それは黄巾の乱が終わってから何日か過ぎた日のことだった。自分に与えられた政務を終え、民たちと話をしながら街を散策していた狛傅のところを後ろから兵士たちが走り去って行った。
狛「何だ、一体?」
祭「おお、大橋ではないか。ちょうど良いところに・・・・」
混乱していたところに祭が後ろから声をかける。
狛「祭じゃねぇか。ちょうど良いってどういうことだ?」
祭「話は走りながらでもよかろう。手を貸してくれんか?」
何かあると悟った狛傅は頷き、祭と一緒に兵士たちのあとを追った。
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中央の広場にやって来ると、そこには祭りの日のような人だかりが出来ていた。先程の兵士たちは、人だかりの最前列にいて、民たちを抑えていた。中央をよく見てみると、そこには雪蓮と頭に黄色の巾を巻いている三人の男・・・・おそらく黄巾党の残党だろう。残党が人質と思しき老夫婦に剣をあてる。狛傅はその夫婦に見覚えがあった。雪蓮と仲がいい夫婦で以前に、絵姿を描いた事があったからだ。
狛「雪蓮と・・・っ!?」
祭「しっ!こっちじゃ。ついて来い」
祭につれられて人ごみの中を上手く掻い潜りながら、前のほうに出る。上手く人だかりの間に入り込み雪蓮の後ろにでる。
狛「やっぱしな。あのときの爺さんと婆さんだ」
祭「なんじゃ。知り合いだったのか?」
狛「ああ。雪蓮と仲の良い夫婦でな。前に絵姿を描いたことがある」
祭「策殿と?そりゃ余計にまずいのぅ・・・・」
狛「でっ?何でこんなことになったんだ?」
祭「兵から聞いた話じゃと、策殿が街中に潜んでいた残党どもを見つけたらしくての。当然引っ捕らえようとしたのだが、残党どもは捕まるくらいならと自棄になって・・・・」
狛「人質を取ったってことか」
雪「人質を話しなさい」
黄1「離せと言われて、素直に応じる奴がいるかよ!」
爺「・・・・しぇ、雪蓮ちゃん・・・」
婆「うぅ・・・・」
雪「こんな状況で人質を取って、どうするつもり?」
黄2「どっ、どうって」
雪「まさか人殺しをしたいわけじゃないでしょ」
黄1「・・・へっ、そんな口をきいていいのか?オレたちには人質がいんだっ!こうして剣を動かせば・・・・」
そういって剣を爺さんに向ける。
爺「ひいぃっ!」
雪「でも殺したら、人質の意味がなくなるじゃない?」
黄2「あ・・・」
黄3「か、頭・・・・」
雪蓮の言葉で他の二人も気づいたらしく、頭と呼ばれる方に顔を向ける。
黄1「うっ、うるせぇ!おまえはこの二人の命が助からなくてもいいのか?」
雪「・・・っ!」
黄1「へっ、やっぱりな。恐らく真名だろうと思っていたが、そんなもん預けるくらいだ。この二人はおまえにとって大事なんだろ?」
雪「・・・・くっ!」
どうも頭と呼ばれるやつ悪知恵が働くらしい。頭の言葉に雪蓮は苦い表情をする。仕方ない手助けするか。
狛「なぁ祭?」
祭「なんじゃ?」
狛「ここで反乱起こせば、死罪だったよな?」
祭「そうじゃ」
狛「じゃあ殺してもいいんだよな?」
祭「お主、まさか!?」
狛「大丈夫。あの爺さんたちも必ず助けるからよ」
そういって人ごみから前に出る。
狛「よう」
黄1「・・・・なんだ、おまえは!?」
雪「!!」
狛「なんだ、って言われたらソイツの関係者だ」
黄1「この女のぉ・・・?」
狛「あぁ。参謀みてぇなもんだ・・・」
雪「・・・・?」
わけが分からない表情を浮かべる雪蓮に、俺は手を雪蓮の頭に置きポンポンっと叩く。
狛「コイツは、軍師泣かせのじゃじゃ馬でなぁ。人の言葉を聞かずに勝手に行動しちまうんだ」
黄1「てめぇ・・・なにがしたいんだ?」
狛「怒んなよ。こんなとこでいがみ合ってもしょうがねぇだろ?そこで提案なんだが、逃してやるかわりに人質を解放してくれよ。今ならコレもやろうじゃないか」
