真・ 恋姫†無双 魏伝異聞『鄧艾』ノ章   作:雪虎

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第三話:吼狼と曹操軍の日常

華琳による俺と対等の友人関係を結んだと言う報告が皆にされた(どういう伝え方をしたのかは知らない)。

 

結果。

 

今までの交友関係が大きく変わっていく事になった。

 

―ーー―ーー―ーー

 

「ふははははははははっ!!!こんなものか吼狼ぉっ!!!」

「テメーは加減する事を覚えやがれぇっ!!!」

 

夏侯惇、真名を春蘭。あの時、城塞の門を蹴りでぶち抜き、出会い頭にぶった斬ったヤツだ。極端なまでの華琳至上主義。清々しいまでの武闘派(脳筋)。単純な武力なら中華で上の方に入るんじゃないかと思う。部隊指揮も独特な嗅覚でこなすし、華琳の指示には一切の異論を挟まず確実に従う。代わりに書類仕事は苦手、やらない、で期限スレスレに華琳と俺と妹から詰められて泣く泣く書類作りに励む事になる。

 

「大体何で鍛錬相手が俺なんだよっ!他にもいるだろうがぃ!!」

「馬鹿か貴様は。この軍中で私の次に強いのは貴様だ、だから貴様しか私の相手は出来ん!以上!」

「テメーに馬鹿って言われんのが一番ムカつくんだよぉオラァ!!!」

 

最初こそ『何故貴様が華琳様とぉ!!』とか言ってたが、今ではそんな事は無かったかのように鍛錬相手をさせられ、喧嘩し、憂さ晴らしに書類で泣かせる流れが出来上がっている。

 

「姉者、必要以上に煽ると後からしっぺ返しを食らうぞ。吼狼もだ、姉者に付き合ってムキになると要らぬ怪我をするぞ」

 

それを嗜めるのが夏侯淵、真名を秋蘭。俺と華琳の初対面に立ち会っていたのが彼女だ。冷静な判断力と広い視野を持ち合わせ、政務もこなせる優秀な人材。俺が来る前は参謀役を勤めていたらしく、家臣団の中で唯一俺を引き入れる事と、その真意を伝えられていたらしく、華琳からの信頼度の高さが伺える。

 

「うっ!?それは・・・・」

「そう思うんなら最初(ハナ)っからやらせんじゃねぇよ」

「スマンな」

 

苦笑しながら、手ぬぐいを差し出された。

 

「だが姉者を満足させられるのが現状、吼狼しかいないのも事実だ。今しばらくは姉者のわがままにつきあってやってくれ」

 

そして、この妹はなんやかんやで姉に甘い。

 

―ーー―ーー―ーー

 

「なぁ、俺がこの事を注意したのは何回目だ?」

「覚えてないっすよぉ・・・・」

 

俺の目の前で正座させられて、頬を膨れさせている華琳にそっくりな少女。

 

曹仁、真名を華侖。華琳の従妹。子犬を思わせる人懐っこさと、底なしの明るさから領民や部下からの人気が高く、二、三番目ぐらいに打ち解けた人物でもある。勘で命令無視したり、こちらの想定しない部隊運用をしたりするが、そこは戦果をしっかり挙げているから今は良い。だが、今俺が説教している通りの直近の問題がある。

 

「『人目のあるところで脱ぐな』って何度も言ってんだろうが」

 

脱ぐのだ。暑いから、とか水浴びがしたくなったから、とかとにかく気軽に脱ぐ。近くに異性がいようがお構いなしである。今回も偶然居合わせた満寵他一名が鼻血を間欠泉の如く吹き出し、医務室に担ぎ込まれた。

 

「今回ので分かっただろ?お前は美少女に分類されるんだ、それがところ構わず脱げばこうなる。あの二人だったから、あれで済んだが悪意のあるやつだったら襲われても文句も言えねぇんだぞ」

