第一話 三つの流星落つ
?「ふむ・・・もう春じゃというのに肌寒いのぅ」
?「気候が狂っているのかもね。・・・・世の中の動きに呼応して」
夜の荒野を二人の美女が歩いている。
一人は銀髪の女性・・・・黄蓋、真名を祭という。
もう一人は桃色の髪の女性・・・・孫策、真名を雪蓮という。
どちらの女性も褐色の肌で立派なモノを持っている。
祭「・・・・確かに、最近の世の中の動きは少々狂っておりますからな」
雪「官匪の圧政、盗賊の横行。飢饉の兆候も出始めてるようだし。・・・・世も末よ、ホント」
雪蓮は呆れながら現在の国の状況を口にする。
雪「真面目に生きるが嫌になる、か。・・・・ま、でも大乱は望むところだわ。乱に乗じれば私の野望もたち成しやすくなるもの」
二人は今、袁術の客将という地位にいる。
雪蓮の母、孫堅が治めていた呉は孫堅が戦死するやいなや領内の豪族や盗賊が反旗を翻し、力が衰えたところに袁術配下に組み込まれてしまったのだ。
そして旧臣を半ば人質のような形で地方にばらされてしまった。
だが彼女らはいつまでも袁術の客将に甘んじる気はなかった。
着々と孫呉の復興に向けて水面下で動いているのである。
雪「・・・・だけどまだまだ私たちの力は脆弱。・・・・何か切っ掛けがあれば良いんだけど」
しかし袁術の目があるのでだいそれた行動はできない。
反乱の兆候あればすぐに弾圧されてしまうからだ。
祭「切っ掛けか。・・・・そういえば策殿。こういう噂があるのを知っておるか?」
切っ掛けと聞いた祭が思い出すかのように口を開いた。
雪「どんな噂よ?」
祭「天より飛来する三筋の流星。その流星はそれぞれ武、知、そして人徳の天の御遣いを乗せ、乱世を鎮静する。・・・・管輅という占い師の占いじゃな」
管輅とは最近エセ占い師として名を馳せている人物だ。
雪蓮は、胡散くさいわね~、と言って笑い飛ばした。
祭「そういう胡散臭い占いを信じてしまうほど、国が乱れているということだろう」
二人はその後も少し話をし、偵察を終えて帰ろうとした。
そこで何かの音が彼女たちの耳に届いた。
祭は警戒して君主である雪蓮を後ろに下がらせる。
雪蓮も祭に注意を促す。
雪「盗賊か、妖か・・・・。何にせよ、来るなら来なさい。殺してあげるから・・・・」
二人は武器を取り出し、雪蓮は『南海覇王』を、祭は『多幻双弓』をそれぞれ構えた。
その瞬間二人の視界に三筋の流星が落ち、眩い光で覆いつくした。
雪「ん・・・・んん・・・戻っ・・た?」
光が消え、二人は恐る恐る目を開けた。
祭はすかさず雪蓮に怪我はないか確かめる。
雪蓮は一言、大丈夫と言い、状況確認に努めた。
二人は何が起こったのか理解できず周囲を見渡した。
雪「周囲の状況は?」
祭「先ほどと変わりは・・・ん?」
祭が何かに気付いたような声をあげる。
雪「どうしたの?」
祭の視線の先には先程まで誰もいなかった場所に人が倒れていた。
雪「行ってみましょ」
雪蓮は面白いものを見つけたような顔をして、祭が止めるのも聞かず人が倒れているところに走り出した。
祭はため息をついて、雪蓮を追いかけた。
雪「男の子?」
祭「こやつらいつの間に・・・」
雪蓮がたどり着くと、そこには雪蓮に近い年頃の男が二人と、二人より少し若い男が倒れていた。
そこにようやく祭が追いついて、雪蓮を諌める。
しかし雪蓮は軽く流して再び男たちを見る。
祭「それにしてもこの孺子共・・・・どこから現れたんじゃ?」
雪「さっきはいなかった。だけど気が付いたら居た。・・・・さっきの光に関連付けるのが妥当でしょうね」
そこで祭は管輅の占いに酷似していることに気付いた。
雪「占い通り、ねぇ。・・・・ということはこの子たちが天の御遣いという奴かな?」
祭「占いを信じるのならばな」
男たちの着ている服を見ると確かにこの世界にはない煌びやかや服を着ていた。
とりあえずこの場では判断出来そうにないので二人は男たちを連れて帰ることにした。
二人が男たちを連れて館に帰ると、長い黒髪の褐色肌の周瑜・・・・真名を冥琳という女性が二人を迎えた。
冥「お帰り雪蓮」
雪「あらお出迎え?」
二人の帰りが遅かったということで心配していたようだ。
