俺がお前を好きになる事は無い   作:変太鼓

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虚勢

人通りが少ない夜道一人の男が酔っ払いながら歩いている。「うぷっ…呑みすぎた。もう二度と呑まねえ酒なんか」

 

何度目かの禁酒宣言をしながら進みぼっちの男こと俺只野英(タダノタケシ)は近くにあった神社の石段に座り込む少しココで休む事にしよう。そう思いながら暫く夜風に当たりながらボーッしていると少し落ち着いてきた。すると一つの疑問が湧いてきた。

 

家まではもう少しだと思うが…俺の家の近くには神社など無かった筈だ。おかしい…だけど階段を少し上がって見上げると赤い鳥居が見える。神社で合ってる筈だけどまあきっと俺が知らない内に出来たんだろう。

 

なんせ最近ずっと残業に休出で久々に定時で上がれると思ったら同僚から合コンに誘われて結局いつもと同じ時間に家に帰宅する俺に昼間の世界の事など知らない。

 

何処か誘われる様な気もしながら長い階段を登り漸く本堂と賽銭箱が見えてきた。がその前に手を清めないと…しっかり手を洗った後一礼をして昔婆ちゃんに教わった通り5円玉(確かご縁があります様に…みたいな奴だった筈)を賽銭箱入れる。

 

「どうか…どうか今年こそはっ…今年こそは彼女が出来ます様にっ」

 

俺は手をギュッと握り一分ほど賽銭箱を拝み倒した。どうして俺がそこまでするのか答えは簡単だ。俺は()()彼女はいない。…今はと言うかこの世で生を受けてから一人たりともいた事ない。学生の時に告白された事はあるが縁が無かったそれだけだ。

 

そのままエスカレーター式で何も無く横に小人数の男友達と一緒に高校を卒業しそのまま学生から社畜に転生して…

 

低い賃金で命懸けで仕事や上司。取引先と言うモンスターと日夜戦ってる。異世界の冒険者かな?

 

まぁ…そんな感じで俺には出会いが無い。出会う時間も無いし社内恋愛なんて言う物も無い。あるのは毎日電車に揺られて会社に行ってまた死んだ顔で揺らされて家へと帰る俺の顔だけだ。

 

そんな日々を倍速で過ごしていたら年月と言うのは恐ろしい。いつの間にか俺もアラサーが近づいていた。と言うかもう間近だ。

 

ついこの間まで高校生と言う感覚があるせいで俺は会社と言う竜宮城にでもいたのか?と勘違いしてしまう。

 

話が長くなったが…要するに俺は()()までに彼女が欲しかった。だからいつもは断る合コンもワンチャンを期待して行った。

 

まあ結果は…一人で帰ってる事で分かるだろう。さあお参りもしたし帰るか…いやせっかく神社に来たんだ。おみくじでも引くかそう思って周囲を見渡すとそれっぽいものを見つけるお金を入れて取っ手を回すガチャガチャタイプらしい。

 

"パサッ"

 

落ちたおみくじを拾い開く。正直俺が一番気になる場所は一つだけだ。どれどれ恋愛運は…

 

 

 

"来るが文句は絶対に言わない事例え何が起きても文句を言わずただ感謝をする事"

 

 

ええ何それ怖っ。まあ…来るんだったら構わないか。後はどうでも良い俺は財布に仕舞い来た道を戻る。

 

すっかり酔いも覚めた。コレなら家にも楽々に帰れそうだ。俺は行きとは打って変わって軽快に階段を降りて家へと向かった。

 

家に着いた俺はまず水を飲み一息付く。まだおみくじの一文が気になるがシャワーを浴びて寝てしまう事にする。そうすれば…忘れられるだろう。

 

俺の体は俺が思った以上に疲れていたみたいでシャワーを浴びて着替えて布団に入ると瞼が重くなる。目覚めたらハッピーバースデーかまあ仕事だけど。そう思いながらゆっくり瞼を閉じて現実逃避をする。

 

"ジリリリリ!!!!"

