ストリートに響くこの歌は   作:リメイル

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どうも皆様、リメイルです。
杏バナーのイベスト、無事号泣しました。致命傷です。ガチャの杏は5万課金して出しました。嬉しいです。
その勢いのままに駆けつけていきました。そのせいで文字数が大変なことになりました。
切るのも悩んだのですが、もうどうにでもなれー、という投げやりで投稿します。
誤字脱字あるかもしれませんが、何卒よろしくお願いします!

それでは本編始まります。


2023.6.16 今後の展開のため、少し修正をしました。



志した理由は

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『お兄ちゃん!私ね!お父さんみたいに、たくさんの人が熱くなれるパフォーマンスをしたい!』

 

 

そう言って嬉しそうに駆け寄ってくる杏の姿が、今でも鮮明に思い出せる。

 

 

『そうか......頑張れよ.....杏』

 

 

結果は変わらない。それでも俺は.......

 

 

この子の笑顔は.....絶対に守ってみせる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よう。お邪魔するぜ」

 

 

スタジオで練習していると、父さん.......白石謙が訪れた。

 

 

「.......一体なんの用なんだ?」

 

 

「おいおい。せっかくお前のために来たのに.......遅めの反抗期か?」

 

 

父さんはほら、と飲料水やのど飴などの入った袋を差し出した。

 

 

「.......ありがとう」

 

 

ドカリ、と近くの椅子の腰をかけ、口を開く

 

 

「お前、杏たちの歌........しっかり聴いたことなかっただろ?今度やるステージに誘おうと思ってな」

 

 

杏たちの歌を聴いたのは、数日前。

確かこはね.....という女の子と“Vivids”という名前でコンビを組んで歌った。

しかしその時は何者かによる妨害で、最後まで歌いきることが出来なかった。

 

 

「........あの時はトラブルがあったみたいだったが、いい歌声だった」

 

 

思い出したら少しイラついた。そりゃ、今は離れているとはいえ大事な妹のことだ。

あの時の奴........1回きつく言ってやろうか。

 

 

「そうだろ?今はもっといいパフォーマンスをするようになった。あのステージの後、“BAD DOGS”の2人と組んだそうだ」

 

 

「.......ッ!あの2人と........」

 

 

BAD DOGS。

杏と同い年の男子2人のユニット。

当時結成してから日が浅かったものの、多くの観客を注目させた。

実は俺も少し注目していた。

 

 

「名前は“Vivid BAD SQUAD”。RAD WEEKEND(あの夜)を超えてやるって、毎日必死に頑張ってる。あいつらなら........できるかもな」

 

 

「..........」

 

 

どこか遠くを見ながら、真剣な表情で話す父さん。

やっぱり.......その道に進むんだな......杏。

 

 

「杏は.......そいつらと、楽しくやってんのか?」

 

 

「ああ。毎日楽しそうに、笑ってるぜ」

 

 

そうか........笑顔でいるのか.......

 

 

それじゃあ.......俺はもう........必要.........

 

 

「なんて顔してんだ、響」

 

 

俯いていた顔を上げると、目の前に父さんの顔があった。

 

 

「うおっ!」

 

 

驚いた拍子に後ろに倒れた。

父さんは......笑ってやがる。くそっ。

 

 

「とにかく、今度のステージ、一緒に見に行こうぜ」

 

 

渡すものを渡したからか、出入り口に歩みを進める。

 

 

「.......でも、俺は」

 

 

再び俯いて、思考する。

今更そんな権利が.......俺にあるのだろうか?

俺は自分が嫌で、ストリートを飛び出して。

本当の自分を隠して、妹から逃げて。

そして........音楽を続ける意味を失った。

 

 

どうすればいいのか分からなくて、ただひたすらに歌声を磨き続けた。

そんな俺が......真剣に目標に向かって歩いている杏たちのステージに.......

