職場の先輩がウチの飼い猫に似ている件   作:猫好きの餅

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 新年、明けましておめでとうございます。今年もしょくねこをよろしくお願い致しします。

 

 そして、本編が進まなくて本当にごめんなさい(新年初投稿が番外編の作者の屑)。


『番外編その2』周りの子達も割と違うようです

 

 

 

 

 目が覚めたら、横に綺良々が引っ付いていた。

 

 身体だけ起こして周りを見るとまだ時間は5時前。起きる時間にしてはまだ早いけど、いつの間にか俺の方の布団に侵入して気持ちよさそうに寝てる綺良々が爆弾すぎる。

 

 なのでこっそりと布団から抜け出し、霧切を持って外に出た……ところで。

 

「……早いのね」

「…エウルア。おはよう」

 

 なんと先に起きてたらしいエウルアとばったり出くわした。どうやら踊りの練習でもしてたみたいで、ショートパンツとTシャツのラフな格好だった。このままじっと見続けてジト目を頂戴してもいいけど、流石に怖いのでやめておく。

 

「そういえば、昨日は黙ってくれててありがとな」

「…別に、お礼を言われることじゃないわよ。………ねぇ」

「なんだ?」

 

 エウルアは俺へずいっと近づく。整った顔がすぐ近くまで来て、ちょっと頬が朱に染まった。

 

「昨日の話を聞いて…その、寂しくないの?……本来なら、私があなたの……その」

「そりゃ寂しく無くはないよ。……でも、それを出す訳には行かないだろ?」

「……わ、私なら……」

「……え?」

 

 エウルアは何を言っているのだろうか。彼女は赤くなった顔のまま、自分の胸に手を当てる。

 

「私なら、……少しは協力してあげられるけど」

「…どういうこと?」

「…っ、だ、だからっ!……その、ハグとかの恋人とやってる事を私にはしていいって言ったのよっ!」

「え、ええっ…?」

 

 俺は、いいの?と動きそうにった身体を殴って止める。っていやダメだろ。いくら本人がいいって言ってても……流石に…。

 

「ど、どういう風の吹き回しなんだ?…俺としては昨日みたいに距離取ってくれてる方が良かったのに」

「昨日、あんな話聞いちゃったら…そんなこと出来ないわよ。……だって貴方、放っておいたら痛いの我慢して先に進んじゃうタイプでしょ?」

 

 だから、ほらっ。と両手を広げてくるエウルア。そんな姿に俺は凄まじい愛しさを感じ、たたらを踏んだ。

 

 俺は仙力で、認識阻害と防音の結界を貼り、腕を広げるエウルアに1歩近づく。

 

「……嫌だったらすぐに言えよ?」

「…ええ。………きて?」

 

 あーもうくっそ、やっぱり敵わねぇ。

 

 俺は辛抱堪らず、エウルアを優しく抱きしめた。

 

「…ん……」

 

 エウルアも俺の首に腕を通してギュッと抱きしめてくる。身体の全面に柔らかい感触が広がり、そして俺とエウルアの身長差だからこそ成立するこのジャストフィット感。

 

 俺の肩や腰、腕のパーツの隙間にエウルアの身体がすっぽりとハマる感覚がして、満足度がものすごい。

 

「…エウルア」

「……迅……どう?」

「……やっぱエウルアがいちばん抱き締めてて気持ちいいな」

「……そうなの?」

「…ああ。エウルアはどうだ?嫌じゃないか?」

「……ん…」

 

 エウルアは俺の腕の中で身動ぎをする。顔を俺の首に埋めてそのまま動かなくなった。

 

「……その、悪くない……ううん、……これ、好き…かも」

「可愛すぎるだろ」

「…や、やめてよ」

 

 これは浮気に入るのかな。…入りそうだなぁ。

 

 5分くらい抱き合って、満足した俺はハグを解く。まだ顔が赤いエウルアは、ポーっと俺の顔を見る。

 

「…ね、私にだけ教えて?…関係はどこまで進んでるの?」

「………やることは大抵済んでるとこまで」

「……っ…やっぱり…」

 

 俺の返答に顔を真っ赤にしたエウルアが新鮮で可愛い。

 

 シャワー浴びて来るわと足早に去っていく彼女を見送った俺は、気を取り直して軽くなった身体で朝の鍛錬に励む。

 

 素振りから始まり、雷元素の操作、元素視覚の鍛錬へ続ける。前にもやった、反射結界を使った鍛錬も行う。

 

 作った結界に楔を4発発射して、それを目を閉じたまま捌いていく。

 