 

アラームの喧しい音で目が覚めて止めてまた布団に潜る。あー休みてえ

 

ん?何か変な感じがする。何だこの不思議な感覚は(ナニ)かが足りないような…

 

無い。昨日まで確かにあった筈だ。生まれた時から一緒にてどんな時でも苦楽を共にしたアイツがいない。

 

そうかアイツは俺から解放されたのか。いつの間にかいなくなっていた事もそうだが一人で移動出来ることが驚いた。アイツには俺がいないといけないと思ってた。それが傲慢だと今更気づいたとて謝罪する相手はもう…

 

あれ?なんか布団狭くね?いつも寝相が悪くて真ん中に寝てて大体布団が無いのに布団がある。それに今日は珍しく端の方にいた。

 

何でだ?不思議に重い布団を剥ぎ取る。すると「まぶしい…」黒髪の美少女が俺の布団に寝ていた。状況が理解出来ずそのまま立ち尽くしていた。

 

すると…『う〜っす!ってお!ちょうど良いタイミングだ。我ながらナイスタイミング!』

 

なんか煩い奴が入ってきた。ってか何処から入ってきた?しかも俺の一番嫌いな軽い奴だ。

 

『只野英…さんですよね?』は、はい。最近の強盗は軽い上に住人など関係無しに住人の個人情報すら知ってるらしい。

 

『あー…私は別に変な者じゃない…ですよ?昨日この近くの神社に行っ…行きましたよね』

 

そこまで知ってるのか。取り敢えず頷くと彼女はホッとした顔をする。『じゃあ願いは叶えたので…まあ多少オマケもありますが気にしないでください。それでは!後コレ連絡先なんでいつでも』

 

ちょっと…お前は誰なんだよ!『私っすか?私はあそこ…百合ヶ咲神社の神主です。まぁ…何でも言ってくださいきっと力になれると思うんで…』

 

そう言って彼女はドアを使わずにその場所から消えた。手品か?

 

「…」結局何も分からなかった。だが願いは叶えたって言ってたよな?心当たりがあるとすれば神社でお願いした彼女欲しい発言だろうか。

 

「まさかこの子を俺の彼女にしろとか言う訳じゃないよな…」

 

俺はそう思いながら顔だけ出した件の人物を見る。見た所小学生高学年ぐらいだろうか…確かに可愛いが俺は捕まりたく無い。きっとあの子の妹が何かだろう。返して来なければ…その名前に話さなければ何も分からない。俺はこんな状況なのに寝ている彼女を起こす。

 

「あっ…おはよう…ございます」眠そうに目を擦りながら彼女は体を起こす。

 

名前とか分かる?

 

俺は出来るだけ優しく接した。彼女だってきっとパニックな筈だ。目が覚めたら知らないオッサンと一緒の寝床にいるんだから

 

只野締子(タダノムスコ)です」「はえっ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……。…コレは夢だ。夢だよそう思いたかった。きっと何処かの誰かが考えたクソ小説のアイデアだと思いこみたかった。

 

結果から言うと俺も美女になっていた。慌ててさっきの訳知り女に電話をかけると…

 

『あー言ってなかったすね…ウチの神社の神様の力が百合関係なんですよ。なんせウチの神社の名前が百合ヶ咲神社なんで…しかもお客さん引っ越して初めてなんでママ…ウチの神様が張り切っちゃって。しかもおじさん今日が誕生日だって知ったんで最高の誕生日プレゼントを贈ろうって言ってたす。どうすか?喜んで貰えました?』

 

それを聞いて怒る気なんか失せてしまった。怒ると言うか文句を言おうとは思ったけどまさかの善意の塊だった。

 

と言う事で俺は30歳になった初めての日に美少女になってムスコも美少女になった。

 

さぁ皆に聞こう。コレは百合ですか?




去勢
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