「でも!今日は暑かったんす!汗でグチョグチョだったし!」

「脱ぐなとは言わん、時と場合を考えろと言ってる。例えば他の女性兵士たちと交代で見張りをしながらとか、とにかく恥じらいを持て」

「むぅーーーーー」

 

理解も納得もしていなさそうだが、暫くは控えてくれるだろう。華侖はそういう娘だ、と言うのは短い付き合いでも分かる。

 

―ーーーーーーーー

 

「と、言う訳だ。当面は気をつけると思うが、一応見てやってくれ」

「申し訳ありません、姉さんがご迷惑をおかけしまして」

 

ペコペコと頭を下げる少女が曹純。真名を柳琳。華侖の妹で、姉よりもだいぶ落ち着いた、穏やかな性格をしている。曹操軍内の調整役を勤める見識の深さ、公正な判断力を兼ね備えている。また、『虎豹騎』と呼ばれる精鋭部隊を率いており・・・・まぁ、兵士たちはやや特殊だが軍中でも春蘭の隊に次いで精強。それを適正に運用する戦術眼を持ち合わせている。

 

そして苦労人である。自由奔放な華侖()と我が道をゆく華琳(従姉)に挟まれ、一癖も二癖もある面々の調停をして回ると言うのは相当な心労だっただろう。俺がここに来て、柳琳の仕事を半分肩代わりにするようになった頃など涙を流し、土下座しそうな勢いで感謝されたものだ。

 

「吼狼さんに注意されたのですから、本当に暫くは大丈夫なのでしょう。後は私たちも心を鬼にして華侖さんに注意すべきですわ」

 

曹洪、真名を栄華。陳留に来て最初に打ち解けた曹操軍の金庫番。男嫌い、だったらしく話し合いの席に着くまでで苦労したが、こちらの話しに利があると判れば真摯に受け止め、取り込むだけの器もある。今ではすっかり慣れて、こうやって食事を共にすることもある。年相応に可愛いものが大好きな一面もあり、よく華侖を着飾ろうとして、身の危険を感じた華侖が逃げ、それを追いかける栄華、と言う姿を見る事がある。

 

「私たちがあの娘に言っても聞き入れてくれませんでしたもの、吼狼さんが来てから少しづつ改善されてきていますから・・・・」

「・・・・・・・・あれでか?」

「・・・・あれで、です」

 

あの二人には悪いが、もう少し犠牲になってもらうかも知れない。

 

ーーーーーーーーー

 

「という訳だ、笑って許せ」

「そりゃねぇでしょうよ!!?」

「お前が脱いだ華侖と遭遇しなけりゃ良い」

「そうですけど!そうですけどぉ!!」

 

満寵、真名を迅。元々俺の配下だったが、投降後も引き続き俺の部下として働く事になった。華侖被害者の会の一人であり、鼻血を吹き出し医務室に担ぎ込まれると言う不名誉な倒れ方をした。ノリが軽いから、そういうの慣れてるかと思ってたが、想像以上に初心だったんで新たな一面を垣間見てビックリしている。

 

「ですが、華侖様が止まらなければどうすれば・・・・ハッ!常に目隠しをすれば・・・・」

「テメェは何に目覚めようとしてんだ」

 

牛金、真名を尤。元華侖の部下であり、今は転属して俺の部下になっている。生真面目だが融通が利くだけの柔軟性も持ち合わせ、性格だけ迅と正反対といっても過言ではない。だが、生真面目さ故か、発想が右から左に極端に走ることもあり、時折ポンコツになる。ちなみにコイツも華侖被害者の会の一人。

 

この二人、基本的な性格が真反対なので最初はどうかと思ったが意外と噛み合っている。どちらも優秀だから、何れはどちらかぐらいは手放さなけりゃならないだろうが、どっちを手放しても良いように、二人の能力を磨き上げたいと思っている。

 

ーーーーーーーーー

んで最後に。

 