 最初はしっかり避けていくのを、次第にだんだんと動きを小さく、細かく絞って元素視覚と実動作のラグをミリ単位で修正。

 

 そして修正しきったら楔を増やす。これを俺が限界だと感じるまで繰り返していく。

 

 次第に回避が厳しくなり、霧切の迎撃も選択肢に入れつつ、体捌きで受け流していく。

 

「……シッ!」

 

 捌いて、躱して、斬って、逸らして。無心でただひたすらに飛んでくる楔を対処し続ける。

 

 それが慣れてくると、今度は結界を狭めて速度を上げ、目を開けて蒼ノ雷光を発動。音速を超えて飛んで来る楔を霧切で叩き落とす。

 

 それを続けるうちに、だんだんと頭の中がクリアになっていくのを感じた。あー、これこれ。これが気持ちいいんだよ。

 

 高出力化された雷が身体の速度を限界以上に引き上げ、それでいて体捌きのキレも増していく。

 

 1歩間違ったら大怪我のこの鍛錬。その中で楽しいって思える辺り俺も夜叉なんだなぁ。

 

 というか、俺これどんくらいやってるんだ?無心でやってたから時間感覚が薄れてる。始めたのが早朝とはいえみんなが起き出す前に終わらせないと。

 

 俺は電磁付与で残りの楔を刀身に引き込み、吸収する。はい、これで元素も減らないっと。

 

 結界も解いて、霧切を鞘に納めた俺は大きく伸びをした。やべ、今何時だろと振り返ったところで。

 

 

 

 俺の方を凝視していた全員と目が合った。

 

「……っと、…お、おはよう?」

「…………」

「な、なに?」

「……じ、迅君…だ、大丈夫っ!?」

「え、えええ?」

 

 震える手で俺を指さしてた蒼が慌てた顔で詰め寄ってくる。それに続いた慌てた顔の綺良々達も走ってきた。

 

「か、身体は大丈夫なの!?」

「えっと、うん。あれくらいなら問題ないよ」

「ほんとにっ?…迅くん、倒れたりとかしない?」

「確かに、前は使ったら危なくなったこともあったけど…今は使いこなしてるからさ」

 

 そう説明すると、みんなは胸を撫で下ろした。が、直ぐにずいっと顔を寄せてくる。

 

「大丈夫なら良かったけど、あんまり心配かけないでよね」

「ああ。……その、ありがとう」

「別に、いいけど」

 

 みんなの話を聞くと、跋掣戦で蒼が使った時には撃退後に昏倒したらしい。そっちはタルタリヤと戦ってないからそれで済んだってことか。

 

 まさかそんなに心配されると思ってなかったので、眉を寄せて心配してくれるみんなにちょっと申し訳なくなる。

 

 多分蒼が倒れる現場を見てたせいで一際心配してくれた刻晴が呆れた顔をして言う。

 

「全く、みんなが起きても迅だけいないからって様子を見に行った蒼が涙目になってたから、一体何かと思えば…」

「こ、刻晴っ!」

「ほんと、お騒がせしました」

 

 何やら蒼が慌ててるけど、そりゃ自分が倒れたりした技を俺が使ってたらびっくりするか。

 

「じ、迅君は温泉入ってきて?…私たちで朝ごはん作っちゃうから」

「昨日から悪いな」

 

 そう言って足早に邸宅に戻る蒼を尻目に、そういえばと刻晴に聞いてみた。

 

「なぁ、そっちの跋掣戦ってどんな感じだったんだ?」

「跋掣?……確か、島と群玉閣と死兆星号に別れて攻撃して、津波を申鶴が止めて…。特に被害はなかったわね」

「それに蒼も参加してたんだろ?配置は群玉閣か」

「…ええ。私は島の方だったから見てた訳じゃないけど、群玉閣から雷元素を飛ばしてたわね」

「……なるほど、蒼は狛荷屋じゃないから俺の時と違って綺良々もいないわけか」

 

 えっ、わたしも参加してたの?と目を見開く綺良々に頷きを返す。

 

「話を伺えば伺うほどこちらとは違う点が見つかりますね…」

「そうみたいだな。……あ、今気がついたけど綾華…、稲妻から帰ってきた蒼になんか貰わなかったか?」

「…え、ええと…確か扇子を頂きました。青地に白の蝶々が可愛らしくて、今でも大切に使っていますよ」

 

 そうだよ。なーんか昨日から綾華を見る度に違和感を感じると思ったら磐岩結緑吊ってねぇからだわ。つーか、霧切のお礼とはいえ2年越しの再会に刀あげる俺って結構アレじゃね……?