俺の様子を理解したのか、父さんがゆっくり語り出した。

 

 

「........杏はようやく1歩踏み出したんだ。相棒を見つけて、色んなやつらと出会って、音楽の厳しさを......楽しさを知った。もう守って貰わなくても、自分の決めた道を歩んで行ける」

 

 

自分の.......決めた道。

 

 

『お父さんたちみたいに、たくさんの人が盛り上がって......もっと熱くなれるイベントをやってみたい!』

 

 

杏の笑顔が、脳をよぎる。

 

 

「..........」

 

 

「もういいんだよ、響.......お前の気持ちも分かるが、いつまでも立ち止まったままでいいのか?」

 

 

「........いいわけ........ない」

 

 

俺はあの時、涼に言われたんだ。

向き合う......時なのか?

 

 

「わかった......行くよ」

 

 

「........それでこそ、お前だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

父さんがスタジオを出てから、歌い直そうとした。

でも、そんな気分になれなかった。

 

 

荷物をまとめてスタジオを後にする。

その後は......特に何をするとかは決めてない。

 

 

「.........?なんで俺.......ここに」

 

 

いつの間にか、ビビッドストリートに来ていた。

そこは昔と変わらない........今の俺には.........

 

 

「.........ッ!........眩しいな....」

 

 

(......今日は1度帰って......ライブまでの心構えをしておかないと.....)

 

 

そう決めて、来た道に戻ろうとした。

 

 

すると━━━━━━━━━

 

 

「━━━━━おい。そこにいるのは、坊主じゃねえか」

 

 

今日はどうやら........そういう日なのかもしれない。

 

 

「.........どうも、大河さん」

 

 

振り返った視線の先にいたのは、昔父さんと組んでいた、古瀧大河さんだった。

正直.......この人には会いたくなかった。

 

 

「.........見ねぇうちに随分腑抜けた面になったな。響」

 

 

「..........」

 

 

「昔の........Hibikiだったお前の方が、生き生きしてたのによお。なんだ、その情けねえ顔は!」

 

 

「........」

 

 

なにも喋らない俺に、大河さんは痺れを切らしたのか、雰囲気をガラッと変えた。

 

 

「久しぶりにやるぞ.......響」

 

 

.....レスバか。

 

 

「.......今はそんな気分じゃない。また今度にしてくれ」

 

 

今の俺じゃあ.......あんたには到底届かないよ。

大河さんは眉間にシワを寄せる。

 

 

「はあ?お前...........売られた喧嘩は買うのがお前だっただろ。今はもう違うってか?.......ふざけんなよ」

 

 

こんな怒った大河さんは見たことない。

それでも俺には.......なにもしたくなかった。

 

 

大河さんは続ける。

 

 

「.......本当に情けないやつだ。そんなんじゃ、死んでいった相棒はさぞ.....呆れてるだろうな」

 

 

「........あ?」

 

 

今は........今、涼は関係ないだろ。

涼のことは今の俺には地雷だった。

全部思い出してしまう。あの時、もっと早くあいつの体調に気づいていたら......っ!

 

 

「相棒がいなくなってから、お前はどうだ?抜け殻みてえにフラフラして、熱意もなんにも感じねえ」

 

 

「..........うるせえ........」

 

 

頭に血が上る。ああ、だめだ。冷静になれ。

 

 

「いつでも立ち直る時間はあった。でも結局お前は逃げた..........勝手に自己嫌悪の沼にハマって。勝手に行方不明になって、嬢ちゃんや謙に心配かけて。あの時みてえに、現実から目ぇ背けてるだけだ」

 

 

「........うるせえ」

 

 

「それで何が変わった?お前がしてきたことは......何か意味はあったのか!?」

 

 

うるせえ.......

 

 

 

 

 

「うるせえ!!んなこと......俺が1番わかってんだよ!!!」

 

 

自分でも驚く程の、大声が出た。

騒ぎを聞きつけて、街のみんな集まってくるのがわかる。

でも、そんなこと気に止めてる暇はなかった。

 

 

「そうだよ!俺が逃げた!他と比べて成長が遅い自分が嫌で.........必死に努力して......でも誰にも認められなくて!罵倒を浴びせられる毎日.......」

 

 

『何がKENの息子だ!ただの親の七光りだろ!』

 

 

『つまんねえ歌だな。もう辞めちまえよ』

 

