ストリートに響くこの歌は   作:リメイル

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どうもリメイルです。
今回ライブということで、響の披露する曲のうち1曲のみ引用可能でした。少し残念ですが、著作権の関係上仕方ありません。
曲名のみなら楽曲コードなしでも問題ないので、そのようにしております。問題があったら修正しますので、何卒。
今回の選曲のテーマとしては、「ゼロからのスタート」「もう一度立ち上がる」という2点です。しっかり伝えられるよう、頑張りました。
3曲目につきましては、特にテーマはありませんが、個人的にどうしても入れたかった曲です。どうぞお楽しみください。

それでは本編です。


蘇るその姿は

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「♪━━━━━━━━!」

 

 

イベント当日、いつも使ってるスタジオで声出しをしていた。

 

 

ほかの参加者に出演を知られていないため、ステージでの最終リハは前日に行った。

バレる訳にはいかないからな。

もちろん、スタッフとの打ち合わせは完了している。

ビビバスとの共演についても、もちろん確認済みだ。

 

 

「♪━━━━━━━!..............もうそろそろ行かないとな」

 

 

店長に礼を言って、スタジオを出る。

荷物と、かつて涼が使っていたギターを持つ。

 

 

「........行こうぜ、相棒」

 

 

 

 

 

 

 

 

意外と道が混んでいて、集合の時間を少し過ぎてしまった。

早足で会場近くに向かうと、父さんと大河おじさんがいた。

俺に気づいたのか、父さんが手をふる。

 

 

「おーい!響!」

 

 

「おはよう、父さん、おじさん。遅くなってごめん」

 

 

「どうせギリギリまで調整してたんだろ?問題ねえよ」

 

 

今回の会場は野外ステージ。

天気に恵まれて、空は晴天。

最高のコンディションで当日を迎えられたことを嬉しく思う。

 

 

「席はもう取ってる。お前がすぐに裏に行けるよう、端の方にな」

 

 

そう言って、父さんが俺の分のチケットを渡してくれた。

 

 

「久しぶりだからって、半端な姿見せんなよ?」

 

 

大河おじさんが背中を押してくれる。

 

 

「わかってるよ。行こうぜ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

参加しているのは、ビビバスを始め、EVERや新など、様々なユニットが勢揃い。

久しぶりの会場の雰囲気、たまらんな。

うずうずしてしょうがない。

 

 

「そろそろ始まる。落ち着けよ、響」

 

 

「ああ」

 

 

父さんに諭され、落ち着きを取り戻す。

今は、みんなの歌を聞こう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「━━━━━━━ありがとうございました!」

 

 

前のユニットが演奏を終え、裏に下がる。

次はいよいよ杏たち、Vivid BAD SQUADの番だ。

 

 

(どんな音.......聴かせてくれるんだろうな......)

 

 

歓声が上がり、杏たちがステージに上がる。

 

 

『みんなーーー!Vivid BAD SQUADでーす!』

 

 

『盛り上がる準備!出来てるかーーー!!』

 

 

彰人くんが客席を煽り、会場のボルテージがあがる。

 

 

『じゃあ1曲目!“Ready Steady”!』

 

 

最初は、ビビバスの始まりの曲。

確かあのセカイでミクが言っていたっけ、この曲は“4人の本当の想い”が形となったものだと。

 

 

「想い.......か.......」

 

 

そのことを思い出し、よく歌詞を聴いていた。

そのまま2曲目、“RAD DOGS”。

この曲は、彰人くんと冬弥くん、2人を中心とした楽曲。

息の合ったパフォーマンスで、2人の相棒としての信頼が伝わってくる。

 

 

『ラストは新曲━━━━━“Awake Now”!!』

 

 

「..............」

 

 

杏の、こはねちゃんに対する想い、それが伝わってくるようだった。

先の2曲とはまた違う、夢への想い。

 

 

「........これがあなたの言う“次の世代”なんだな......凪さん」

 

 

俺たちとは違う、夢への可能性。

凪さんの言っていた次の世代の意味が、よくわかった。

歌が終わり、歓声と拍手が響く。

そろそろ俺の出番か。

 

 

「行ってくるよ、父さん、おじさん」

 

 

そう言って席を立つ。

 

 

「ああ。行ってこい」

 

 

父さんは力強く、送ってくれる。

大河おじさんは、その視線で伝えてくる。

 

 

「ありがとう.........見ててくれ、本当の俺を」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「.......なんで俺たち、ここに待たせられてんだ?」

