主人公が鈍感(←理由あり)過ぎて、全然進展しないじゃないか!   作:true177

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018 武装集団

 (やっぱり八条学園の奴らか!)

 

 薄々感づいていたことだったが、いざ現実になってみるとやはり緊張感に全身が支配される。そして、いちいち邪魔をしてくる八条学園に対して行き場のない苛立ちが立ち上ってくる。

 

 「ホレ、ホレ! いくら相手が刃物持ってるからって言って、そんなへっぴり腰だといつまでたっても窮地は抜けられないぞ?」

 

 挑発に対して反応しても全くいいことはない。ここは、冷静になって客観的に考えなくてはいけない。

 

 (そのお前の言葉、ほんっとにその通りだな。相手が刃物持ってるからって弱気になっても何も変わらない。……自分から行動を起こさない限り、な)

 

 亮平よりは学年が年下らしき目の前の男どもは、カッターこそ持ってはいるものの、素人でもそれ頼みで亮平を攻撃してきているのが伺える。

 

 刃物類は、使用する人がどれくらいの力量を持っているかによって脅威度が変わる。自衛隊のように厳しい訓練を受けている人が備えれば鬼に金棒のようなもので、逆に刃物に頼り切ってしまっている人が持っても、強者からの目線では刃物を持っているか持っていないかの違いがないも同然だ。

 

 (もし持ってこられたのがナイフだったら、尽くす手段が無かったかもな)

 

 「そんなちっぽけで短い刃なんか、お前みたいなひょろい奴が持ってても意味がねーんだよ!」

 

 前に闇雲に突き出して空ぶった腕を、亮平は容赦なく拳でぶっ叩いた。小指の側面が骨に当たるような手ごたえを感じた。カタッという音を立てて、男子が持っていたカッターが床のタイルへと落ちる。

 

 「ヴッ……」

 

 ほぼ反射的に右腕を左で抑えた八条学園の男どもに対し、亮平は続けざまに連続キックを決めた。右、左、右、左……。十回ぐらい続いたところで、ようやく手を緩める。

 

 「……これ以上やるか? やらないならお前ら八条学園の情報を洗いざらい吐いてくれ。前の発言を聞いた次第だと、まさかお前ひとりだけで動いてるわけじゃないんだろう?」

 

 なにも単独で乗り込んできたとは思っていない。亮平が何回も返り討ちにしている分、単独でやりあっても無駄骨に終わる可能性が高いことは周知されているはずである。

 

 「……やるもなにも、これからお前は数の暴力に泣かされることになるんだよ」

 

 亮平にボコボコにされていることで威勢は弱まってはいるが、それでも自信があるような言いぶりだ。

 

 (敵前で情報漏らすか……。これは全く情報の価値ってもんが分かってないな……)

 

 情報が漏れたことで何度も泣かされ、そして漏れた情報から推測して有利になったこともある亮平からすれば、自分の情報を敵に流すのは砂糖より甘い。暴力の中を何度も潜り抜けてきた亮平に比べれば、刃物を持てば相手に勝てると思っている時点で下だ。

 

 「オラァ! いたぞ!」

 

 騒ぎを聞きつけたのか、十人ほどが男子トイレの入り口へと駆けつけてきた。その一番先頭にいた男が一直線に殴り込んでくる。

 

 (タイマンなら、負けねーよ)

 

 亮平は正確に頸動脈に拳骨を当て、八条学園の男子をその場に倒れさせる。

 

 「いっぺんにかかって来れるならかかって来いよ!」

 

 相手の方が人数が多いのは分かっている。それは想定内だ。

 

 だが、亮平はそもそも数でまともに勝とうとはしていない。亮平には、数の利を上回る地の利がある。トイレの入り口の幅が狭いせいで、大人数が一気に押し寄せることが出来なくなっているのだ。

 

 動かない亮平を見くびったのか、それともさっきの当たりがマグレだと思ったのか……。一人、二人と再び素手で突っ込んできた。そして、先ほどの男子と全く同じ結果に終わった。

 

 「所詮、八条学園の下っ端だな! お前らには、覚悟ってもんがないだろ?」

 

 八条学園の男たちの目からは、闘志や意志が全く感じられない。

 

 あの細川ですら、自らの意志というものがあった。亮平は絶対に許すことはないが、細川には『上からされた仕打ちは必ず下に伝承する』という意志が。

 

 目の前の男たちには、それすらない。ただ数で勝てると思っているだけの烏合の衆だ。

 

 流石に男たちも亮平を警戒し始めたのか、そこからはしばらくの間膠着状態が続いた。罵声は常に浴びせられ続けられているが、何も感じない。

 

 「このままだと、一生ここから出られないぞ?」

 「さっさと降参して出てこい!

 

 そんな声も聞こえてくる。

 

 (冷静になって考えろよ……)

 

 つくづく頭が回らない奴らだと、亮平は思う。二つの意味で。

 

 一つ、一般の人も使うこのトイレをいつまでもここを封鎖するわけにはいかないこと。二つ、このトイレには裏にも出入口があるということ。二つ目は回り込まれている可能性もあるが、今まで突入してこなかった以上低いだろう。

 

 緊急時こそ冷静に。そんなことも守れないようでは、永遠に勝ちは見えない。

 

 (ここにじっとしておくのも迷惑になるし、もう一旦逃げるか)

 

 亮平から突っ込んでいくのも一つの手だが、トイレが狭いために動きが制限されてしまう。複数で囲まれてしまうと劣勢になってしまう。それに、トイレに単独で誰か関係ない人が来た場合、亮平もろとも巻き添えになってしまうかもしれない。

 

 「じゃあな、お前ら」

 

 亮平はトイレの奥の方へと駆けこみ、裏口のドアから校舎外へ脱出した。

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