一刀は城で穏と出会い、彼女が祭さんを捜しているとのことで捜しに城を出た。
一「祭さんはどこに行ったんだ?」
城から出て、街へと向かう。そして祭さんにいそうな酒場を回っていると、
祭「おう。北郷ではないか」
一「・・・・え?」
今の声は・・・・。
祭「どこを見ている。こっちじゃこっち」
一「あ・・・・祭さん」
祭「おう」
俺が姿を見つけると、祭さんは上機嫌だ。よく見てみると酒器を持っている。
今昼間だよな?酒飲んでいいのか?
祭「どうした?はやくこっちにこんか」
一「はぁ」
別に断る理由もなく、俺は招かれるまま祭さんのもとへ向かった。
祭さんは、カフェ?みたいな店の前に並んだ机の一つに陣取っていた。
そして、俺は机の上に並んでいるものを見て愕然とする。
一「ちょっ・・・祭さん、どんだけ飲んでんの?机の上、空いた器でいっぱいじゃないか!・・・・それに料理もこんなにたくさん・・・・」
祭「ごくっ、ごくっ・・・んっ・・・・ごくっ・・・・・」
一「飲んでないで聞いてくれよ!!」
思わずつっこんだ俺は悪くない。それでも祭さんは知らん顔して、新たに酒を注いでる。
一「まったく・・・・祭さんに限った事じゃないけど、孫家の人たちって、酒好きだよね」
(そういえば、先輩たちも酒豪だったな。酔ったとこ見たことないし)
祭「ごくっ・・・ごくっ・・・・ぷはぁ~っ・・・・・人生の伴侶は佳き食べ物と佳き酒。そして彩りとして、少しばかりの荒事があってくれれば申し分ない。そういうものじゃろう?」
一「・・・・できれば俺は、荒事なんて無いに越した事はないと思うけど?」
祭「お主は軟弱な事を言うのぉ。あれほどの腕を持ちながら」
一「あれほどって?」
祭「剣を交えた事は無いが、お主の武は相当のものじゃ。我が軍の将軍に迎えられるほどののぅ」
一「!?」
祭「お主の師は大橋じゃったな。あやつはそこ知れん奴よ。策殿より上かも知れん」
一「狛傅先輩が?」
祭「なんじゃ気づいておらなんだか」
一「・・・・それでも俺には荒事にはむいてないよ。それより、穏が祭さんの事を捜してたよ」
祭「穏が?急ぎの用事かの?」
一「急ぎってわけじゃないみたいだけど・・・なんか意見を聞きたいとか、そんな感じだったかな?」
祭「その程度の事なら心配あるまい。穏なら、自分で最良の判断ができるじゃろうし、儂が口出しせんでもな」
一「それはそうかもしれないけど・・・・祭さん、ただ単に戻るのが面倒とか思ってないよね?」
祭「ごくっ・・・んっ・・・・ごくっ・・・・・」
また知らん顔かよ・・・・。
一「じゃあ穏の事は良いとして、昼間から酒飲んで、仕事とか大丈夫なの?」
祭「仕事じゃと?そんなもの酒を飲みながらでも、どうという事ではあるまい」
一「無茶苦茶いわないでよ・・・・・」
祭「やかましいのぉ・・・・ほれっ、細かい事気にせんでお主も付き合え」
一「はい?」
祭「はよぅ受け取らんか」
一「祭さん・・・・?」
祭さんは俺の手に酒器を押しつけ、無理やり握らせる。
一「ちょっ、ちょっと祭さん。俺は・・・・」
祭「こぼすなよ?せっかくの酒がもったいないからな」
一「あー、もー・・・・・これ一杯だけだからね」
俺はそれを口に運び、一気に飲み干す。飲み干した瞬間、体が熱くなったが、気にせずに酒器を置く。
祭「ほぅ、良い飲みっぷりじゃのう」
一「どうも。じゃあ俺、もう行くから」
祭「まぁ待て。もう少しくらい付き合ってくれても良かろう」
一「遠慮するよ。酔っ払いの相手なんて」
祭「この程度、酔った内には入らん」
一「酔ってる人は、みんなそう言うよ」
祭「酔っておらんと言っておるだろう」
祭さんはどんどん酒を飲み干しながら言う。
一「それぐらいにしておけば?祭さん」
祭「?・・・なぜじゃ?」
一「飲み過ぎには身体に悪い―――!?」
と俺が続けようとした時だった。
鋭い視線を感じその方向に顔を向ける。
冥・宏「「・・・・・」」
冥琳、宏近先輩・・・・いつからそこに・・・・・・。
祭「なんじゃ?どうかしたのか?」
一「い、いや・・・・、その・・・・・・」
祭さんは、確実に酔っているのだろう。自分の背後に佇む二人に気づいていない。
どうする?伝えるべきか?