 

 

出番が終わり、ステージ裏から出ようとした私たちに、スタッフから、

 

 

「ここでしばらく、待っていてください」

 

 

と言われて、別の部屋に居た。

 

 

「そうだな。普段のイベントであれば、もう客席に戻っている。なにかあるんだろうか」

 

 

彰人は不機嫌そうで、冬弥は不思議そうに考えている。

そんな中、こはねが少しソワソワしていた。

 

 

「どうしたの、こはね?」

 

 

「っ...!な、なんでもないよ!杏ちゃん!」

 

 

.......明らかになにか知っている。

 

 

「.......なにか隠してる?こはね」

 

 

ビクッ、と肩を震わせるこはね。

 

 

そんなに怯えるほど?

 

 

「なんか知ってんなら━━━━━━」

 

 

彰人が聞こうとした瞬間、ある曲のイントロが流れる。

 

 

「っ......!この曲は!?」

 

 

間違いなく、私と彰人は聴いたことのある曲。

 

 

「まさか........」

 

 

「杏ちゃん!東雲くん!」

 

 

「どうした、2人とも!」

 

 

私と彰人は、急いでステージ裏に向かう。

邪魔にならないように周りに気をつけて、ステージを見た。

 

 

そこに居たのは━━━━━

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1曲目のイントロとともに、吹き出すスモーク。

照明は、俺の道を示すように、輝く。

 

 

俺は今日、ここに、蘇る。

この想いを、伝えるために。

 

 

『━━━━ZENITH』

 

 

 

 

『〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!』

 

 

 

 

 

 

この曲は、涼と最期の演奏で披露した。

Re.SOUNDの最期。ある1人のミュージシャンの最期。

あの日、俺の全てがゼロになった。手に入れたものを、全て失った。

 

 

それでも━━━━━━━━

 

 

まだ俺は、立ち上がれる!

 

 

 

『♪━━━━━━━━━━━!!』

 

 

 

会場の盛り上がりは頂点に達し、青空に突き抜ける。

身体が熱い。心臓が激しく脈を打つ。

 

 

(これが..............俺の音楽.......!)

 

 

客席の熱量が伝わる。

これが、俺の感じたかった空気。

 

 

みんなが俺を見ている。

俺は存在感を示すように、歌を紡ぐ。

 

 

 

『〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!』

 

 

2度目のシャウト。

それは以前のような死に物狂いなものではなく━━━━━━━━━

 

 

ただ........この情熱を伝えるために!

 

 

 

曲の一瞬の静寂に、会場も静まる。

 

 

残りはラスサビ。

その勢いのままに、俺は被っていた仮面を外して投げた。

 

 

『♪━━━━━━━━━━━━━━!!!!!』

 

 

それと同時に、装置の炎が上がる。

客席はその炎のように、ボルテージをあげる。

 

 

俺の素顔を見た皆は、一瞬驚いていたが

少し納得した表情をしていた。

その姿を、客席のみんなは言っていた。

 

 

その蘇る姿は、不死鳥のようだったと。

 

 

 

 

 

 

 

Hibikiさんが仮面を取った姿。それを見て、私は崩れ落ちた。

 

 

「杏ちゃん!」

 

 

咄嗟にこはねが支えてくれた。

 

 

「まじかよ........」

 

 

「おい、彰人、白石。あの人は一体.......」

 

 

彰人の驚きの声と冬弥の疑問が聞こえてきたが、今の私にはそれらを気にしている余裕はなかった。

 

 

だって、あんなに近くにいたんだから...............

 

 

「......兄........さん」

 

 

私のどうしても会いたい人が、そこに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「..........ふぅ」

 

 

息を整え、水を口に含む。

熱は一切覚めていない。

俺はマイクを持ち直し、客席に叫ぶ。

 

 

『.......戻って来たぞっ!ストリートーーーーーーー!!』

 

 

ワアアアアアア!!

