職場の先輩がウチの飼い猫に似ている件   作:猫好きの餅

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 お待たせしました。新章開幕でございます。


4章 正義を覆う曇天を
1話 迫る機械へ、蒼雷は迸る


 

 

 

 

「─────おしっ」

 

 俺は、自分の部屋で装備を確認する。

 

 今日から俺は、もう一度フォンテーヌへ行って「連続少女失踪事件」の調査をすることになる。ナヴィアが言っていた内容を聞くに、犯行手順や原始胎海の水という実質的な凶器が見つかった、見つけられた以上これまでの様に慎重には行動してこないと推測する。

 

 俺が犯人の立場ならそれを看破した人物を狙うので、昨日ナヴィアには極力外食はしないようにと言っておいた。稲妻からフォンテーヌまでってなると行くのに1日近くかかってしまう。

 

「…とりあえず、早めに行ってみるに越したことはないな」

 

 ちなみに今俺がいるのは紺田村の自宅の方。霧切を腰に差して、風の翼を羽織るって部屋を出ると、いつも通りばあちゃんと綺良々が朝ごはんを作ってくれている。

 

「おはよっ!迅くんっ」

「おはようさん。準備はできたかい?」

「ああ。バッチリだよ」

「そんなら、行く前にしっかりご飯食べて、力つけて行っといで」

「うん、いただきます」

 

 その気になれば洞天にはかえってこれるけど、紺田村のこの家には帰って来れないからな。その分味わって食べる。

 

「ごちそうさま。すっげぇ力着いたよ」

「当然さね。ばぁちゃんも何回か綺良々ちゃんに連れてもらって洞天に紺田煮作っとくから、帰ってきたとに食べるんだよ」

「ああ、ありがとう」

 

 ばぁちゃんにお礼を行って立ち上がる。玄関を出る前に装備の最終確認をして、綺良々と一緒に外に出た。

 

 そのまま、二人で手を繋いで離島まで歩く。

 

「……わたしも明後日くらいに配達でフォンテーヌ行くから、その時にまた会お?」

「ああ、千織屋の依頼だっけ?」

「うん、……洞天には帰ってくるんだよね?」

「ああ。毎日は厳しいだろうけど、時間が空いたら帰ってくるよ」

「うん、待ってるね?」

 

 綺良々はそれでも寂しいのか、手を握りながらおでこを猫の時のように肩に当ててくる。頭を撫でてやると、ゴロゴロ喉を鳴らしてさらに擦り寄った。

 

 離島に着くと、俺の見送りに綾華と宵宮が来てくれていた。

 

「2人とも、見送りしなくても良かったのに。結構早朝だぞ?」

「兄さんと旅立ちですから、家でじっとなんてして居られません」

「せやで。頑張ってきい!」

「ああ。ありがとうな。兄さんにも行ってきますって言っといてくれ」

「はいっ」

 

 宵宮には軽いハグ、綾華は目を閉じて頬に俺の手のひらを当てる。なんか2人とも、俺が行きにくくないように、スキンシップを抑えてくれてるのかな?

 

「…じゃ、行ってくるよ」

「はいっ、行ってらっしゃいませっ」

「いってらっしゃい!」

「怪我しないどいてなぁ」

「おう。……じゃっ!」

 

 俺は神の目から元素を引き出して、上空へリング状に展開する。3層に連なったそれの中に跳躍しながら、磁極を自分と同じ物を付与した。斥力によって俺の身体がとてつもない勢いで加速する。

 

 そのまま、俺は北西へ飛び立った。

 

 

 

 

 この前に刻晴を迎えに行くのに璃月港に本気で飛んだ時は向こうまで20分程で着いた。だけど本気で飛んだは本当に本気。蒼ノ雷光を使った時の話で、今回のように長距離飛行をする場合は燃費優先でスピードは抑えめだ。

 

 そして今回は注目度外視なので街中でも降りたりしない。そのまま上を飛ばせてもらおう。

 

 飛び始めて2時間ほどで璃月港の上空へ着いた。これを20分って、どれだけ蒼ノ雷光の倍率がやばいかがわかる。群玉閣と同じくらいの高度を飛んでいるが、やっぱり結構見られてるな。そもそもテイワットで鳥以外に飛ぶものってないから、目も引くか。

 

 そのまま璃月港を越えて、沈玉の谷へ。ここら辺まで追加で1時間だ。さすがにこんだけ長時間飛んでると退屈になってきた。景色はいいけど。

 

 まぁでも、普通に行ったらフォンテーヌまで2日くらいかかるから、贅沢言うなって感じなんだけども。

 

 そのまま飛んでルミドゥスハーバーへ。ここからフォンテーヌに入国しようと思ったんだけど、ひとつだけ誤算が。

 