「吼狼様、こちらの書類に眼を通していただけますか?」

 

よくわからんのがコイツだ。

 

「あァ・・・・ん、問題は無いな。ただここの表記が・・・・」

 

荀彧、真名を桂花。俺が仕官してから二ヶ月後ぐらいに、華琳の名を慕って仕官してきた少女。名門荀家の出身で以前は南皮の太守袁紹に仕えていたようだ。が、ソリが合わなかった、との事でそちらを辞めて来たらしい。

 

『アンタみたいなヤツに曹操様の軍師は分不相応よ!直ぐに私がそこから追い落としてやるんだから!!』

『おぅ・・・・まぁ、頑張れ?』

 

栄華も男嫌いだったが、桂花の場合はそれに輪をかけた女尊男卑とも言える状態だった。暫くの間は、俺を追い落としてやる、と息巻いて精力的に動いていたし、俺としてもまぁ、そうやって力をつけてくれるのは良い事だと思うし、実力でこの娘が台頭してくるなら名門曹家の君主を支える名門荀家の軍師、と言う良い見せ札になるだろうと。

 

『で?そろそろ華琳の軍師に推挙しようと思ってんだが・・・・』

『いえ、今しばらく鄧艾様の下で学ばせてください』

 

気がついたら、態度が反転してた。背筋が薄ら寒くなって華琳にも相談したが・・・・

 

『良いじゃない、当人の気が済むまでやらせてあげなさいな』

 

って。どうなってんだ?

 

 

SIDE 桂花

 

私は男が嫌いだ。グズで、だらしがなくて、女と見れば直ぐに色目を使うヤツばっかり。その意見は昔から変わらない、変わらないけど・・・・最近は例外もあるのだと知る事になった。

 

鄧艾様。

 

定陶方面で一つの城塞を占拠し、都合六度も官軍を打ち払い、七度目に現れた曹操様に捕縛された。その後、曹操様の説得に応じ仕官し、陳留の軍師として辣腕を振い、発展に貢献している。既に譜代の、曹操様の一族たちからの信用を得て、曹操様の半身のような立ち位置で舵取りを行っている。

 

『アンタみたいなヤツに曹操様の軍師は分不相応よ!直ぐに私がそこから追い落としてやるんだから!!』

『おぅ・・・・まぁ、頑張れ?』

 

言葉遣いは粗野だが、私のような新参の大言壮語をわらって聞き流す度量もある。あんな発言をした後でも、私の仕事に的確な助言を行い、それは正しく指導者のような立ち居振る舞いで。

 

そして、直ぐ近くで見ていたからこそ分かる。

 

言葉通り、万事に理解が深く、とても農民の出とは思えない程に広く、深い知識を持ち合わせ、それを適用、応用する柔軟性も持つ。曹操様が、この人と親友としての付き合いをしている、と言うのがよく分かる。

 

『で?そろそろ華琳の軍師に推挙しようと思ってんだが・・・・』

 

少しだけ、鼓動が早まった。そうあろうとして、ここに来た。それが成されようとしている事に対する興奮からだろうか。でも・・・・

 

『いえ、今しばらく鄧艾様の下で学ばせてください』

 

さほど迷う事なく、それを断っていた。曹操様の軍師として仕える、と言う目標は変わらない。でもそれ以上に、今鄧艾様の下を離れる事を惜しむ自分がいた。

 

『なら・・・・今しばらくは頼む』

『はい!』

 

それから間も無く、私は『吼狼様』と真名を交換した。

 

らしくないのは分かってるでも・・・・この人なら、預けても良いと思えたのだ。




第三話でした。

やっと・・・・やっと、推しの一人である桂花を出す事が出来ました。ツンツンしてる桂花も良いが、デレた桂花も好き。こんな桂花は俺たちの桂花じゃない!と言う人もいるかも知れませんが・・・・私は、妄想するがままの桂花を書いていく所存です!
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