ドラゴンクエスト ダイの大冒険 続伝 人魔天竜の章   作:ありけるみー

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国際会議の巻

 既に席に着いているのはベンガーナ、リンガイア、ロモスの名だたる国王たち、そしてパプニカのレオナであった。

 また意外なことに今度の会議にはテランの国王フォルケンと占い師ナバラがその側に着いていた。

 珍しい顔触れに驚きながらもカールの王族陣はとりあえず席に着いた。

「いやー、申し訳ないです……何せすっかり会議のことを忘れてしまっていたもので……」

「全く。しかしよく繋ぎ止めてくれましたなフローラ殿」

 ロモスの国王シナナは柔らかい笑みを浮かべながらそう言った。

「なかなかの恐妻ぶりのようで……ご活躍、耳に挟んでおりますぞ。いやあいかに伝説の勇者と言えども王女殿下の御前では形無しですなぁ」

 続いてベンガーナの国王クルテマッカⅦ世が茶化して大笑いかた。

 それがおかしくて立席の皆もたまらず笑い転げた。

「も、もう皆さんったら!」

 フローラは顔を真っ赤にして立ち上がり、かくいうアバンは皆に混じって笑うばかりで内心小っ恥ずかしいものがあった。

「あー、盛り上がっておるところ悪いがのぅ。全員揃っておることですしそろそろ……」

 咳払いして進行を促したのはナバラであった。

 それを聞いて各国の王たちも緩み切った表情を作り直して議題に向かった。

「いかんいかん。それではお招きくださったカール王国の国王アバン殿、此度の会議についてもう一度ご説明いただけますかな?」

「はい。まずは現在ご立席いただいてます各国の国王の皆様につきましては、遠路はるばるお越しくださり誠にありがとうございます。さて今回の会議についてですが――」

 こうしてしばらくの間四大国とパプニカ王国を交えた国際的な会議が執り行われた。

 内容は復興の際に尽力してくれた国々への謝礼だとか、今後回復するであろう各国の経済圏のあり方だとか、新たな法律についての議案だとか全くもって普通の会議内容であった。

 

 事が変化したのはその会議が終盤に差し掛かった頃だった。

「それで……本当なのですかなフォルケンどのにナバラどの。……その……」

「この地上にダイくんが現れたかもしれんという話は……」

 会議に参加する全員が息を呑んだ。

 特にレオナの方はむしろこちらの方が本題であると言わんばかりに身を乗り出して聞いていた。

 フォルケンとナバラはしばらく口をつぐんでいたが、ナバラの方がようやく開き始めた。

「まだ確実にそうと断言できるものではない……が、少なくともそれが竜の騎士のものであろうことだけはこれまでの事例から見ても間違いはないでしょうぞ」

 その言葉にアバンやレオナ、そして国王陣の顔色が変わる。

 

 ダイは――、彼は生きている……!

 生きてこの地上に姿を現している……!

 

 希望と期待に胸が高鳴り、一同も笑みを浮かべるばかりだった。

「ただ今、世界各地で紋章を携し者が悪しきものを打ち倒し、これを救っている姿が確認されております。我がリンガイアでもそのような目撃情報が幾度となく上がっております……が」

 新たにリンガイア国王に就任したバウスンが言い淀んだ。

「残念ながら各国にある情報の通り……すぐに行方をくらませてしまい、またはっきりとその姿を拝んだものがいないため、結局は噂話の域を過ぎぬことになっております」

「うむ……ワシも一度会うたなら絶対に見間違うこともないと思っておるのだが……いかんせん目撃情報こそあれどワシら国王の誰1人のとしてその姿を確認しておらんのだよ……パプニカのレオナ姫も……」

「ええ。もし私が見つけていたなら、この場で自信を持って皆様に真偽のほどをお答えできていたと思います」

 クルテマッカからレオナまで、結局は誰もダイらしき竜の騎士を確認していなかったという。

「しかしおかしな話ですね……国民がこれだけ見たと言っておきながら肝心の私たち王族の前にはピタリとも姿を現さないなんて……まるで私たちを避けているような……」

 アバンの発言にフローラも賛同した。

「そもそもそれが本当に(ドラゴン)の騎士のものであるかどうか、きちんと我々が確認すべきではないでしょうか」

「し、しかしな……それはまた雲を掴むような話だぞ。何せ現れては消え、また現れては消えるのだからなぁ」

「テランの方々は代々竜の騎士と縁があるものだと存じ上げておりますが」

 フローラが話を振ると、フォルケンが頷いた。

「いかにも……。ワシらの国でもそれにまつわる伝承や彼を探す手立てを探しておるのですが……」

「言い伝えによるとこうありますじゃ。世界に均衡訪れし時、役目を終えし竜の騎士はいずれ天に還ると……しかしいずれの時代においても再び竜の騎士が現れる場所は我が国テランのほとりにある神殿とされておりまして……とはいえその由緒正しき竜の騎士であるバラン様の血を引くダイ様が同じように現れになるとは……」