 

「に、兄さん?どうかなさいましたかっ?」

「…いや、なんでもないんだ…。はぁ、俺ってダメな兄貴だなぁ」

「本当にどうされたのですか!?」

 

 俺ももうちょっと気の利いたの渡せばよかった。綾華に「俺の方だと璃月の名刀をあげたんだ」と話したら「兄さんからの頂き物に優劣などありませんっ」と天使の笑みで返されて、俺は思わず成仏しそうになった。俺は悪鬼かなにかかな?

 

「…まぁ、細かいことは朝ごはんの時にでも話すよ。……風呂入ってきます」

 

 そそくさと温泉に向かい、汗を流して湯に浸かる。さすがに2日目となって彼女達と話すのも慣れてきた。昨日の寝る前の時間が大きいな。蒼に感謝だ。

 

 昨日もササッと入ったけど…、なんな俺のとこより物が多い気がするなぁ。あっちに置いてあるのは見覚えあるからたぶん綺良々達のものなのはわかる。……ということは、あの見覚えのないやつが蒼の……。

 

 なんか、見ちゃいけない気がして俺はそれらに背中を向けて温泉に浸かった。

 

 

 

 

 

 邸宅の中に入ると、玄関で「俺の髪を拭き隊」の方々が待ち伏せていたので大人しく拭かれておく。ちなみにメンバーは蒼と綺良々に宵宮とエウルアも参戦してきた。ひとしきりもみくちゃにされたところで、格好もいつもの衣装に着替えてふうと息を吐いた。

 

 それから朝ごはんを食べながらさっきの跋掣の話をしたんだけど、案の定大騒ぎになった。

 

 俺のと蒼のとの違いを較べてたところで「あ、蒼は俺と違って死にかけてないんだっけか」と口が滑ってしまい、蒼が過剰反応。

 

 死にかけた!?と立ち上がりそうになるみんなを落ち着かせて、ことの内容を話したわけだけど。

 

 まぁ、タルタリヤと戦ったあとの瀕死の身体で無理やり蒼ノ雷光を使って、ダメ押しに蒼雷一穿しちゃってるし。それで心臓がちょっと止まったと答えたら場の空気が死んだ。

 

 その後、心配一色の顔の蒼に「今は…大丈夫なの?」と訊かれたので、もう言ったれと「あと1回死にかける。ごめん」と返しといた。

 

「……あの、綺良々さんや」

「なに?」

「どうしてそんなに俺の頭をなでなでするんだい?」

「だってぇ。迅くんすごい大変そうなんだもん。わたしが癒してあげないとって」

「ありがたいけど、逆に落ち着かないよ」

 

 それに俺、撫でられるよりも撫でる方が好きだしと、ソファで隣に座る綺良々の頭の上に手を持って行った。

 

「……撫でてもいいか?」

「もちろんっ。えへへ、実は迅くんに撫でられてみたかったんだぁ」

 

 なんだよもうこの猫はどの世界線でもクソ可愛いな持って帰ったろうか?

 

 一瞬俺の裏の人格が顔を出そうとしてたのをフル無視して綺良々を撫でていると、綺良々の隣にちょっとムスッとした顔の蒼が座った。なんか俺から綺良々を奪うみたいな感じで彼女を自分の方に抱き寄せる。

 

「……迅君、綺良々撫ですぎ」

「そういう蒼だってすごい撫でてるじゃんか。綺良々が溶けそうだぞ?」

「…えへへへ〜」

「ふふっ、綺良々は私の方が気持ちいいってよ?」

「えっ」

「え、そうなのか?」

「にゃ!?…ふ、ふたりとも、わたしは別にそんにゃ…」

 

 溶けたりあわあわしたりで忙しい綺良々が可愛い。可愛いのはいいんだけど、せっかく撫でてた手が空いてしまった。……ちょっと仕返しを込めて、蒼の頭に乗せてみることにする。

 

 マジで髪質いいな。

 

「な、なな何してんのっ?」

「いや、手が空いてたから」

 

 びっくりした顔の蒼は頬を染めつつも振り払ったりしなかった。大人しく撫でられだしたのを意外に思ったけど、想像よりも蒼を撫でるのが良くてそのまま続けてしまう。

 

「…ぅ、迅君、そういうこと向こうでもやってるの…?」

「んー、割と?」

「……ふーん」

「え、嫌ならやめるけど」

「そこまでは言ってない」

「もーっ、わたし挟んで何してるの?」

 

