喜多郁代がフラッシュバッカーを歌うまでの物語   作:ハチスナ

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釣った川魚はちゃんと火を通して食べましょう(戒め)





川へ行こう お昼を食べよう

朝食を終えたわたし達は、近くの渓流に向かった

 

実の所、周辺にはいろいろな行楽場所があるのだけど、徒歩移動だと微妙に時間のかかる距離ばかりで…

なので比較的近い整備もされてるらしい渓流を選んだ

 

キャンプ場から30分程度の距離にある川のほとり

林を抜けると、そんな場所に出た

連休中という事もあって、既に何人かの人がいる

 

ここは魚釣りもできる場所で、近くの小屋では釣具の貸出をしてるらしい

残念ながら、わたし達には釣り経験者がいなくて断念

 

わたしはアウトドアは好きだけど、釣りをする知り合いがいないから機会が無かったのよね

釣り事態は少し興味があるけど

大きな魚釣れたら撮れ高高そうじゃない?

時期によっては、魚の掴み取り体験なんかもあったみたいだけど、それも残念ながら今はやってなくて

せっかくなので、わたし達は川岸で水に足を浸ける事にした

 

水遊び用の場所も整備されていて、踝位までの浅瀬が広く作られてる

 

「うわっ!冷たぁ!」

 

「川の水って冷たいとは聞いてましたけど、こんなに冷えてるんですね」

 

わたしと伊知地先輩は、早速靴を脱いで川に入る

ここまで歩いてくるのに、それなりに体は温まっていたけど、それでも川の水は凄く冷たかった

 

「ぼっちちゃ〜ん!リョウ〜!2人も来なよ〜」

 

「そうですよ〜!早く来ないと水かけちゃいますよ〜!」

 

わたしと伊知地先輩は手を振りながら、まだ川岸でまごついてる2人を呼んだ

 

「待って郁代、さすがにこの気温で服濡れたら寒い」

 

「い、今行きます…!」

 

2人もそれぞれに川に入る

 

「つ、冷たいのもそうだけど、石痛くない?」

 

リョウ先輩が言いながら慎重に足を運ぶ

砂に玉砂利が混じっていて、それが足裏に当たる

 

「え?そう?」

 

「わたしは気になりませんね」

 

「あたしも別に痛くはないかな?」

 

「えぇ〜?嘘だぁ〜」

 

「ほんとだって、ねぇ喜多ちゃん」

 

「はい」

 

「あ、そう言えば聞いたことある。不摂生してる人は足つぼが痛いって…」

 

「…えっ?という事は、リョウ先輩…」

 

普段のアレ(草食い)が原因で内蔵にダメージが?

 

「考えてみれば、リョウは食べ物もだけど、睡眠もテキトーだし、わりと不摂生だよね」

 

「そ、そんな、馬鹿な…。わたしは、まだJKのハズ…!」

 

リョウ先輩はわなわなしている

さすがに女子高生の自分が不摂生のせいで、足のツボが痛くなるという事実が受け入れがたいみたい

 

「リョウ…足つぼマッサージは健康に良いらしいよ?」

 

「え?待って虹夏…!」

 

伊知地先輩は笑顔(?)のままスタスタとリョウ先輩の背後に回ると、両肩をガッチリ捕まえる

そのまま押し出すように足を進ませた

 

リョウ先輩から聞いたことの無いような悲鳴があがった

 

わたしは苦笑いしながら見てるしかない

伊知地先輩は楽しそうに川の中でリョウ先輩を歩かせている

 

あれ?そういえばひとりちゃんは?

 

わたしは疑問に思い首を巡らせる

 

「…可愛い女の子達と水しぶきを上げながらキャッキャウフフ…うへへへ…これはもう陽キャの仲間入りでは…?うへへ」

 

何故かトリップしていた

見なかった事にした

 

しばらく川の周辺で遊んで過ごした

 

途中ひとりちゃんがサワガニを見つけ、リョウ先輩が捕まえるという場面があったけど、少し眺めた後逃してあげた

ちょっと先輩が食べるかも、とか思ってしまった

 

 

 

「虹夏、お腹空いてきた」

 

少し経って木陰で休んでいたリョウ先輩が言った

気温が上がってきて、日向にいるとじっとりと汗が滲む

時計を見ると10時過ぎ

お昼にはまだ早いわね

 

「朝から結構動いてるしね。あたしも疲れてきたかなぁ。何か軽く食べる?ここにはそこの自販機くらいしか無いけど」

 

貸釣具店の前には自販機が2台設置されているけど、売られているのは両方飲み物だけだった

 

「この近くに食堂がある」

 

「食堂って、がっつり食べるつもりじゃん…」

 

「まあ、聞いて。ここも結構人が増えてきた」

 

周囲を見ると人が増えてきた

家族連れや何人かのグループも何組か見られる

 

「人が増えるとぼっちは楽しめない。そしてお昼には早い時間だから、食堂の方には人は少ない。人が増えるとぼっちは落ち着いてご飯を食べれない。よって早めに昼食にしよう」

 

確かにひとりちゃんにもお昼を楽しんでもらうなら、人の少ない時間の方がいいのかしら?

