ドラゴンクエスト ダイの大冒険 続伝 人魔天竜の章   作:ありけるみー

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告げられた衝撃の真実……!の巻

 四人がポップたちの元に辿り着いたのはすぐだった。

 彼は城の目前まで走ってきていたので合流は早かった。

「ポップ!」

 彼の身を案じていたマァムが抱きついた。

 ポップはアバンやみんなの顔を見た事で一瞬安心したが、すぐにまた険しい表情に戻っていった。

「待たせてしまいましたねポップ。ヒュンケルやラーハルトはどこに?」

「あぁ。あいつはあそこの隅に避難させてる。一応無事さ。俺があいつを引きつけてるからな」

 ヒュンケルの安否を聞きつけ、エイミがとりあえず胸を撫で下ろした。

「あれが……――例の三人目の(ドラゴン)の騎士ですか」

「とにかくあいつはやべぇんだ。先生やみんなが総出でかかってもやられちまうかもしれねぇくらい……」

 ポップの分析を聞いて全員が表情を固めた。

 特にその波動と思わしきものを浴びたレオナにはそれがどれほどのものか薄々見当が付いていた。

 

「鬼ごっこはもう終わりかい、ポップ」

 そして彼らの前にザウロが満を持してその姿を現した。

 それを見たアバンたちは言葉を失っていた。

 頭に着用されている宝石入りの黄金のサークレットや逆立った黒髪などはどことなくダイを連想させるものだったが、頬に十字の傷はなかった。

 また穏やかそうなダイの瞳と比べると、こちらは燃えるような野心と熱意で紅く不気味に輝いており、やや吊り上がっていた。

 何より額にはこの世にこれ以上存在し無いとされる竜の騎士である証が煌めき、一目でザウロがとてつもない存在であると看破できた。

 不敵な笑みを浮かべてじわじわと接近していたが、放つ闘気はダイにはもちろんあのバランにさえ無かった殺気に近いおぞましい気であった。

 中でもレオナがより一層顔面を蒼白させ、灯しかけていた情熱の炎が今にも消えてしまいそうだった。

「こ……こいつが……」

「第三の竜の騎士ザウロ……!!」

 アバンが先んじて全員の前に立って剣を構えた。

「へぇ、これは驚いた。皆さんお揃いでしかもボクのことをご存知だなんて、光栄だなあ」

 ザウロは足を止めて一同に微笑みかけたが、彼らは一瞬足りとも気を抜くことはなかった。

 むしろその笑顔に隠れた底知れぬ闇の波動を感じて、身体はより引き締まっていくばかりだった。

「それとも大魔道士がアバンの使徒を引き寄せたのかな?」

 彼の口からアバンの名が出たことに一行は衝撃を受けた。

「地上に現れし新たな竜の騎士よ! お前の目論見はなんだ!!」

 アバンは額から汗を滴らせながらも果敢にザウロに立ち向かっていった。

 気を抜けば一瞬で殺される――

 達人であるアバンはザウロのそれを可能とする力量を見抜き、渾身の力を込めて構えを取っていた。

「そういえばポップも言ってたっけな、理由なく襲いかかってきたと……いいよ。教えてあげる」

 ザウロは突然空中に向かってその場で舞い上がっていった。

 全員上を見上げて口を開けたままだった。

「……でもそれにはギャラリーが足りないよね。あそこに何人か人間がいるじゃない」

「まさか!」

 ザウロはカール城の国民たちが集まっている場所を指差した。

 彼がそれを見て微笑むと右手の指をパチンと音を立てて鳴らした。

 すると先程まで間違いなく城内にいた者たちがマホカトールの魔法陣ごとポップたちの側に連れ出された。

 瞬間移動の如く速さで目の前に出現した彼らに一同は驚愕した。

「そんなバカな!! あれほどの人数を……」

 しかもザウロは彼らを一度も目視していない。

 つまり彼は気だけで全員の正確な位置を把握したことになる。

