人の悩みは数あれど   作:@蛇足

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次。

『モンテスキューはイギリスの政治制度に倣い立法権、行政権、司法権という形の三権分立を主張した』。

立法権、行政権、司法権…。
立法権、行政権、司法権…。


キーンコーンカーンコーン。


ああ。
チャイムが鳴ってしまった。
ここを曲がれば辿り着いたのに。
今日もまた遅刻確定だ。







3限目 文化祭実行委員長の恋

 

 

 

 

 

『おい遅刻犯。なんとも立派な社長登校だな』

 

 

『うるさい。今敷島先生にお咎め喰らってナーバスなんだよ。ほっとけ』

 

 

 

 

1限目が終わった10分ほどの小休み。

登校して早々何度目かの遅刻で職員室に呼び出された俺はさきほどまで敷島先生から少々きつめの説教を喰らっていた。

どんよりした気分で教室に戻ると、俺の机にはまたも青柳を囲む人だかりが。

自分の席まで占領されている。

これ以上の厄介ごとは勘弁だ。

どんよりとした気分に打ちひしがれつつも早速メールでヘルプの要請を送る。

 

 

 

 

『そんなことより。早くお前に群がる野次馬を退けてくれ。人が多いし勝手に座られるし。あれじゃ自分の席に座れない』

 

 

 

 

背中越しに見える彼女はたくさんのクラスメイトたちを相手してるように見える。

先ほどからメールのやりとりをしているため、早めに気づくといいのだが。

 

 

 

 

 

『わかった。次の授業移動教室だし私は先に移動するとしよう。精々ゆっくり準備してくれたまえ。今度は遅れるなよ』

 

 

『感謝致します。青柳様』

 

 

 

 

 

 

「舞香ちゃんが動くぞ!道を開けろ!」

 

 

「すげーメールきてない?仕事の話かな?」

 

 

「わかんねえぞ。イケメン俳優からのお誘いだったりして」

 

 

「マジ⁉︎ もし本当ならすげー興奮するんだけど!」

 

 

 

ふう。

どうやらこれで自分の席に着けそうだ。 

次の授業は英語。

この授業は移動教室のため、教科書やノートなど必要なものを揃えて向かわないと。

授業開始までもう5分を切っている。

時間ギリギリになると移動先がドタバタするからな。

巻き込まれるのは避けたいし、早めにとりかからねば。

 

 

 

 

「ねえ。舞香ちゃん」

 

 

「…?」

 

 

 

 

自分の席に着いてすぐ準備を始めたとき。

他クラスの生徒たちに囲まれた中、教室を出ようとする青柳へクラスメイトが話しかけた。

 

 

 

 

「次の移動教室一緒に行こうよ」

 

 

 

 

女子3人組。

真ん中に立つ女子が青柳に声をかけ、他の2人は後ろでその様子を伺っている。

要件はごく普通のお誘い。

しかし、女子3人はもちろん青柳との接点は皆無のはずだ。

いっしょに教室移動しようなんて間柄ではないはず。

もしかして友好関係を築きたいのか。

だとするならば非常喜ばしい転機だ。

現在、青柳には仲のいい同性の友達はいない。

目の前に聳え立つ背中からではどんな表情をしているのかわからない。

果たして青柳はどんな返事をするのか。

 

 

 

 

「う、うん。いいよ」

 

 

「良かった〜。ほら梨沙も」

 

 

「うん。青柳さん、行こう?」

 

 

 

 

ぎこちなさは拭えなかったが、あの青柳が俺以外のクラスメイトと行動を受け入れるなんて。

クラスメイトと共に教室を出て行く青柳の姿を見て俺は子の成長に感動する親のような気持ちに包まれた。

おっと。そんな感傷に浸ってる場合じゃなかった。

教科書にノート。

それに筆箱。

よし。必要なものは揃った。

両手で抱えて椅子を引き、立ち上がる。

そのときだった。

 

 

 

「きゃ」

 

 

