––––––ミレニアムサイエンススクール
『千年難題』という今の科学、技術力では解けないとされている難題を解くために運営されている教育機関。そのミレニアムサイエンススクールの生徒会『セミナー』の会長室では三人の男女が向き合っている。
「––––––それで、話というのは何かしら?」
一人は黒色を基調とした服を着用し、同じ黒色の長髪に女子生徒。ミレニアムサイエンススクール『セミナー』会長、『調月リオ』。
「––––––どうぞ」
リオと、その対面に座っている男の前に紅茶が注がれたティーカップを置いて、メイド服を着た女子生徒
「この書類の事だよ。––––––『要塞都市エリドゥ』。来るかもわからない終焉のために巨額の資金を投じてまでそんな物を作る必要あるのか?」
そして、二人の対面に座っているミレニアムサイエンススクールの制服を着用した男子生徒。『セミナー』会長補佐、『旭ナオヤ』。
「あるわ。––––––いまだ表舞台に姿を現さない『無名の司祭』、『名もなき神』と呼ばれる存在。キヴォトスは多くの問題を抱えているわ」
「・・・・・・仮にだ。その『無名の司祭』やら『名もなき神』だかが存在するとして、それを『セミナー』の、それも三人で話すのはマズイだろ。他の学園や『連邦生徒会』と共有、連携をとるべきだろ?」
『キヴォトス』は多くの学園で構成されている学園都市。その全行政を担っているのが『連邦生徒会』。
「無意味よ。『トリニティ』と『ゲヘナ』の不仲は周知の事実。『連邦生徒会』は『連邦生徒会長』が行方不明になってから機能不全に陥っているわ」
「それに一枚岩ではないしな。リンは連邦生徒会長の代理として頑張ってはいるが、どうもきな臭い動きをしてる人間もいるみたいだ。・・・・・・わかったよ。『エリドゥ』建設には俺も協力する。その代わり、何かあったら一人で突っ走って人様に迷惑をかけないこと、何かするなら必ず俺に相談すること。この二つが協力するための条件だ」
「––––––わかったわ」
☆
「・・・・・・ところで」
「んー、なんだ?」
「随分と『連邦生徒会』の行政官と仲が良いようだけど・・・・・・いったいどう言う関係なのかしら?」
「どう言う関係って・・・・・・やりとりするのが基本、行政官のリンなんだよ。で、やりとりしてるうちにお互いに意気投合してたまに愚痴の言い合いする仲なんだよ」
「そう・・・・・・」
納得してなさそうな表情のリオを見ながらトキが淹れてくれた紅茶を飲み干す。『C&C』所属なだけあってトキの戦闘スキルもだが家事スキルも高い。優秀なエージェントなんだけど、リオに付きっ切りなせいで仲が良い生徒の話を聞いたことない。
「話が終わりなら先に帰らせてもらうぞ。二人もあんまり遅くならない内に寮に戻れよ」
「・・・・・・貴方も私に何か隠してないかしら?」
「別にしてねーよ」
・・・・・・ミレニアム学区内だとリオに隠し事するのも一苦労だな。PCを完全オフラインにしてパスワードも日に三回は変えて、ハードディスクも不測の事態の時は自動で初期化、爆発するようにしている。
「それじゃあまた明日。おやすみ」
「ええ、おやすみなさいナオヤ」
「おやすみなさいませ、ナオヤ様」
☆
「ふぅ・・・・・・」
シャワーを浴びて、バスローブに着替えた私––––––調月リオはイヤホンを耳につけて、モニターに映っているスタートボタンを押す。
『それじゃあまた明日。おやすみ』
録音していたナオヤの音声を今まで集めていた音声と合成する。ノイズや音割れ、不自然なところを修正していく。そして、完成品の音声とスタートボタンを押す。
『––––––愛してる、リオ』
「・・・・・・ええ。私もよ、ナオヤ」
今の私はかなりだらしない顔をしてることだろう。こんな顔、他の『セミナー』の子たちやトキにも、ナオヤにも見せることは出来ない。作成して音声をUSBに保存、ラベリングして床下の金庫に厳重に保管する。
「––––––ナオヤ」
昔から私のことを嫌う人が多い。私の性格を『下水道の水のよう濁っている』『貯水槽の中の水の方がまだ澄んでいます』と言う生徒もいる。ナオヤはそんな私とずっと一緒に居てくれた。彼も辛辣な言葉を投げてくる時はあるけれど、どんな時も私の味方をしてくれる。
「私を置いてどこにも行かないで・・・・・・ナオヤ」
もしナオヤに裏切られたら、私はきっと正気じゃいられなくなる。それほどまでに私はナオヤに依存している。