 

「辛くて.....苦しくて.......でもどうしても.....音楽は手放せなくて.........俺は逃げ出した。ストリートから!街のみんなから!父さんと...母さんと........杏........から」

 

 

次々と感情が溢れてくる。

俺は一体何をしているんだ。

大河さんの言葉は厳しいが、ほとんど合ってる。

俺は逃げた。嫌なことから逃げ出した。

 

 

「Re.SOUNDになって.......Hibikiになって........ようやく認められた!俺を見てくれる人ができた!........でもその目は“白石響”を見てなかった。だから俺は捨てた!俺自身を!」

 

 

 

元々Hibikiとして活動したのは、全く違う自分になりたかったから。

仮面を被って.......視界を減らしたかったから。

“白石謙の息子”という言葉が、どうしても嫌で........消し去りたかったから。

真っ暗だった俺を照らしてくれたのは、山岸 涼だった。

Hibikiも、白石響も。唯一認めてくれたのは涼だった。

あいつとの日々が......俺を少しずつ変えてくれた。

 

 

でも........あいつはもういない。

 

 

「.......もう.......どうすればいいのか......わかんねえんだよ。夢も........理想も.......仲間も.......全部........なくなっちまった」

 

 

目から涙が溢れてくる。

最後に流したのは.......涼の病室だったな。

 

 

俺.......まだ泣けるんだ.......。

 

 

「........やっと吐いてくれたな。坊主」

 

 

先程の雰囲気が消え、ため息を吐く大河さん。

 

 

.........どういうことだ?

 

 

「大河......さん?」

 

 

「まったくよう......謙のやつ......意外と大変な役、押し付けやがって」

 

 

その発言のポカン、とする。

 

 

すると、頭に温かい感触が伝わってきた。

 

 

「........今までよく耐えたな。響」

 

 

全部........俺のためだったのか?

だからあんなに.......怒ってくれたのか......?

 

 

未だに呆然とする俺をよそに、大河さんは続ける。

 

 

「昔、お前が俺に音楽を教えて欲しい!、って言ってきた時、覚えてるか?」

 

 

「......え?」

 

 

なんで.......今、その話を?

 

 

「小学生のガキが突然来たもんだから、驚いたが、お前だって知って、納得したよ。謙の影響だってな」

 

 

そうだ.......確か杏とRADderのライブ映像を見ていた時だ。

ステージに立つ父さんたちがあまりにも輝いて見えて......それでいつの間にか家を出て、大河さんのところに行ってた。

 

 

「真剣な顔でそう言うもんだから、調子に乗って色々喋って、凪に怒られたっけな」

 

 

「うん....そんな時もあったな」

 

 

笑いながら話す大河さんにつられて、自然に笑みがこぼれる。

 

 

笑ったのも.......いつぶりだろうな。

 

 

本当に懐かしい。またもう一度......杏と過ごしたいな.......。

 

 

「お前がミュージシャンになりたい、って言った時に、お前はなりたい理由を口にしたな。覚えてるか?」

 

 

「理由......?」

 

 

そんなの........なんだっただろうか?

きっかけは........父さんたちのライブで.......やっぱり隣には杏がいて......それで.......

 

 

「........あ.......」

 

 

「........思い出したか?」

 

 

ああ........そうか.........なんで忘れてたんだ。

 

 

俺の歌う理由は............

 

 

「.........杏を........“笑顔”にしたい........」

 

 

俺がずっとやってこれたのは、杏が笑っていたから。

相棒が、仲間ができて、笑顔を見せたって聞いた時.......嬉しかった。

 

 

「.......お......れ.......なんで.......忘れてたんだよ.........!」

 

 

俺は......最初から間違えてたんだ。

その“想い”は、忘れちゃいけなかったんだ。

 

 

『俺がいると、杏は俺と同じように苦しむかもしれない。

 

 

だから......俺なんか必要ないんだ.....』

 

 

KENの子供であるプレッシャーを、杏に味わわせたくなかった。

それで距離を取った。

でもそれは間違いだったんだ。

 

 

「俺のやってること......なんの意味もなかったんじゃねえか.........!」

 

