ドラゴンクエスト ダイの大冒険 続伝 人魔天竜の章 作:ありけるみー
アバンが竜の背骨を見るも、やはり何も変わらず先程の地震と共通するものだと把握した。
「震源は……揺れの大きさからして近いものでしょうか……いずれにしてもただの自然災害というわけではありませんね」
「メルル、なんか分からないか?」
円卓から出てきたメルルにポップが頼み込んだ。
彼女が改めて震源地を探ろうと、水晶玉に念を込めた。
「……な、なぜでしょう。さっきから何も映らな――」
直後彼女は頭を押さえ始め悲鳴を上げ出した。
「お……おいメルル、メルル! どうしたんだよ!! 一体みんな何があるっていうんだよ!」
地面にうずくまり、丸くなったメルルは必死で痛みに抗うよう断続的に息を吐いた。
「あ……頭が……頭が割れそうです……! い、一瞬誰かに睨まれて……その後竜の紋章のようなものが見えました……そ、そしたら急に光出して頭が……!」
ポップが慌ててベホマの呪文をかけてみたが、彼女の痛みが引く様子はなかった。
しかし素早く水晶玉から手を離し呼吸を整えたお陰で、苦痛は徐々に和らいでいった。
彼女はだいぶやつれた様子でポップに礼を言った。
アバンは恐怖に震える一行とメルルを抱えて寝室に連れていった。
「今はそっとしておきましょう」
「くそ……どうなってんだ……あれはダイじゃないのか……?」
「でもあの怯え様、普通じゃなかったわよ。何かきっと……もっとおぞましいものでも見たのよ……」
不安に押しつぶされそうなマァムは、レオナたちの顔を見て心を痛めた。
震える身体にそっとヒュンケルの手が触れた。
「マァムはここに残っているんだ……先生と共に彼らの支えになってあげてくれ……」
「ヒュンケル……あなたはどうするつもりな……――ま、まさか」
マァムが言葉を言い終わる前にヒュンケルは剣を手に取った。
ポップも手袋に深く手を入れ、臨戦態勢に入っていた。
「無茶よ!! まだ傷が完治した状態じゃないのに!」
エイミが叫んだ。
「この手足が動くだけで十分だ……! 大丈夫、無理はしない。だからポップが居る」
そう言ってヒュンケルはエイミとポップの方を見た。
一人で飛び出さず、彼は彼なりの信頼をおける仲間にポップを選んだ。
ポップもヒュンケルの顔を見てそれを察した。
同時に自分も今全く同じことを考えており、にやりと笑った。
「そーゆーこった。お前はエイミさんと姫さんたちを守ってやってくれよ。先生一人だけじゃちょっと頼りねぇからさ」
「おやおや。言ってくれますねぇポップ。私もこの一年ただ平和に惚けていただけじゃありませんよぉ」
ポップの方は軽口を叩きつつも、その目は互いに信頼を寄せ合っているものだった。
「少しでも危ないと判断したら撤退してくださいね。特にポップ。もしいかなる事態を目の前にしても絶〜対にカッとなって戦いを挑んだりしてはいけませんからね」
「お、俺かよ! そこはヒュンケルとかじゃねーのかよ!」
「彼は私が何か言わずとも理解しているご様子でしたので……」
アバンはヒュンケルに向かってウインクした。
ヒュンケルはそれに対して不器用に頷いてみせた。
ヒュンケル……。
愛するものを守るために戦う。
人の持つ心の確かな指針であり、強さのひとつ。
ヒュンケル。あなたも愛を知ったのですね。
帰りを待つものがいること。かけがえのない守りたいものができること。
生命が自分一人だけのものでなくなること――
それが愛です。
愛があればこそ人は強くなれるのです。
今のあなたからは以前にはなかった強い光の闘気を感じます。
そしてポップ。あなたもヒュンケル同様随分とたくましく成長しましたね。
今のあなたたちに最早この私が何かを説く必要はないでしょう。
「空からの方が探しやすいかもしれねえ。俺に捕まれヒュンケル!」
ポップが手を出すとヒュンケルはそれをがっちりと掴んだ。
「振り落とされんじゃねぇぞ!」
「構わず全力で飛べ!」
二人は互いの力量を信頼しきっていた。
かつては敵であり、またポップにとってはマァムを巡る恋敵でもあったが、むしろ今となればそんな二人だからこそ互いに背中を預け合える信頼関係を構築することができたのかもしれない。
「トベルーラ!!」
カールから飛び立った二人は高速で雲をかき分けながら突き進んでいき、一瞬で姿が見えなくなってしまった。
「ポップ、ヒュンケル……!」
怪我人の治療や城内にある瓦礫を片付けながら救助活動を行うマァムは、ただ二人の無事を祈っていた。
アバンたちは今しがた起きた震災の被害が大きい箇所を巡り、救助支援に取り組んでいた。
幸いなことに城下町の方も火事やボヤ騒ぎこそ起きているものの、住民の方はどうにか避難を進めており、奇跡的に死傷者などはいなかった。
「こればかりは本当に不幸中の幸いでした……」
国民の安全を噛み締めるようにアバンは一息をついた。
「アバン様……。一体何が起ころうというのですか」
「もしやこれは破滅の序曲なのでは……?」
国民の不安がひとり、またひとりと伝染していく中、アバンは人民たちの前に立った。
「親愛なるカールの民たちよ! まずは諸君らの無事と迅速かつ的確な避難誘導を行ってくれたことに感謝の言葉を申し上げたい! 今はまだ不安なこともあるかもしれないが、かつて平和を取り戻した私とその仲間たちが諸君らの平穏を約束する!! どうかその信頼のほどを私たちに預けて欲しい!!」
国王の覇気あるひと声に国民たちは活気づけられていった。
「そうだよ……! 我らにはアバン様がおられるのだ……!!」
「大魔王だろうが大大魔王が攻めてきたって怖かねーぜ!」
「国王を信じていればもう安心だわ」
声を上げる国民たちをなだめ、アバンは彼らを城のより安全な一室へ先導した。
「おお、ここじゃったかアバン様」
「その声は……ナバラさん! よくぞご無事で……!」
一通りの城内避難誘導を終えたアバンの前に、激しく息を切らせたナバラが現れた。
「どうなさったというのです。そんなに焦って……」
「た……大変なことになってしもうた……ぜぇ、ぜぇ……」
「落ち着いてください。まずは呼吸を整えて……」
「わしらが……探して、おったのは勇者ダイ様などでは……なかった……!」
それを聞いたアバンの表情が一変した。
「は……早う皆にこのことを知らせなければ……ひょっとすると世界が……滅んでしまうかもしれんのだ……!!」