ドラゴンクエスト ダイの大冒険 続伝 人魔天竜の章 作:ありけるみー
「な、な何だって!? ダイの名前を聞いたのか?!」
少女の方は首を勢いよくブンブンと振って頷いた。
「しかもそのダイには仲間がいたですって!?」
兄妹たちは口を揃えて「本当だよ」と言った。
それを聞いた一行は衝撃を受けた。
ダイが自分から名乗ったこともそうだが、彼にポップたちをおいて他に仲間がいることも俄かには信じられなかった。
特にポップは強くそう思っていた。
「何でだよ……何で俺たちには顔出せねえってのにそいつらとは組むんだよ……!」
歯ぎしりし机上で拳を握りしめて悔しがるポップをよそに、アバンはその子たちに再度真実を求めた。
「その者は本当にダイと名乗っていたのですね」
「うん……そうだったと思う。名前聞いたらそう言ってたと思うから……」
「では彼の連れていたというその仲間達とは、どんな人たちでしたか?」
「どんな……ってフツーの人たちだったよ。ねぇ?」
兄が妹に確認を取ると、彼女もそれに賛同した。
「村にいるような戦士さんみたいな人とね。お兄ちゃんみたいな服着てる魔法使いのお姉さんもいたよー」
「俺みたいな……?」
更に聞き出すと、顔こそはっきり見えなかったが他に片肌脱ぎで水色の服を着た男が一人の計四人のパーティーだったそうだ。
アバンが服装の特徴から彼らの職業は戦士、魔法使い、武闘家であるだろうことを推察してみせた。
普通の人と言っていたことから、竜の騎士関連の仲間たちというわけでもなくごく一般的にありふれた冒険者だろう。
ますますポップたちは疑問だった。
「世の中には冒険者たちが集まる出会いと別れの酒場、所謂集会所というものがあります。彼もそこで仲間を募ったのでしょう」
「そうなんだろうけどよ……! 何だってそんな奴らに頼るんだよ……俺たちがいるじゃねぇか……!! そんなに俺が……信用できねえってのかよ……!!」
ポップは今にも泣き崩れてしまいそうだった。
同じ魔法使いという立場の人間が彼のパーティーにいると聞いてから、とても心平静に保つことなどできなかった。
そんなポップにアバンの手が肩を触れた。
「ポップ、落ち着いてください。貴方の……いえ、私たちの信じる心優しいダイ君が平気でそんなことをする人だと思いますか?」
「せ、先生……!」
ポップは頭を左右に揺らして否定した。
「それに本当にそれがダイ君であるかも、私には少々疑問が残りました。ここまでその人がダイ君のものであるとして話を進めてきましたが――やはり何かがおかしい」
その意見にヒュンケルも同意した。
「俺もどうにも腑に落ちん点がいくつもある……地上を去るほどの決断したダイがやっているにしては、あまりにも一貫性がなく杜撰だ」
有力な情報が出揃った今なお、不可解な点が多すぎる。
それが一行の下した結論だった。
「ともかく。これまでの情報で次にその人が現れると思わしき場所の目処が大分絞れてきました。皆さんの誠実な情報提供誠に感謝致します。私たちが次にすべきことは、これらの情報からその人を発見し、真偽のほどを確かめることです!」
アバンが一同に猛々しく宣言した。
その姿にかつての家庭教師時代を思い起こしたアバンの使徒たちは立ち上がった。
「……あれこれ考えてたって仕方ないわよね。まずはじたばたしてみなきゃ、……ね!」
「へっ、大魔王討伐の次はダイを探すクエストか……面白ぇじゃんか!」
「大丈夫。私たちはみんなアバンの使徒……魂の絆で繋がっているんだもの……!」
レオナ、ポップ、マァム――そしてヒュンケルが首から下げているアバンのしるしを握りしめた。彼らの心に浮かぶもやがかった霧は晴れ、決意に満ちた表情に変わっていった。
メルルたちも全員思いはひとつだった。
「よぉし! 我が国でも早速手配書を出すぞ! 地上に現れし勇者ダイを見つけし者には金一封じゃ!!」
「王様ったら……そんな賞金首みたいな……」
「む、それもそうか……。ちと不謹慎だったかの? がーっはっはっは!」
クルテマッカの豪快な笑い声につられてみんなも笑顔になっていった。
今度こそ見つけてみせる。一年前のような思いはもう二度としたくない。
「待ってろよダイ……俺たちが必ず見つけてやるからな!」
――その時だった。
突然部屋全体が大きく揺れ始めた。
「な――なんだこりゃ! 地震か!?」
「これは城全体……いえ、地上が震えているようです!」
真っ先に窓から飛び出し地に降りたアバンがそう告げた。
「何……怖い……キャー!!」
巨大なシャンデリアや壁に立てかけた絵画などが揺れで落ち始めると、ポップとクルテマッカがマァムやメルルなど女性陣の壁になるように庇った。
「皆さん落ち着いて! とにかく机の下などに隠れて!」
レオナが大震動の最中にも冷静に円卓の中に身を潜め、全員に呼びかけた。
「い、いつになったら止むんじゃこれはぁ〜っ!!」
あまりにも激しい大地の鳴動は、城中の古ぼけた窓枠や食器などをあっという間に叩き割っていくばかりか、外に生えている木々も揺らして転倒させるほどのものだった。
「これほどの規模の地震は私にも覚えがありません……! 何かが……私たちの知らぬ何かが今地上で起きているとしか――」
王族たちは握りしめていた竜の背骨を目にした。
宝玉に光はなかったが、代わりにそれまでにないほど不気味で背筋が凍りつくような波動のようなものを感じ取っていた。
城下町の方からも火事や煙で阿鼻叫喚の地獄に包まれていた。
唸り声を上げる大地の悲鳴がようやく止むと、彼らはゆっくりと周囲を警戒しながら立ち上がった。
「……ふぅ。どうやら収まったようですね」
「何だってんだ……こんなの大魔王と戦った時だって味わった事ぁねーぜ……――ってお、おい姫さん、どうしたんだよ。真っ青じゃねーか」
ポップは自分の側に隠れていたレオナの変わり果てた表情を見て動揺した。
彼女は全身から血の気が引き色を失ったような様子で、汗をかきながら震えていた。
他の国王たちも同じような顔つきになっていた。
「どうしたんですか、皆さん!! 今の地震で何かあったのですか!」
唯一、竜の背骨を直視していなかったアバンだけがそれまでと変わらずに動くことができた。
シナナは奥歯をガタガタと鳴らしながら頭を抱え悲鳴を上げていた。
「こ……この世の終わりじゃ……あ、あの殺気のような……得体の知れない気は……!!」
「気……?」
それを聞いたレオナやクルテマッカも同意し、身体の芯から怯えるように声を振り絞った。
「ワ、ワシらはとんでもないものを見つけようとしてるのやもしれぬ……!」