「ついでにあそこに隠れている者も呼び寄せておこうか。……観客(ギャラリー)は一人でも多いほうがいい」

 続け様に彼はヒュンケルとラーハルトまでその場に連れ出した。

 遠目からその様子を観察していた二名はカールの国民ほど驚き慌てふためいたりこそしなかったが、その恐ろしいまでの力の一端を体感して冷や汗をかいていた。

「な、なんだよ今の……! ルーラかリリルーラの一種なのか……? くそっ……次元が違いすぎる……!」

 ポップの言う様に、全員がザウロの次元が違う力を目の当たりにして顔を地に伏せた。

「こ、これはどういうことなのだ……? なぜワシらは城の外に……!?」

 突然連れられて驚いていたのは国王たちも同じだった。

 そんな中メルルは空中に浮かぶザウロを見て叫んだ。

「あ……あれです! あの人の目です!! 私を睨みつけてきたのは……!」

「じゃあこれまでの事もあいつが……!」

 メルルに指差され、ザウロも彼女の方を見て言った。

「そういえばそんなこともあったね。ふふ。あまりにも強く見つめてくるもんだからつい、ね。人間で言うところの照れ隠しってヤツさ」

 ザウロがいたって普通のことを話すように語る様を見て、ポップは怒りで歯軋りした。

「さて……それじゃあ一通りお集まりいただいたところで、ここらで自己紹介とでもいこうかな。ご機嫌よう人類の皆さん、ボクはザウロ。お察しの通り竜の騎士さ」

 彼が丁寧に会釈してみせると国民や王たちはどよめきたった。

「――ただし、ボクはただの竜の騎士じゃあない。ボク本来の役目は竜の騎士の討伐さ」

「な、なんだって!?」

「竜の騎士の――」

「討伐……!?」

 告げられた衝撃の真実に戸惑う間もなく、ザウロは語り続けた。

 

「そうだよ。……この世で最も聡明で知恵ある人類の皆様はとっくにご存知かもしれないが……元来竜の騎士とは人、魔、そして竜の神々がこの世に蔓延る三種の覇権争いを疎んだ結果誕生したそれぞれの生物の長所を兼ね備えた最強の生物兵器だ。これはあらゆる種族からいかなる猛者が現れようともこれを討ち、世界に平穏をもたらすための神々が与えた力さ」

 ザウロは空を移動しながら淡々とその事実を説明した。

 竜の騎士はテランを除くと一部の国にほんの少しその伝承が残るばかりで、その詳細を知っているものはごくわずかな者に限られていた。

 どよめく人民に構わずザウロは続けた。

「彼らは母なる聖母竜マザードラゴンからこの地上に生まれ落ち、長きに渡って世界を我が物にせんと目論む悪しきものたちをその強大な力で幾度となく打ち滅ぼしていった。……けれども不思議に思ったことはないかい? その竜の騎士が神々の力を以って暴走し、暴れ狂う殺戮の化身となった時誰がそれを止めるのか――」

 これに対しテランの賢人ナバラが恐れながらも前に出て答えた。

「それは竜の騎士様のご意志であったということで、それすなわち神の意志そのものであります。――故に我らはたとえ竜の騎士様によって何が滅ぼされようともその有り様を見届け、同じ過ちを繰り返さぬようその伝承を歴史に遺していくのですじゃ」

 その発言を聞いてザウロが瞳を大きく開いた。

「へぇ……見上げた信仰心だテランの民よ。長らくキミたちはそうして先代から続く教えを守り、竜の歴史を今に至る後世にまで継承していったのだね。その志と崇高なる理念こそ讃えるべき人がもつ『強さ』の証であると評させていただきたいが――それ以外の民はどうであろうか」

 ザウロは怯える人民たちの顔を見た。

 皆、これから何が起こるのか知れない恐怖心と、ただただ助かりたい一心で震えて祈っていた。

 彼らを一瞥してザウロは哀しく微笑んだ。

「誰であれ皆この世に生を成した時点で家族がいる。何よりも代え難い――ともすれば自分の生命より大切な宝だろう。誰だって自分の生命や宝を平和の礎のためにと簡単に捧げられるものではあるまい」

