雪蓮・狛傅の奇襲によって黄巾党の分隊が崩れ始めた。
一「敵が崩れたっ!」
穏「前線部隊が速度を上げていきます。・・・・・・雪蓮さまも狛傅さんもさすがですねぇ~」
冥・宏「「・・・・・・あまり褒めたくは無いわね(ですね)」」
後ろから宏近が部隊を連れ合流する。勝利はしたものの、冥琳は苦い顔で、宏近は苦笑いしながら、前線を見つめていた。
冥「帰ってきたら叱ってやらなくちゃ」
宏「・・・・・・、彼には言っても無駄そうですけどね」
一「まぁ・・・総大将自ら先頭を突っ走って突撃しちゃったからなぁ・・・。冥琳の怒る気持ちはわかるよ」
冥「別にあの二人の考えを否定してるわけじゃない。・・・・・・王として、指導者として、あのように行動するのは間違ってはいないのよ」
宏「しかし、時と場合があるんです。一刀、覚えておきなさい。勇敢さを兵に示すためには、王の勇気だけでなく敵の質も重要な役割を持つのです。・・・今回の場合、黄巾党という賊の寄せ集めの雑軍如き相手では、蛮勇にしかならないのです」
一「・・・・・・敵の質か。・・・それだけじゃないんでしょ?冥琳?」
冥「勇敢と蛮勇は違う。それに人の価値も違う。・・・こんなところで雪蓮に傷がついたらどうする?・・・・・・雪蓮を止めなかった大橋も責任がある。私が怒っているのはそういうことだ」
宏「ふふ・・・。噂をすればあの二人が帰ってきましたよ」
冥「大橋っ!雪蓮っ!」
雪「うわっ、こわっ!?」
狛「・・・あん?何怒ってんだ?冥琳?」
冥琳の剣幕に押された雪蓮が、狛傅先輩の後ろに隠れる。先輩は、なぜ冥琳が怒っているか理解してないらしい・・・。
冥「総大将自ら軍の先頭に立って突撃するなんて。項王の真似をしてるつもり?」
狛「・・・・・・?けどよ、兵たちに王の勇敢さを見せつけるのはいいことじゃねぇか」
雪「そうよそうよ!」
冥「時と場合によるわ。いくら強大な敵といっても、黄巾党はただの賊。・・・賊相手に勇敢ぶっても、それはただの蛮勇でしかならないわ。それぐらい、あなたたちにも分かるでしょう?」
宏「まあまあ、少し落ち着きなさい。冥琳?・・・今回はあなたたちに非がありますよ。私たちには、勇敢と蛮勇の区別が出来ることを知っているんですから。・・・・・・ここで下手をして傷ついたらどうするんですか?」
雪「・・・はぁい。今度から気をつけます」
狛「なんか・・・、すまなかったな」
宏「冥琳。彼らもこういってますから・・・」
冥「・・・・・・よろしい。じゃあ次からは私たちの指示に従ってもらいます。良いわね?」
雪・狛「「はぁ~い(わかったよ)・・・」」
冥琳の念押しに、二人は渋々といった様子で返事をする。だが、冥琳のみていないとこで二人は顔を合わせ頷きあう。・・・・・・賭けても良い。この二人は、絶対約束を守る気はない。
冥「穏。一隊を黄巾党の陣地に向かわせ、物資の確保を。その他の部隊は蓮華様たちとの合流地点に向かう」
穏「は~い♪」
冥「大橋は部隊を纏め、被害の報告を。・・・その後、雪蓮止めるどころか、一緒に突撃した言い訳を聞こう」
宏「待ってください、冥琳。狛傅に言い訳なんて通じませんよ?」
冥「ん?どういう意味だ?」
宏「狛傅。また勘で動きましたね?」
狛「さすが宏近。よくわかったな?」
宏「ねっ?これですから」
冥「・・・・・・」
これには冥琳も頭を抱えざるを得ない。なにせ雪蓮が二人いるようなものだからだ。
・・・冥琳、ご愁傷様・・・・・・。
――こうして、初戦を乗り切った俺たちは、戦利品などを確保後、孫権と合流するために、北へ軍を進めた。