 俺たちの間に挟まれた綺良々はそれぞれの手を取って自分の頭に乗せる。それぞれの手で蒼と綺良々を撫でてる変な状態になったから蒼へ伸びてる手を離そうとすると、捕まえられて戻される。え、なんなのこの空間。

 

 綺良々がエウルアに呼ばれてソファを立ってからも、何となく蒼の頭を撫でて続ける。この目を細めて大人しく撫でられてる蒼が可愛いと思ってしまった。

 

「…い、いつまで撫でてるの…?」

「蒼がやめてって言うまで?」

「……」

 

 そう返してみると、俯いた蒼がすっとソファの上で近づいてきた。蒼のスカートから伸びる白い太ももが俺に密着し、ちょっと恨めしそうに俺を見上げてくる。そしてそのまま目を閉じて、少し寄りかかってきた。眠いのかな?と手を離してみる。

 

「……やめてって言ってないよ?」

「…っ」

 

 え、女の子の俺可愛すぎない?蒼に手を取られて再び頭へ。前髪を崩さないように撫でてみると、ふにゃりと満足そうな顔をする。

 

 なんか、綺良々より猫みたいだな。

 

 ちょっと出来心で、猫にやるみたいに顎の下に手を入れてみる。冷静に考えたらセクハラなんだけど、この時の俺はもう猫を撫でてる気分でやっちゃったんだけど。

 

「……んっ…」

 

 顎の下を指先で触れてみたら、蒼の口から凄まじく艶めかしい声が出て俺は一瞬で手を引いた。当の蒼も顔を真っ赤にして口を手で覆っている。

 

「じ、迅君のえっち…!」

「ほんとうにすみませんでした」

 

 ソファの端まで下がった顔真っ赤の蒼に平謝りする。やばい、普通に自分とこの綺良々と同じに触ってしまった。

 

 俺らの声を聞きつけてどうしたの?と顔を出したみんなにふたりで必死に誤魔化す。

 

「……きゅ、急にやめてよ…」

「すまん、猫かと思って」

「…私、別に猫耳とか生えてないよ?」

「…いや、仕草がちょっと。……てかこんだけ女の子多いなら猫みたいなアクセありそうだけどな。猫耳とか付けてみたらいいじゃん」

「それ、喜ぶの迅君だけでしょ。……今仕舞っちゃってるし」

「え、ほんとに持ってんの?」

 

 そこで今のは鎌だと気がついたらしい。顔を真っ赤にしてぷるぷる震えた蒼は「も、もう知らないっ!」とあっちに走って言ってしまった。

 

「……なーんか、随分と仲ええやん?」

「やっぱ自分だからかな?…宵宮はどうしたんだ?」

「昨日は騒がしかったからなぁ。…せやからちょっと話さん?」

 

 宵宮が隣に座ってニコッと笑う。宵宮とは付き合ってからも軽口や冗談を言い合うことが多かったので感覚が変わらないのはありがたい。俺は笑顔で頷いた。

 

「ああ、是非。…宵宮は蒼とは幼なじみなのか?」

「せやで。小さい頃は一緒に綾華ちゃんと3人でよく遊んでたんや」

「あー、そうか監視とかなかったから綾華も遊んでたのか」

「3人セットで過ごしとったから、よく3色団子言われてたわ。迅の方はどうなん?」

「俺の方だとよく俺と2人で遊んでたよ。その、家がアレだったから、凄く助けられたのを覚える。今はよく一緒に花火玉に火薬詰めてるよ」

「ほんまっ?」

 

 宵宮はぱぁっと表情を明るくしてこっちににじりよってくる。蒼といい綺良々といい、君ら距離感おかしくない?

 

 こっちの宵宮は常に片袖を脱いでいるようで、見えた素肌が眩しい。俺がとっさに視線を逸らすと、宵宮はにんまりも笑った。

 

「…ん〜?…ふふっ、どこ見とるん?…やっぱ男の子やなぁ」

「か、からかうなって」

「…ふ〜ん、意外と可愛いとこもあるんや」

 

 な、何だこのイケイケな宵宮は。

 

「……宵宮って結構男から告白されるタイプだろ」

「ようわかったなぁ。向こうのうちもそうなん?」

 

 なんか、こっちの宵宮はナチュラルに距離近い。ただ今のぽかんとした顔からして無自覚なんだろうな。

 

「……んー、あんま聞いたことないけど、モテるんじゃないか?」

「そういう迅の方こそモテそうやけどなぁ。彼女とかおらんかったん?」

「…うーん。…まぁそういう話が無いわけじゃないけど……」

「…ん〜?…なんや、なんかうちらに隠しとるなぁ?」

 

 やべ、勘付かれた。…でも、この宵宮になら言ってもいいかな?