「結局手がかりはほとんどゼロってことね」

 レオナが残念そうに席に着くと、フォルケンが「それがそうでもないのです」と言った。

 彼は卓上に金色の翼のような形をした物を五つ用意した。

 

「フォルケン殿……これは一体……?」

「それはテランに代々伝わる秘宝『竜の背骨(ドラゴン・ボーン)』でございます。これは竜の騎士様をお導きするため、我らの一族の祖先が用いたとされるものです。これが光を放つ時、それすなわち竜の騎士様が近くにいると示すものです」

「なんと……!! そのような代物が……!」

 それを聞いてレオナは真っ先に自分が手に取りたくなったが、逸る足をつねりながら堪えた。

「ですが、これはかつて儀式で用いていたもので、今もなお間違いなく作用するかは計りかねます」

「それ以外の方法で竜の騎士様を探し出す方法が見つからず……いやはやお力になれず申し訳ない」

「いえ……とんでもない。むしろこれはダイ君の……ひいてはその謎の騎士を探すための大きな一歩となることでしょう」

 アバンは代表国として手に取り、続く諸侯にも順に手渡した。

 レオナもその美しさに目を奪われていた。

 その羽は金色に輝いており、真ん中には赤く光る宝石が埋め込まれていた。

 

 すごい……。これがあればダイを見つけられるのね……!

 

「それが最も強く光輝く場所にて竜の騎士様がおられます。次に目撃情報が上がった時に、その付近にてお使いください。そしてどうか見つけ次第、何らかの情報を今回立席いただいてます各国の皆様に共有していただければと思います……」

「うむ。ベンガーナ国王、しかと承ったぞ」

「ロモス国王、同様に」

「リンガイア国王、同様に」

 

「パプニカのレオナ、同じく承りました」

 そうして各国が全員竜の背骨を受け取った事で、アバンも深々と頷いた。

「今後またその竜の騎士がいつ現れるか分かりません。どんな些細な情報でも構いません。その時はこの場にいる全員で協力し合いましょう。願わくば彼の者が地上を救った勇者ダイであることを、そして招き入れた暁には改めて世界平和の宴を催しましょう!」

 全員がアバンの意見に賛成した。

 世界を救った勇者の不在――

 それはダイを間近で見て支えてきた諸外国にとっても決して埋め難い心の隙間でもあった。

 平和と引き換えに勇者が地上を去るなんてどうかしている。

 少なくとも国の代表陣たちは全員そう考えていたようだ。

「それにしてもいつからそんな目撃情報が出回るようになったのかしら……この一年私もアバンも、なにより皆様のお力も借りて捜索には尽力致しましたというのに……そんなものはこれまで影も形もありませんでしたわ」

「全くじゃ。隠れておったという訳でもあるまいし……」

「……フローラ様の仰る通り、確かにこの一年で今のような出来事はまるで起こりませんでした。ですのでこれらは本当につい最近の出来事なのですよ」

「まるで白昼夢でも見ておるようじゃな。……もしや魔物の仕業では……?」

 シナナは特に魔物に化けられ謀られた経験のある数少ない人間の1人ということもあり、この件に関しては少々訝しんでいた。

「しかしそれにしては規模が少々大き過ぎますわ。なにより大魔王バーン亡き今、それを成し遂げようとするほどの気概と統率の取れた魔物が果たしてどれほどいるのか……」

「ですが、油断はできません。シナナ国王が仰るように、魔物の可能性である線も十分にありえます。確かに平和な世にはなったとはいっても、まだ完全に悪しき魔物たちが地上から姿を消したわけではありません。何が起きてもいいように各国で密な連携を取り合いましょう」

 こうしてカールで開かれた国際会議は終わりを迎えた。

 勇者ダイは生きている! 生きてこの地上に必ず現れる

 皆そう信じて希望も新たに自分たちの国へ戻って行った。

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