「おっと」

 

 

 

たまたま俺の隣を通ろうとしたクラスメイトと誤って接触してしまった。

幸い大事には至らなかったもののぶつかった弾みで相手の筆箱が落ち、中身をぶちまけてしまった。

 

 

 

「きよちゃん大丈夫?」

 

 

「ごめん。周りをよく見てなかった」

 

 

 

ぶつかってしまった相手は清野 虹夏(きよの ななか)

接点がないクラスメイトだが、直近では文化祭の実行委員長として活躍してた記憶が新しい。

そんな清野相手に慌てて謝罪の言葉を口にしたのだが、こちらの声は相手の耳に届いてない様子だった。

散乱した中身を無我夢中でしまっている。

授業開始が迫っていることや友人を待たせていることを加味しても、少し忙しすぎな気もするが。

 

 

 

 

「ごめんなさい青柳くん!ことりちゃん行こ!」

 

 

「ちょっといいの?森戸に声かけなくて…」

 

 

「大丈夫!ほらいこ!」

 

 

 

 

清野は筆箱の中身を仕舞い終わると一緒にいた小林に声をかけ、そそくさと歩き出した。

清野が通った後に小林が後をついていく。

その時見えた小林の表情はどことなく浮かない表情をしているよう思えたが、気のせいだろうか。

結局。

最後まで俺の声は届かなかったみたいだ。

あまり相手のことを良く知る間柄ではないが、普段からあんな性格なのだろうか。

文化祭の時はもっとこうテキパキと物事を処理する落ち着きを持っていたような。

 

考えすぎか。

単純に俺と彼女の交流の差が浮き彫りになっただけかもしれない。

お世辞にも自分のことを社交性のある人間とは言えないからな。

親しくないクラスメイトと意図せずぶつかってしまったら、とられるリアクションはあれが当然か。

そう思うと少し心がチクッとなるが。

 

 

おっと。俺もこうしちゃいられない。

早く教室に向かおう。

 

 

そう思い一歩踏み出した足先に何かがコツンと当たった。

蹴ってしまった何かは勢い良く教室の床を滑ってゆく。

あわてて追いかけ、見つけ出すとそれを拾い上げた。

俺の足にぶつかったのはまだ使われて日が経っていない、真新しい消しゴムだった。

誰のだろう。

可愛らしいデザインのカバーからして女子のか。

名前は書かれていない。

もしかしたら内側に書いてあるかもしれない。

消しゴム本体か、カバーの裏側に書いてある可能性が考えられる。

カバーを外してみる。

するとそこには広い面いっぱいに持ち主の名前が彫られていた。

 

 

 

『ななか』

 

 

 

どうやらこの消しゴムは清野の物のようだ。

さっき落としてしまった時拾い損ねたものだろう。

それにしてもこんな大きな消しゴムを拾い損なうなんて。

そそっかしいやつだな。

それにしても。

なんだこれは。

特別見ようとしなくてもその存在感から目に入ってしまう名前がもうひとつ。

その名前とは…。

 

 

 

 

「『もりとくん』…?」

 

 

 

 

『ななか&もりとくん』

消しゴムにはこう名前が書かれている。

もりと…もしかして森戸晶弘のことか?

クラスメイトの、しかも男子の名前が清野の消しゴムに彫られている。

なぜ?

教室を出る前に小林が言ってた言葉がフラッシュバックする。

清野に対して森戸がどうとか言っていたな。

文化系な清野とスポーツ系の森戸。

2人に直接的な絡み想像できなくても、小林と森戸なら不思議じゃない。

小林と森戸は確か同じバスケ部だったはず。

だったとして清野と森戸が直接繋がるイメージが湧かない。

 

 

 

 

「ほら早くしろって。準備まだ?」

 

 

 

 

おっと。結構考え事に時間を費やしてしまったようだ。

クラスメイトが連れを急かす言動がそばで聞こえ我に帰る。

いい加減俺も移動教室先に向かわなければ。

膨らむ疑問をそこそこに俺は持っていた消しゴムを握りしめると、今度こそ教室を後にした。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