そう言って、俺は上着を脱ぐ。ポリエステルで出来ている服とは知らずキラキラ輝いている服と認識している頭は目がくらんでいる。
狛「で?どうだい?」
黄2「か、頭。あんな服見たことないですぜ!」
黄3「きっと高く売れますぜ!」
黄1「・・・お、おう、・・・・そうだな。その条件呑んでもいいぜ!」
狛「じゃあ・・・・受け取れよっ!」
そう言って俺は上着を投げる。その瞬間に頭の背後に回り込み、頭を掴む。
そして――
―ボキッ―
黄1「・・・ぐえっ!?」
首の骨を折る。頭が倒れたことに混乱している二人も同様に――
―ボキッ―
―ボキッ―
黄2「・・・ぐほっ!?」
黄3「・・・うぎゃっ!?」
首の骨を折った。三人は絶命し倒れる。
狛「ふぅ。爺ちゃん、婆ちゃん。大丈夫だったか」
爺「あんたは、雪蓮ちゃんの!・・・ありがとうよ・・・・」
婆「・・・・本当にありがとうございました」
狛「へへ。無事で何よりだったぜ!」
お礼を言ってくる二人に俺は笑顔で応える。後ろから雪蓮がかけつける。
雪「お爺ちゃん、お婆ちゃん。大丈夫?」
爺「おぉ、雪蓮ちゃん。・・・大丈夫じゃよ」
雪「ごめんなさい。私のせいで二人を危険な目に遭わせちゃって・・・」
婆「そんな顔をしないでおくれ。私らは雪蓮ちゃんの笑顔が好きなんですから。ねぇ、お爺さん」
爺「そうじゃ。雪蓮ちゃんには笑顔が一番じゃて」
二人の言葉で雪蓮の表情が次第にいつもの明るい表情に戻っていく。
雪「・・・・ふふふ、ありがとう。お爺ちゃん、お婆ちゃん」
いつもの表情で二人に抱きつく雪蓮。二人も温かく雪蓮を包みこむ。
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全ての処理を終え、兵士たちや人だかりの姿も消えていく。その後、俺と雪蓮は以前聞いた二人の経営するお店で飯を食べた。その味は絶品で俺は出てくる料理を綺麗に平らげていった。
それから――
店を出て城へ帰る途中雪蓮が礼を言ってくる。
雪「本当にありがとう、狛傅。二人を救ってくれて」
狛「俺は呉の民って意味だけであの二人を助けたわけじゃないぜ」
雪「えっ?」
狛「大切なんだろ?それこそ家族に近い感じにみえるもんな、あの二人」
雪「ええ、小さい頃からずっと、母様の事も良く知ってるくらい家族ぐるみで・・・」
狛「第二の家族ってか?」
雪「ええ、それに近いわね。・・・・だからあの二人を失うのが怖かった」
狛「それだけじゃないな」
雪「えっ?」
狛「おまえが残党の相手をしている時の目、今はだいぶマシになったが何かを感じる。俺に何か隠してねぇか?」
雪「・・・・・・聞いてくれる?」
狛「無理に話さなくてもいいんだぜ」
雪「あなたには知ってほしいから・・・・」
雪蓮は自分の体質を俺に話した。雪蓮が言うには、母である孫堅の死を目の前にして以来自分の大切な人が危険な目に遭うと、無意識のうちに興奮状態に陥りやすくなる。また激しい戦の時も同様で自我は保てるものの、血を見たりすると身体が火照ってくるらしい。似て非になるものでいえば、性欲に近いらしい。その興奮状態になった時には冥琳に手伝ってもらっていたらしい。
狛「それで、今回それがでかけたわけか。それでどうするんだ?」
雪「どうするって?」
狛「まだ身体の火照りが残ってるんだろ?」
雪「・・・・っ!」
狛「相手してやるよ」
雪「・・・・いいの?」
狛「前に娶るっていったじゃねぇか。自分の女を満足させられねぇんじゃ、男の名折れだぜ」
雪「ふふっ、じゃあお願いするわ」
その夜、二人の姿は狛傅の寝台にあった。二人は生まれたままの姿で、互いの愛を確かめあった。
翌日、同じ寝台で寝起きした二人は一緒に玉座に向かう。狛傅は普段と同じ表情をしていたが、雪蓮は笑顔でありながらもどこか歩きにくそうだった。それに気づいたのは冥琳と宏近、祭だけであった。