 

「何言ってんだ........意味はあっただろ?」

 

 

後悔に押しつぶされている俺に、大河さんは優しく言った。

 

 

「確かに、お前は間違えたよ。でもな......まだやり直せると思わないか?」

 

 

「......やり直す?」

 

 

「お前はまだ若い。それに.......見ろ。お前の周りをな」

 

 

言われて、顔を上げ、周りを見回す。

 

 

そこには━━━━━━━

 

 

「響!」

 

 

「響くん!」

 

 

「響ちゃん!」

 

 

「響!」

 

 

 

 

━━━━━━━━━街のみんながいた。

 

 

「........みんな.......」

 

 

昔、凪さんが話してくれたことを思い出した。

 

 

 

『最初は全然できなくて大変だったけど、みんな頑張れって励ましてくれて。できるようになったら、一緒に喜んでくれたりしてさ。たまにヘタクソ!なんて言ってくる人もいたけど、そういう時は、見返してやる!って思えて頑張れた』

 

 

『そういう支えがあったから、私はここまでこれたんだと思ってる』

 

 

 

 

そうか......こんなにも...温かいものだったのか.......

 

 

「お前の周りには、こんなに支えてくれるやつらがいるんだ。もっと街を見ろよ、響」

 

 

涙を拭い、立ち上がる。

 

 

「俺は.......ここにいていいのかな?」

 

 

そう言うと、みんなは笑った。

 

 

「当たり前だろ!」

 

 

「うん、もう1人にさせないからね」

 

 

「ずっと待ってたのよ?貴方がここに来るのを」

 

 

「全く、待たせすぎなんだよ!バカヤロウ!」

 

 

この街を出て約4年。

色んなことがあったけど.......やっぱり俺はここが大好きなんだ。

みんなに向き合い、頭を下げた。

 

 

「みんな!.......勝手に逃げて......ごめんなさい。そして........ずっと俺を待っていてくれて、ありがとう!」

 

 

それを聞いたみんなは、満面の笑みを浮かべた。

本当に........いい街だな。

余韻に浸っていると、大河さんが機材を整えて戻ってきた。

そういえば、レスバするんだったな。

準備しようと荷物を下ろすと、少し離れたところから、言い争う声が聞こえた。

 

 

「なんだ?ありゃ」

 

 

「ん?.....ああ。最近注目されてるバンドだな。邪魔されると面倒だ。俺が行ってくる」

 

 

そう言って集団に近ずいていく大河さんを、肩を掴んで止める。

 

 

「ここは俺が行く......ちょうど話したいやつらみたいだからな」

 

 

そう、そいつらは俺がまだ初めて数日だったライブで、ボロくそ言ってきたやつらだった。

 

 

「お前......でもよ」

 

 

「頼む......これは俺が前に進むための1歩なんだ」

 

 

俺の真剣な眼差しに、諦めたのか、息を吐く。

 

 

「......わかった。無茶だけはするなよ」

 

 

「わかってるよ、大河“おじさん”」

 

 

「っ......!お前......」

 

 

大丈夫だ。俺はもう、あの時の俺じゃない。

だから、見ててくれよ。俺の成長した姿。

 

 

「すまない。通してくれ」

 

 

数人に避けてもらい、集団の中央に向かう。

 

 

すると

 

 

「お前みたいなヘタクソが、“RAD WEEKEND”を超えられるわけねえだろ!」

 

 

やっぱりな。全然変わってないみたいだな。

大きな声で、煽るように言う男。

その相手は俺よりも若い男子学生。尻もちをついて怯えている。

男の取り巻きが一緒になって煽る。

 

 

全く.......何やってんだか。

 

 

俺は前に出る。

 

 

「おい。もうそんぐらいにしてやれよ。おっさん」

 

 

「あ!?誰だ!」

 

 

ガラの悪い面を俺に向けてくる。

 

 

「こんなど真ん中で揉めてんじゃねえよ。はっきり言うが迷惑だぞ?」

 

 

「うるせえ!外野が口挟んでんじゃねえ!」

 

 