「……え、入るのに許可証いるんですか?」

「はい。こちらは主に貿易のための門ですので。国民が国から出入りする分にはいいのですが…」

「あー。なるほど…」

 

 フォンテーヌらしい落とし穴が。基本的に外国人がフォンテーヌに入るには南のロマリタイムハーバーからしか無理だと言うのだ。そっちから入った人がここから出る時は大丈夫だから、全く知らなかった。

 

 俺の名を名乗ると入れて来ればするみたいなのだが、そうするには1度パレ・メルモニアに確認に行かねばならず、そっから書類作成となるとかなり時間がかかるんだとか。

 

 実際、身分証明書できる公的な書類なんて持ってない。わざわざヌヴィレットさんの手を煩わせるのもアレなので、そのままロマリタイムハーバーに行くことに。

 

「……くっそー。かなりの回り道だぞこれ」

 

 フォンテーヌがある台地を回り込む必要があるので当然めちゃくちゃ距離がある。フォンテーヌから流れ落ちる滝はすごい綺麗だったけど、フォンテーヌの堅苦しさに少しげんなり。

 

 結局、ロマリタイムハーバーに着いたのは夕方だった。

 

 こっちは特に手続き無しで入れるのでそのまま通り、リフトに乗って上へ上がる。相変わらず綺麗な国だなぁ。

 

 さすがに国内で飛ぶわけにもいかないので、巡水船に乗って行く。フォンテーヌの国だけが他の国よりも数百m高い位置にあるので日の入りも早いらしい。水平線が他よりも高いって感覚だ。

 

 フォンテーヌ邸に着いた時にはもう日が沈み始めていた。とりあえずナヴィアと蛍を探さないと。

 

 ぐるりとフォンテーヌ邸を回って探すうちに完全に夜に。あー、暗くなったから余計探しにくいじゃん。サーンドル河も行ったけど不在みたいだ。蛍も昨日はここに泊まっててもう出たそう。

 

「……歌劇場に行くって言ってたっけ」

 

 そういや蛍は昨日の事件が終わったからナヴィアとは一緒じゃないっぽい。会いたいっちゃ会いたいけど、どっちかと言うと用があるのはナヴィアだし……。本人は怒りそうだけど、聖遺物あげたら許してくれるかな?

 

 その後もフォンテーヌ邸に聴き込んでみたけどこの街にはナヴィアはいないようだ。それならあとはポアソン町だな。

 

 ポアソン町には今までナヴィアに連れてってもらってたから行き方がわからない。調べたらエリニュス島から浅瀬を歩いていくらしい。ものすごい遠回りになるので申し訳ないけど飛んで行くことにする。

 

 俺はめちゃくちゃ日にちを確認して今日が月初めじゃないことを確認する。前回捕まったの結構トラウマなんだよな。

 

 ちゃんと月の中旬なのを確認して、俺はフォンテーヌ邸の東側から外に出る。

 

 俺は風の翼を広げようとしたけど、向こう岸まで意外とない。600mくらい?

 

「なら飛ばなくていっか」

 

 俺はそのまま電磁離斥でジャンプした。当然跳躍だと届かないので水面が迫るが、その度に元素を固めて足場をつくり、「ほっ、ほっ」とそれを踏んで跳躍を繰り返す。最初はこれ一個しか作れなかったって考えると感慨深いな。

 

 ほいほいと10回くらいに分けて跳んでポアソン町の上に着く。そのまま梯子が付いてる穴に飛び降りていくとポアソン町だ。

 

 ポアソン町だと俺は顔が知れてるのでみんなびっくりしながらも出迎えてくれる。話しかけてくれたのは棘薔薇の会の構成員だ。

 

「おやっ、迅さん?」

「あ、お久しぶりです。ナヴィアに呼ばれて来たんですけど…」

「ああ、お嬢様なら奥に……って、あれ?」

 

 その人につられて奥の本拠地を見ると、なんか騒がしい。何かあったんだろうか。

 

 そっちに行ってみると、団員たちがなにやら慌てている。俺を見るなり詰め寄ってきた。

 

「ああっ、貴方はっ!……大変ですっ!」

「…何かあったんですか?」

「はいっ、件の事件の凶器と犯行手順を看破したお嬢様と旅人さんが、犯人に狙われてるんですっ!…証拠に、この拠点に運ばれたフォンタに…毒が…!」

「…っ、ナヴィアは今どこにいる?」

「このフォンタに気がついてから、旅人さんが危ないと……蒼夜叉さんっ!?」

 

 俺は彼の説明が終わる前に駆け出していた。雷を纏って壁を蹴り、ポアソン町から出る。そのまま風の翼を広げて歌劇場の方を見た。

 

