なんで幻想郷じゃなくて異形郷なの?   作:全智一皆

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第十七話「終戦」

 

 

■  ■

 防衛は決して失敗などではなかった。

 しかしそれは、あくまでも客観的、或いは世間的に見ればの話しであり、実際に幻想郷を防衛をしていた神鳥谷天地にとっては、失敗以外の何ものでもなかった。

 死者二名。たった二名、されど二名。魂魄妖夢と西行寺幽々子。この二人の死は、神鳥谷天地にとってあまりにも大きかった。

 特に魂魄妖夢。彼女は彼の推しと呼べる存在であり、彼が最も愛してやまなかったキャラクターだった。そんな彼女が、忌み嫌う異形の手によって無惨な姿に変えられてしまったのだ。

 幻想防衛。その達成目標は、死者のない完全なる防衛。幻想郷に存在する全ての存在が死ぬ事を許さないという無理難題。

 幻想郷を愛してやまない彼にとって、それは絶対に達成シなければならないもの。やり直しなんて出来る訳もない、ハードモードそのもの。

 神鳥谷天地にしてみれば、それは無理難題であるから失敗したのではない。自分の創意工夫が、異形に対する警戒が甘かったという自身の失態が原因なのだ。

 自責の念を感じずにはいられない。だが、それに押し潰されている暇すら彼にはない。

 彼は彼が守りたいものの為に、苦しむ暇すら存在しないのだ。

 

「……おっす、チルチル」

「その呼び方止めて…と言いたい所だけど、そうも言ってられないよね」

「まぁ、ね。…ごめんな、通信機ぶっ壊しちゃって」

「良いよ、別に。たかが通信機だから。……もう、この幻想郷は良いの?」

「うん。墓は作ってきたよし、負傷者の手当ても丁度終わった。思い残す事はない―――とは、言い難いけど。でも、居残り続けてる暇はないからな。取り敢えず確認として、異形郷に戻らないと」

「…異形郷に?」

「そ」

 

 異形は確かに殲滅した。だが、それで終わりではないというのは確かな事だ。

 異形は死ぬ。それは絶対だ。しかし、死んで終わりではない。

 神鳥谷天地は、異形はその幻想郷で死んでも異形郷でまた生き返ってしまうのではないか? という仮説を立てたのだ。

 その理由は、原作における異形達の会話から。証明するに特に相応しいと思うのは、第三次幻想破壊についての言及である。

 第三次幻想破壊。それまでの幻想破壊においても、最も攻略が困難だった幻想郷。異形の魔理沙が本気を出す事でようやく破壊する事が出来た世界ともなれば、その犠牲もきっと少なくはなかった筈だ。それこそ、原作に登場した殆どの異形は殺された事だろう。そうでなければ、第三幻想破壊を引き合いには出さなかった筈だ。

 だが、それにも関わらず、原作である第六次幻想破壊では様々な異形が生きていた。それはつまり、異形が生き返った、或いはまた生まれたかのどちらかに答えが絞られる事になる。

 生き返ったという説を通すならば、異形のアリスが居る。異形の死体を回収する事を主な目的とする彼女については深い言及がなかったが、もし異形を生き返らせる、或いは再利用する為と目的を仮定するならば納得がいく筈だ。

 殺された異形を再び生き返らせる為に、その死体を回収する役割を担っている。そうだと仮定すれば、異形が第六幻想破壊で蘇っている事にも辻褄が合うのではないだろうか?

 神鳥谷天地はそう仮定し、そしてそれを確かめる為に、異形の妖精達を敢えて潰すのではなく、残機時間を無限にするという方法を取ったのだ。

 

「残すのも癪だったが…まだ俺も、異形については完全に理解出来てないんだ。だからそうした」

「なるほど…確かに、その仮定だと色々と話しが合うね。アリスが死体を回収するのは、異形を再び蘇らせる為か…その線はなかったよ」

「あくまで仮定だけど、だいぶ良い線いってると思うんだ。次はひとまずアリスから潰す様に立ち回ろう―――今度こそ、絶対に誰一人死なせない様にしないといけないんだ」

 

 異形郷を滅ぼすには、まだ情報が足りない。敵についても、異形郷についても。

 幻想郷防衛を、情報取りの為の使い潰しの様に扱うのは神鳥谷天地としても心苦しい。だが、何もせずして知れる様な簡単な事でもないのは事実だ。

 失敗は次に活かす。自分はまだ生きているのだから。必ず活かし、次こそ完璧の結果をもたらしてみよう。もう二度と、あんな惨劇は起こさせてはならないのだから。

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