白黒姉妹に灰被り姉さん   作:にわとり肉

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怪物の鼓動 その3

 「サクラって聞いてもしやとは思ったけど、君はサクラバクシンオーやサクラチヨノオーと面識があったのねぇ」

 「はい! 二人とも、今も“模範的”ウマ娘として頑張っていると聞いています!」

 「ぇえっ…… うん。そうかもね」

 

 数十分が経ち、しかし、あぶみとサクラローレルのコンビは行動を共にし、広場の中を散策していた。これは決して、あぶみの隣で楽しそうに喋り続ける少女の母がいまだに見つかっていないから、というわけではなく、むしろ、正面玄関を出てすぐ、サクラローレルの母親とは顔を合わせ済みでいた。

 が、別れようとしたところで、サクラローレルの未練を込めた、やけに圧を感じる視線をひしひしと感じたあぶみが、遠慮する母親に彼女のお守りを快諾したため、こうして二人は肩を並べて歩いていたのである。

 少し身の上を突いてみると、蜂の巣から兵隊がワラワラ飛び出してくるように、延々とよく見知った奴(サクラバクシンオーにサクラチヨノオー)の美談(主に前者に向けてである)を聞かされることになるとは想定外であったが。

 

 「……すると、君は“ヴィクトリー倶楽部(クラブ)”に?」

 「はいっ!」

 

 日本各地には、トレセン学園入学前のウマ娘達が所属する、レースのトレーニングを行うクラブチームが存在している。そのうちの一つが、“サクラ”と名につくウマ娘が多く所属するヴィクトリー倶楽部になる。

 納得したような声色のあぶみの前へ、過密な人混みを憚らず、後ろで手を組み躍り出たサクラローレルは、後ろ歩きをしながら夢中になって口を動かす。

 

 「ヴィクトリー倶楽部出身のウマ娘として、私はトゥインクル・シリーズでいっぱい勝たなくちゃ____」

 「あぁこらこら、危ないってば……!」

 

 惜しくも数コンマ、あぶみの注意は遅れていた。

 

 「わっ」

 

 ドンと背中に何かが当たった感覚も一瞬、バランスの崩れたサクラローレルの小さな身体は、前進しようとする勢いに引っ張られ地面へ。

 どさりと尻餅をついてしまった彼女は、すぐさま側に立つウマ娘を見上げる。言わずもがな、視線の先のウマ娘こそ、彼女がぶつかった相手である。

 ひょっとこの仮面を片耳に被り、綿飴を食んでいた、鼻に白いテープを貼り付けたウマ娘は、ギラついた金色の瞳で、少女のことを見下ろす。さらに、隣を歩いていた褐色のウマ娘の朱色の瞳も。

 

 「あっ、ご、ごめんなさいっ!」

 「気をつけ……」

 

 びっくりしたように目をむき、慌ただしく立ち上がり頭を下げるサクラローレルから目を外し、猫背で立ち止まっていたあぶみへ目をやったウマ娘は、リラックスしていた耳をぴんと張りたてる。

 

 「あれ、ブライアンじゃん」

 「……」

 

 意図せぬ邂逅に、自身の姿を確認したウマ娘――ナリタブライアンは、ひょっとこの面をずらし、顔を隠すのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「楽しそうでなによりだよブライアン、友達もできたみたいだしなぁ」

 「ヒシアマゾンっていいます! ……この人がブライアンの言ってた……」

 「ナリタブライアンさんですね! 私はサクラローレルです! とっても甘えん坊でとっても強いって聞いてます、よろしくおねがいします!」

 「は?」

 

 あぶみ一行に仲間が増えた。ナリタブライアンとヒシアマゾンである。だんだん目的を見失っている気がするが、見回ってはいるので無問題。と、あぶみは自分に言い訳をしていた。

 しかし、目的地もなく、テキ屋の盛り上がりをBGMに進み続けている一向の中で、唯一、ヒシアマゾンは怪訝な目をあぶみ達へ向けていた。

 

 「前半はでまかせだが…… 姉さんの指導を受けていたからな。当たり前だ」

 

 妙に自慢げに語るナリタブライアンは、あぶみの右側にピッタリついて離れず、

 

 「へぇ! 私も将来、あぶみさんみたいな人にトレーナーになってもらいたいですね!」

 「であって少し喋っただけでしょうに……」

 

 純粋無垢に微笑んでいるサクラローレルは、ナリタブライアンの対岸であぶみの手を握っている。

 火花が散っているわけではない。サクラローレルは無自覚で、ナリタブライアンが一方的に矢印を突き立てているだけ。人の機微に聡いヒシアマゾンはそれをわかっているからこそ、一歩引いたところで口を噤んで高みの見物を決め込んでいるのだった。

 なんだかんだ、対岸の火事は見たくなってしまうのが人の性である。

 そう思って眺めていると、

 

 

 「……姉さんは、私の姉貴と、来年は私も担当するんだ。枠なんてないぞ」

 (露骨か!!)

 

 そうつっこみそうになるほど、ナリタブライアンは口をとんがらせて言うのである。尻尾と耳をピンと立てるヒシアマゾンをよそに、呆気に取られたように目を見開いたサクラローレルは、一度あぶみを見上げ、再度、威嚇するように顔を覗かせるナリタブライアンへ、桃の模様が入った瞳を向け、

 心底面白そうに目を細め、笑みを深めた。

 

 「……そうですね。()()()()()、しれませんね?」

 「あぁ邪魔だ。だから諦めるんだな」

 (アンタ……)

 

 ヒシアマゾンの生暖かい視線に気づかず、無表情で耳をはためかせるナリタブライアンであった。

 

 そして、その瞬間からである。

 

 ____放送委員より連絡です。えー、聖蹄祭恒例ちびっ子レースのエントリーを行いますので……

 

 湿ってきた空気を切り飛ばすように、辿々しいアナウンスが場内へ澄み渡った。




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 ビワハヤヒデは今頃バナナを販売しているテキ屋の店番をしていることでしょう。

一話が複数に分かれてる奴、まとめて欲しい?

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