「……ッチッ!」

 

 俺は舌打ちをすると身体に纏った雷元素を高圧縮した。身体に伝う元素が一瞬で蒼へ変化する。この間の強化で、これまでよりも圧縮速度が2倍に早まっていた。

 

 俺はそのまま元素で作った足場を踏み、さらに脚へ蒼雷を圧縮。そこに、先程の構成員が昇ってくる。

 

「蒼夜叉さんっ!」

「…急いで人を集めて船を歌劇場へっ!…俺は先に行くッ!」

「わかりましたッ!」

 

 言い終わるのと同時に俺はチャージしていた元素を解放してた。もう周りとかも気にしてられない。

 

 空気が破裂するような音を後ろに感じながら、俺は飛び立った。

 

 一直線に飛んでいくさなから俺が通過したあとの水面が轟音を立てて割れていく。

 

「……間に合ってくれよっ!」

 

 俺は霧切の柄に手をかけながらそう呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 時は、少し遡る。

 

 リネとリネットのマジックショーで発生した事件。主催のリネが容疑者として疑われ、それの弁護人を務めていた蛍。その事件も解決し、弁護に協力してくれたナヴィアの好意にあやかってもう一泊した後に、蛍とパイモンはフリーナを訪ねにエピクレシス歌劇場に足を運んでいた。

 

 もうフォンテーヌに来て4日目、最後に彼と会ってからは1週間近く経った。本来はキリッとしている蛍だが、現在の様子は……。

 

「……ぁ〜……迅に会いたいなぁ」

「…それ、今日で12回目だぞ」

「だってぇ。……はぁ、まさかここまで中毒になるなんて思わなかったんだもん」

「会いたいなら洞天に行けばよかったじゃないか」

「…昨日一昨日は忙しかったでしょ?……なんか、最近パイモン私に対してドライじゃない?」

「……迅が絡んだ旅人が毎度辺になるからだろ?」

 

 蛍はこめかみ手を当てながら「これが迅依存症かぁ」とため息を吐く。綺良々達から聞いてはいたが、まさかここまでとは。

 

 一度、神里迅という男を間近に見てしまうと、明日もまた見たくなる。それで会いに行って話して、満たされるかまその翌日にはまた……と、まるで違法薬物のような依存性を持っているのだ。

 

 本人からしたらピンと来ないだろうが、彼女たちにとっては沼みたいものなのである。

 

 とは言えど、今自分たちの目的は水神フリーナに会うこと。話によると、審判が終わってからパレ・メルモニアに帰るまで歌劇場にいることが多いらしい。

 

「……まぁ、とりあえず行こっか」

「そうだな。…でも、オイラたちが行っても出てきてくれるのか?」

「そういう時は脅せばいいでしょ。あの時の事件の審判のことでぇ〜とか言って」

「うわぁ、流石のオイラもドン引きだぞ…」

 

 蛍とパイモンはそんな会話をしながら歌劇場へと歩いていく。そして、ルキナの泉の近く通ったその時。

 

『…ヴァシェ…』

「っ?」

「…なんだ?」

 

 この前マジックショーに行く時にも聞こえたこの声。その時よりも、さらに強く聞こえてくる。

 

『……ヴァシェ……、ヴァシェ……!』

「……な、なんなの?………うぅ…」

「た、旅人っ?…どうしたんだよっ!」

 

 まるで、頭の中に響くような声と、種類のわからない強い感情。それを聞いているうちに、蛍の意識が朦朧としてきた。

 

「お、おいっ!旅人っ!」

 

 パイモンの慌てるような声を他人事のように聞きながら、蛍の意識は落ちていった。

 

『あなたはヴァシェ…なの?』

「…っ、純水精霊…?」

 

 まるで水の中のような、そんな不思議な空間で蛍は目を覚ました。聞こえた声に振り返ると、純水精霊が佇んでいる。

 

 話を聞くと、驚くべきことを沢山知ることができた。

 

 彼女…は、ヴァシェという人物と親密な関係に会ったこと。そして、自分は原始胎海の水に触れて溶けたあとの姿だということ。使徒の形は失っているが、記憶と意識はそのままの残っていること。そのヴァシェなる人物の目の前で彼女は溶けてしまったこと。それを見るヴァシェは悲痛な表情をしていたこと。

 

 このルキナの泉はフォンテーヌ中の水が集まる場所なんだそうだ。だから彼女の意識もこのに集められ、こうして蛍に届いたということ。

 

 そうまとめたところで純水精霊から早く戻った方がいいと言われ、蛍は首を傾げる。なんでと聞き返す間もなく意識がまた朦朧とし───。

 

 

 

 

 