 

 

歓声と拍手が、俺を包む。

 

 

『まず最初に........街のみんな...........本当にごめんなさい。俺は全てが嫌になって逃げた.......でもどうか、俺の歌を聴いて欲しい』

 

 

俺はみんなに向かって頭を下げた。

客席から、拍手や嬉しそうな称賛の声が聞こえる。

罵倒や小言などを覚悟していたが、真逆の反応に驚く。

 

 

......温かいな、この街の人たちは。

 

 

『........正直今日ここに立った時.......すげえ不安だった。こんな俺を.....みんなは受け入れてくれるのか。本当に必要なのはHibikiの方なんじゃないか......って』

 

 

俺は自分の想いを語った。客席は静かに、俺の言葉を待っていた。

 

 

『でも.......この前偶然街に行ったとき、そうじゃないんだって.......やっとわかった』

 

 

あのときストリートに寄らなければ。大河おじさんに会わなければ。

色んな“もし”がある中、俺はここに立っている。

 

 

『俺を見てくれている人たちがいる..........信じて、待ってくれている人たちがいる。俺はその人たちに応えたい。俺の姿を見せて、伝えたい━━━━

 

 

 

俺はもっと上まで、飛び立てることを!!』

 

 

━━━━━ULTRA FLY

 

 

 

 

【fly highーーーーーー】

 

 

 

 

昔から好きで歌っていたこの曲は、俺の原点だ。

 

 

様々な苦しみや悩みを抱えて、飛び出した。

 

 

そして光に出会った。

 

 

 

 

【嗚呼 溶けてゆく 残響.....】

 

 

 

 

あのとき、俺は涼の言葉の意味をよく考えていなかった。

 

 

どんな想いを込めて言ったのか、理解していなかった。

 

 

 

 

原点(ゼロ)になる そしてまた so fly】

 

 

 

 

でも、今ならわかる。

 

 

 

 

【熱くなれ太陽 いま、溢れ出す激情 抱いて

 

 

守るべきものがある それが真実】

 

 

 

 

今の俺を動かすのは、歌への情熱。街のみんなへの感謝。

 

 

そして━━━━━━━━家族への想い。

 

 

【終わらせない 逃げ出さない

 

 

この『想い』 君のもとへーーーーーー】

 

 

 

 

 

 

『ねえ、響。お願いがあるの』

 

 

『あの子たちを.....次の世代のみんなを導いてほしいの』

 

 

 

『それとね━━━━━━━━━━━━杏のそばにいてあげて』

 

 

『私が居なくなったのを知ったら、あの子絶対悲しむから』

 

 

『響がいるなら安心だから』

 

 

『今はまだ、できないかもしれないけど。貴方なら絶対にできる』

 

 

『だって貴方は.......私たちの━━━━━━━━』

 

 

 

 

 

 

【コタエなんて見つからなくて 結局ほら......情けなくて

 

 

それでも 君がそばにいてくれた

 

 

そう、まだ飛べる 遥かなるこの空へと

 

 

fly again━━━━━━━━━━】

 

 

 

 

 

 

 

 

『━━━━━━━━━私たちの誇りだから』

 

 

 

病室でした、凪さんとの最期の会話が思い出される。

 

 

そうか、ずっとあの人は俺のことを想ってくれてたんだな。

 

 

大丈夫だよ、凪さん。

 

 

今度こそ、俺が杏を笑顔にするから!

 

 

 

 

 

 

【ゆるぎない愛のカタチ 月の光のように......ずっと

 

 

終わらせない 逃げ出さない

 

 

この想い 君に届けーーーーーー】

 

 

 

【fly highーーーーーー!】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はあ........はあ........」

 

 

歓声と拍手が、会場全体に響く。

俺の想い.....伝わっただろうか。

届いただろうか。

 

 

チラッ、とステージ袖を見ると、

 

 

「..........っ」

 

 

涙を拭う杏と、それに寄り添うこはねちゃん。

打ち震えている彰人くんと、目を輝かせている冬弥くんの姿があった。

どうやら、いても立ってもいられなくなったみたいだ。

ふと、杏と一瞬目があった気がする。

また泣かせてしまった。ちゃんと謝らないとな。

 

 

俺は息が整ったのを確認して、客席を向いた。

感動と興奮冷めやらぬ空間になっていた。

 

 

『ありがとうございます。次で、最後の曲になります』

 

 

ここ時間が惜しい。もっと歌っていたい。

 

 

(涼.....俺、音楽が......街の人が大好きだ。お前のおかげで俺は、その気持ちを持ち続けることが出来た)

 

 

今までありがとう、相棒。これからの俺を見ていてくれ。

 

 

『この曲は俺の大好きなこの街の全ての人と、待ち続けてくれた俺の家族のために作りました。全ての人に感謝を送るために』

 

 

小さい頃から作詞作曲を初め、街を出てからずっとそのままにしていたこの曲。

昨日、ようやく完成した。

セカイから出る時に、変化していたのはこの曲だった。

 

 

『でも俺1人じゃ、全部を伝えることは出来ない。だから今日は、ある人たちと一緒に歌わせてもらおうと思う━━━━━━━━━━

 

 

Come on!“Vivid BAD SQUAD”!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「......え......なんで?」

 

 

兄さんの私たちを呼ぶ声に、呆然とする。

なんで私たちが?