とき同じくして、孫権もまた合流地点を目指し軍を進めていた。
権「ふぅ・・・」
甘「どうかされましたか?」
権「・・・限りなく続く大地。忘れていたから、少し嬉しくて・・・」
甘「軟禁状態となって早二年。まさか袁術公認で出陣出来るようになるとは思いませんでしたね」
権「そうね。・・・でも姉さまの手紙にはもっと早くに許可がでていたらしいの」
甘「そうなのですか?」
権「えぇ。なんでもハチがどうとかなんとか・・・」
甘「ついに袁術の頭がおかしくなったのですか?」
権「よくわからないけど、その愚かだったお陰で姉様と合流出来る。・・・いよいよ孫呉独立に向けての戦いが始まるのね」
甘「およそ半日後に雪蓮様に合流できるでしょう。・・・しかし蓮華様。肩に力が入りすぎるのも良くはないですよ?」
権「え?・・・そんな風に見える?」
甘「癖・・・とでも言うのでしょうか。立場があるのは分かりますから気楽にとは言いませんが・・・時にはその力を抜くのも良いことかと」
権「その言葉、肝に銘じておくわ。・・・ありがとう、思春」
甘「はっ・・・」
権「姉様・・・元気かしらね」
甘「雪蓮様のことです。必ずやお元気でいらっしゃることでしょう」
権「・・・冥琳に迷惑を掛けっぱなしでしょうけどね」
甘「その自由闊達さこそ、雪蓮様です」
権「ふふっ、そうね。でも・・・、私が気がかりなのは天の御遣いのことよ。一人は武将として、もう一人は軍師として活躍し、もう一人は文武両道のために鍛えているとか・・・」
甘「御意。しかし雪蓮様たちがお許しになっているからには、何らかの事情があるのでしょう」
権「そうね。・・・ただ私は自分の目で見て、考えたことのみを信じる。その者たちがどういった人物なのか、しっかり観察させてもらいましょう」
――しばらくして、軍を進めていると後方から何者かの軍がこちらへ向かっていると伝令が来た。
穏「後方に砂塵あり、ですー。どうやら蓮華様たちがやってきたみたいですよぉ♪」
冥「さすがは蓮華様。蒼天中央に日輪が至る刻に・・・という合流時間をしっかりと守ってくれているな」
狛「真面目すぎだろ?」
雪「でしょ?その融通の効かなさが心配なのよ」
狛「こりゃもしかしたら想像以上のカタブツかもな・・・。一刀、頑張れよ」
一「は、はぁ・・・」
祭「まあ色々と言い方はあるじゃろうが・・・孫家の人間として頑張っておられる御方じゃよ」
一「ふ~ん・・・」
砂埃と共に近づいてくる孫家の牙門旗を見つめながら、まだ見ぬ孫権の姿に思いを馳せる。
――と、迫ってきていた牙門旗がピタッと止まり、人影がこちらにやってくる。雪蓮と同じ髪の色をした自分と同い年くらいの少女、どうやらこの少女が孫権みたいだ。
権「お姉様!今、報告を聞きました!単騎で敵陣に突入するとは、どういうことですかっ!しかも、御遣いの一人が止めるどころか一緒に攻め込むなんてっ!」
雪「うわっ・・・」
権「あなたは孫家の家長にして呉の指導者!それがこんな戦いで蛮勇を振りかざしてどうします!」
雪「ご、ごめんなさい・・・」
権「少しはご自分の立場を考えてください。・・・あなたは我らにとって大切な玉なのですから」
雪「はぁ~い・・・」
しょぼくれた雪蓮の返事に満足しないのか、説教を続ける孫権。耐えきれなくなったのか、狛傅先輩に助けを求める。
雪「狛傅~。助けて~」
狛「・・・こりゃあ想像を絶するわ」
権「何だ貴様は?」
狛「アンタが言ってた、雪蓮と一緒に攻め込んだ御使いの大橋 狛傅だ」
権「なぜ、姉様の真名を口にする?」
狛「んなもん、許されたにきまってんだろ。んなこともわかんねぇのか?嬢ちゃん?」