「……旅人っ、起きろっ!」

「ん、……パイモン?」

「いつまで寝てる気だっ!」

 

 パイモンの慌てた言葉になんでと返そうとしたが、周りに響く爆音の銃声に一気に意識が覚醒する。……が、身体にまとわりつく倦怠感に立ち上がることができない。

 

「早くしないとナヴィア達が…!」

 

 蛍が意識を落としている間に襲ってきたのだろう。何者かが雇った警備ロボが通路を埋めつくしている。そして、それらとナヴィア、シルバー、マルシラックが戦ってくれていた。

 

「…旅人っ、起きたっ?」

「ナヴィア、…どうしてここに?」

「今はそんなこと言ってる場合じゃないでしょ!……とりあえず逃げたいけど…数が……!」

「わ、私も、…うぅ、…!」

「旅人っ、無茶しちゃダメだぞ!」

 

 蛍は剣を取り出すが、それでも膝を着いてしまう。ナヴィアは歯噛みをして、大剣を構え直し。……警備ロボの向こうから歩いてくる人影に目が止まった。

 

「……あれは…」

 

 そのつぶやきと同時に、最後尾の警備ロボが吹き飛ぶ。

 

 新たな敵影に振り向く警備ロボの頭部に風穴が空く。

 

 振り向いた先から次々と手にした短銃で撃ち抜いていくその姿に、蛍も見覚えがあった。

 

「…確か、水神フリーナの横にいた…」

「タルタリヤが言ってたやつだよな?…たしかクロリンデって名前だ」

 

 クロリンデは、雷元素を迸らせながら飛んで来る弾丸を剣でたたき落とす。そしてそのまま警備ロボの中へ飛び込んだ。

 

「…っ、仕掛けるなら今だよっ!」

 

 それに当てられたかのようにナヴィアも走り出す。腰だめに構えた大剣を斬り上げ、銃を向けようとした警備ロボを両断する。

 

 クロリンデも剣と短銃を持ち次々と警備ロボを破壊していく。飛んできた弾は中で撃ち落とし、雷元素を圧縮した突きは、複数の警備ロボをまとめて貫いた。

 

 棘薔薇の会とクロリンデの奮闘で、30機以上いた警備ロボが瞬く間に数を減らしていく。

 

 突然の襲撃だっが、何とかなったと蛍は安堵の息を吐こうとして、同時にパイモンが声を上げた。

 

「…あっ、増援だぞ!?」 

「…っ、反対側からっ…!」

「もうっ、どんだけ雇ってんのよっ!」

 

 警備ロボが来たのは歌劇場の東側から。今度は反対側の西側から40機近くの警備ロボが襲来する。そして、その狙いは蛍へ向けられた。ナヴィアもクロリンデも居場所は真反対。間に合わない。

 

 警備ロボは、腕の銃をまだ立てない蛍へ向け、引き金を引いた。

 

 銃声と同時に弾が迫る。蛍は、どうにか手に持った剣で防御しようとするが、踏ん張りが効かずに剣が弾かれてしまう。後ろからナヴィアの叫び声が聞こえる。…続いて迫る次弾に、蛍は来るであろう痛みに耐えるように目をきゅっと閉じた。

 

 衝撃音。

 

「……あれ?」

 

 音はしたのに一向に来ない痛みと衝撃に、蛍は目をゆっくり開けた。

 

「…ふぅ、ギリ間に合った…かな?」

 

 弾は、蛍に当たる寸前で蒼い雷が走る黒刀に止められていた。

 

 そして、止められていたのは弾だけではなかった。警備ロボ達にもその蒼い雷が絡みついて、行動を封じている。まるで麻痺したように軋む音だけを響かせて、そして大量に飛び交っていた弾も同様に蒼い色のリングが弾たちを囲って完全に静止している。

 

「な、なに…これ…?」

「…これは……?」

 

 ナヴィアとクロリンデも、たった1人の手で40機を超える数の警備ロボが動きを止めたことに困惑している。

 

 

 

 そんな色の雷元素と、この繊細な操作。そしてその黒い刀を持っているのは1人しかいない。

 

 蛍は顔を上げて、自分を守るように佇んでいる男の後ろ姿を見て、声を上げた。

 

「……迅っ!(迅ーっ♡♡♡♡♡♡♡♡♡)」

 

 ……尚、久しぶりに会えたのと自分を守ってくれたことで、内心のテンションが少々おかしくはなっていたが。

 

 

 

 






 ちょっと前に、ムアラニちゃんヒロインの作品をリメイクさせてもらってるんで、良ければ読んでいって砂糖吐いてってくださいっ。

【リメイク版】ズッ友宣言してきた子の距離感がおかしい。
   https://syosetu.org/novel/380698/

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