 

 

「連れてこられたのは........そういうことかよ」

 

 

「ああ。そのようだな」

 

 

彰人と冬弥は納得したように、息を吐く。

え。慌ててるの私だけ?

 

 

未だにパニックの私に、こはねが声をかけた。

 

 

「行こう、杏ちゃん」

 

 

頼もしく手を差し出してくれるこはね。

 

 

「......うん」

 

 

まだ兄さんのところに行くのは怖いけど、みんながいるなら大丈夫かな。

こはねの手を取って立ち上がる。

 

 

「みんな.....行こう!」

 

 

気を引き締め、ステージに歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『来てくれてありがとう。4人とも」

 

 

緊張している様子の杏たちを迎える。

 

 

「兄さん......どうして.......今日は」

 

 

今にも消えてしまいそうな小さな声で言う杏。

マイクを外して、返事をする。

 

 

「どうしても、杏たちと歌いたかったんだ。今日じゃないと、もう2度とないと思って」

 

 

そう言って頭を撫でてやる。

恥ずかしいそうに頬を染める。

抱きしめたい衝動を抑え、3人にも向き合う。

 

 

「詳しい話は終わってからにしたい。準備はいいか?みんな」

 

 

3人は頷く。いつでも大丈夫そうだ。

 

 

「杏も、大丈夫か?」

 

 

「.......うん!」

 

 

調子を取り戻した杏は、元気よく頷いた。

俺は袖からギターを持ってきて、軽く奏でる。

既にアンプには繋がっている。

 

 

(お前も問題ないな)

 

 

マイクを持ち直し、客席を向く。

 

 

『それじゃあ、そろそろ曲に入ろうか......盛り上がる準備は出来てるか!?』

 

 

ワアアアアアア!!

 

 

こっちも準備は出来てるみたいだ。

 

 

『手拍子と、コール。よろしく頼む。

 

 

 

それでは聴いてください━━━━━━━━街』

 

 

俺が歌い出した瞬間、会場全体の空気が変わったのを感じた。

 

 

まるで前からみんなで歌っていたかのような、完璧なパフォーマンス。

 

 

俺たちと客席のみんなが、一体となったような感覚。

 

 

もちろん、全員実力があるからというのも理由だろう。

 

 

だがこの現象は、今まで感じたことのないものだった。

 

 

 

『♪━━━━━━━━━━━━!』

 

 

 

『wow........』

 

 

これはあとから聞いたことだが、あのセカイのメイコとミクのよると。

 

 

杏たちがReady Steadyを初めて歌った時と同じようなもので。

 

 

俺の想いが、全員に影響していた結果起こったらしい。

 

 

これもまた“共鳴”、とやらの力なのだろうか。

 

 

 

『『『『『♪━━━━━━━━━━━━━!』』』』』

 

 

あんなに緊張していた4人の表情は、笑顔になっていた。

 

 

この先、色んな壁が立ちはだかってくるだろう。

 

 

でも、彼らなら大丈夫だろう。

 

 

それまで、俺が導いてみせる。

 

 

(見てるか.........?涼、凪さん。俺も、これから頑張っていくから)

 

 

だから、安心していてくれ。

 

 

俺のギターソロのパート。

 

 

杏と目が合い、お互いに背中を預けあった。

 

 

まさかこんな日が来るなんてな。

 

 

俺は今、本当に幸せだと感じる。

 

 

傷つき、傷つけ。悲しみに暮れ、苦しみを味わった。

 

 

でもこの経験は、決して忘れてはいけない。

 

 

支えあって、走り出して行くための記憶だ。

 

 

俺たちはこれからも歩き続ける。

 

 

この街と共に。

 

 

 

会場は、歓喜と歓声に包まれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お願い、聞いてくれてありがとうな。こはねちゃん」

 

 

イベント終了後、ビビバスの4人と父さんの店に来ていた。

父さんには申し訳ないが、奥で待ってもらっている。

まず、今回の共演を承諾してくれたこはねちゃんにお礼を述べる。

 

 

「いえ、私も杏ちゃんから話をきいていて。力になりたいと思ってたんです」

 

 