権「なっ!?」
甘「貴様っ!蓮華様に向かってなんと無礼な!!」
雪「やめなさい、思春っ!いいの、ちゃんと真名を呼ぶことを許してるから。もちろん冥琳も祭も穏もね。」
権「そ、そんなっ!」
?「それほどまでの人物なのでしょうか? 私には少し違和感があります」
冥「本当です、蓮華様。この者たちの知識はこれからの孫呉を繁栄させてゆくために必要不可欠なのです」
祭「・・・それにのぅ、権殿。冥琳の隣にいる小橋の武は知らんが、儂の隣にいる北郷の武は少なくとも甘寧以上、大橋に関していえば孫呉最強の武を持っておる」
穏「冥琳様の隣にいる宏近さんはですねぇ~、冥琳様以上の知識、博識を持っていらっしゃいます」
雪「というわけよ。あなたたちも真名を預けなさい。特に祭の隣にいる一刀はあなたたちの夫になるかもしれないんだから」
甘「・・・は?」
権「・・・えっ?」
?「・・・はい?」
・
・
・
三人「えぇーっ!!」
?「あの・・・、どういうことでしょう?」
黒い長髪の忍者ルックな少女、周泰は雪蓮に尋ねる。
雪「三人は天の御遣いなの。それで保護する時に契約したのよ。孕ませろってね♪」
冥「少なくとも、孫呉に天の御遣いの血を引く人間が居る・・・という評判に繋がります」
権「何たる浅慮!お姉様は私たちの意志を無視するおつもりですか!」
雪「無視するわよ。特に蓮華。孫家の人間であるあなたの意志はね」
権「・・・っ!」
雪「母様の夢、孫呉の宿願・・・呉を独立させ、天下統一に乗り出すためにも、三人の御遣いの力が必要なのよ」
権「ずるいですよ、姉様。私が母様のことを言われたら、何も言えなくなるのを知ってるではありませんか」
雪「だからこそ母様の名前を出したのよ。安心なさい、強制ではあるけど、本気で嫌がるのならば無理はさせない。一刀にもそれは言ってる。・・・だからまずはお互いを知り合いなさい」
権「・・・」
冥「興覇、幼平。二人とも良いな?」
甘「はっ・・・」
周「はっ、はい」
三人は納得出来ないらしい・・・、まぁわかるけど。その後皆がフォローをしてくれたが、肝心の孫権と云えば
権「・・・ふんっ」
心中不満そうにそっぽを向いていた。こんなんで仲良くなれるのだろうか・・・?
―オマケ―
もしも雪蓮がとめていなかったら・・・
甘「貴様っ!蓮華様に向かってなんと無礼な!!」
そばにいた赤服の少女が剣を先輩に突きつけ威嚇する。・・・が、しかし
狛「ほぅ?俺とやろうってなら!!」
―ヒュンッ―
先輩はその少女の背後を取り、首もとに手刀を浴びせ気絶させる。
―トンッ―
甘「うっ・・・!」
狛「少しは相手の力量を知るんだな」
権「そ、そんなっ!?甘寧がこんな簡単に負けるなんて・・・」
なんとあの少女は呉の武神といわれる甘寧だったらしい。俺は驚いていたが、先輩は
狛「これが、甘寧・・・呉の武神ねぇ・・・。はっきり言って拍子抜けだな」
この言葉に長髪の黒髪で忍者らしき服装をした少女がキレた。
?「よくも、思春殿をやりましたね!」
少女は背中の日本刀?らしき武器を手に取る瞬間
狛「少し黙っててくれねぇか?黒髪の嬢ちゃん?」
ゴゴゴゴゴ―――
先輩から放たれる殺気がその少女の周りに広がる。
?「あ・・・あ・・・・・・」
動けなくなった少女を無視して、孫権に近づく先輩…
狛「なぁ、お前の姉の真名を呼んでるのに驚くのはわかるけどよ・・・、少し考えればわかることだろ?そんな真面目すぎだと、そのうち大事をまき起こすぜ?少しは頭を柔らかくして考えようや」
権「・・・ふぅっ」
―バタッ―
?「れっ、蓮華様!?」
雪「大丈夫。気を失っているだけよ」