 彼はひと呼吸おくとやがて天を指差した。

「そうしたものを己の判断で断じてしまおうと思い上がり、本来の竜の騎士としての使命を忘れた愚か者を断罪する力を持った存在こそが、ボクのように終焉竜から生まれし終わりを告げる竜――竜の騎士の断罪人だ」

「竜の騎士の……断罪人……!」

 アバンたちはようやくその畏れの根源について理解することができた。

 全ての生物を滅ぼし得る力を以った怪物、竜の騎士。

 その竜の騎士さえ滅する力を持つ存在を人類の枠を出ない彼らが恐れぬはずもなかった。

 周囲が動揺し恐れ慄いている中ナバラは「やはりな……」と一人静観していた。

「ボクたちは竜の騎士を滅ぼすために同じ力を宿すいわば鏡合わせの存在……表がマザードラゴンから生まれ出るダイやバランくんとするなら裏が終焉竜から生まれるボクたちさ。……キミたちはボクの目的を聞いていたね。それはかつてこの地上に存在し、愛する者を失った哀しみで一度は人類を滅ぼそうと魔に加担した竜の騎士、バランの討伐さ!」

「バラン様の……!?」

 ラーハルトが声を上げた。

「彼がまず討つべき魔の根源……大魔王バーンの討伐を見送って対象を人類に定めた時点でこのボクは生まれたのさ。神が創りし竜の騎士とその神にさえ匹敵し得る力をつけた大魔王……。これら二つが人類に牙を向けたとなると、それは突出した力を持って争う者を疎んでいる神々にとっては本末転倒な事態だからね……ところがそんな神々さえも予想し得ない事態が発生していたことでボクの役目は一旦保留となった」

「ま、まさか」

「そう。それこそキミたちが探し求めていた地上の勇者――竜の騎士でありながらその存在、全くの異端!! 人の心を持ち竜の騎士の力を極限まで高めることができる例外中の例外、ディーノことダイだ! 彼がバランと激突したことでバランは己が在り方を変え、あとはキミたちの知る様に人類に加担しバーン討伐の足がかりとなってこの世を去った。……尤も、バランが歴代竜の騎士の中で際立った強さを持つ事も然り、彼が人間の女性と子を成したことも十分に例外だけどね……」

 

「ちょ、ちょっと待てよ!!」

 これまでの話を聞いてポップが飛び出した。

「それじゃあんたには今なんの役割も持ってねーってことじゃねえか! だったら何だってこんな人間に牙を剥くような真似をするんだよ!! 討つべき竜の騎士はこの地上に居ねえじゃねえか!!」

 そこまで言ったところでポップは青ざめて呟いた。

「じゃ……じゃあ次の討伐目標はダイ……?!」

「ふふふ。ポップも中々にうっかりやのようだね。彼は地上を救いし英雄であり、バランくん以上の力を持ちながらこれを良しとせず、戒めとして地上を去ったほどの男だよ。むしろあれこそ本来あるべき神の使いとしての在り方……彼は竜の騎士の鑑さ。それを驚異的な力を持つというだけで断ずるほど父なる終焉竜も厳格なお方ではないさ」

「だ、だったら何でだよ!! あんたは好き勝手やる竜の騎士の管理者みてーなモンのつもりだろうがな、俺から言わせてもらえりゃあんたの方がよっぽど好き勝手やってるぜ! 何が断罪者だ! あんたの言ってることとやってること全部めちゃくちゃじゃねぇか!」

 それを告げた直後、ポップはザウロに身も凍りつくようなおぞましい視線を向けられた。

 それまで彼が見せた事もない程強い憎悪と怒りにも似た激しい感情をぶつけられたことで、ポップはたまらず腰を落としてしまった。

「そう……。そうだよポップ。使命もなく、生まれた意義さえ消失したボクに父は新たなる使命を与えてくれた……それはこの地上――いや、天地魔の森羅万象。この世界に生きとし生けるあらゆる種の全てを根絶し、世界を新たにリセットすることだ!」

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