めんどくせぇやつだな......おい。

すると、ようやく俺に気づいたのか、少し驚いて声をあげる。

 

 

「お前、KENとこのガキじゃねえか。最近見なくなったと思ったら、まだこんなところにいたのか!」

 

 

「それって、リーダーの言ってた、泣いて逃げたガキのことですか?」

 

 

「はんっ!いきなり出てきて説教とは、また泣かされたいか?」

 

 

ギャハハ、と気持ち悪.........下品に笑う男たち。

まあ、そう言われると思ってたぜ。

 

 

「ああ。確かに俺は逃げたよ、情けない姿でな。もう2度と歌いたくなかったよ」

 

 

連中はまだ笑っている。

 

 

.......こんなところで言いたくなかったが、しょうがねえな。

 

 

「あの時の俺が未熟で、弱くて......あんたらの言葉で簡単に心が折れた。めちゃくちゃムカついたし、悔しいかった。でもよ......

 

 

その経験があったから、今の俺がある」

 

 

その言葉に、さっきまで笑っていた声がなくなる。

 

 

「俺、あんたらには感謝してるんだぜ?これでもな」

 

 

「はあ!?こいつ、頭おかしいんすか!?」

 

 

突然の俺の発言に、わけのわからなそうな様子。

 

 

「あんたらに言われたおかげで、心は強くなったし、度胸もついた。だからあんたらに恩返しさせてくれ。久しぶりに........やろうぜ」

 

 

マイクを取り出し、投げる。

男は困惑しながら受け取ると、俺とマイクを交互に見る。

 

 

「......お前.....誰にもの言ってんだ?俺たちは上り詰めてんだ。後悔しても遅ぇぞ!」

 

 

スタジオから音楽が流れる。

 

 

「「「♪━━━━━━━━━!」」」

 

 

確かに、注目される理由がわかる。

かなりレベルが高いな。

高音への移りやハモリ。しっかりと洗練されている。

 

 

だが......

 

 

「はあ......はあ.......これが今の俺たちだ!今更逃げれねえからなあ!」

 

 

「ああ、確かにすげえな。ここまで来れたのもよくわかる」

 

 

そう言うと、もうひとりが調子に乗ったのか、自信満々に言う。

 

 

「俺たちなら!RAD WEEKENDを超えられる(・・・・・)んだよお!」

 

 

......はあ?

 

 

「おいバカヤロウ!」

 

 

口を滑らせたバカを、叩くリーダーの男。

 

 

......そうかよ。

 

 

瞬間、空気が変わった。

ザワザワしていた周りは一気に静まり返り、全員が俺を見ている。

 

 

「........お前らはすげえよ。ここまで登りつめただけあるな.......でもよ.......」

 

 

マイクを持ち直し、相手を見据える。

 

 

次は.....俺のターンだ。

 

 

「どんなに人気だろうが...........どんだけ実力を付けようが........お前らのそのレベルじゃあ.........

 

 

 

 

俺には及ばねぇ(・・・・・・・)っ!」

 

 

しっかり教えてやるよ。

上には上がいるってことをなぁ!

 

 

曲が流れ始める。

 

 

今まで俺は、苦しんできた。

足掻いてきた。積み重ねてきた。

 

 

ただ一心に、杏の笑顔が見たいと。

その“想い”は決して.......間違いなんかじゃない!

 

 

「俺の響き(うた)━━━━━━━━━━骨の髄まで刻み込め!!!」

 

 

 

「♪━━━━━━━━━━━━!!!!」

 

 

スピーカーが揺れる。アンプが揺れる。

この街全てが、揺れる。

俺の鼓動が、心臓が、上へ上へと突き動かす。

 

 

ワアアアアア!!

 

 

「なんだよ........この歌」

 

 

「桁違いすぎる.......なあ!聞いてた話とちげえじゃねえか!」

 

 

「桁どころか........次元が違う」

 

 

呆然、焦り。様々な感情が混ざった顔をする男たち。

腰を抜かして、座っているやつもいる。

おいおい。まだこんなもんじゃねぇぞ?

