ドラゴンクエスト ダイの大冒険 続伝 人魔天竜の章   作:ありけるみー

26 / 29
うちひしがれて……の巻

 天の国――天界。

 人が神や天使と呼ぶそれらの超越者たちがおわす国だと言われているその世界の遥か向こうの空の果て。

 本来そこは神々の中でも限られた者しか立ち入ることは許されない聖域だった。

 そこはまさしく神々の領域に相応しい摩訶不思議な空間であり、あちらこちらで浮かぶ雲や藍色にも紫にも似た空色に重力に逆らうようにそそり立つ神殿の柱など、どれもこれもが人智を超越していた。

 この空間は本来聖母竜マザードラゴンが座す場所であり、彼女より生まれ落ちる竜の騎士が最初に生を授かる場所だった。

 しかし今そこに彼女は居ない――

 

 彼女に代わってその椅子にふんぞり返っているのはそんな彼女とは対となる役割を持つ、生命に終わりを告げる竜――終焉竜だった。

 雲間を越えて彼の子であるザウロがこの空間に飛び込んできた。

「ザウロ……何故みすみす人間共を見逃した。あの場で滅ぼしてしまえばよかろう」

「父さん。……心配はないよ。彼らならいつでも滅ぼすことができる」

「ほぅ……その割に随分と追い詰められていたそうだが……。お前がその姿に成るのも珍しい。今のお前の姿こそ人の持つ力の可能性そのものではないのか?」

 

 父の指摘にザウロは何も異を唱えなかった。

 彼の言う通り人間以外の種を襲った時にはこれほどの力を発現させなかったのだ。

 

「確かに人は他の種と比べれば非力なれど、思わぬ発想力を持ちその牙は時に神にさえ届き得るものだ。何せ元は天使どもの子孫……神々の末裔なのだ。彼らを侮っておると痛い目に遭うぞ」

 

「それ……人間の勇者アバンにも言われたっけなぁ……。ふふふ、父さん同じ事言ってら。……けど大丈夫。人間を侮っているわけでも傲っているわけでもないのさ。ただ今は他にやるべきことがある……それだけさ」

 

「三界の神々討伐か……」

 終焉竜は天界と魔界の境目を見つめていた。

 まだ見ぬ神々との大戦を想って漆黒の竜は荒ぶる感情を堪え切れない様子だった。

 まさに血湧き肉躍るとはこの事。

 暴れ狂う父の血潮に鳴動するように開く空の狭間が地獄の入り口にも見えた。

「この世界に蔓延る生物の始祖でありながら現状何も成さず、あろうことか静観を決め込んでいる愚かで怠惰なる神々!! 奴らは憎き不倶戴天の敵に他ならぬ。たとえ我と聖母竜の創造主であっても許し難し!! ザウロよ。我が魂と力を分けし眷属よ。倒せあいつを、あいつらを! 新世界創世のために奴らが造った秩序を破壊するのだ。お前にはそれを十分に可能とする力がある!!」

「わかっております……それが終焉竜の――いえ、新たなる世界の意志なのだから……!」

 

 邪悪に揺らめく雲々が不気味なうねりを見せる頃――

 人間の世界もまた、暗く沈んでいた。

 

 気絶していたポップが目を覚ました時には、既に辺りは薄暗く変わり果てていた。

 

「ポップ……よかった。気が付いたのね」

 

「マァム……あれ、俺何で寝てたんだっけ――」

 直後にポップは起き上って武器を取り、今にも飛び出して行きそうな表情に変化した。

「おいマァム! あいつは……ザウロの野郎はどこだ!!」

 マァムは首を左右に振ってうつむいた。

「行ってしまったわ……。私たち、命拾いしたのよ」

 ポップはすぐさま支度をし、部屋の扉を開いた。

「ちょ――ちょっと! どこへ行くのよ!!」

「決まってんだろ! ダイを……あいつを助けに行くんだよ!! こうしてる間にもダイの奴が苦しんでんだ」

「待ちなさいよ! さっきのこと忘れたの!? ポップもみんなも必死で戦ったけどまるで歯が立たなかったのよ!! それにあいつがどこにいるのかだって……」

「行先なら分かってる。天界だろうが魔界だろうがあいつがいるところにならどこへだって行ってやる!」

 躍起になって逸るポップの腕をマァムが掴んだ。

 ポップが振りほどこうと暴れるも力でマァムに敵うはずもなく、その場で押さえつけられてしまった。

「な、なにすんだよマァム! 手を離してくれ!!」

「ダメよ。絶対ダメ。離さない!! このまま離したらあなたはあいつを追ってどこかへ行ってしまうもの!」

「くっ……! ダイが……ダイがどうなっても良いって言うのかよ!?」

「そんなわけないじゃない!! 私だってできるなら今すぐにでもダイを助けに行きたいわよ!! ……でもダメよ。今追いかけて行ってもまたやられてしまう……そしたら今度こそあいつに殺されてしまうわ」

 マァムの瞳からぽつぽつと涙が零れ落ちていった。

「お願いよポップ……!」

 

「はいストーーップ。そこまでですよポップ」

「せ、先生……!」

 マァムを振りほどいてでも外に出ようとするポップの前にアバンが現れた。

「先生も何とか言ってくれ! このままじゃダイが――」

 アバンは焦るポップの頭をカチンと殴った。

「ポップ。少し冷静になりなさい。魔法使いはいついかなる時でもクールでなくてはならない……それは他でもないあなたが一番よく分かっているはずですよ」

 それを聞いたポップはぐうの音も出ないほど黙りこくった。

 今彼の頭には一人の老人が浮かび上がっていた。

 

 師匠……師匠もきっとこの場にいりゃ俺に同じことを言ったんだろうな……。

 

「いいですか。私たちは負けたのです。彼のきまぐれでたまたま生き延びただけに過ぎない……。あのまま戦い続けていれば私たちは今頃生きてはいなかったでしょう。まずはそのことをしっかりと理解しておく必要があります。頭でも、心でも……ね」

 

 久しぶりのアバンの説教を受け、ポップはようやく我にかえった。

 

「無謀と勇敢なことは違います。あなたが人一倍ダイくんを思う気持ちはよく分かりますが、今は立ち止まっても力をつけていくことが大事です。いいですね」

「は、はい……先生……」

 マァムに慰められるように肩を叩かれ、ポップはいつもの本調子に戻っていった。

 

「そのためにもポップ、あなたの力が必要です。一緒にきてくれますね」

 




ポップ ステータス
レベル:55
ちから:50
すばやさ:180
たいりょく:144
かしこさ:155
うんのよさ:256
さいだいHP 320
さいだいMP 360
こうげき力:95
しゅび力:108
EX 1985670
そうび

E かがやきのつえ
E へんなベルト
E たびびとのふく
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。