穏から字の読み書きを教えてもらい、大分なれてきたので今日から孫子を学ぶことになった。
部屋で穏を待つ一刀は少し考え事をしていた。それは、穏に孫子の教えを頼んだときに見た冥琳の顔と宏近の一言が気になっていたからだった。
一「う~ん・・・・、やっぱり穏に何かあるのかな・・・・」
?「私がどうかしましたか~?」
一「うぉっ!?」
不意に後ろから声をかけられて驚く一刀・・・・、振り返ると孫子を教える講師役の穏がニコニコしながら立っていた。
一「・・・入るなら、ノックくらいしてくれよ。穏・・・」
穏「・・・?のっくってなんですかぁ~?」
一「・・・そうか、英語なんて分かるわけないんだよな。悪い・・・、気にしないでくれ」
穏「・・・?」
自分のいた世界の言葉なんてこっちの世界の人が分かるわけない…。そんなことを思っていた一刀に穏は?の表情を浮かべる。
一「・・・さて、今日から『孫子』を教えてくれるんだよな?」
一刀は話題を孫子に切り替える。すると…、
穏「そうですよ~。楽しみですね、いよいよですね~。今日という日をどれほど待ったことか」
やる気に満ちた表情で答える。そんなに楽しみだったのか・・・・・・
穏「一刀さん、予習や復習はなさいましたか~?」
一「いや、やっと文字とか読めるようになったからまだだけど・・・?」
孫子を全て部屋に移しておいたのだがまだ読んでいなかった。
穏「『孫子』ほどの素敵な本と共に寝起きして、手も触れずに平静を保っていられたとは・・・・恐るべきは一刀さんです」
一「はっ?寝起き?平静?」
穏「くっふうぅ~、胸が高鳴ります。このような高揚はいつぶりでしょうか~」
穏の発した胸という言葉に、穏の豊満な胸に目が寄せられてしまう・・・・・・・・・、はっ!?いけない正気にもどれ俺!
一「・・・・今から勉強するんだよね?」
穏「・・・じゅるっ・・・・ふぇっ? は、はい~」
今、涎がでてた気が・・・、それに頬が赤く染まっているような・・・・。
穏「それでは始めましょう~♪」
こうして穏による講義が始まったのだった。
―同時刻・中庭にて―
同じ頃、中庭には雪蓮、冥琳、狛傅、宏近の四人が飲茶を楽しんでいた。
狛「こうして四人で飲茶なんて初めてじゃねぇか?」
宏「そうですね。この面子で会うのは軍議があるときぐらいですから」
冥「それ以外は、自分たちの政務や調練があるからな。・・・・ただ一人を除いてな」
雪「あ、あはは・・・・誰のことかしら?」
冥「さぁな」
と言いつつも、冥琳の視線は雪蓮の方へ向かっていた。
狛「ははは、まぁ息抜きは大事だな」
雪「そうよそうよ。さすが狛傅、わかってる~♪」
冥「お前の場合は抜き過ぎだ」
雪「ぶー、ぶー」
狛「でもよ・・・、その時間を使って民たちとふれあうのはいい事じゃねぇか?」
宏「民あっての国ですから、民たちの信頼が高いのはいいことですね」
雪「ねぇ、冥琳。いまの聞いた?」
冥「・・・・それに政務さえしてくれれば文句などないさ」
雪「もうっ、冥琳のイジワル」
狛「・・・・そういえば一刀のやつ、今日何してんだ?」
狛傅の疑問に冥琳と宏近の二人が思い出す。顔が少し暗い気もする。
宏「・・・・そういえば、今日でしたね」
雪「何が~?」
冥「本日、北郷は穏と共に『孫子』の勉強をさせている」
雪「・・・・そう、穏がねぇ・・・・」
狛「『孫子』か・・・、けどよお前らの顔が暗くなった原因じゃねぇだろ」
宏「よく見てましたね狛傅。実は・・・・・・」
狛「書物で興奮する・・・ねぇ。まぁあいつの事だから大丈夫だと思うが・・・・」
そのとき、
<あーーーーーーーーっ!!!!!>
一刀の叫びが城内に響き渡った。冥琳と宏近は頭を抱え、狛傅と雪蓮は大笑いしていた。
冥「やはり、こうなったか」
宏「一刀・・・。あなたの事忘れませんよ」
二人はぼそりと呟いた。
夕刻時、二人が一刀のもとへ行くと、そこには死んだはず(二人の勝手な決めつけ)の一刀が何食わぬ顔で孫子を読んでおり、寝台には笑顔で気絶?している穏の姿があった。
翌日、穏に問いただしてみると、凄いんです!!半端じゃないんです!!となにやら笑顔で満足した様子で語っていた。