へこたれるのが早すぎるぜ。

 

 

俺はさらに声を上げる。

 

 

「♪━━━━━━━!!! ♪━━━━━━━━━!!!」

 

 

「まだ上があんのかよ!化け物じゃねえか!」

 

 

「こんなの........勝てるわけねえよ!」

 

 

リーダーを置いて逃げるバカたち。

リーダーの男は.......固まったままだ。

 

 

ワアアアアアアアアアア!!!

 

 

さらに盛り上がりをみせるオーディエンス。

ラストはシャウトで締める。

 

 

「♪〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!」

 

 

ワアアアアアアアアアアア!!!!!

 

 

曲が終わり、一瞬の静寂後、溢れんばかりの拍手が響く。

 

 

「すげえな響!やっぱりお前は最高だぜ!」

 

 

「うん。本当にすごい」

 

 

「久しぶりに熱くなったぜ!ありがとな!」

 

 

本当.....温かいなあ。

俺は未だに動かない男、おっさんに声をかけた。

 

 

「俺の想い......伝わったか?」

 

 

「.......ああ。お前は本当に......すげえやつだ」

 

 

手を差し出して立ち上がらせる。

すると、大河おじさんが、近づいてきた。

 

 

「まったく、大したやつだぜ、響。おつかれさん」

 

 

「ありがとうおじさん。みんなも、ありがとう!」

 

 

拍手喝采に、嬉しい気持ちになる。

 

 

「そうだ、響。お前に伝えることがあった」

 

 

た、大河!?ナンデ!?、と驚いているおっさんを無視して、おじさんに向き直る。

 

 

「伝えること?」

 

 

「ああ。次の嬢ちゃんたちが参加するライブ、トリのやつらが急遽出られなくなってな。お前で良かったら、出ないか?」

 

 

杏たちと同じステージで.......歌える?

 

 

「本当に?」

 

 

「ここで嘘ついてどうすんだよ。俺もお前の歌、聴けるの待ってたんだぞ」

 

 

そっか、これはチャンスなんだな。

本当の俺を見せるための!

 

 

「わかった、出るよ。父さんや杏は伝えるのか?」

 

 

「謙にはそうするが、一応シークレットだからな、嬢ちゃんたちには秘密だ」

 

 

「そっか」

 

 

俺とおじさんは笑い合う。

楽しみだな。

 

 

「俺の全力.....見せてやるよ」

 

 

「........それでこそ、Hibikiだ」

 

 

「Hibiki........って......ええええええええ!!!??」

 

 

ずっと黙ってたおっさんが急に騒ぎ出した。うるさい。

 

 

「お前Hibikiだったのか!?道理でこんだけのパフォーマンスできるわけだ.......」

 

 

「うん。ありがとうおっさん。戦ってくれて。今度のステージ、見に来てくれよ」

 

 

そう言って手を差し出す。

おっさんは握り返してくれて。

 

 

「当然だ!楽しみにしてるぜ!」

 

 

これでようやく、過去から抜け出せたんだな。

 

 

「よし!お前ら解散だ!」

 

 

大河おじさんの一声で、みんなが帰路に着く。

すっかり夕方だ。

 

 

「あ、そうだ響!」

 

 

そう言った1人に振り返る。

 

 

「せ〜の!」

 

 

 

 

 

 

 

「「「「「「おかえり!響!!」」」」」

 

 

 

「━━━━━━━━ただいま、みんな!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の夜、俺は今日までのことを振り返り、歌詞を書いていた。

この曲を、今まで迷惑かけた街のみんな。

父さんと母さん。

 

そして杏に向けて、俺の想いを届けるために。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




大河さんはずっと響のことを気にかけていたんです。
妹の凪さんのこともあり、響の気持ちはよくわかっています。
でも、いつまでも落ちぶれている彼を見ていたくなかったんです。
あの人、不器用そうですよね。
さて、今回で響の“間違い”について明かしていきました。
本当に単純なんですよね。たとえどんな状況になっても、彼はシスコンですから。
次回はついにライブです。ようやくビビバスのみんなを出せます。ここまで長かったぜ。
それではまた次回お会いしましょう。さようなら!

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