「それで?これが拾った消しゴムなの?」

 

 

「ああ」

 

 

 

 

昼休み。

図書委員として図書室で仕事をしていた俺は、隣で隠れるようにスムージーを飲む青柳と話しながら、貸出と返却の受付作業を行っていた。

俺が座る受付席は図書室と扉で隔たれた小さな空間にある。

故に本来であればこの部屋は図書委員しか入れない関係者以外立ち入り禁止の部屋なのだが、今も尚群がってくる生徒たちから解放されたいと訴えていた彼女の身を案じ、こうして身を隠すための場所を提供したというわけだ。

受付から死角になる位置で壁に背中を預けるようにして床に座っている青柳。

話題は先程拾った清野の消しゴムについてである。

 

 

 

 

「確かに…名前が書かれてる。ていうか、拾ったなら持ち主へすぐに返せばいいじゃん。なんで今も持ってるの?」

 

 

 

 

場所に配慮したボリュームで話す青柳は、外していたカバーを戻すと人差し指と親指で持ち、天井に掲げてそうこちらに問いかけてくる。

見かけによらず、芯をついてくるやつだほんと。

 

 

 

 

「仕方ないだろ。すぐに渡せなかったんだ。俺が教室に入ったとほぼ同時にチャイムが鳴ったからな」

 

 

「……。」

 

 

 

 

こちらの心を見透かそうとする視線に耐えきれず、俺は目の前にやってきた生徒へ姿勢を向けた。

持っていた本を受け取り、貸し出しカードに日付と名前を書く。

受付作業を終えて本を渡すと返却期限日を添え、図書室から出ていく生徒の背中を見送った。

 

 

 

 

「今躱したでしょ」

 

 

「躱してない」

 

 

 

 

要らぬ疑いをかけられぬよう即答し、並んでいた次の生徒への受付作業に入る。

そして、黙々と作業する頭の片隅で青柳の言葉を噛み締めていた。

確かに青柳の言う通りだ。

消しゴムの持ち主が分かったのなら、さっさと声をかけて渡せばいい。

清野と移動先が同じ教室組なのだから、より声をかけやすい状況にあったのだから。

でもそれができなかった。

受付作業を終え近くに人がいないことを確認してから俺は再度声をかける。

 

 

 

 

「それに森戸ならまだしも、清野とはあんま話したことないんだ。交流のない相手に声をかけるのは勇気がいるものだろ。」

 

 

「へー」

 

 

「青柳はあるのか?」

 

 

「わかりきったこと聞かないでくれる?」

 

 

「だな」

 

 

「まあさ、もしそうだったら仕方ないけど。それなら授業が終わった後で良いじゃん」

 

 

「もちろん俺もそう思っていたさ。でも」

 

 

 

 

返せなかった。

それはこの消しゴムに2つの人物の名前が書かれていることを見てしまったことから。

あまり噂や流行りに敏感ではない俺でもこれが何を意味するのか知っている。

まさかとは思うがこの反応、青柳は気がついていないのだろうか。

全国の中高生を虜にするトップモデルの青柳が?

それはないか。

 

 

 

 

「でも…なに?」

 

 

 

これ以上1人で考えても答えはでない。

こちらを見上げる青柳へこの場合の対処法を伺おうと距離を詰めた時だった。

図書室の扉がガラガラと音を立てて開かれる。

そこには大人しい雰囲気の女子生徒がひとり。

来訪者はなんと今話の中心にいる清野だった。

 

 

 

 

「伏せろ…!」

 

 

「ちょっと…!」

 

 

 

 

俺の言葉により耳を傾けようと近づいていた青柳の肩を掴み、無理やり身を隠させる。

抗議の目を向ける青柳へ、ことの次第をアイコンタクトと口パクで知らせるとすぐに理解したようだった。

瞬時に距離を取ると、気合を入れて息を殺し始めた。

なんとなく、微かに鼻息が荒くなってる。

気配を消すことに力を入れているあまり、返って気配が増してしまっているような気が。

まあ…彼女の努力に水を差さぬようここは何も言わないでおこう。

 