冥「その背にあるものは何だ?」
雪「拾いモノをしたの」
冥琳は雪蓮と祭が抱えている男たちを見ながら質問し雪蓮が答えた。
冥琳がそれを訝しげに見つめ、何があった?と雪蓮に問う。
雪「管輅の占い知ってる?」
冥「なんだいきなり。・・・・確か三筋の流星と共に天の御遣いがどうのとかいう」
あまり興味がなかったのかうろ覚えにしか覚えていないようだった。
雪「それよ。・・・・その子たちがそうかも」
冥琳は呆れたように雪蓮を見た。
冥琳の知っている雪蓮はそんな妖説の類を信じる人物ではなかったからだ。
しかし雪蓮からすると信じざるを得ない状況に遭遇したので、その時の状況を冥琳に話した。
冥「なるほど。それでどうする気だ」
雪「本物の天の御遣いなら孫家で保護するのが上策。・・・・妖の者なら私が殺す。・・・・どっちに転んでも得でしょ」
冥琳もその案の利益を考え賛成した。
冥「とりあえず明日、この子たちを尋問してからね」
冥琳はそう言うと、祭に適当な部屋に寝かせるように指示をした。
冥「雪蓮は明日まで部屋に近づかないこと」
しっかりと雪蓮に釘をさすことをわすれない冥琳であった。
雪蓮は冥琳に不満をぶつけるが一蹴された。
こうしてこの場は解散となった。
次の日
雪蓮に保護された一人――北郷 一刀は今日の予定を頭に思い浮かべながら目を覚ました。
一「・・・・・・・・・・・・ん?」
目を開けば知り合いの先輩の部屋に泊まった、聖フランチェスカ学園・大学院寮・・・・・・ではなかった。
(どこだここは?)
?「よう。眼ぇ覚めたか?」
一刀声のした方を振り向くと、一刀の所属する剣道部OBであり、彼の師匠である二人の先輩、大橋狛傅(おおはしこまもり)と小橋宏近(おばしひろちか)が既に起きていた。
宏「昨日の記憶では私たちは学院寮で三人でゲームをしていたはずなんですが・・・・」
宏近が昨日の事を話し出すと一刀の昨日の記憶がよみがえる。(昨日、深夜まで先輩たちの部屋でゲームして、その後部屋に泊まって・・・・)
狛「一体どうなってんだ?」
三人が茫然としていると部屋の扉が開いて祭が入ってきた。
祭「おっ? 目が覚めておったか」
一「へっ?」
狛「お?」
宏「む?」
祭「気分はどうだ? 怪我はしとらんか?」
三人はいきなり知らない女性に質問され、余計に混乱していた。
一「えっと、どちらさん?」
一刀は女性に質問する。
祭「ん? 儂か? 儂は黄蓋。字は公覆と言う。以後見知りおけ」
三人はさらに混乱した。
宏「失礼ですがここは一体?」
宏近はとりあえず現在の状況冷静に判断することにし黄蓋に質問した。
祭「ここは荊州南陽。我が主、孫策殿の館じゃ。それよりお主たちこそ何者じゃ?生まれは?」
(孫策といえば、あの三国志に出てくる江東の虎の孫堅の子のはず。それにこの女性は自分を黄蓋と名乗った。呉の老将であり孫家三代に仕え、あの赤壁で苦肉の策を使った。しかしこれらは全て男性のはず・・・・)
三人は出身地を聞かれ、東京の浅草・池袋・渋谷と答えたが知らないと一蹴された。
祭「お主たち、名前はなんじゃ?」
一「えっと、北郷 一刀です」
狛「大橋狛傅だ」
宏「私は小橋宏近と申します」
黄蓋は不思議そうに尋ねる。
祭「ふむ・・・、お主、姓がほん、名がごう、字がかずとか?」
これには、一刀が答える。
一「いや、姓が北郷で名が一刀。字って言うのはなし」
狛「俺をそうだ」
宏「私も右に同じく」
字がないことに多少驚かれ、その後もいくつか質問が続いた。
そしてますます混乱を深めていく三人だった。
そんなところに・・・・
雪「おっ、起きてる起きてる。おはよう。気分はどう?」
微笑みを浮かべながら雪蓮が部屋に入ってきた。
整った顔立ち雪蓮に狛傅はやや見とれながらも返事を返した。
そしてお互いに自己紹介を済ませたが雪蓮と祭は三人の言ったことの半分も理解できなかったと思われたが、宏近がうまい具合に説明をしたので、二人は驚きつつも理解できた。
雪「ねえ貴方たち、どうしてあんなところにいたの?」
三人は祭にどんな場所で拾われたかある程度聞いていたので、雪蓮の言うあんなところって言うのは理解できたが理由は説明できなかった。