 

「……エウルアにしか話してないから、他言無用な?」

「エウルアちゃんには話しとるん?……ん、なになに?」

 

 俺は宵宮にコソッと耳打ちした。目を見開いた彼女は、俺を見ると顔を赤くして手でパタパタ仰ぐ。

 

「……せ、せやったんか……あはは、なんか照れるなぁ…」

「言うと変な空気になるから、これまで黙ってたんだよ」

 

 宵宮は「そっかぁ、…そっちは迅と…」と呟くとまだ熱を持った顔を誤魔化すように頬をかく。

 

「なんか、ええなぁ」

「そうか?」

「せや。うちはあんまり恋とかわからんから、そっちのうちが羨ましいわ」

「…こっちの宵宮はお姉さんだな」

「そぉか?」

 

 すると、宵宮はしっとりとした目を向けてくる。その顔は自分の方の宵宮がやる顔だ。

 

「……なぁ、ちょっと手ぇ…握ってもいい?」

「…こういう所だぞ」

 

 幸い周りに人はいないので、ちょっとドキッとした仕返しに、宵宮と指を絡ませる。

 

「……ぅ」

「照れ屋なところは変わらないんだな?」

「……うろさいわ、あほ…」

 

 そう言いつつも、宵宮は手を離さなかった。

 

 

 

 

 

 

 その後はみんなである程度の洗濯やら掃除をする。昨日から頼りっぱなしだから手伝おうとしたんだけど、返事の代わりに綺良々が飛んできて俺をソファに縫いつけた。

 

 なでなでをやめようとすると、寂しそうな顔をする綺良々にソファからそもそも立ち上がれもしない。……俺の弱点、よくわかってんじゃねぇかよォ(馬鹿)。

 

 そういえばとみんなに予定を聞くと今日はモンドにピクニックに行くそうだ。同行を頼まれた(強制)ので街中じゃないならいいかと頷いた俺は、支度をして邸宅を出ようとした。

 

 その時。

 

 邸宅の門が光り始めた。

 

「…ん、誰か来たのか?」

「そうみたいだけど…、私が通行証渡してる人はだいたいここにいるし…甘雨かな?」

 

 そう蒼が言うのを尻目に、みんなで門を見ると見知った顔が現れた。

 

「あれ、蛍か?」

「旅人さんとパイモンさんですね。何やら慌てているようですが…」

 

 洞天に入ってきたのはご存知旅人の蛍だった。もちろんパイモンも一緒できょろきょろと辺りを見回している。

 

「…そういや、アレはどっちの方の蛍なんだろ?」

「さぁ…?」

 

 とりあえず話しかけてみるかと1歩近づくと、蛍は俺を見てぽかんと口を開けた。……この反応は多分蒼の方の…。

 

 俺が蒼へ振り向こうとしたその時、蛍が突然走り出した。そのまま俺に飛びついてくる。

 

「……おわっ!?」

「「「「「!?」」」」」

 

 飛んできた蛍は、俺の首に腕を回して精一杯抱きついてくる。彼女はそのまま満面の笑みで至近距離から俺の顔を見て。

 

「……迅っ!……よかったぁ…!」

「迅〜!心配したぞぉ〜!」

「ちょ、2人とも!?」

 

 ちょ、俺の方の蛍かーい。

 

 多分、帰らない俺の様子でも見に来てくれたのかな。蛍に続いてパイモンも飛び着いてきたせいでいよいよ前が見えない。

 

 そこにみんなが駆け寄ってくる。

 

「……え、えっと……迅くん。…そっちの旅人は…」

「……あ、ああ。俺の方の蛍だと思う」

 

 とりあえず顔面に飛びついてきたパイモンを引き剥がして下を見ると俺の胸に蛍が顔を埋めていた。なんとなしに後頭部を撫でてやるとそのままぐりぐりしてくる。

 

「………おーい、そろそろ…」

「………もうちょっと……」

 

 そう言いながら、蛍は離れようとしない。

 

 やばい、こやつ再会の勢いで周り見えてねぇ。2人きりの時のような甘え方をしている蛍に戸惑っていると、首筋が何故か冷えた。首だけで振り返ると、笑顔の蒼がじっと見ている。

 

「………ふーん…?」

 

 

 なんだか、蒼がすごい怖かった。

 

 






 どちからと言うと、蒼ちゃんは=迅くんって言うよりは、迅くんポジションの女の子の別人、って感覚だと読みやすいかもです。

 
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