で、私はビーフシチューが好物。高鳴る胸を抑えながら、疑問にも思ったことを聞いてみた。

 

「なんで、今日作ろうと思ったの?私が来るって知らなかったでしょ?」

「や、前にみんなで予定を話した時にさ。みんなが来れない日があるって話になった時、エウルアがなにか考え込んでるように見えたから。今日来てくれるかなって」

「そ、そんなのわからないじゃない。私が来なかったらどうしてたのよ……」

「もちろん、西風騎士団訪ねて遠征先にでも届けようかなって。俺狛荷屋だし」

「なんの理屈よ、もう…」

 

 ……どうしよう。まさか迅の方も、今日私に来て欲しくて、朝から好物を作ってくれてたなんて。

 

 ………嬉しすぎる。

 

 ああ、ダメだ。私は本当に、迅のこういうところが好きだ。イタズラが成功した子供みたいに、いつもなら大人っぽい雰囲気でいる所を、私の前だと子供っぽくなるところが好き。

 

「……そう、………ありがと」

「もちろん、蒲公英酒にオレンジも漬けてあるぞ?」

「………ほんとに、貴方。私達以外の女の子にこういうことしないでよね?」

「するわけないだろ。エウルアが特別なんだから」

 

 だから本当に、自分のの攻撃力を自覚して欲しい。そんな気遣いを受けた女の子がどんだけ嬉しいか、知らないでしょ?

 

 そんなな彼に抱きつきたくなる衝動を必死に堪えながら……無理よ。

 

 ぎゅ。

 

 我慢できなくなった私は、迅に正面から抱き着いた。彼は優しく抱き返して頭を優しく撫でてくれるけど、耳元に感じる鼓動はやっぱり少し速い。ドキドキしてるのにそれを隠して優しくしてくれている迅に、どうしようもなく嬉しくなる。

 

 これはもう沼だわ。私、もう迅から抜け出せる気がしない。こんなに会ってても毎日好きが更新される。新しい好きなところが、元々好きなところがさらに好きになる。その繰り返し。

 

「………大好き」

「っ」

 

 あ、また鼓動が早くなった。頭を撫でていた彼の手が、私の耳を触りながら頬に移動する。

 

 何をするかわかった私は、腕を彼の首に回して自分から唇を重ねた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






綺良々とエウルアが多いのは突っ込まないで。

どのエピソードが好きでしたか?

  • 変な迅くん
  • かまちょの蛍
  • すりすりエウルア
  • 彼女ーずの遊び
  • 彼の好きなところ
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