三人が困っていると部屋に駆けつけた冥琳を交えて宏近は何があったのかと話を促した。
冥「ふむ。話を纏めると、お前たちは学校という名の私塾に通っていて、北郷が17歳、大橋と小橋は24歳。そして2人は医師というわけか」
冥琳は三人から聞いた話をまとめ確認をとる。
宏「ええ、その通りです。ちなみに私は薬学も修めていますので、薬師の資格も持っています」
宏近は冥琳の長い髪と整った顔立ちに少し見とれていた。
そんなことを知らない冥琳は尋問を続けることにした。
冥「二人より、貴様らは未来から来たという話や、違う世界云々という話を聞いたがそれを証明することは出来るか?」
三人はポケットを探るうちに一刀が携帯電話を持っていたのでそれを使い、未来から来た事を説明した。
一刀の携帯電話と宏近の分かりやすい説明により雪蓮たちと違う国から来た事を分かってもらうことが出来たのである。
三人もまた管輅の占いというのを聞かされ、自分たちが天の御遣いというものだと説明された。そして気になっていた真名のことを教えてもらった。
その説明を聞いた一刀はすぐさま答えた。
一「間違いなく武の御使いは狛傅(はくふ)先輩で知の御使いは宏近(こうきん)先輩ですね」
その言葉を聞くと祭・雪蓮・冥琳は驚いた顔をし、すぐ正気に戻った冥琳が一刀に尋ねた。
冥「まて、なぜ大橋と小橋が私と雪蓮の字で称されるのだ?」
それには宏近が答える。二人が学生でありながら、狛傅は武の世界大会で6連覇しており、自分もまた将棋・碁・チェスの世界大会で優勝していること。二人が、フランチェスカの小覇王と美周郎と称えられていたこと。小覇王・美周郎と呼ばれた人物が孫策と周瑜であったこと。名前を読みがハクフとコウキンと読めること。その説明に冥琳は納得したようだった。
説明を終えると冥琳がここを出て生きる術があるのかと聞くと
一「あるはずもなく」
と一刀が答え、祭から
祭「誰か身よりはおるのか?」
と質問されると
狛「いるわけねぇな」
と狛傅が答える。
雪「・・・・じゃあさ、しばらくは私たちと行動しない?」
雪蓮の提案は三人にとっての唯一の生きる手段。
宏「それは願ってもないことですが、ただではないんでしょう?」
宏近が尋ねると、雪蓮は笑いながら答える。
雪「わかる?・・・・いくつか条件があるけど」
条件と聞いて一刀は考えるが何も浮かばなかった。
雪「ひとつは、あなたたちの知恵を呉の統治に役立てること」
それはつまり、天の知識を提供しろということ。
雪「で、もうひとつは私に仕えている武将たちと率先して交流すること」
一刀はあまり意味が分からず首を傾げる。宏近と狛傅は理解したようで、雪蓮に尋ねる。
狛「なぁ、それって一人でも十分だよな?」
雪「えぇ、私たちが欲しいのは天の御遣いの血を引く子だから」
一刀はまだ首を傾げていると、雪蓮は答えを言う。
雪「有り体に言えば、くどいてまぐわれってことね」
一「なるほど。くどいてまぐ――って、はぁ?」
一刀は理解したが 、
(この人いきなり何言ってんの?)
という状態である。
既に宏近と狛傅は呉に天の御遣いの血が入れば、呉の人間に畏怖、畏敬の感情が起こるということを理解していた。
雪「あっ、もちろん無理やりは駄目だからね。それが条件ね!」
二人は一刀にこう言い放つ。
狛・宏「「これは一刀の仕事だな(ですね)」」
一刀は驚愕の表情をし、なぜ?と二人に質問する。返ってきた答えは、
狛・宏「「俺(私)に武(知)で勝てるのか(ますか)?」」
その答えに一刀はorzとしていた。 一刀にとって断るという選択肢は存在しない。
そして改めて自己紹介を行い、三人は三人の真名を預かる。真名を預け終えると、狛傅と宏近は雪蓮と冥琳の前に立つ。
雪・冥「「?」」
一目ぼれしたなどと思わないだろうと首をかしげる二人に対して堂々と宣言をする。
狛・宏「「雪蓮(冥琳)!! お前(貴女)は俺(私)が娶る(嫁にします)!!」」
その宣言に祭は豪快に笑い、二人の顔は真っ赤になっていたという・・・・。
そして、雪蓮が袁術に呼びだされ、三人は代わりに入ってきた陸遜と自己紹介をして穏という真名を預かり、その日はそれで解散となった。
三人の新たな物語が始まる。