 

「分かったよ。まあ、せっかくだし、ぼっちちゃんにも楽しんでお昼食べてほしいしね。早めのお昼に行こっか。喜多ちゃんどうかな?」

 

私は頷く

 

「もちろん賛成です。じゃあ、ひとりちゃんも呼んできますね」

 

わたしは言いながら、川から上がる

ひとりちゃんは少し前から離れた所で休憩していたので呼びに行く

 

 

 

 

 

わたし達はお昼を食べに移動を始めた

 

目的の食堂は15分程度の距離らしい

もう9月も中頃だけど、お昼の日差しはまだまだ強い

 

林の中を切り裂くような一本道を4人で歩く

木漏れ日が斑にアスファルトを照らしてる

 

「郁代」

 

最後尾を歩いていたリョウ先輩が声を掛けてきた

ひとりちゃんと伊知地先輩は少し先で話しながら歩いている

はい、と答えながらわたしは歩調を緩め先輩の隣に合わせた

 

「…この間の新しい曲だけど」

 

リョウ先輩は少し言葉を選ぶように話し始めた

 

「…なんか、ごめん。郁代、結構悩んでるよね。もう少しアドバイスした方がよかった?」

 

え?

リョウ先輩が謝った?

何で?

わたしがうじうじ悩んで歌えないから?

 

「リョ、リョウ先輩が悪いわけじゃありません!わたしがダメダメだから、まだ歌えないだけで…!あ、謝らないで下さい!」

 

一気にまくし立ててしまった

 

「郁代、落ち着いて」

 

わたしはハッとして深呼吸する

なんだか、ひとりちゃんみたいな事をしてしまった気がする

 

「今回の曲、歌に関しては全部、郁代に投げっぱなしにしてたのは悪かったなと思って」

 

「それは別に…リョウ先輩は理由があって、ああ言ったんですよね?」

 

「うん、まあ…ね。ただ、それはわたしがそう思っただけで、郁代に責任を押し付けるみたいになっちゃったのは違うな…と」

 

リョウ先輩はいったん言葉を切ると、天を仰ぐ

頭上には深緑が空の青を遮っている

 

「歌い方で悩むのは当たり前の事。わたしも曲にどう乗せれば良いかとか、結構悩む」

 

「リョウ先輩でも、悩むんですね」

 

「そりゃあね、当然悩む」

 

「なら、わたしが悩むのは仕方ないですね」

 

「うん。でも、郁代はわたしの予想よりも深く悩んでそうだったから」

 

わたし、そんなに悩んでるかしら?

確かに悩んではいるけど、そんなに深刻じゃないと思う

 

「郁代、最近イソスタの更新頻度、ずいぶん落ちてるよね」

 

…え?

指摘されて、わたしは改めて思い返す

確かに最近あまりイソスタを立ち上げてない

というか更新チェックをしてない

暇があれば歌詞を見ながら歌い方を考えてる

 

「写真もあまり撮ってないし、昨日今日撮った分も上げてないんじゃない?」

 

確かにそうだ

昨日張ったテントや伊知地先輩の作ってくれた夕食を撮りはしたけど、イソスタに上げていない

 

「予想よりも重症だな、て思った」 

 

指摘されるまで気付かなかった

 

「ごめんなさい…。思ったよりも思い詰めてたみたいです」

 

「郁代は悪くない。わたしが任せすぎた」

 

リョウ先輩の視線が落ちる

わたし達の並んで歩く影を見ている

 

「だから、今回のキャンプは気晴らしに良いかなって…。前に郁代、皆と旅行に行きたいって言ってたよね」

 

「先輩…覚えててくれたんですか…」

 

わたしは何度か、そんな提案をしてる

ただ、リョウ先輩やひとりちゃんが乗り気じゃないから、いつもお流れになる

 

今回はリョウ先輩からの提案だから実現した

 

「ありがとうございます」

 

「うん、楽しんでくれてるようで良かった」

 

「はい!凄く楽しいです!」

 

いつもは飄々と掴み所のないリョウ先輩

でも、いつでも結束バンドのメンバーを見てるし、なんなら1番気を回してくれてるのかもしれない

先輩の言葉は核心を突く事が多い

 

「だから、悩んでるなら相談してほしい。曲の事ならいつでも話は聞く」

 

先輩の優しい提案

でも、わたしはすぐには答えない

答えられない

 

しばらく黙って歩く

リョウ先輩も言葉は掛けてこない

 

「リョウ先輩」

 

わたしは決意と共に改めて声をかける

先輩は黙ってわたしの顔を見る

 

「わたし、もう少し1人で考えます。自分で何処までやれるか分かりませんけど、やってみたいです」

 

リョウ先輩は少し目を瞑ると、前を見た

 

「分かった。なら、待ってる」

 

短い応え

わたしも前を見た

目的地が見え始めている

 

伊知地先輩とひとりちゃんが、わたし達を振り返り手を振っていた







読んで下さっている皆さんありがとうございます

毎日投稿は今回までになります
ストックが無い…
下書きはしてるんです
嘘じゃないんです!本当なんです!!

次話からは日曜・水曜の週2投稿でいければと考えています

それと全10話になる予定です

よろしければ、次回以降もよろしくお願いします


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