 

1人でやってきた清野の様子は誰が見てもわかるようなくらい困り果てた顔をしていて、図書館内を彷徨い始めた。

前屈みで垂れ下がるボブカットの髪を片耳に掛け、床に視線を落とし続け、何かを探している。

ゆっくりと一周して改めて見えた彼女の顔は落胆の色を示していた。

目的を果たせず図書館を後にしようとこちらへ近づいてきたタイミングで、俺と目があった。

ここで俺の存在に気がついたのか、少し驚いた表情を見せると何か考える素振りをしてゆっくりとこちらへ近づいてきた。

 

 

 

 

「あ、青柳くんどうも…」

 

 

「…どうも」

 

 

 

 

薄い反応。

思った以上に気落ちしてるようだ。

 

 

 

 

「そっか、青柳くん図書委員だったんだよね…。ちょっと聞きたいことがあるんだけど…」

 

 

「ああ。俺で答えられることであればなんでも」

 

 

「実はさ、ワタシ消しゴム無くしちゃって…探してるんだよね。教室で青柳くんとぶつかったときに落としたのかなと思って探したんだけど、見つからなくて。朝教室行く前にここで勉強してたからあるかなって思って青柳くん何か知らない?」

 

 

 

覚悟していたものの、やはり探し物はあの消しゴムだったか。

少し身構えたが、ツイている。

こちらから伺うタイミングを省けたのはラッキーだ。

これでようやく消しゴムを返せる。

清野には悪いが、消しゴムの中身を見てしまったことは伏せさせてもらおう。

何も告げなければ清野のおまじないはこのまま進むことができるからな。

 

 

 

 

「消しゴムか。それなら見かけたな」

 

 

「ほんとに⁉︎」

 

 

 

 

素知らぬ顔で拾った事を告げ、知らないフリをして渡す。

それだけでいい。

一瞬の間で自然なセリフを用意しシミュレーションする。

問題ない。

一呼吸おいて筆箱に手を伸ばしたところで猛烈な冷や汗が噴き出した。

そうだ。

筆箱にしまっていた消しゴムは今そこには無い。

何故なら先程まで現物を手に取って話していたから。

なんてことだ。

今すぐ手放したい消しゴムが、あろうことか隣で気配を消している青柳の手の中にあるなんて。

 

 

 

 

「青柳くん?どうしたの?」

 

 

 

 

どうする。

あなたの落とし物は今隣に隠れているトップモデルが持ってますなんて言えない。

……。

落とし物…。

そうだ落とし物。

図書室には誰のものかわからない落とし物がたくさんあるじゃないか。

 

 

 

 

「いや。ここなら清野の落とし物があるかもなって思ったんだ」

 

 

「それは?」

 

 

「『落とし物ボックス』だ。朝ここに居たのなら届いているかもしれない」

 

 

 

手を伸ばし図書室で見つかった落とし物をまとめた箱を掴んで清野の前に出した。

ボックスの中には消しゴムの他に鉛筆や定規などが入っていたが中でも多いのが消しゴムだ。

欠けているもの。カバーがないもの。それに極限まで小さくなったものまで。

パッと見ただけでも清野の真新しい消しゴムが入ってないのがわかる。

それでも清野は手を伸ばしガサゴソと目当てのものを探し始めた。

その表情から微かな希望を抱いて探していることが手に取るようにわかる。

探し始めて数秒。

当然見つけ出すことは出来なかった清野は晴れない表情で手を引っ込めた。

 

 

 

 

「ないなあ…」

 

 

「…わかった。もし見つけたらすぐ伝える」

 

 

「うん…。ありがと」

 

 

 

 

