主人公が鈍感(←理由あり)過ぎて、全然進展しないじゃないか! 作:true177
026 到来
冬。それは、場所によっては憂鬱にも、また待望にもなる季節である。沖縄を除いて雪が降る日本。北海道や東北など、大雪が降りやすいところでは、停電や道路の封鎖、建物の倒壊などの不利益が降りかかる。
しかし、それとは同時にスキー場など、降雪が利益となるような施設も存在する。利益と損失のどちらが大きいかは微妙なところだ。
一方、瀬戸内はほとんど雪も降らず、冬季期間も比較的温暖という特徴がある。そして、逆に、『雪が降ってほしい』という願望がある。亮平にはなぜ『降ってほしい』という気持ちになるのかは理解できない。
今日は十二月二十一日。冬休みはもうすぐそこというところまで来ているのと同時に、受験生として受験勉強へのラストスパートをかけなければならない季節だ。亮平は断じて勉強などという非効率的な詰め込みをやりたいとは思わないが、冬休みの宿題に出るものは仕方がないがやらないわけにもいかない。『受験の足しになるように』との学校からの偽善の課題をやめてくれと亮平が訴えたとして、まず学校側は取り合わないし、保護者が賛成することも無い。
冬というものは寒い。寒波が直撃した日には地獄と化す。最高気温ですら氷点下という真冬日が連日続き、雪はドカドカと振り続け、心まで凍てつくような強風が吹きこむ。防寒着を着ていてすら、耐えきれない人がるほどなのだ。夏で見るような半袖半パンで活動できる者など、いない。誰が、南極の吹雪並みの暴風雪で直立していられるのだろうか。
亮平は比較的寒さには強い体質だが、流石に猛吹雪の中を防寒具なしで出歩く自信は無い。未帆はもっと深刻で、恐らく冬の厳しい寒さが記憶に残っていないせいか、去年までは雪がほとんど積もらない地域に住んでいたせいか、気温が二桁の時ですら重装備で外出している始末だ。常にマイナスの数字が並ぶ今の時期に至っては、死んだ目つきでいつも『凍え死ぬ』アピールが飛んでくる。アピールが送られてくるうちはまだ大丈夫だろうが。
今は放課後。未帆と別れて帰宅し、ガスストーブで絶賛全身解凍中だ。除雪車が通っただろうにも関わらず、既に黒色の道路が見えなくなっていた。屋根の雪かきもいずれはしなければいけないのだが、二人以上で作業しなければ危険極まりない。死亡事故が何件もニュースで毎年報告されているくらいなのだ、亮平にだって最低限の常識というものはある。
二学期にも、面倒くさい学校行事はいくつもあった。二つの体育大会、文化発表会、何かしらの校外学習……。修学旅行とは違い、大きなトラブルは起きなかったのが幸いと言っては幸いか。それでも、やはり未帆と澪との間でもめ事が多少は発生し、押しつぶされたのはいつもの流れだったが。
「まーったく……。なんで冬休みってのは夏休みよりはるかに短いのに、宿題の量は
比例してくれないんだか……」
世の中の大体のものは、比例している。ゲーム時間とテストの点数、労働時間と賃金……。ただ、何故か宿題の量に関しては比例している気がしない。量自体は減るが、とても三分の一程度になっているとは思えない。いっそ宿題を全て撤廃し、自己で学習する形式に変えた方が定期テストでの実力差がはっきりと浮かび上がってくるのではないだろうか。まあ、愚痴を叩いても何か変わるわけでもないので、仕方がないのだが。
この時間帯、亮平の親は不在。共働きのため、夜になるまで帰ってこない。その恩恵を受けて、亮平はねそべったり立膝を立てたりしてダラダラと勉強が出来ている。
逆に言うと、電撃作戦をさせるととっさには立て直せない(ものが散乱している)ので、それは弱点だ。
『ピンポーン』
インターホンが鳴る。カギを開けられていないので、少なくとも親ではないことは分かっている。事前に約束があったのなら別だが、そうでもない限りは部屋に上がられることは無い。したがって、部屋の散らかったものを整理する必要も無い。
「はーい。どちら様ですか?」
やや面倒気味に応答する。もし業者ならば、適当に対応しておけばいいだけの話だ。
「わーたーし! 亮平くんがいるなら、ちょうどよかった!」
前言撤回、澪だった。が、様子がいつもとは違い、やけにハイテンションだ。こういう時は、何かが嬉しかったか、それとも興奮しているかの二パターンがある。まさか、ちょっとしたラッキーぐらいならわざわざ家にまで押し寄せてくることなく、電話でコンタクトを取ってくるはずだろう。ということは、つまり。
「とりあえず、玄関まで来てくれない?」
「ちょっと……。勝手に抜け駆けするなー!」
「……何もするつもりなんてないんだからね。亮平くんをクリスマスにうまく連れだそうだなんて、一ミリも思ってないんだから……」
「本音、漏れちゃってるけど……」
だんだん混沌(カオス)なことになってきている玄関前。亮平は、半ば強制的に二人の間に割り込むことを決断させられたのであった。
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