この話を書いている時、公式からビビバス箱イベが発表。バナーを見た瞬間、リアルに崩れ落ちました。
それでも私は思いました。杏を、笑顔にしたい!
本日は杏兄ssです。白石家長男としての苦悩、ねじ曲がった決意。どうかお付き合いください。
それでは本編、どうぞ。
白石響の始まりは
RAD WEEKEND
ビビッドストリートに集う全ての人が憧れ、夢に見る“伝説の夜”。
俺はその舞台の1人として、多くの人に知れ渡った。
でも、俺はあの夜のことを良い思い出として記憶していない。
俺はずっと.........立ち止まったままだ。
俺が生まれて1年と数ヶ月後の7月26日。
当時1歳だった俺だが、その光景だけは覚えている。
「ほら、
母さんに抱かれた小さな生命。
俺の最愛の妹、杏。
俺が小さい手を伸ばすと、そのさらに小さい手で握ってきた。
「お前はお兄ちゃんになったんだぞ。響」
お兄ちゃん.......か
その瞬間から........いや、もう既に覚悟をしていたのかもしれない。
この子は........俺が絶対守ると
父さんたちはこのストリートじゃ超有名なミュージシャン。
そのチームの名前は“RADder”。
俺はそんな父さんたちに憧れて、小学生の時から音楽を学んだ。
「俺は、父さんみたいなミュージシャンになりたい!」
それを聞いたい父さんはとても喜んでいた。
大河さんと凪さんも、嬉しそうに歌い方を教えてくれた。
中学生になって、初めてステージに立った。
俺は全てを出し切って歌った。
しかし━━━━━━━━━━━━━━━
「KENの息子にしては、大したことないな」
「これがKENの息子?はっ!舐めてんのか?」
帰ってきたのは、言葉の暴力。
悔しかった。悔しかった。悔しかった。
父さんたちに申し訳がなかった。
父さんたちは、「大丈夫だ」「気にするな」と言ってくれた。
でも俺は耐えきれなかった。
“KENの息子”というプレッシャーに。
シブヤのストリートを歩いていると、少し遠くから音楽が聞こえてきた。
気になって見に行くと、多くに人に囲まれた、俺と同い年くらいの男が歌っていた。
「......あいつ、結構度胸あるな」
大人しそうな見た目の彼は、こんな路上で歌えそうには見えなかった。
「それでは次の曲、聴いてください」
そう言って曲を再生。
マイク持った瞬間、雰囲気が変わった。
「━━━━━━━━━━━!」
「ッ!!!!!」
一瞬で引き込まれた。
〔これは..........!)
繊細な中にある、力強い、芯のある歌声。
(俺に足りないもの.......あいつなら!)
「なあ!」
曲が終わり、観客がいなくなったのを見計らって、声をかける。
「はい?僕になにか?」
キョトンとした彼は俺を見据える。
俺は意を決して口に出す。
「俺に.........歌い方を教えてください!」
これが、俺の相棒、涼との出会いだった。
それから数日、涼の提案でユニットを結成した。
名前は“Re.SOUND”。
涼のおかげで再び音を奏でられた。
俺たちは数箇所のライブスタジオ、ステージに出演。
1人の時とは全く違う、順風満帆な時間を過ごしていた。
しかし、あるライブの後、ある2人組の会話を聞いた。
「Re.SOUNDの2人、すげえよな。まだ結成して日が浅いだろ?」
「ああ。
“KENの息子”とは大違いだぜ」
「...........」
「響........」
隣の涼が、心配するように視線を向ける。
「大丈夫だ.......なにも問題ない」
Re.SOUNDとしての俺は、顔を仮面と包帯で覆い、正体を隠していた。
名前も“Hibiki”にしていた。
その会話を聞いてから、もう吹っ切れてしまった。
「俺は今日━━━━━━━━━━━━━白石響の名前を捨てる」
俺の出した答え、それは逃げだったんだ。
ある日、いつものようにスタジオで練習しようとした朝。
涼から「言わなきゃいけないことがある」と連絡が来た。
「それで.......一体なんだ?」
すぐにでも練習がしたい。
その気持ちから、少し強い口調になる。
静寂が流れ、10分経ってようやく涼が口を開く。
「実はね.......僕........