あの二人、確実に怒ってるよな?そりゃあ、こんな昼間から仕事もせずに酒を飲んでる将軍を見つけたら、怒るわな・・・・・。よし、ここは
一「祭さん。本当にこれぐらいにしときなよ。仕事有るんでしょ?」
祭「仕事など、酒を飲みながらでも、どうとういう事はあるまいと言ったじゃろう」
一「でも、酔っ払ってたら兵達に示しがつかないし・・・・その・・・・・・冥琳や宏近先輩に見つかったりしたら大変なんじゃないかな?」
祭「冥琳?小橋?なぁに。あんなひよっこ共に何言われようと気にせんわい」
冥・宏「「・・・・・・」」
祭「そもそも周家のご令嬢は、今でこそああやってエヘンと威張っておるが、昔は泣き虫でな。イジメられているところを、良く助けてやったものじゃというに、最近では小橋とそろってイジメおって・・・」
一「あー・・・・・」
二人が・・・・二人が近づいてくる・・・・・・。
祭「恩を仇で返すとは・・・・まったく。儂はあんなふうに育てた覚えは無いぞ」
冥「私も育てていただいた覚えがありませんが」
宏「私が入ってからは、そもそも武官から仕事が楽になったと言う報告を受けていますが?」
祭「・・・・・ん?」
声のした背後をゆっくりと振る返ると、そこに待ち構えていたのは、皮肉めいた笑顔で迎える冥琳と冷ややかな笑みを浮かべる宏近先輩の姿だった。
冥「威張っているようにみえたみたいで申し訳ありませんでしたな。これからは少し気をつけるようにいたしましょう」
祭「なっ・・・・」
宏「私も祭殿の分の仕事量を見直すとしましょう。祭殿には余裕がありそうなので」
祭「うぐっ・・・・」
二人の言葉に酔いも醒めてしまったみたいに顔から赤みが引き、代わりに浮かんだ冷や汗がタラーッと垂れる。
やがて祭さんは、ぎこちない動作で向き直る。
祭「のう、北郷よ」
一「はい」
祭「儂はもしや・・・虎口に飛び込んだ兎か?」
一「・・・・すでにさばかれた後の肉?みたいな・・・・しかも複数で・・・」
祭「ぬぅ・・・・もはや死に体という事か・・・・・・」
一「・・・・ご愁傷様」
冥「さて、祭殿。そろそろ観念されましたかな?」
宏「よろしければ、これから二三、私たちとお話ししたいことがあるのですが?」
祭「い、いや・・・・遠慮――」
冥・宏「「できるとお思いか(ですかな)?」」
二人は満面の笑みを浮かべて、がっちりと祭さんの両腕を掴む。
冥「ここでは周りの迷惑となりますので・・・」
宏「場所を変えましょう」
祭「待て冥琳、小橋!!離せ!離さんか!」
祭「北郷!黙って見とらんで助けんか!」
一「いや、無理」
ある意味、祭さん以上に二人を敵に回すほうが怖いし・・・・・。
祭「この薄情者がぁ~~~~っ!!」
ごめんよ、祭さん。やっぱり自分の命のほうが大事なんだ。
二人に連れ去られる祭さんに向かって自分は合掌していた。