こはねちゃんは笑ってそう言った。

とてもいい子だな。お兄ちゃん泣きそう。

 

 

「あん時こはねの様子がおかしかったのは、こう言うことだったんすね」

 

 

「俺たちにも仰ってくだされば、もっと協力できたんですが」

 

 

彰人くんと冬弥くんは不満そうに言う。

 

 

「ごめんな。驚かせたくって、出演者の中でこはねちゃんにだけ伝えてたんだ」

 

 

本当は誰にも言うつもりはなかったけど、許可なくやっても困るだろうからな。

だからこはねちゃんにだけ伝えたんのだ。

そう伝えると、渋々納得してくれた。

 

 

「まあそれはいいっすけど.......これ、いつまでそのままなんすか?」

 

 

そう言う彰人くんの視線の先には━━━━━━━━

 

 

「.........」

 

 

ソワソワと、時折こちらを見る杏の姿。

俺が見ると、少し目が合いすぐに逸らす。

そんな様子に苦笑いしながら、杏にそばに寄る。

 

 

「杏」

 

 

彼女はビクリ、と肩を揺らす。

何年も会っていないから、当然の反応か。

俺だって緊張している。

 

 

どんな言葉をかけてあげればいいのか、頭を悩ませていた。

だから最初は、3人と話していたんだ。

俺はそっと、杏を抱きしめた。

一瞬驚いて怯えたが、体を預けてくれた。

 

 

「杏..........ずっと1人にして、ごめんな」

 

 

その悲しみは計り知れない。

募る想いを隠して、今日まで来たんだろう。

 

 

「俺.......お前を傷つけて、悲しい想い......沢山させてきた」

 

 

「......うん」

 

 

「........兄として、最低なことばっかりしてきた」

 

 

「........そんなこと.......ないよ」

 

 

もう目の前は、涙でぐちゃぐちゃだ。

杏は俺の胸に顔をうずめて、表情がわからないが

時折鼻の鳴る音がするので、同じような状態だろう。

 

 

「それでも.......それでもさ.....俺っ.......杏の家族で居たいんだ」

 

 

ずっと音楽のことだけを考えてきた。

でも根本では、杏と........父さんと母さんのことを想っていた。

 

 

「..........だから........俺を許してくれないか?」

 

 

杏は、俺の胸の中で頷いた。

俺はもう、涙が止まらなかった。

 

 

「俺っ.........杏の兄ちゃんで........居ていいのかな?」

 

 

再度、頷いてくれた。

 

 

「うん.......ずっと居て欲しい」

 

 

「そっか........ありがとう........杏」

 

 

俺はようやく、元の居場所を取り戻せた。

 

 

“白石響”としての居場所を。

 

 

 

 

このあと、戻ってきた父さんにいじられたのは言うまでもない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、ある日のWEEKEND GARAGE。

 

 

「兄さん!デザート3つ追加!」

 

 

「了解!そこのパンケーキ、4番テーブルに頼む」

 

 

「オッケー!」

 

 

俺は、父さんからの罰?で店の厨房に立っていた。

ずっと心配かけた分働け、ということだ。

 

 

母さんにも、あの後しっかり謝りにいった。

30分ほど説教を頂いたが、泣いて抱きしめてくれた。

俺はこの家に生まれてよかった、と感じた。

 

 

「響、ご馳走さん!また来るよ!」

 

 

「やっぱり響の作るもんは最高だな!じゃあな!」

 

 

「おう!ありがとうございました!」

 

 

常連さんに返事をして、調理を続ける。

続けながら、お客さんと話している杏を眺めた。

その笑顔で、俺はもっと頑張れるんだ。

 

 

ありがとな、杏。

これからもよろしく。

 

 

「兄さん!ほら、早く!」

 

 

「わかってるよ!慌てんな」

 

 

店に広がる笑い声に、俺は帰ってきた幸せを感じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




さて、いかがだったでしょうか。
響が披露した1、3曲目は、連載当初から考えていました。
ラストの街を、ビビバスと歌うのも初めから予定していたものです。
ほかのビビバスの曲と少し違う雰囲気なのもあって、響の作詞作曲として出させていただきました。
初めて披露する曲でも、彼らなら不思議な力でなんとかなる。という気持ちもあり、せっかくなので響の力と絡めました。なんか違うかもしれませんが、ご都合主義ということで許してください。
次はしばらく幕間などを挟んで、別のイベントストーリーかなと思います。何卒よろしくお願いいたします。
それではまた次回お会いしましょう。さようなら。
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