もう余命が短いんだ」
「.......は?」
彼の話では、俺と出会う前から、医者から余命宣告されていたらしい。
期間は半年。
もう時間は残されていない。
「お......前........なんでそんな大事なこと黙ってた!!?」
理由はわかっていた。
俺がもっと高みへ行こうと、周りを見ずにに突き進んでいたからだ。
「俺は.......お前となら........って..........っ!」
悔しさで拳の握りしめる。
あの笑顔を裏には、とてつもない苦難があっただろう。
俺はそれを見ていなかった。
「僕は君のその真っ直ぐさに惹かれた.....君とならもっとすごいことが出来るって.......そう思った」
そんなを俺に、いつもの優しい口調で、涼は言った。
「だから」
そう言って1枚の紙を取り出し、差し出した。
それは━━━━━━━━━
「RAD WEEKENDの........出演依頼?」
父さんたちが主催となったライブイベント。
「これに.......僕と出て欲しい」
涼と視線が交わる。
真剣な.......燃え上がる炎を宿した瞳。
混乱する俺に、安心させるように言葉を続ける。
「大丈夫だよ、響」
それはかつて見た、路上で歌う彼の表情。
彼は俺に手を差し伸べた。
「君が悩む気持ちも分かる......でも僕達は死に物狂いで努力した。初めは見返したい......って気持ちだった思うけど、君の音楽に対する想いは本物だ」
「.......涼........」
ずっとそばにいた相棒。
そんな彼の最期の願い。
「確かにこれ以上は、体が持たないかもしれない。でも僕は.......最期まで、Re.SOUNDでいたいんだ」
涼はそう言って微笑んだ。
最期までステージに立つ。ミュージシャンとしての本望。
それを読み取った俺は、その手を握り返した。
「わかった.....やろう.......相棒」
RAD WEEKEND当日の夜。
俺はずっと疎遠だった父さんたち、RADderの元に向かった。
3人はそれは驚いた様子だった。
Hibikiが俺だって、気づいてたんだな。
「お久しぶりです。RADderの皆さん」
「お前.......きょ━━━━」
「今は.........Re.SOUNDのHibikiです。KENさん」
俺が白石響を捨ててから、話すのは初めてだ。
その変わりように、困惑してるんだな。
「そうだな........今日はよろしく頼む」
「こちらこそ」
そう言って握手をする。
昔から変わらない父さんの手の温もりに、涙が出そうになる。
それを耐えて、後ろにいるSuzuに振り返る。
さあ.......行こうぜ。
RAD WEEKEND━━━━━━━━━━━開演
「あれって....お父さんと.......Hibikiさん......?」
「それじゃあ次は━━━━━━━━━Re.SOUND!」
Nagiさんの声とともに始まるギター。
それに合わせて俺はシャウトする。
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!」
今日にために作り上げた俺たちの音。
それを全力で、客席にぶつける。
「♪━━━━━━━━━━━━!」
これが今の俺だ..........過去を捨てた俺だ。
俺の歌とともに会場のボルテージが上がる。
それに続くように、Suzuがギターをかき鳴らす。
「いいぞー!Hibiki!」
「最高だぜー!!」
気持ちが昂る。魂が、心臓が、叫んでいる。
「♪━━━━━━━━━━━!!〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!」
最後のシャウトを出し、俺たちの出番は終わった。
「はあ.......はあ........ふ〜」
舞台裏で息を整える。
「お疲れ様。Hibiki」
Suzuが近寄ってくる。
「ああ。最高のステージだったぜ。Suzu」
言葉を交わし、拳を付け合わせる。
「ラストを飾るのは、もちろん私達........RADder!!」
ワアアアアアアア!!!
最高潮の歓声があがる。
(やっぱりすごいな.......あの人たちは)
RADderの演奏は凄まじかった。いや、そんな言葉で言い表せないほどに、惹き付けられた。
「♪━━━━━━━━━━っ!!」
Nagiさんの力強い歌声が、ビリビリと会場全体に伝わる。
(でも.......いつもと雰囲気が違う)
全力を出しているのはもちろんわかる。
だが、違う何かを感じる。
(まさか......そうか........あの人たちも......)
そんな盛り上がった時だった。
ドサッ!
鈍い音が聞こえた。
振り返ると、涼が胸を抑えて倒れていた。
「ッ!涼!!」
すぐに駆け寄り、体を支える。
「誰か!早く救急車を!!」
全員がステージに集中している中、こちらに気づいた警備員に叫ぶように言う。
涼は緊急搬送された。
病室に入ると、酸素マスクをつけ、横になっている涼の姿はあった。
「涼......」
先程の医者の説明では、あのステージいる時点で、いつ倒れてもおかしくなかった。
俺の歌声が、涼を繋ぎ止めていた.......らしい。
信じられないことだったが、医者曰く、奇跡だそうだ。
ベットの横の椅子に座り、涼の顔を見る。
ただ、寝ているようにしか見えない。
(このまま.....目ぇ覚まさないのか?)
こんな結末でいいのか?いいわけない。
「.......いいわけないだろ」
俺は、今作っている曲を口ずさんだ。
病院に迷惑のかからない声量で。
「♪━━━━━━━━━」
ベッドサイドモニターが静かになった気がした。
ベッドから物音が聞こえた。
「ん.........きょ.....う......?」
涼目を覚ましたのだ。
「涼!!」
つい大きな声を出してしまい、慌てて腰を下ろす。
「響の......歌が.......聴こえた......ありがとう」
弱々しく、途切れ途切れだが、しっかり伝わる声。
「何がありがとうだよ.......まだこれからだろ?」
もうわかっていた。涼はもう.......
「泣か.........ないで.......響」
膝の上で握りしめている俺の手に、涼の手が重なる。
「......涼っ.......」
「今まで.........ありがとう.........響.........僕の大事な相棒......」
涼の声が遠ざかっていくような感覚がした。
「君は..........絶対大丈夫。ひとりじゃないから.......」
俺はその手を両手で握る。
「おい......涼........なあ,.......」
「忘れちゃ..........だめだよ?..........君の友達や.......街のみんなのこと..........」
消えてしまいそうな声で、俺に語る。
「何よりも........ご両親と........“妹さん”を.......大切にね.....」
「ッ!」
「君は.......僕のヒーローだよ」
涼の力が抜ける。
心電図の波が、真っ直ぐになる。
病室に、アラームの音が鳴り響く。
俺はその日、喉が枯れるまで泣き叫んだ。
山岸 涼。
一生忘れない、俺の相棒の名前だ。
俺たちRe.SOUNDは.......解散をした。
さて、プロローグ及び、主人公、響の過去話が終わりました。
少し退屈だったかもしれませんが、まずは響のことを知っていただければと思いました。
次回はしっかり、杏とビビバスメンバーが出るので、お待ちいただけると幸いです。
また、これを投稿時点では、現在にイベントのストーリーは閲覧していません。食い違いがあるかもしれませんがご容赦ください。
それではまた次回お会いしましょう。さようなら。