それじゃあと一言声をかけて清野は図書室から出ていった。

はあ。

なんだこの疲労感は。

緊張の荒波が押し寄せてきたほんの数分の出来事に酷く疲れを覚える。

結局清野に消しゴム返すことできなかったな。

こんな機会逃すなら俺はいったいいつ手渡せるというんだ。

 

 

 

 

「行った?」

 

 

「ああ」

 

 

 

 

身体を丸くして隠れていた青柳が窮屈さから解放されるように身体を伸ばす。

緩く伸ばした表情をしたのも束の間、険しい顔をしてこちらに詰め寄ってきた。

 

 

 

 

「なんだよ。急に近づくな」

 

 

「なんだよじゃないでしょ。あんた何やってんの。どうして消しゴム返さなかったの」

 

 

「お前が持ってたんだから返すに返せないだろ。あの時青柳から消しゴムを取ることより第三者の存在を匂わせないことを1番回避したかった」

 

 

「そんなのうまく誤魔化せばいいじゃん。それくらい演技しなさいよ」

 

 

「バカいうな。あの至近距離で取ったら明らかに不自然だ。それに…俺はおまえと違って芸能人じゃない。そんな嘘つけるか」

 

 

「消しゴム持ってるのに知らないふりしたやつが演技を嘘つき呼ばわりすんなっての」

 

 

 

 

青柳はこれでもかと文句を吐き出すと持っていた消しゴムを突き返して部屋から出ていった。

ピンク色のカバーに収まる新しい消しゴムをボーッとした頭で眺める。

どうする。

こんな絶好の機会を逃して次はどのタイミングで返せるんだ。

こんなことに…。

こんなことに悩まされるなんて。

事態がこれほど大袈裟になるなんて思いもしなかった…。

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

まずい。

非常にまずい。

あれから何度も機会を伺っていたのに。

気がつけば帰りのHRになってしまった。

 

5限が終わった休み時間。

離れた席にいる清野を訪ねようとするも、小林と森戸のグループと話していて不発。

 

6限が終わったあと。

掃除を始める時間との間でタイミングを図ってみたものの清野たちがトイレがある方向へ教室を出て行ったため撃沈。

 

残るチャンスは放課後。

ここで決めるしかない。

拾った消しゴムを返すだけなのに。

こんな手をこまねくことになるなんて。

こんなことを明日にまで持ち越したくない。

それに清野だってこの消しゴムがいつまでも手元にないことがとても不安なはずだ。

ただの消しゴムじゃない。

だってこれは、誰にも見られてはならない秘密が記された大事な消しゴムなのだから。

 

 

HRが終了すると敷島先生が教室から出るタイミングとほぼ同じに部活組を始めクラスメイトたちが颯爽と教室から出ていく。

部活に行く小林が軽く清野に声をかけて出ていくが、清野は自分の席から動かなかった。

どうやら残って消しゴムを探すつもりのようだ。

確かに人がガラガラになる今なら広い教室の中を探しやすいだろう。

ここだ。このタイミング。

もう少し。

早く他の奴ら帰ってくれ。

いつもならすぐ終わる帰りの身支度をこれでもかと時間をかけて様子を伺う。教室には片手で数えるくらいの人数しか居ない。

よし。

声をかけるならこのタイミング。

力を込めて席を立つ。

そして席に座る清野に声を…………。

 

 

 

 

「ねえ。清野さん。ちょっといい?」

 

 

 

 

え。

なんで。

踏み出そうとした足がピタッと止まった。

どうして。

どうしてこのタイミングでお前が声をかける?

 

 

 

「わ、私?」

 

 

「そう。清野さんに話が。出来ればあまり人がいないところがいいんだけど」

 

 

 

 

前の席に座る人物が遠くから清野を呼びとめ近づいていく。

何故お前が声をかけた。

いや。

それ以上にどうして俺の事情を知っていて邪魔をしてきた。

困惑している清野とは対照的に彼女は楽しそうに話し始めた。

アイツの意図が全く読めない。

いったい何を考えている。青柳。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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